アプリへ組み込むSDKの利用条件を定める契約書。著作権法第21条・第27条に基づく許諾範囲、リバースエンジニアリングの禁止、同梱OSSの扱いを規定。

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SDK利用許諾契約書

第1部: 書式本文

〇〇〇〇(以下「甲」という。SDK提供者)と〇〇〇〇(以下「乙」という。組込み開発者)とは、甲が提供するソフトウェア開発キット(以下「本SDK」という。)を乙が自己のアプリケーションに組み込んで利用することについて、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(定義) 本契約において、「対象アプリケーション」とは乙が本SDKを組み込んで開発するアプリケーションを、「同梱OSS」とは本SDKに含まれるオープンソースソフトウェアをいう。

第2条(許諾の内容) 甲は乙に対し、著作権法第21条(複製権)及び第27条(翻案権)に定める権利のうち本SDKを対象アプリケーションに組み込み複製する範囲について、非独占的な利用を許諾する。本許諾は本SDKにかかる著作権の譲渡を意味しない。

第3条(利用範囲の制限) 1. 乙は、本SDKを対象アプリケーションへの組込み以外の目的で使用してはならない。 2. 乙は、本SDKを単体で第三者に再配布し、又は本SDKの機能を切り出して別製品として販売してはならない。 3. 乙は、本SDKを別紙に定めるプラットフォーム(OS及びそのバージョン)以外の環境で動作させてはならない。

第4条(リバースエンジニアリングの禁止) 乙は、法令により明示的に許容される場合を除き、本SDKのリバースエンジニアリング、逆コンパイル又は逆アセンブルを行ってはならない。

第5条(同梱OSSの取扱い) 1. 本SDKには別紙記載の同梱OSSが含まれる場合がある。乙は、同梱OSSの利用にあたり、各同梱OSSのライセンス条項(別紙添付)を遵守しなければならない。 2. 同梱OSSがコピーレフト型ライセンス(GPL等)の対象である場合、当該部分の取扱いについては別紙の指示に従うものとし、甲は当該指示と齟齬のない範囲でのみ本SDKの利用を許諾する。

第6条(バージョンアップ及びサポート) 1. 甲は、本SDKのアップデート版を随時提供することができる。 2. 甲は、別紙に定める旧バージョンについてのサポート期間の経過後、当該バージョンに関する不具合修正及びセキュリティパッチの提供を終了することができる。

第7条(対価) 乙は、本SDKの利用許諾の対価として、別紙に定める金額(ライセンス料又は対象アプリケーションの配信数に応じたロイヤリティ)を甲に支払う。

第8条(クレジット表記) 乙は、対象アプリケーションのライセンス表示画面又はこれに準ずる箇所に、別紙に定める方法により本SDKに関するクレジットを表示しなければならない。

第9条(表明保証及び知的財産権非侵害) 甲は、本SDKが第三者の知的財産権を侵害するものではないことを表明し保証する。ただし、乙が本SDKを改変した場合又は本利用範囲を超えて使用した場合に生じた第三者との紛争については、甲はその責任を負わない。

第10条(秘密保持) 乙は、本SDKに含まれるアルゴリズム、設計情報その他甲が秘密である旨を示して開示した情報を、甲の事前の書面による承諾なく第三者に開示してはならない。

第11条(契約不適合責任及び免責) 甲は、本SDKが特定の目的に適合すること又は誤りのないことを保証しない。甲の責任は、甲の故意又は重過失による場合を除き、乙が甲に支払った直近1年間のライセンス料の総額を上限とする。

第12条(監査) 甲は、乙が本契約の利用範囲を遵守しているかを確認するため、事前通知のうえ乙の開発環境又は対象アプリケーションの構成につき合理的な範囲で確認を求めることができる。

第13条(契約期間及び終了) 1. 本契約の有効期間は〇年間とし、期間満了の1か月前までに双方から異議がない場合、同一条件で1年間自動更新される。 2. 契約終了後、乙は既に配信済みの対象アプリケーションについて、別紙に定める在庫一掃期間内に限り配信を継続することができる。

第14条(反社会的勢力の排除) 甲及び乙は、自己が暴力団その他反社会的勢力に該当せず、これらと関係を有しないことを表明し、保証する。

第15条(合意管轄) 本契約に関する紛争については、〇〇地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 提供者向けの修正

