セット内容
- 制作委託契約書(デザイン・Web・動画向け)2バージョン(発注側/受注側)Word形式
- 著作権譲渡・著作者人格権不行使特約の解説
- 修正回数・追加費用の取り決め例
こんな場面で
ロゴ・Webサイト・動画などの制作物をデザイナー・制作会社・フリーランスへ発注する場面。
特長
- 納品物の著作権譲渡範囲・著作者人格権不行使特約を標準装備
- 修正対応の回数・範囲・追加費用発生条件をあらかじめ規定
- デザイン制作物 著作権譲渡契約書(design-chosakuken-jouto)と組み合わせて権利関係を補強可能
制作委託契約書(デザイン・Web・動画)(監修用ドラフト)
⚠ 本ファイルは弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布を禁止する。
商品ID: seisaku-itaku-keiyaku / 価格: 2,980円 / 立場バージョン: 発注側・受注側(クリエイター)
本ドラフトは第2部で2バージョンの差分を提示する構成とし、第1部には標準版(発注側・受注側のバランスを取った基準条文)を掲載する。
第1部: 契約書本文(標準版)
制作委託契約書
〇〇〇〇(以下「甲」という。)と〇〇〇〇(以下「乙」という。)とは、甲が乙に対し委託する別紙記載の制作物の制作業務について、以下のとおり制作委託契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(目的)
本契約は、甲が乙に対し、ロゴ、Webサイト、動画その他別紙に定める制作物(以下「本制作物」という。)の制作を委託し、乙がこれを受託することに関し、甲乙間の権利義務関係を定めることを目的とする。
第2条(委託業務の内容)
- 乙は、甲に対し、別紙記載の仕様及び納期に従い、本制作物を制作し、これを甲に納品する。
- 本制作物の具体的な仕様、デザインの方向性、使用ソフトウェア、納品形式及び納品物の構成(データ形式、解像度、ファイル数等)については、別紙又は甲乙間で別途合意する仕様書(以下「仕様書」という。)に定めるものとする。
- 仕様書の内容を変更する場合、甲乙協議のうえ、書面(電磁的方法を含む。以下同じ。)により変更内容を確認するものとする。
第3条(納期及び納品方法)
- 乙は、別紙に定める納期までに、本制作物を甲に納品するものとする。
- 納品は、電子データの送付、オンラインストレージへのアップロードその他甲乙間で合意した方法により行うものとする。
- 乙の責めに帰すべき事由により納期に遅延するおそれが生じた場合、乙は速やかに甲に通知し、対応方針について協議するものとする。
第4条(委託料及び支払方法)
- 甲は、乙に対し、本制作物の制作の対価として、別紙に定める委託料を支払う。
- 甲は、乙から適法な請求書の発行を受けた月の翌月末日までに、委託料を乙が指定する銀行口座に振り込む方法により支払う。振込手数料は甲の負担とする。
- 甲乙間で着手金、中間金等の分割払いを合意した場合は、その支払時期及び金額を別紙に定めるものとする。
第5条(検収)
- 乙は、本制作物の納品後、甲に対しその旨を通知する。
- 甲は、納品を受けた日から〇営業日以内(以下「検収期間」という。)に、本制作物が仕様書の内容に適合しているかを検査し、合格又は不合格を乙に通知するものとする。
- 検収期間内に甲から乙に対し不合格の通知がない場合、当該検収期間の満了をもって検収に合格したものとみなす。
- 甲は、検収の結果、本制作物が仕様書の内容に適合しないと判断した場合、その具体的な不適合の内容を明示して乙に通知し、修正を求めることができる。
第6条(修正対応)
- 乙は、検収の結果、仕様書の内容に適合しないことが判明した箇所について、無償で修正を行う。
- 前項に定める修正のほか、甲の都合による修正(デザインの方向性の変更、内容の追加、構成の変更等、仕様書の範囲を超える修正をいう。以下「追加修正」という。)については、別紙に定める無償修正回数(以下「無償修正回数」という。)の範囲内で対応する。
