時効の更新を図る目的で、民法第152条の承認を得るために債務の残高と内訳を明示し、承認書への署名押印を求めて送付する通知書です。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
債務承認を求める通知書
第1部: 書式本文
債務承認を求める通知書
【通知日付】
【債務者氏名又は名称】 殿 【債務者住所】
【債権者住所】 【債権者氏名又は名称】 ㊞
第1条(本件債権の表示) 債権者は、債務者に対し、下記債権(以下「本件債権」という)を有している。 (1) 発生原因:【契約の名称・締結日】 (2) 請求金額(元本):金【元本額】円 (3) 既払金額:金【既払金額】円(【入金日】までの入金合計) (4) 残債務額:金【残債務額】円 (5) 遅延損害金:金【遅延損害金額】円(【起算日】から【本書発送日】まで)
第2条(承認を求める趣旨) 債権者は、債務者に対し、本件債権の残高及び内訳を確認の上、下記承認書に署名又は記名押印し、【回答期限】までに返送することを求める。本承認は、民法第152条第1項に定める時効の更新事由である「承認」として行われることを目的とするものである。
第3条(承認の効果) 債務者が承認書に署名又は記名押印した場合、民法第152条第1項により、承認の時から新たに時効の進行が始まる。
第4条(承認の権限に関する確認) 民法第152条第2項により、承認をするには相手方の権利についての管理の能力又は権限があることを要しない。もっとも、承認は債務者本人又はその代理権を有する者が行う必要があるため、法人にあっては代表者又は正当な代理権を有する者による署名又は記名押印を求める。
第5条(一部弁済がある場合の取扱い) 債務者が本件債権の一部を弁済している場合、当該弁済は原則として残債務についての承認としての効力を有すると解される。本書面はこれを前提に、残債務額を第1条第4号のとおり明示するものである。
第6条(承認に応じない場合の対応) 第2条の期限までに承認書の返送がない場合、債権者は、催告(民法第150条)、協議を行う旨の合意(民法第151条)、訴訟提起その他の措置を検討する。
第7条(連絡先) 本件に関する連絡は下記宛先まで願いたい。 【債権者連絡先(住所・電話番号・メールアドレス)】
以上
【承認書】 私は、上記債権者に対し、下記の債務が存在することを承認します。 債務の内容:【契約の名称・締結日】 残債務額:金【残債務額】円 【承認日】 【債務者氏名又は名称】 ㊞
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 承認を求める債権者側
修正後の文例:
債権者は、本件債権の消滅時効の完成を防ぐため、債務者に対し、民法第152条第1項に定める承認を得ることを目的として、本件債権の残高及び内訳を明示した承認書への署名又は記名押印を求める。
一言解説: 承認は時効完成前だけでなく、時効完成後であっても債務者が時効の完成を知らずに承認した場合には、信義則上、時効の援用が制限され得るとされている。もっとも、時効完成後の承認については評価が分かれる余地があるため、時効完成前に承認を取得することを基本方針とし、完成後の対応は個別に慎重に検討する必要がある。承認を得る際は、可能な限り金銭消費貸借契約書や取引基本契約書など既存の証拠資料と整合する内容で残債務額を記載し、後日の齟齬を防ぐことが望ましい。
B. 承認を求められた債務者側
修正後の文例:
債務者は、本書面記載の残債務額について、【一致・不一致の別】を確認した。金額に相違がある場合は、その根拠(入金記録・相殺の主張等)を【回答期限】までに書面で示す。承認書への署名押印は、金額の確認が完了するまで留保する。
一言解説: 債務者側は、承認書に安易に署名すると、その時点から新たに消滅時効の進行が始まり、それまで進行していた時効期間の利益を失う結果となるため、金額に争いがある場合は、承認前に金額の根拠を確認し、必要に応じて争う姿勢を明確にすることが重要である。特に、一部の入金や過去のやり取りが計上されていない疑いがある場合には、署名前に取引履歴の開示を求めることが望ましい。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、時効の更新を図るため、債務者から確定的な承認を取得する目的で使用する。使用すべき場面は、債務者との関係が対立的でなく、債務の存在自体には争いがないか、又は債務者が事実上争う意思を持たない事案である。他方、債務の存否や金額について実質的な争いがある事案では、承認書への署名を求めても応じられない可能性が高く、無理に承認を迫ることは紛争を悪化させかねないため、そのような場合は催告や協議申入れなど他の時効完成猶予手段の活用を優先すべきである。
根拠法令は民法第152条である。同条第1項は、時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める旨を定めており、催告(民法第150条)や協議を行う旨の合意(民法第151条)が時効の完成を一時的に猶予するにとどまるのに対し、承認は時効の進行そのものをリセットする更新事由である点で効果が異なる。同条第2項は、承認をするには、相手方の権利についての管理の能力又は権限があることを要しない旨を定めており、未成年者であっても法定代理人の同意なく単独で承認をすることができる。
実務上よくある失敗の第一は、承認と単なる支払猶予の依頼や謝罪の言葉を混同し、法的に確実な承認とはいえない曖昧なやり取りのみで安心してしまう例である。承認としての効力を確実にするためには、第1条・第2条のように残債務額と内訳を明示した書面に署名又は記名押印を得ることが望ましく、口頭での確認のみに頼ることは避けるべきである。第二の失敗は、承認書に署名する者が債務者本人又は正当な代理権を有する者であるかを確認せず、権限のない従業員等の署名を得てしまい、後日承認の効力が争われる例であり、第4条のように署名者の権限確認を明記しておくことが重要である。法人が債務者の場合は、代表者印又は登記された代表者の署名を確認することが望ましい。第三に、時効完成後に承認を得た場合の効力について、時効の援用権を失わせる根拠を正確に理解しないまま書面を作成し、後日の交渉で誤った説明をしてしまう例が見られるため、時効完成前後で法的評価が異なり得る点を認識した上で対応することが望ましい。第四に、承認書を取得したことに満足し、その後の残債務の管理や次回の時効完成予定日の再計算を怠り、再び時効が完成間近になるまで放置してしまう例もあるため、承認取得後も期限管理を継続することが重要である。個別の事案における承認の成否や時効完成後の承認の効力については、弁護士等の専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 本件債権の発生原因、残債務額及び内訳を裏付ける資料を確認したか
- [ ] 既払金額と残債務額の計算に誤りがないか確認したか
- [ ] 承認書に署名する者が債務者本人又は正当な代理権を有する者かを確認したか
- [ ] 時効が既に完成しているか、完成前かを確認したか
- [ ] 承認書の返送期限を明確に設定したか
- [ ] 承認に応じない場合の次の対応(催告・協議申入れ・提訴等)を検討したか
- [ ] 一部弁済がある場合、その弁済日と金額を記録として保存しているか
- [ ] 承認書の保管方法(原本保管・写しの取得)を決めたか
- [ ] 債務者の現住所を最新の情報で確認したか
- [ ] 送付前に弁護士等の専門家へ相談する必要性を検討したか