臨時的な特別の事情により限度時間を超えて時間外労働をさせる場面の手続書式。労働基準法第36条第5項の特別条項で定めた協議手続と健康確保措置の記録に対応。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
36協定特別条項の発動に関する労使合意書
第1部: 書式本文
株式会社〇〇(以下「会社」という。)及び会社に使用される労働者の過半数を代表する〇〇(以下「労働者代表」という。)は、【西暦年】年【 】月【 】日付時間外労働・休日労働に関する協定(以下「本36協定」という。)の特別条項に基づき、限度時間を超える時間外労働をさせる場合の手続について、下記のとおり合意する。
第1条(目的) 本合意書は、労働基準法第36条第5項に基づき本36協定に定めた特別条項について、その発動に係る協議の手続、健康確保措置の実施及び記録の方法を明らかにし、限度時間を超える時間外労働が恣意的に運用されることを防止することを目的とする。
第2条(特別条項発動の要件) 会社は、次の各号のいずれかに該当する臨時的な特別の事情がある場合に限り、特別条項を発動し、本36協定所定の限度時間(月45時間、年360時間)を超えて時間外労働をさせることができる。 一 突発的な設備障害への対応 二 大規模なクレーム対応又はシステム障害対応 三 決算業務の集中 四 その他予見できない業務量の大幅な増加であって、労働者代表と個別に協議して認めた事由
第3条(発動の上限) 特別条項の発動は、1箇月について100時間未満(休日労働を含む。)、2箇月から6箇月までを平均して80時間以内(休日労働を含む。)、かつ年6回を限度とする。会社は、年間の発動回数及び各月の実績時間数を労働者代表に月次で報告する。
第4条(事前協議の手続) 1. 会社は、特別条項を発動しようとするときは、発動を予定する部署、事由、見込み時間数及び期間を記載した書面により、労働者代表に事前の協議を申し入れる。 2. 労働者代表は、申入れを受けた日から【3】労働日以内に、会社と協議の場を設ける。 3. 協議の結果は、協議記録書として書面に残し、会社及び労働者代表双方が記名押印する。 4. 緊急やむを得ない事由により事前協議が困難な場合、会社は事後速やかに(発動日から【3】労働日以内に)協議を行い、事後承認を得るものとする。
第5条(健康確保措置) 会社は、特別条項の発動に伴い月80時間を超える時間外・休日労働を行った労働者に対し、労働基準法施行規則第17条第1項各号に定める措置のうち、次の措置を実施する。 一 医師による面接指導の実施(労働安全衛生法第66条の8又は第66条の8の2に基づくものを含む。) 二 深夜業(22時から翌5時まで)の回数制限 三 終業から始業までの間に【11】時間以上の休息時間(勤務間インターバル)を確保すること 四 代償休日又は特別な休暇の付与
第6条(実施記録) 会社は、前条の健康確保措置の実施状況(面接指導の実施日、対象者、結果の概要等)を記録し、当該記録を作成の日から5年間保存する。
第7条(限度時間内への復帰) 会社は、特別条項を発動した事由が解消したときは、速やかに通常の限度時間の範囲内での運用に復帰するものとし、特別条項の発動を常態化させてはならない。
第8条(労働者への周知) 会社は、特別条項を発動する都度、対象労働者に対し、発動の事由、見込み期間及び第5条の健康確保措置の内容を周知する。
第9条(有効期間) 本合意書の有効期間は、本36協定の有効期間と同一とする。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 会社側(発動申入れ用)
A-1 第4条第4項の申入れ書面例 「緊急対応のため事前協議を経ずに特別条項を発動した場合、会社は発動日、事由及び見込み時間数を記載した報告書を、発動後【 】労働日以内に労働者代表に提出し、事後協議を申し入れる。」 一言解説: 緊急時であっても協議を省略してよいわけではなく、事後の協議手続と記録化を条文上明確にしておくことで、発動の正当性を担保できる。