- 無償修正回数を超える追加修正、又は仕様書の範囲を著しく超える修正を甲が求める場合、乙は、当該追加修正に要する追加費用の見積りを甲に提示し、甲乙協議のうえ、当該追加費用の負担及び納期の調整について合意した後に着手するものとする。
- 甲からの修正依頼は、原則として具体的な修正内容を明示した書面により行うものとする。
第7条(契約不適合責任)
- 検収合格後に本制作物が種類又は品質に関して仕様書の内容に適合しないこと(以下「契約不適合」という。)が判明した場合、甲は、乙に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、当該請求に付随して乙に不相当な負担を課すものであるときは、乙は、甲に不相当な負担を課すものでない方法による履行の追完をすることができる。
- 前項の履行の追完の催告をしたにもかかわらず、相当の期間内に履行の追完がないときは、甲は、その不適合の程度に応じて委託料の減額を請求することができる。ただし、民法第563条第2項各号に該当する場合は、甲は催告をすることなく直ちに委託料の減額を請求することができる。
- 甲は、契約不適合により損害を被ったときは、乙に対し、前2項の請求と併せて、又はこれらの請求に代えて、損害賠償を請求することができる。ただし、乙の責めに帰することができない事由による場合は、この限りでない。
- 甲は、契約不適合が乙の責めに帰すべき事由により生じた重大なものであるときは、本契約の解除をすることができる。
- 前各項の権利は、甲が契約不適合を知った時から1年以内にその旨を乙に通知しないときは、行使することができない。ただし、乙が納品の時に契約不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。
第8条(著作権の帰属及び譲渡)
- 本制作物に関する著作権(著作権法第27条及び第28条に定める権利を含む。以下同じ。)は、甲が乙に対し委託料の全額を支払った時点をもって、乙から甲に移転する。
- 前項の規定にかかわらず、乙が本制作物の制作以前から保有していた著作物(乙又は第三者が権利を有するフォント、素材、テンプレート、ライブラリ、汎用的な技術・ノウハウ等をいう。以下「乙保有著作物」という。)の著作権は、乙又は当該第三者に留保されるものとする。
- 乙保有著作物が本制作物に組み込まれている場合、乙は、甲に対し、本制作物の利用に必要な範囲で乙保有著作物を利用する権利を許諾する。当該許諾の範囲は別紙に定めるものとする。
- 本制作物の制作過程で生じた企画案、ラフ案、未採用のデザイン案その他の中間成果物に関する権利の帰属については、別紙に特段の定めがない限り、乙に留保されるものとする。
第9条(著作者人格権の不行使)
乙は、甲又は甲から本制作物に関する権利を承継し、若しくは本制作物の利用の許諾を受けた第三者に対し、本制作物について著作者人格権(公表権、氏名表示権及び同一性保持権をいう。)を行使しないものとする。
第10条(第三者の権利侵害がないことの保証)
- 乙は、甲に対し、本制作物が第三者の著作権、商標権、意匠権その他の知的財産権及びパブリシティ権、肖像権その他の権利を侵害するものでないことを保証する。
- 本制作物が第三者の権利を侵害し、又は侵害するおそれがあるとして第三者からクレーム若しくは請求を受けた場合、乙は、自己の費用と責任においてこれに対応するものとし、当該対応により甲に生じた損害を賠償する。ただし、当該侵害が甲の指示に起因する場合は、この限りでない。
- 甲は、前項のクレーム又は請求を受けたときは、速やかに乙に通知するものとする。
第11条(再委託)
- 乙は、本制作物の制作業務の全部又は一部を第三者に再委託する場合、事前に甲の書面による承諾を得るものとする。ただし、乙が通常利用する外部の印刷、レンダリング、翻訳その他の補助的な業務については、事前の個別承諾を要しないものとする。
