研究開発やシステム設計など対象20業務でみなし労働時間を適用する場面の書式。労働基準法第38条の3と2024年4月から必須となった本人同意の取得手続に対応。

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専門業務型裁量労働制に関する労使協定書

第1部: 書式本文

【株式会社〇〇】(以下「会社」という。)と、〇〇研究所の労働者の過半数を代表する者(以下「労働者代表」という。)とは、労働基準法第38条の3の規定に基づき、専門業務型裁量労働制の実施について、次のとおり協定する。

第1条(目的) 本協定は、業務の性質上その遂行の方法を大幅に従事者の裁量に委ねる必要がある【新製品の研究開発業務】について、専門業務型裁量労働制を適用し、実際の労働時間数にかかわらず、あらかじめ定める時間労働したものとみなすことを目的とする。

第2条(対象業務) 本協定の対象業務は、労働基準法施行規則第24条の2の2第2項及び厚生労働省告示に定める業務のうち、次のとおりとする。 (1) 新商品又は新技術の研究開発の業務 (2) 情報処理システムの分析又は設計の業務

第3条(対象労働者) 1. 対象業務に常態として従事し、業務の遂行の手段及び時間配分に関し会社が具体的な指示をしないこととする従業員のうち、次条の同意をした者を対象とする。 2. 入社後【1】年未満の者及び対象業務の経験が【2】年未満の者は、原則として対象としない。

第4条(本人同意及び同意の撤回) 1. 会社は、対象労働者に対し、本制度の内容、みなし労働時間及び同意しなかった場合の配置転換その他不利益取扱いを行わない旨を書面で説明し、個別に同意を得るものとする。 2. 同意は、別紙「専門業務型裁量労働制の適用に関する同意書」により取得し、労働者ごとに保存する。 3. 対象労働者は、いつでも会社に対し書面により同意を撤回することができる。同意が撤回されたときは、撤回の効力発生日以降、当該労働者に本制度を適用しない。 4. 会社は、同意をしなかったこと又は同意を撤回したことを理由として、当該労働者に対し配置転換その他の不利益な取扱いを行わない。

第5条(みなし労働時間) 対象労働者が対象業務に従事した日は、実際の労働時間数にかかわらず、1日につき【8時間30分】労働したものとみなす。

第6条(業務遂行の裁量) 会社は、対象業務の遂行手段及び時間配分の決定について、対象労働者に具体的な指示を行わない。ただし、対象業務の性質、内容又は遂行状況に関する報告を求めることは妨げられない。

第7条(健康・福祉確保措置) 1. 会社は、対象労働者について、勤務状況を把握する資料に基づき、必要に応じて産業医による面接指導を実施する。 2. 会社は、対象労働者の1か月当たりの深夜労働の回数を【4】回以内に制限するよう努める。 3. 会社は、対象労働者に対し、年次有給休暇についてまとまった日数連続して取得できるよう配慮する。

第8条(苦情処理) 会社は、本制度の適用に関する対象労働者からの苦情を処理するため、【人事部】に苦情処理窓口を設置する。

第9条(休日・深夜労働の取扱い) 1. 本制度はみなし労働時間を定めるものであり、法定休日労働及び深夜労働(午後10時から午前5時まで)に対する割増賃金の支払義務を排除するものではない。 2. 対象労働者が法定休日に労働した場合又は深夜に労働した場合は、別途割増賃金を支払う。

第10条(有効期間) 本協定の有効期間は、【西暦年】年【 】月【 】日から1年間とする。

第11条(届出) 会社は、本協定を様式第13号により、所轄労働基準監督署長に届け出る。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節: 会社側(作成・届出用)

A-1 第4条の修正例 「同意は、会社の指定する社内システムを通じて電磁的に取得し、同意日時及び同意内容を電磁的記録として本協定の有効期間中及びその満了後3年間保存する。」 一言解説: 2024年4月施行の改正省令により本人同意の取得・保存が協定事項化されたため、会社側は同意記録の保存期間・方法を具体的に定め、監督署への説明責任を果たせるようにしておく必要がある。

A-2 第7条の修正例 「会社は、対象労働者の毎月の在社時間等の状況を記録し、当該記録を3年間保存する。在社時間等が1か月当たり100時間を超えた対象労働者については、本人の申出の有無にかかわらず医師による面接指導を実施する。」 一言解説: 会社側としては、みなし労働時間制であっても健康確保のための実労働時間の把握義務(労働安全衛生法第66条の8の3)を負うため、記録保存と面接指導の基準を明確化しておく。