A-1. 利用範囲違反時の即時解除権の明確化

修正後:「乙が第3条又は第4条に違反した場合、甲は催告を要せず本契約を解除し、対象アプリケーションでの本SDKの利用停止を求めることができる。」 一言解説: リバースエンジニアリングや目的外利用は提供者の技術的優位性を損なう重大な違反であるため、即時解除権を明記する修正である。

A-2. アップデート強制条項の追加

追加条文例:「甲がセキュリティ上重大な不具合を修正したアップデート版を提供した場合、乙は提供後60日以内に対象アプリケーションを当該アップデート版に対応させなければならない。」 一言解説: 脆弱性の残る旧バージョンが市場に流通し続けることによる提供者側のレピュテーションリスクを避けるための修正である。

B. 組込み開発者向けの修正

B-1. サポート終了時の事前告知期間の確保

修正後:「甲は、特定バージョンのサポートを終了する場合、終了の180日前までに乙へ通知する。」 一言解説: サポート終了は対象アプリケーションの改修工数に直結するため、開発者側は十分な移行期間を確保することを求める。

B-2. 監査権の行使方法の限定

修正後:「第12条の監査は、年1回を上限とし、乙の通常業務に支障のない方法で実施するものとする。監査により生じた費用は甲の負担とする。」 一言解説: 提供者による監査権の濫用を防ぎ、開発者の事業運営への影響を最小限にとどめる修正である。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、地図表示、決済、広告配信、プッシュ通知等の機能を自社アプリに組み込むためにSDK(ソフトウェア開発キット)の提供を受ける場面で用いる。他方、SDKの提供にとどまらず、提供者側が対象アプリケーションの開発そのものを受託する場合には、開発委託契約書を別途締結すべきであり、本書式のみでは足りない。

根拠法令 本契約の中核は著作権法第21条(複製権)及び第27条(翻案権)に基づく利用許諾の範囲設定である。SDKはプログラムの著作物(著作権法第10条第1項第9号)として保護され、これを対象アプリケーションに組み込む行為は複製又は翻案に該当しうるため、許諾範囲を明確にする必要がある。リバースエンジニアリング等の禁止は、著作権法上プログラムの著作物の利用に必要な範囲での複製等が一定の条件下で認められる場合がある一方(同法第47条の3等)、契約上より広く制限することも可能であり、本書式は契約による制限を定めている。同梱OSSについては、GPL等のコピーレフト型ライセンスが「派生物」に対してソースコード開示義務等を課す場合があり、SDKと組み合わせるアプリケーションの構成次第ではこの義務がアプリケーション全体に及ぶリスクがあるため、ライセンス文言の確認が必須である。

実務でよくある失敗と対策 第一に、SDKに同梱されたOSSのライセンス条件を十分に確認せず組み込んだ結果、対象アプリケーション全体についてソースコード開示義務が及ぶ可能性が生じる失敗がある。第5条のように同梱OSSのライセンスを個別に確認し、コピーレフト型の場合は法務部門による事前審査を経る運用を組み合わせることが対策となる。第二に、SDKのサポート終了(EOL)が予告なく行われ、対象アプリケーションが動作不良を起こす失敗がある。B-1のような事前告知期間の確保が対策となる。第三に、対象アプリケーションを他社に譲渡又はOEM提供する際、SDKの利用許諾が非独占かつ乙限りのものであることを見落とし、譲渡先への許諾が及んでいないことが後日判明する失敗がある。契約譲渡条項の要否を事前に検討し、必要な場合は甲の承諾を得る手続を契約に盛り込むべきである。

同梱OSSのライセンス解釈やリバースエンジニアリング禁止条項の有効性の限界については、個別事案は専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 許諾範囲(組込み目的限定か、再配布不可か)を明記したか
  • [ ] リバースエンジニアリング禁止条項の適用範囲を確認したか
  • [ ] 同梱OSSの一覧とライセンス条項を別紙で確認したか
  • [ ] コピーレフト型ライセンスが対象アプリケーション全体に及ぶリスクを検討したか
  • [ ] バージョンごとのサポート期間及び終了時の告知期間を定めたか
  • [ ] 対価の算定方式(定額か配信数に応じたロイヤリティか)を明確にしたか
  • [ ] クレジット表記の方法及び表示箇所を具体的に定めたか
  • [ ] 監査権の行使頻度・費用負担を確認したか
  • [ ] 契約終了後の在庫アプリケーション(既配信分)の扱いを定めたか
  • [ ] 対象アプリケーションの譲渡時における許諾の承継可否を確認したか