- 乙は、再委託先に対し、本契約に基づき乙が負う秘密保持義務及び著作権譲渡義務その他本契約上の義務と同等の義務を課すものとし、再委託先の行為について甲に対し責任を負う。
第12条(秘密保持)
- 甲及び乙は、本契約の履行に関連して相手方から開示された技術上・営業上の秘密情報を、相手方の事前の書面による承諾を得ることなく第三者に開示又は漏えいしてはならず、本契約の履行の目的以外に使用してはならない。
- 前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する情報については適用しない。 (1)開示を受けたときに既に公知であった情報 (2)開示を受けた後、自己の責めに帰さない事由により公知となった情報 (3)開示を受けたときに既に自己が保有していた情報 (4)正当な権限を有する第三者から秘密保持義務を負うことなく適法に取得した情報
- 本条の規定は、本契約が終了した場合においても、3年間有効に存続する。
第13条(ポートフォリオへの掲載)
乙は、甲の事前の書面による承諾を得た場合に限り、本制作物を自己の実績紹介(ポートフォリオサイト、SNS、営業資料等)に掲載することができる。承諾の可否及び条件(掲載時期、掲載範囲、クライアント名の表示可否等)は別紙に定めるものとする。
第14条(反社会的勢力の排除)
- 甲及び乙は、それぞれ相手方に対し、自己(自己の役員を含む。)が、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロ又は特殊知能暴力集団その他これらに準ずる者(以下「反社会的勢力」と総称する。)に該当しないこと、及び次の各号のいずれにも該当しないことを表明し、保証する。 (1)反社会的勢力が経営を支配していると認められる関係を有すること (2)反社会的勢力が経営に実質的に関与していると認められる関係を有すること (3)自己若しくは第三者の不正の利益を図る目的又は第三者に損害を加える目的をもってするなど、不当に反社会的勢力を利用していると認められる関係を有すること (4)反社会的勢力に対して資金等を提供し、又は便宜を供与するなどの関与をしていると認められる関係を有すること (5)自己の役員又は経営に実質的に関与している者が反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有すること
- 甲及び乙は、自ら又は第三者を利用して、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求行為、取引に関して脅迫的な言動をし若しくは暴力を用いる行為、風説の流布・偽計・威力による信用毀損又は業務妨害行為その他これらに準ずる行為を行わないことを表明し、保証する。
- 甲又は乙が前2項の表明保証に違反した場合、相手方は、何らの催告を要せず本契約を解除することができる。この場合、解除した当事者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負わない。
第15条(解除)
- 甲又は乙は、相手方が次の各号のいずれかに該当した場合、何らの催告を要せず、本契約の全部又は一部を解除することができる。 (1)本契約の条項に違反し、相手方から相当の期間を定めた是正の催告を受けたにもかかわらず、当該期間内に是正されないとき (2)支払停止若しくは支払不能の状態に陥ったとき、又は手形若しくは小切手が不渡りとなったとき (3)差押え、仮差押え、仮処分、強制執行又は競売の申立てを受けたとき (4)破産手続、民事再生手続、会社更生手続その他の倒産手続の申立てを自ら行い、又は第三者から受けたとき (5)前条の表明保証に違反したとき
- 甲は、乙の制作着手前であれば、乙に対し既に発生した実費及び相当の補償を支払うことにより、本契約を任意に解除することができる。
第16条(損害賠償)
- 甲又は乙が本契約に違反し、相手方に損害を与えた場合、当該違反当事者は、相手方に生じた通常かつ直接の損害を賠償する責めを負う。