B節: 労働者代表側(確認用)

B-1 第3条の修正例 「対象労働者は、対象業務について自ら業務計画を立案し遂行できると認められる者とし、上長による裁量付与の可否の確認を経て選定する。」 一言解説: 労働者代表としては、名目上は裁量労働制でも実質的に会社の指揮命令下で業務が進められている「名ばかり裁量労働」を防ぐため、選定基準に実質的な裁量の有無の確認を組み込むことが重要である。

B-2 第4条の修正例 「同意を撤回した労働者に対しては、撤回後直近の人事評価において、撤回の事実を評価要素として一切考慮しない。会社は撤回者の一覧を年1回労働者代表に開示する。」 一言解説: 労働者代表としては、不利益取扱い禁止を宣言的に定めるだけでなく、評価への不算入や開示による検証可能性を確保する修正を求めるべきである。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

専門業務型裁量労働制は、研究開発、情報処理システムの分析・設計、新聞・出版の取材編集、デザイナー、公認会計士、弁護士など、労働基準法施行規則第24条の2の2第2項及び関連告示が限定列挙する20業務に該当し、かつ業務の遂行方法が実質的に対象労働者の裁量に委ねられている場合にのみ利用できる制度である。対象業務に該当しない一般事務や、業務の手順・時間配分について会社が日常的に具体的指示を行っている実態がある業務には、名称上「裁量労働」としても適用できず、無理に適用すれば制度の効力そのものが否定される。

根拠法令は労働基準法第38条の3である。対象業務は限定列挙されており、労使協定でこれを拡張することはできない。また、令和6年(2024年)4月1日施行の労働基準法施行規則等の改正により、労使協定の協定事項として、対象労働者本人の同意を得ること及び不同意の場合の不利益取扱いをしないこと、並びに同意の撤回の手続を新たに定めることが義務付けられた。これにより、本制度の適用には従前の労使協定に加え、労働者個人ごとの同意取得が不可欠となっている。届出は様式第13号により所轄労働基準監督署長に対して行う。

実務でよくある失敗の一つ目は、対象業務が限定列挙業務に該当するか十分に検討せず、実質的には裁量のない業務にまで適用してしまうことである。裁判例においても、業務の遂行方法や時間配分に会社の具体的な指揮命令が及んでいた事案では、みなし労働時間制の適用が否定され、実労働時間に基づく割増賃金の支払義務が認められた例がある。第2条・第6条のように対象業務と裁量の内容を具体的に記載し、実態との整合性を確認する必要がある。

二つ目の失敗は、2024年の改正で必須となった本人同意の取得・撤回手続を協定事項として定めず、旧来の協定をそのまま使用し続けることである。第4条のように同意取得の方法、撤回の手続及び不利益取扱い禁止を明記しなければ、改正後の要件を満たさない協定となるおそれがある。

三つ目の失敗は、みなし労働時間制により深夜労働・休日労働の割増賃金支払義務まで免除されると誤解し、深夜勤務が常態化しても割増賃金を支払わないことである。みなし労働時間制は所定労働時間の算定方法を定めるものにすぎず、深夜・休日の割増賃金規制は別途適用されるため、第9条のように明記しておく必要がある。

対象業務該当性の判断や同意取得の実務対応は事業場ごとの実態により異なるため、個別事案については専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 対象業務が労働基準法施行規則第24条の2の2第2項所定の20業務に該当するか確認したか
  • [ ] 業務の遂行方法・時間配分について会社が具体的指示を行わない実態があるか確認したか
  • [ ] みなし労働時間を具体的な時間数で定めたか
  • [ ] 2024年4月施行の改正省令に対応した本人同意取得の手続を協定事項としたか
  • [ ] 同意の撤回手続及び撤回時の不利益取扱い禁止を明記したか
  • [ ] 同意書等の記録の保存方法・保存期間を定めたか
  • [ ] 健康・福祉確保措置の内容を具体的に定めたか
  • [ ] 苦情処理窓口を設置したか
  • [ ] 深夜労働・休日労働に対する割増賃金の支払いを明記したか
  • [ ] 様式第13号による所轄労働基準監督署長への届出を予定しているか