相当の期間を定めた催告後も履行がない場合に、民法第541条の催告解除により契約を終了させる意思表示を明確に伝える通知書です。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
債務不履行による契約解除通知書
第1部: 書式本文
催告及び契約解除通知書
【被通知人住所】 【被通知人氏名・名称】 様
作成日: 【西暦】年【月】月【日】日
差出人: 【通知人住所】 【通知人氏名・名称】 【担当部署・担当者名】 印
通知人と被通知人との間の【契約名称】(締結日【締結日】、以下「本契約」という。)に関し、通知人は被通知人に対し、下記のとおり催告するとともに、契約解除の意思表示を行う。
- 被通知人は、本契約第【条番号】条に基づき、【履行期限】までに【履行内容(代金支払・目的物引渡し・役務提供等)】を履行する義務を負っていた。
- 被通知人は、本通知作成日に至るまで、上記義務を履行していない。
- よって通知人は、民法第541条本文に基づき、本通知到達日から【14日間・相当と認める期間】以内に上記債務を履行するよう催告する。
- 被通知人が前項の期間内に履行しないときは、本通知をもって、当該期間の経過時に本契約を解除する旨の意思表示とする。
- 前項の期間経過後、被通知人が履行の追完その他の措置を講じた場合であっても、通知人が別途承諾しない限り、解除の効力に影響を及ぼさない。
- 本契約の解除により、通知人及び被通知人は、民法第545条第1項に基づき原状回復義務を負う。被通知人は、【原状回復の具体的内容(既払金の返還・目的物の返還等)】を、解除の効力発生日から【期間】以内に履行するものとする。
- 通知人は、本契約の解除にかかわらず、民法第545条第4項に基づき、被通知人の債務不履行により生じた損害の賠償を別途請求する権利を留保する。
- 本条項に定める債務が金銭債務である場合、被通知人は解除の効力発生日までの遅延損害金として年【利率】%の割合による金員をあわせて支払うものとする。
- 本通知に関するお問い合わせ及び履行の通知は、下記担当部署まで行うものとする。
以上
お問い合わせ先 【問い合わせ先住所】 【担当部署・担当者名】 【電話番号・メールアドレス】
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 解除する側
修正後の文例(催告と解除の意思表示を分離する場合):
まず、本通知をもって、本通知到達日から14日以内に前記債務を履行するよう催告する。上記期間内に履行がないときは、通知人は改めて解除の意思表示を行う予定である。
一言解説: 催告書と解除通知書を分けて2通発送する方式である。相手方の履行機会を明確に確保できる一方、期限徒過後に改めて解除通知を発送する手間が生じる。継続的取引で相手方との関係修復の余地を残したい場合や、相手方が期間内に履行する可能性が相応にある場合に適する。
修正後の文例(催告と解除を一体化する場合):
本通知到達日から10日以内に前記債務の履行がないときは、当該期間の満了をもって、本契約は当然に解除されるものとする。改めて解除通知を発送することは要しない。
一言解説: 1通で催告と解除の意思表示を完結させる、いわゆる停止条件付解除の方式である。発送の手間を減らせる一方、期間の相当性を欠くと評価された場合に解除全体の効力が争われるリスクがあるため、期間設定を慎重に行う必要がある。
B. 解除通知を受けた側
修正後の文例:
貴通知記載の履行期限【履行期限】は、【当方の事情・協議経緯】に照らし相当な期間とは認められない。また当方は【日時】に一部履行を完了しており、残債務についても催告期間内の履行が可能であったことから、本通知による解除の効力を争う。
一言解説: 催告の「相当の期間」は画一的な日数で決まるものではなく、債務の内容や履行に要する準備期間を踏まえて個別に評価される。期間が著しく短い場合、催告自体は有効でも解除の効力発生時期が繰り下がると解される余地があるため、履行の実現可能性を具体的に主張することが重要である。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、契約上の履行期限を過ぎても相手方が債務を履行しない場合に、まず催告を行い、それでも履行がないときに契約を終了させる、催告解除の原則形態(民法第541条)で用いる。履行不能や明確な履行拒絶がある場合は催告を要しない解除(民法第542条)を検討すべき場面であり、本書式の対象とはならない。
根拠法令は、民法第541条(催告による解除)である。同条は、当事者の一方が債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行を催告し、その期間内に履行がないときは、相手方は契約の解除をすることができると定める。あわせて、解除の効果として民法第545条第1項(原状回復)、同条第4項(損害賠償請求権への影響なし)を確認しておく必要がある。ただし、同条ただし書により、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、解除をすることができない点にも留意する。
実務でよくある失敗の一つ目は、「相当の期間」を検討せずに一律の短期間(例えば2〜3日)を設定してしまうことである。相当性は、履行の準備に要する時間、業界慣行、これまでの交渉経緯等を踏まえて個別に判断される。対策として、本文3項の期間は契約内容に応じて具体的に検討して定め、著しく短い期間を機械的に用いないよう注意している。
二つ目の失敗は、催告と解除の意思表示の関係を曖昧にし、「直ちに解除する」という文言と「期間内の履行を求める」という文言が矛盾したまま送付してしまうことである。対策として、本文4項で、期間経過を条件として解除の効力が生じる、条件付きの解除の意思表示である旨を明記し、催告と解除を一体化する場合の法的構成を明確にしている。なお、関係修復の余地を残したい場合は、第2部Aのように催告と解除を2通に分けて送付する運用も有用である。
三つ目の失敗は、解除後の原状回復や損害賠償請求権について何ら触れず、解除の効力発生のみを通知してしまうことである。対策として、本文6項から8項で原状回復の内容、損害賠償請求権の留保、遅延損害金の扱いを明記し、解除後の清算関係を明確にしている。
四つ目の失敗は、履行期限を過ぎた直後に、事前の催告なくいきなり本書式のような解除通知を送付してしまうことである。民法第541条の解除は、原則として履行の催告を経ることを要件としており、催告を欠いた解除の意思表示は、無催告解除の要件(民法第542条)を満たさない限り効力を生じないおそれがある。対策として、本文3項で必ず催告を行う構成とし、催告と解除の意思表示の先後関係を通知文中で明確にしている。催告期間の相当性や不履行の軽微性の評価は事案ごとに異なるため、個別の事案については弁護士等の専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 対象契約と不履行となっている債務の内容を具体的に特定したか
- [ ] 履行期限を過ぎていること、履行がないことを裏付ける記録があるか
- [ ] 催告期間が債務の内容に照らして相当といえるか検討したか
- [ ] 催告と解除の意思表示を一体化するか、2通に分けて送付するかを検討したか
- [ ] 不履行が軽微であるとして解除が否定される可能性を検討したか
- [ ] 原状回復の具体的内容(返還対象・返還期限)を明記したか
- [ ] 損害賠償請求権を留保する旨を記載したか
- [ ] 金銭債務の場合、遅延損害金の利率を明記したか
- [ ] 一部履行がある場合、その扱いを整理したか
- [ ] 内容証明郵便・配達証明による送付の要否を検討したか