- 前項の損害賠償額は、乙の責めに帰すべき事由による場合、本契約に基づき甲が乙に支払った委託料の総額を上限とする。ただし、乙の故意又は重過失による場合はこの限りでない。
第17条(存続条項)
第7条、第8条から第10条まで、第12条、第13条、第14条第3項、第16条及び本条から第20条までの規定は、本契約が終了した場合においても、なお効力を有する。
第18条(権利義務の譲渡禁止)
甲及び乙は、相手方の事前の書面による承諾を得ることなく、本契約上の地位並びに本契約に基づく権利及び義務を第三者に譲渡し、承継させ、又は担保に供してはならない。
第19条(協議事項)
本契約に定めのない事項又は本契約の解釈に疑義が生じた事項については、甲乙誠意をもって協議のうえ解決するものとする。
第20条(合意管轄)
本契約に関する紛争については、〇〇地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
以上、本契約締結の証として本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ、各自1通を保有する。
〇〇〇〇年〇〇月〇〇日
(甲)住所 商号又は名称 代表者名 印
(乙)住所 商号又は名称 代表者名 印
第2部: 立場別修正パターン
商品には「発注側有利」「受注側(クリエイター)有利」の2バージョンを収録する。第1部は両者のバランスを取った標準版であり、以下は各バージョンを作成する際の差分(代替条文)である。
A. 発注側有利バージョンへの変更
A-1. 第6条(修正対応)の無償修正回数を拡大し、追加修正の該当範囲を限定
修正後: 「無償修正回数」を「無制限(ただし、検収期間から起算して〇か月以内に限る)」とし、追加修正費用が発生する場面を「仕様書に明記のない全く新規の企画提案を要する場合」に限定する。
解説: 修正回数の上限を事実上撤廃する条項であり、受注側の作業負担が増大しやすい。受注側からは、稼働時間に見合わない修正が際限なく発生するリスクが指摘される条項であるため、実務上は乙側との交渉により歯止めとなる期間制限や工数上限を残す例が多いと考えられる。
A-2. 第8条(著作権の帰属及び譲渡)の移転時期を前倒し
修正後: 「本制作物に関する著作権は、本制作物の納品時点をもって、乙から甲に移転する。」(委託料の支払完了を待たずに納品時点で移転させる。)
解説: 委託料未払いのまま著作権が移転する構成であり、受注側にとっては代金回収前に権利を失うリスクが生じる。発注側の事業計画上、納品後速やかに著作物を利用開始したい事情がある場合に採用されることがあるが、受注側の代金回収リスクとのバランスを要する条項と考えられる。
A-3. 第13条(ポートフォリオへの掲載)を原則禁止に変更
修正後: 「乙は、甲の書面による個別の承諾がある場合を除き、本制作物及びその制作過程で生じた一切の中間成果物を、自己の実績紹介その他いかなる目的にも使用してはならない。」
解説: 発注側の秘密保持・ブランド管理の観点から掲載を原則禁止とする条項。受注側にとっては実績公開による営業機会の喪失につながるため、代替措置(守秘義務が解除された後の掲載許可、匿名化した掲載の許可等)を交渉事項として残すことが望ましいと考えられる。
A-4. 第16条(損害賠償)の上限を撤廃又は拡大
追加条文例: 「前項の規定にかかわらず、乙が第10条の保証に違反した場合の損害賠償責任には、前項の上限を適用しない。」
解説: 権利侵害保証違反の場合に賠償上限を外す条項。発注側にとっては権利侵害リスクへの手当てとして合理性があるが、受注側にとっては無制限責任を負うリスクとなるため、故意・重過失要件の付加や、賠償範囲を直接損害に限定する等の調整が交渉上の論点になると考えられる。
A-5. 第7条(契約不適合責任)の通知期間を長期化
修正後: 「甲が契約不適合を知った時から1年以内」を「2年以内」に延長する。
