既存の売掛金等を債務として確定し支払方法を取り決める契約書。民法第473条の弁済に関する規定を前提に、承認による時効の更新効も明記しています。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
債務弁済契約書
第1部: 書式本文
【債権者商号】(以下「甲」という。)、【債務者商号】(以下「乙」という。)及び【連帯保証人氏名】(以下「丙」という。)は、乙の甲に対する下記債務の弁済に関し、次のとおり契約する(以下「本契約」という。)。
第1条(既存債務の確認及び承認) 1. 乙は、甲に対し、【売買契約・請負契約等】に基づき生じた金【 】円の債務(以下「本件債務」という。)を負っていることを確認し、これを承認する。 2. 乙の本条1項の承認は、民法第152条に定める債務の承認に該当し、本件債務についての消滅時効はこれにより更新される。
第2条(弁済方法) 乙は、本件債務につき、【〇〇年〇〇月】から毎月【〇〇日】限り、金【 】円ずつを【 】回にわたり、甲の指定する口座に振り込む方法により分割弁済する。振込手数料は乙の負担とする。
第3条(遅延損害金) 乙が前条の分割金の支払を遅滞したときは、遅滞金額に対し年【 】パーセント(利息制限法第4条の上限の範囲内)の割合による遅延損害金を支払う。
第4条(期限の利益喪失) 乙が分割金の支払を【2】回以上連続して遅滞したとき、又は乙について仮差押え、仮処分、強制執行若しくは破産手続開始の申立て等信用状況の悪化を示す事由が生じたときは、乙は甲の通知催告により当然に期限の利益を喪失し、残債務全額を直ちに一括して支払う。
第5条(連帯保証) 丙は、乙の甲に対する本件債務(分割弁済金及び遅延損害金を含む。)につき、乙と連帯して保証する。
第6条(期限前弁済) 乙は、甲にあらかじめ通知の上、本件債務の全部又は一部を繰り上げて弁済することができる。
第7条(担保の提供) 乙は、本契約締結と同時に、【担保目的物】について甲のために【担保権の種類】を設定し、その旨の登記手続に協力する。
第8条(公正証書化への協力) 乙及び丙は、甲の求めがあるときは、本契約の内容につき強制執行認諾文言付き公正証書を作成することに協力する。
第9条(清算条項) 甲、乙及び丙は、本件債務に関し、本契約に定めるもののほか何らの債権債務のないことを相互に確認する。
第10条(協議及び合意管轄) 本契約に関する紛争については、【〇〇地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
以上を証するため本書3通を作成し、甲乙丙記名押印の上、各自1通を保有する。
【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】
(甲) 住所:【 】 商号:【 】 代表者:【 】 印 (乙) 住所:【 】 商号:【 】 代表者:【 】 印 (丙) 住所:【 】 氏名:【 】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 債権者向け書き換え
A-1. 取引先の売掛金滞納を分割弁済で解消する場面
第7条追加例:「乙は、本契約締結後、甲との継続的な取引を行う限り、新たに発生する売掛金債権について本契約の担保の範囲に含めることに合意する。」 解説: 継続的取引関係にある場合、既存滞納分だけでなく将来債権も担保に取り込み回収の実効性を高める。
A-2. 早期に強制執行力を確保したい場面
第8条修正例:「乙及び丙は、本契約締結後【2】週間以内に、甲の指定する公証役場において強制執行認諾文言付き公正証書を作成する。」 解説: 協力義務を努力目標にとどめず期限を区切ることで、実際の公正証書化を担保する。
B. 債務者・連帯保証人向け書き換え
B-1. 分割弁済の負担を軽減したい場面
第2条修正例:「乙は、初回から【3】回分は金【 】円、以後は金【 】円ずつ分割弁済する。」 解説: 資金繰りが厳しい初期段階の負担を軽くする段階的弁済額の設計により、履行可能性を高める。
B-2. 連帯保証人の責任範囲を限定したい場面
第5条修正例:「丙の保証責任は、本件債務の元本部分に限るものとし、遅延損害金及び第8条の公正証書化に関する義務には及ばない。」 解説: 保証人の予測可能性を確保し過大な保証責任を回避するため、保証範囲を元本に限定する。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面・使ってはいけない場面 本書式は、既に発生している売掛金等の債務について、当事者間で金額を確定させ分割弁済の方法を取り決める場面で用いる。訴訟や調停等の裁判手続を経て和解する場合は、和解による分割弁済契約書のように和解(民法第695条)の性質を明記した書式を用いる方が適切であり、裁判外の任意の合意である本書式とは前提が異なる。また金銭以外の物での弁済(代物弁済)を行う場合は代物弁済契約書を用いるべきである。
根拠法令 乙による債務の承認(第1条)は民法第152条の時効の更新事由に該当し、承認時点から新たに時効期間が進行する。弁済に関する基本規定は民法第473条であり、分割弁済は当事者間の合意により弁済期を分割する特約である。遅延損害金は利息制限法第4条の上限規制(利息の1.46倍)に服する。期限の利益喪失については民法第137条が任意規定として存在するが、本契約では第4条で具体的な喪失事由を約定し明確化している。強制執行認諾文言付き公正証書は民事執行法第22条第5号により債務名義となる。
実務でよくある失敗と対策 第一に、既存債務の発生原因や金額を具体的に特定せず「一切の債務」といった曖昧な表現にとどめ、後日対象債務の範囲が争いになる失敗がある。第1条のように発生原因契約と金額を具体的に記載する。第二に、時効更新の効果を意識せず承認条項を省略し、時効完成後に本契約の効力自体が争われる失敗がある。第1条2項のように承認の法的効果を明記する。第三に、口頭又は私文書のみで合意し、不履行時に改めて訴訟提起が必要となる失敗がある。第8条のように公正証書化への協力義務を定め、実効性のある回収手段を確保する。第四に、担保の提供を約束させたにもかかわらず登記手続を先延ばしにし、その間に他の債権者が差押えを行い担保が空文化する失敗もある。担保設定条項を定めた場合は、契約締結後速やかに登記手続を進める運用を徹底する必要がある。時効期間の管理や公正証書作成の要否は専門家に確認することが望ましい。
債務弁済契約書と類似書式との違い 本書式は、既に金額が確定している既存債務について弁済方法を取り決めるものであり、当事者間に紛争や争いがある場合の解決手段としての性質を持つ和解による分割弁済契約書とは異なる。また返済条件の変更のみを目的とする場合は金銭消費貸借契約変更契約書(リスケジュール)を用いる方が実態に即することが多く、いずれの書式を選択するかは、対象債務が争いのないものか、当初から貸付けとして発生したものかという観点から判断するとよい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 本件債務の発生原因及び金額を具体的に特定したか
- [ ] 債務の承認による消滅時効の更新効を明記したか
- [ ] 分割弁済の回数・金額・振込先を明確にしたか
- [ ] 遅延損害金の利率が利息制限法第4条の上限を超えていないか
- [ ] 期限の利益喪失事由(遅滞回数等)を具体的に定めたか
- [ ] 連帯保証人の保証範囲を明確にしたか
- [ ] 担保を設定する場合、登記手続への協力義務を明記したか
- [ ] 強制執行認諾文言付き公正証書化の要否とその手続を検討したか
- [ ] 清算条項により対象債務以外の紛争を防止したか