共用部の日常清掃や定期清掃、貯水槽・排水管洗浄を委託する業務委託契約書。民法第632条の請負と第656条の準委任の区分を踏まえ、作業範囲と事故責任を規定。

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清掃業務委託契約書

第1部: 書式本文

第1条(目的) 【建物所有者又は管理組合名】(以下「甲」という。)は、清掃業者【商号】(以下「乙」という。)に対し、別紙「清掃対象箇所目録」記載の建物共用部分等(以下「本件対象箇所」という。)の清掃業務(以下「本件業務」という。)を委託し、乙はこれを受託する。

第2条(業務の種類と法的性質) 1. 本件業務は、次の各号のとおり区分する。 一 日常清掃業務(共用部分の床、階段、エントランス等の日常的な清掃) 二 定期清掃業務(床面のワックス洗浄、窓ガラス清掃等、一定周期で行う清掃) 三 貯水槽清掃業務(水道法第34条の2及び建築物における衛生的環境の確保に関する法律(以下「建築物衛生法」という。)に基づく清掃) 四 排水管洗浄業務(排水管内の堆積物の除去) 2. 前項第一号の日常清掃業務は、一定の作業結果を継続的に提供する事務処理を目的とするものであり民法第656条の準委任契約の性質を有し、同項第二号から第四号までの業務は、特定の作業の完成を目的とするものであり民法第632条の請負契約の性質を有する。甲乙は、業務の性質に応じて契約不適合責任等の適用関係が異なることを確認する。

第3条(作業範囲) 1. 乙が清掃を行う箇所は、別紙目録に明記された共用部分に限るものとし、専有部分及び目録に記載のない箇所は本件業務の範囲に含まれない。 2. 乙は、清掃の実施に際し、入居者又は区分所有者の専有部分内への立入りを要しない方法で作業を行う。専有部分への立入りが必要な場合は、事前に甲を通じて当該入居者の承諾を得る。

第4条(貯水槽清掃) 1. 乙は、水道法第34条の2及び簡易専用水道の管理に関する基準に基づき、貯水槽の清掃を【1】年に1回以上実施する。 2. 乙は、貯水槽清掃終了後、水質検査の結果を含む清掃記録を作成し、甲に提出する。甲は、当該記録を保健所等の求めに応じて提示できるよう保管する。

第5条(排水管洗浄) 乙は、排水管洗浄業務を【1】年に1回、高圧洗浄その他の方法により実施し、作業前後の状況を写真等により記録して甲に報告する。

第6条(実施頻度及び作業時間) 日常清掃業務は【週5日】、定期清掃業務は【3か月に1回】実施することを基本とし、具体的な実施日及び作業時間は別紙清掃計画表に定める。

第7条(事故発生時の責任) 1. 乙は、本件業務の遂行中に、乙又はその使用人の故意若しくは過失により甲、区分所有者、入居者又は第三者に損害(備品の破損、転倒事故等を含む。)を与えたときは、これを賠償する。 2. 乙は、本件業務の遂行に関連して生じる損害を担保するため、施設賠償責任保険その他これに準ずる保険に加入し、その証書の写しを甲に提出する。 3. 甲は、清掃作業中であることを表示する掲示、立入禁止措置等、事故防止のために甲が管理すべき範囲の安全配慮を行う。

第8条(清掃用具及び資材の保管) 乙は、清掃用具及び洗剤等の資材を、入居者等の生命・身体に危険を及ぼさない方法で保管し、使用後は所定の保管場所に施錠のうえ収納する。

第9条(善管注意義務等) 乙は、日常清掃業務については善良な管理者の注意をもって事務を処理し(民法第644条)、定期清掃業務、貯水槽清掃業務及び排水管洗浄業務については、仕事の目的物が契約の内容に適合したものであることを担保する(民法第562条以下の契約不適合責任)。

第10条(再委託) 乙は、甲の書面による承諾を得た場合に限り、本件業務の全部又は一部を第三者に再委託することができる。乙は、再委託先の行為について、自ら業務を行った場合と同一の責任を負う。

第11条(業務委託料) 甲は、乙に対し、本件業務の対価として月額金【 】円(消費税別)を、毎月末日までに乙の指定口座に振り込む方法により支払う。貯水槽清掃業務及び排水管洗浄業務の対価は、実施の都度別紙単価に基づき精算する。

第12条(契約期間) 本契約の有効期間は、契約締結日から【1】年間とする。期間満了の【2】か月前までにいずれの当事者からも更新拒絶の申出がないときは、同一条件でさらに【1】年間更新するものとし、以後も同様とする。

第13条(解除) 甲又は乙は、相手方が本契約に違反し、相当の期間を定めた催告後もその違反が是正されないときは、本契約を解除することができる。

第14条(協議及び管轄) 本契約に定めのない事項は甲乙協議して定める。本契約に関する紛争については【地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節: 建物所有者・管理組合向け

A-1 第4条の修正例 「甲は、乙から提出された貯水槽清掃記録及び水質検査結果を、区分所有者又は入居者の求めに応じて閲覧に供する。乙は、水質検査の結果が基準値を超えた場合、速やかに甲に報告し、給水停止等の要否について甲と協議する。」 一言解説: 貯水槽の衛生管理は入居者の健康に直結するため、記録の開示先と異常時の初動対応を甲側の視点で明確化する。