解説: 契約不適合責任の追及期間を延ばすことで発注側の保護を厚くする条項。受注側にとっては責任を負う期間が長期化するため、業務記録・素材データの保管期間もあわせて延長する必要が生じる点に留意が必要と考えられる。
B. 受注側(クリエイター)有利バージョンへの変更
B-1. 第6条(修正対応)に工数上限と追加修正の起算点を明記
修正後: 「無償修正回数は各成果物につき2回までとし、3回目以降の修正依頼は、内容の軽重にかかわらず追加修正として扱う。また、検収合格後に行う修正は、その内容の如何を問わずすべて追加修正として扱う。」
解説: 検収合格後の修正を一律に有償化することで、際限のない手直し対応を防ぐ条項。発注側からは検収後の軽微な修正まで有償となる点に抵抗が予想されるため、「軽微な誤字脱字の修正等は無償」等の例外を残す折衷案も考えられる。
B-2. 第8条(著作権の帰属及び譲渡)の移転範囲を限定し、著作権法27条・28条の権利を留保
修正後: 「本制作物に関する著作権のうち、本制作物の利用に必要な範囲の権利(複製権、公衆送信権等)は、委託料の全額の支払いを条件として乙から甲に移転する。ただし、著作権法第27条(翻案権等)及び第28条(二次的著作物の利用に関する権利)に定める権利は、乙に留保するものとし、甲が本制作物を改変し、又は本制作物を基に二次的著作物を制作しようとする場合、乙の事前の承諾を要する。」
解説: 標準版・発注側有利版が著作権法27条・28条を含む全面譲渡であるのに対し、本パターンは翻案権等を受注側に留保する点が最大の相違点である。受注側の今後の改変対応(追加収益機会)を確保できる一方、発注側にとっては自社での改変・二次利用のたびに許諾が必要となり利便性が下がるため、実務上採用可否が分かれやすい条項と考えられる。
B-3. 第9条(著作者人格権の不行使)に例外を追加
修正後: 「乙は、前項の規定にかかわらず、本制作物が乙の名誉又は声望を害する態様で改変され、又は利用される場合、その是正を甲に求めることができる。」
解説: 著作者人格権の不行使特約は実務上広く用いられるが、改変の態様によっては受注側の名誉・信用に関わる場合があるため、一定の歯止めを設ける例も見られる。もっとも、不行使特約に例外を付すこと自体が交渉上の対立点になりやすく、発注側からは改変の自由度を狭める修正として抵抗を受ける可能性があると考えられる。
B-4. 第13条(ポートフォリオへの掲載)を原則許諾に変更
修正後: 「乙は、本制作物を自己の実績紹介に掲載することができる。ただし、甲から書面による中止の申し入れがあったときは、乙は速やかにこれに応じるものとする。」
解説: 掲載を原則自由としつつ発注側に事後的な中止請求権を残す構成であり、受注側の営業活動と発注側の秘密保持・ブランド管理の要請の調整案の一つと考えられる。競合他社案件や未公表の新製品に関する制作物の場合は、発注側から掲載時期の制限(公表後〇か月経過後等)を求められることが多いと考えられる。
B-5. 第16条(損害賠償)の上限をより低額に設定し、逸失利益を除外
修正後: 「前項の損害賠償額は、直接かつ現実に生じた通常損害に限るものとし、逸失利益、間接損害及び特別損害を含まないものとする。また、その累計額は、本契約に基づき甲が乙に支払った委託料の総額を上限とする。」
解説: 賠償範囲を直接損害・通常損害に絞り、逸失利益等を明示的に除外する条項。小規模なフリーランス・制作会社にとっては、発注側の事業損失(機会損失等)まで賠償対象になると事業継続に影響するリスクがあるため、実務上重視される条項の一つと考えられる。
第3部: 逐条解説(購入者向け)
第1条・第2条(目的・委託業務の内容) 制作委託契約は請負型(成果物の完成を目的とする類型)で構成するのが一般的である。仕様書の内容が曖昧なままだと、後の検収や修正対応の場面で「当初の依頼内容に含まれるか否か」の争いが生じやすいため、別紙の仕様書はできる限り具体的に作成することが望ましいと考えられる。
第3条(納期及び納品方法) 納品方法をあらかじめ具体的に定めておくことで、納品の有無・時期に関する認識の齟齬を避けやすくなる。オンラインストレージ経由の納品の場合、データの保存期間・アクセス権限の失効時期についても別途取り決めておくことが望ましい。
