一定期間の最低購入数量を約束する覚書。独占禁止法一般指定第12条の拘束条件付取引に留意しつつ、未達時の精算や民法第415条の債務不履行責任を規定します。

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最低購入数量に関する覚書

第1部: 書式本文

〇〇株式会社(以下「甲」といい、供給者・売主を指す。)と△△株式会社(以下「乙」といい、購入者・買主を指す。)は、甲乙間の【原契約名称】に基づく継続的売買取引に関し、乙の最低購入数量について次のとおり合意する(以下「本覚書」という。)。

第1条(目的) 本覚書は、甲が乙に対し安定的な供給体制を維持することの見返りとして、乙が一定期間内に一定数量以上の対象製品を購入することを約束する条件を定めることを目的とする。

第2条(対象製品) 本覚書における対象製品は、【製品名・型番・仕様】とする(以下「対象製品」という。)。

第3条(最低購入数量) 乙は、【西暦年月日】から【西暦年月日】までの期間(以下「対象期間」という。)において、対象製品を合計【 】単位以上購入するものとする(以下「最低購入数量」という。)。

第4条(算定期間の区切り) 最低購入数量の達成状況は、対象期間を【四半期・半期等】ごとに区切り、各区切り期間の終了後【 】日以内に甲乙間で確認する。

第5条(未達成時の取扱い) 1. 乙が対象期間終了時点で最低購入数量に達しなかった場合、乙は、甲に対し、未達成数量に第【 】条に定める単価を乗じた金額(以下「未達成精算金」という。)を支払う。 2. 前項の未達成精算金は、対象期間終了後【 】日以内に支払うものとする。 3. 天災地変その他乙の責めに帰すことができない事由により購入数量が減少した場合には、甲乙協議の上、未達成精算金の全部又は一部を減免することができる。

第6条(達成時の優遇措置) 乙が最低購入数量を達成した場合、甲は、別紙に定める数量に応じたリベート又は単価優遇措置を乙に付与することができる。

第7条(供給義務との対応関係) 甲は、乙が最低購入数量を遵守することの対価として、対象期間中、対象製品につき乙からの発注に優先的に対応し、安定供給に努めるものとする。

第8条(供給不能時の取扱い) 甲の事情により対象製品を供給できない期間が生じた場合、当該期間に対応する数量は最低購入数量から控除する。

第9条(取引条件の見直し) 市況の著しい変動その他相当の事由が生じた場合、甲乙は、最低購入数量又は対象期間について再協議することができる。

第10条(債務不履行に基づく損害賠償) 甲又は乙が本覚書上の義務に違反し、相手方に損害を与えた場合、違反当事者は、民法第415条の定めるところにより、相手方が被った損害を賠償する責任を負う。ただし、第5条の未達成精算金の支払により填補される損害については、重複して賠償を請求することはできない。

第11条(有効期間) 本覚書は、対象期間の終了をもって効力を失う。ただし、甲乙合意により更新することができる。

第12条(準拠法及び管轄裁判所) 本覚書は日本法に準拠し、本覚書に関する紛争については【 】地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

第13条(協議) 本覚書に定めのない事項については、甲乙誠実に協議の上、解決を図るものとする。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 供給者(売主・甲)向け

供給者側は、未達成時の精算に加え、著しい未達が続く場合の取引見直しまで規定しておくと、単なる金銭精算にとどまらないリスク管理ができます。

第5条第1項の後に次を追加する例: 「4. 乙が2期連続で最低購入数量の70%を下回った場合、甲は、対象期間の残期間について優先供給義務(第7条)を解除することができる。」

一言解説:精算金の支払だけで済ませず、継続的な未達に対しては供給側の義務を軽減できる仕組みを組み込むことで、供給者の在庫・生産計画リスクを抑えられます。ただし、これを一方的な取引拒絶の口実として濫用すると独占禁止法上の評価に影響し得るため、発動要件を客観的な数値で明確にしておくことが重要です。