A-2 第3条の管理表運用例 「会社は、特別条項の発動実績(月別時間数・発動事由・累計回数)を一覧表として作成し、労働者代表がいつでも確認できる状態で保管する。」 一言解説: 年6回の上限管理を怠ると協定違反となるため、発動実績を可視化する管理表を備えることが実務上重要である。
B節: 労働者代表側(協議記録用)
B-1 第4条第3項の協議記録書の記載例 「協議において、労働者代表は、対象部署の業務量削減に向けた恒常的な人員配置の見直しを会社に要請し、会社はこれを次期人員計画において検討する旨回答した。」 一言解説: 協議記録は単なる形式的な承認の証拠ではなく、特別条項の常態化を防ぐための実質的なやり取りを残す機能を持たせるべきである。
B-2 第5条の確認事項 「労働者代表は、面接指導の対象となった労働者について、実際に面接が実施されたことを、会社から提供される実施記録により定期的に確認する。」 一言解説: 健康確保措置を協定上定めるだけでなく、実施の有無を労働者代表がチェックする仕組みを設けることで、形骸化を防止する。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、既に特別条項付き36協定を締結している事業場において、実際に限度時間を超える時間外労働をさせる必要が生じた際の発動手続を定める場面で用いる。特別条項自体を新規に設ける場合は、本36協定そのものの様式(協定書本体)を別途整備する必要があり、本合意書はあくまで発動時の運用ルールを定めるものである点に留意する。
根拠法令は労働基準法第36条第5項及び第6項並びに労働基準法施行規則第17条である。第36条第5項は、特別条項により延長できる時間外労働時間について、1箇月100時間未満(休日労働を含む)、1年720時間以内とすることを定め、第6項は、単月100時間未満、複数月平均80時間以内(いずれも休日労働を含む)の上限を罰則付きで規定する。また、特別条項を設ける協定においては、限度時間を超えることができる回数を年6回以内と定めなければならず、限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置を協定に定め、実施することが求められる(労働基準法施行規則第17条第1項)。
実務でよくある失敗の一つ目は、特別条項の発動について労使間の協議を行わず、会社が一方的に発動を決定し、事後に形式的な報告のみで済ませてしまうことである。協定上「協議」を要件としているにもかかわらず実質的な協議の記録が残っていない場合、特別条項の発動要件を欠くとの指摘を受けるおそれがある。
二つ目の失敗は、年間の発動回数を管理せず、気づかないうちに年6回の上限を超えて特別条項を発動してしまうことである。上限を超える発動は協定の範囲を逸脱した時間外労働として、労働基準法第32条違反の問題を生じさせる。
三つ目の失敗は、協定上は健康確保措置(面接指導、勤務間インターバル等)を定めているにもかかわらず、実際には実施記録が存在せず、措置が形骸化していることである。労働基準監督署の調査等において、協定の記載と実態の乖離が指摘される典型例であり、第6条のような記録保存条項を設け、実施の証跡を残すことが重要である。
特別条項の発動要件への該当性や健康確保措置の適切な選択は、業種や業務実態によって判断が分かれるため、具体的な運用にあたっては社会保険労務士又は弁護士等の専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 特別条項を発動できる事由を臨時的・特別なものに限定して列挙したか
- [ ] 単月100時間未満・複数月平均80時間以内の上限を条文上明記したか
- [ ] 特別条項の発動を年6回以内に制限し、実績を管理する仕組みを設けたか
- [ ] 発動前の協議手続(申入れ・協議期限・記録化)を具体的に定めたか
- [ ] 緊急時の事後協議の手続を別途定めたか
- [ ] 労働基準法施行規則第17条第1項の健康確保措置を具体的に選択して記載したか
- [ ] 面接指導等の実施記録を作成・保存する体制を整えたか
- [ ] 対象労働者への周知方法を定めたか
- [ ] 特別条項の発動を常態化させない旨の条項を設けたか
- [ ] 本合意書の有効期間を本36協定の有効期間と整合させたか