第4条(委託料及び支払方法) 分割払い(着手金・中間金・完成時金等)を採用する場合、各支払時期と金額を別紙に明記する必要がある。着手金を受領する場合、契約が中途解除された際の着手金の取扱い(返還の要否)もあわせて定めておくと紛争予防に資すると考えられる。
第5条(検収) 検収期間内に意思表示がない場合に合格とみなす「みなし合格」条項は、受注側の代金回収を早める効果がある一方、発注側にとっては十分な検査時間の確保が課題となる。検収期間の日数(本文では空欄)は、制作物の分量・複雑性に応じて業界慣行を踏まえた調整が必要と考えられる。
第6条(修正対応) 本契約類型で最も紛争が生じやすい条項の一つである。「無償修正回数」の設定に加え、どこからが「仕様書の範囲を超える追加修正」に当たるかの判断基準(企画変更、構成変更、テイストの変更等)を可能な限り具体的に例示しておくことが望ましい。第2部にあるとおり、発注側・受注側いずれの立場を重視するかで条文の設計が大きく変わる部分である。
第7条(契約不適合責任) 2020年施行の民法(債権法)改正により、従来の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に整理された。追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・解除の各要件が条文上明確化されている点を踏まえ、本条もこれに対応した構成としている。通知期間(本文では「知った時から1年以内」)は民法第637条の請負契約における契約不適合の通知期間の原則と整合させているが、業務内容によっては商法上の検査通知義務(商人間取引の場合)との関係も確認が必要と考えられる。
第8条(著作権の帰属及び譲渡) 著作権の譲渡契約においては、著作権法第61条第2項により、譲渡契約に27条(翻案権等)・28条(二次的著作物の利用権)の権利を譲渡する旨の明記がない場合、これらの権利は譲渡人(本契約では乙)に留保されると推定される。本文第8条第1項では「第27条及び第28条に定める権利を含む」旨を明記することで、この推定を覆し、全面的な譲渡であることを明確化している。第2部Bのように27条・28条の権利をあえて留保する設計も実務上存在するため、購入者の事業内容に応じた選択が必要な条項である。
第9条(著作者人格権の不行使特約) 著作者人格権(公表権・氏名表示権・同一性保持権)は著作者の一身専属的な権利であり、著作権とは異なり譲渡することができない(著作権法第59条)。そのため、実務上は著作権の譲渡とあわせて「著作者人格権を行使しない」旨の特約(不行使特約)を定めることで、発注側が本制作物を自由に改変・利用できる状態を確保するのが一般的である。もっとも、不行使特約の有効性やその射程については学説上議論があり、著しく信義則に反する態様での改変にまで及ぶかは解釈の余地が残ると考えられる。
第10条(第三者の権利侵害がないことの保証) 制作物にフォント・画像素材・音源等の第三者素材を利用する場面が多いため、受注側の保証範囲と、素材のライセンス条件の遵守状況について、契約締結時に確認しておくことが望ましい。発注側の指示(特定のロゴ・画像の使用指示等)に起因する権利侵害についてまで受注側が責任を負うのは酷であるため、本文第2項では免責の例外を設けている。
第11条(再委託) 制作業務では、印刷、レンダリング、翻訳、ナレーション録音等、性質上第三者に依頼せざるを得ない工程が含まれることが多い。全面的な承諾制にすると実務が回りにくくなるため、補助的業務については包括的に許容し、主要な制作工程の再委託についてのみ個別承諾を要求する設計が実務上採用されやすいと考えられる。
第12条(秘密保持) 制作委託では、発注側の未公表の新製品情報、ブランド戦略等の機密情報が開示される場面が多い。存続期間(本文では3年間)は情報の性質に応じて調整すべき事項であり、NDAを別途締結している場合はそちらとの優先関係も確認する必要がある。