B. 購入者(買主・乙)向け

購入者側は、最低購入数量が過大な負担にならないよう、需要変動への対応条項や解除条件を厚くしておくことが望ましいです。

第5条第3項を次のように差し替える例: 「3. 乙の事業環境の変化(主要販売先の取引終了、市場需要の急激な縮小等)により購入数量の確保が困難となった場合、乙は甲に対しその旨を通知し、甲乙協議の上、最低購入数量の減額又は未達成精算金の減免について合意することができる。」

一言解説:天災地変に限定せず、事業環境の変化も減免事由に含めることで、購入側の柔軟性を確保します。また、最低購入数量を一方的な条件として押し付けられていないか、市場における甲の地位や乙の取引先変更の自由度も踏まえて交渉することが望まれます。

第3部: 最低購入数量条項の書き方と法的ポイントの解説

使う場面 供給者が安定供給体制(設備投資・在庫確保等)を維持する見返りとして、購入者に一定数量以上の継続購入を約束させたい場合に用います。独占的な供給契約や長期供給契約において、双方の予見可能性を高める目的で利用される書式です。

使ってはいけない場面 購入者が複数の供給元を確保する必要がある業種(調達の分散が事業継続上不可欠な場合)や、購入者の市場における立場が著しく弱く、最低購入数量の設定が実質的に他の供給者との取引を断念させる効果を持つ場合には、独占禁止法上のリスクが高まるため、本書式の採用には慎重な検討が必要です。

根拠法令 最低購入数量条項は、購入者の取引先選択の自由を一定程度制約するものであり、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)第2条第9項第6号及びこれを受けた公正取引委員会の一般指定第12項が定める「拘束条件付取引」に該当し得る点に留意が必要です。具体的には、購入者に対して他の供給者との取引を制限する効果を持つ数量拘束は、市場における甲の地位、対象期間の長さ、乙の取引先変更の自由度等を総合的に考慮し、公正な競争を阻害するおそれがあるかどうかが判断されます。また、未達成時の精算については、民法第415条(債務不履行による損害賠償)の一般原則に基づき、実損害と乖離した過大な違約罰的条項とならないよう注意が必要です(民法第420条の賠償額の予定に関する規律も参照)。個別の取引における拘束条件付取引該当性の判断は、市場シェアや取引依存度によって異なるため、専門家に確認することが望ましい。

実務でよくある失敗 1. 最低購入数量の水準を市場実勢と無関係に高く設定し、購入者の取引先変更の自由を実質的に奪う結果となるケース。第9条のような見直し条項を設け、市況変動時に再協議できるようにすることが対策となります。 2. 未達成精算金を実損害と無関係な高額の違約金として設定し、賠償額の予定として過大と評価されるリスクを抱えるケース。第5条で精算金の算定根拠(単価連動)を明確にすることが対策です。 3. 供給者側の供給不能時の取扱いを定めず、購入者が自らの責によらない未達についてまで精算義務を負わされるケース。第8条で供給不能期間分の控除を明記することで防げます。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 対象製品・対象期間・最低購入数量の数値を具体的に特定したか
  • [ ] 算定期間の区切り(四半期・半期等)と確認方法を定めたか
  • [ ] 未達成時の精算金額の算定根拠(単価連動等)を明確にしたか
  • [ ] 天災地変・事業環境変化等による減免事由を定めたか
  • [ ] 甲の供給不能期間分を最低購入数量から控除する規定を設けたか
  • [ ] 達成時の優遇措置(リベート・単価優遇等)の要否を検討したか
  • [ ] 拘束条件付取引(独占禁止法一般指定第12項)に該当するリスクを、市場における甲の地位を踏まえて確認したか
  • [ ] 未達成精算金が実損害と乖離した過大な違約罰になっていないか確認したか
  • [ ] 有効期間及び更新条件を明記したか
  • [ ] 乙の取引先変更の自由度が不当に制限されていないか検討したか