A-2 第7条の修正例 「乙は、施設賠償責任保険の保険金額を対人・対物あわせて金【1億】円以上とし、保険期間中は契約を継続する。甲は、保険の有効性について年1回証書の写しの提出を求めることができる。」 一言解説: 管理組合にとって清掃中の事故は区分所有者への説明責任を伴うため、保険金額の下限を具体的に設定し、継続確認の仕組みを持たせる。

B節: 清掃業者向け

B-1 第3条の修正例 「乙は、清掃対象箇所以外の場所において破損等を発見した場合、自ら修補することなく、直ちに甲に報告するにとどめるものとし、当該報告をもって乙の善管注意義務を尽くしたものとする。」 一言解説: 清掃業者が業務範囲外の箇所まで対応してしまうと、後日「なぜあの時直さなかったのか」との過大な期待や責任追及につながりかねないため、範囲外事項は報告義務にとどめることを明記する。

B-2 第9条の修正例 「定期清掃業務における契約不適合責任の期間は、作業完了日から【1】年間とし、通常の使用による経年劣化(ワックスの摩耗等)は契約不適合に該当しないものとする。」 一言解説: 請負的性質を持つ定期清掃業務では契約不適合責任(民法第637条の期間制限を含む)が問題となりやすいため、業者側のリスクを合理的な期間と範囲に限定しておく。

第3部: 書き方と法的ポイントの解説

本書式は、建物所有者又は管理組合が、共用部分の日常清掃、定期清掃、貯水槽清掃、排水管洗浄といった清掃関連業務を専門業者に委託する場面で使用する。使用してはならない場面としては、清掃業務と称しつつ実質的に建物の大規模修繕や設備の交換工事を含む場合(この場合は工事請負契約書を別途締結すべきである)、及び専有部分内の清掃(ハウスクリーニング)を主たる目的とする場合(本書式は共用部分を前提としており、個人向けの役務提供契約とは適用法令や紛争類型が異なる)が挙げられる。

法的な根拠としては、日常的に反復継続して行われる清掃業務は、特定の仕事の完成を目的とせず一定の事務処理を継続的に行うものとして民法第656条の準委任契約の性質を帯びやすい一方、床面のワックス洗浄や窓ガラス清掃のように一回の作業で明確な仕上がり(結果)を約する定期清掃業務は、民法第632条の請負契約の性質を帯びる。この区分は、履行が不完全であった場合に契約不適合責任(民法第562条以下)が問題となるか、それとも善管注意義務違反(民法第644条)が問題となるかという実務上の違いに直結する。貯水槽清掃については水道法第34条の2が簡易専用水道の設置者に対し厚生労働省令で定める基準に従った管理を義務付けており、建築物衛生法(建築物における衛生的環境の確保に関する法律)は特定建築物における空気環境、給排水の衛生的管理に関する基準を定めている。

実務でよくある失敗の一つ目は、清掃作業中に入居者との接触事故や備品の破損が生じた際、乙が保険未加入又は保険金額が不十分で、甲が実質的に損害を肩代わりせざるを得なくなるケースである。第7条のように施設賠償責任保険の加入及び証書の提示を義務付けることが対策となる。二つ目は、貯水槽清掃の実施記録や水質検査結果が保存されておらず、保健所の立入検査時に甲が説明できず行政指導を受けるケースであり、第4条で記録の作成・提出・保管を明記することが対策となる。三つ目は、日常清掃業務と定期清掃業務を区別せずに一括して規定した結果、床のワックスが経年劣化で剥離した際に「契約違反だ」との主張と「通常の使用による劣化だ」との主張が対立するケースであり、第2条・第9条のように業務の性質と契約不適合責任の期間・範囲をあらかじめ整理しておくことが対策となる。清掃対象の建物用途や規模によって適用される基準は異なるため、個別事案は専門家に確認することを推奨する。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 清掃対象箇所(共用部分)が別紙目録で具体的に特定されているか
  • [ ] 日常清掃(準委任)と定期清掃・貯水槽清掃・排水管洗浄(請負)の区分が条項上明確か
  • [ ] 貯水槽清掃の頻度(水道法第34条の2関連基準)と記録の作成・保存が定められているか
  • [ ] 排水管洗浄の頻度と作業前後の記録方法が定められているか
  • [ ] 専有部分への立入りが必要な場合の同意取得手続が定められているか
  • [ ] 清掃作業中の事故に備えた施設賠償責任保険の加入が義務付けられているか
  • [ ] 事故発生時の甲乙双方の安全配慮義務の分担が明確か
  • [ ] 定期清掃業務の契約不適合責任の期間及び経年劣化の扱いが整理されているか
  • [ ] 清掃用具・資材の保管方法が入居者の安全に配慮した内容になっているか
  • [ ] 再委託の可否及び再委託先への責任の帰属が明記されているか
  • [ ] 業務委託料の算定方法(月額と実施都度精算の区分)が明確か
  • [ ] 合意管轄裁判所が明記されているか