第13条(ポートフォリオへの掲載) クリエイター側の営業活動上、実績紹介は重要な意味を持つ一方、発注側にとっては未公表案件の情報管理上のリスクとなる。第2部にあるとおり、原則禁止・原則許諾のいずれを基本形とするかで大きく条文が変わるため、購入者の業種・案件の性質(公開前提の制作物か、機密性の高い制作物か)に応じた選択が必要と考えられる。
第14条(反社会的勢力の排除) 現在の契約実務でほぼ必須とされる条項であり、フリーランスへの委託であっても同様の表明保証を取得しておくことが望ましいと考えられる。
第15条(解除) 第2項は、発注側の都合による契約の中途解除(任意解除)を認める条項であり、請負契約における民法第641条(注文者による契約の解除)の趣旨を踏まえたものである。受注側にとっては、既発生の実費に加え、逸失利益相当の補償(相当の補償)が確保される設計になっているかを確認することが重要と考えられる。
第16条(損害賠償) 賠償額の上限設定(cap)の要否・水準は、発注側・受注側いずれの立場かによって重視するポイントが異なる交渉事項である。中小のクリエイター・制作会社が受注者となる場合、委託料を大きく超える賠償リスクを負うと事業継続に支障が生じうるため、上限設定を求める実務上のニーズが高いと考えられる。
第17条(存続条項) 契約終了後も効力を残すべき条項(著作権譲渡、著作者人格権不行使、秘密保持、契約不適合責任等)を漏れなく列挙する必要がある。特に著作権譲渡(第8条)は契約終了後も効力を維持すべき性質の条項であるため、列挙漏れがないよう注意が必要である。
第18条〜第20条(譲渡禁止・協議・合意管轄) NDA等の他の類型と同様、事業譲渡・M&A等の組織再編を見据える場合は譲渡禁止の例外規定の要否を検討する余地がある。合意管轄は当事者の所在地によって交渉になりやすい実務上の論点である。
第4部: 監修者への確認依頼事項
- 第8条の著作権譲渡について、著作権法第61条第2項の推定規定との関係で「第27条及び第28条に定める権利を含む」という表現が譲渡範囲を明確化する文言として十分か、より明確な代替表現があれば確認いただきたい。
- 第9条の著作者人格権の不行使特約について、近年の裁判例・学説上の議論を踏まえ、標準版の文言(無限定の不行使特約)のまま販売してよいか、あるいは何らかの限定(改変態様に関する例外等)を標準装備すべきか確認いただきたい。
- 第7条の契約不適合責任における通知期間(「知った時から1年以内」)について、民法第637条の原則との整合性、及び請負契約と準委任契約が混在しうる制作委託の実務における妥当性を確認いただきたい。
- 第6条の無償修正回数について、テンプレートの標準値(別紙で定める想定)として何回程度を例示するのが実務相場として妥当か(デザイン制作・Web制作・動画制作で相場が異なる可能性を含む)確認いただきたい。
- 第15条第2項の任意解除条項における「相当の補償」の水準について、民法第641条の解釈上、逸失利益をどの範囲まで含めるべきか、購入者向け解説に追記すべき目安があれば確認いただきたい。
- 第16条の損害賠償上限(委託料総額を上限とする設計)について、権利侵害保証違反(第10条)の場合にも同一の上限を適用してよいか、それとも別建てで整理すべきか確認いただきたい。
- フリーランス(個人事業主)に委託する場合における、いわゆるフリーランス保護新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)上の書面明示義務・支払期日規制等との整合性について、本テンプレートの第4条・第5条の規定で法定要件を満たすか確認いただきたい。
- 下請法(下請代金支払遅延等防止法)の適用対象となりうる取引(資本金要件に該当する発注側の場合)において、本契約書の支払条件・検収条項が下請法上の義務(書面交付義務、支払期日、減額禁止等)に抵触しないか確認いただきたい。