清掃業務の範囲と品質基準を定める仕様書です。対象区域、作業頻度、使用資機材、仕上がり水準と検査方法を具体化して契約書に添付します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
清掃業務仕様書
第1部: 書式本文
本仕様書は、【発注者名】(以下「甲」という。)が【清掃業者名】(以下「乙」という。)に委託する清掃業務委託契約書の別紙として、業務の範囲及び品質基準を定めるものである。
第1条(対象施設及び対象区域) 清掃業務の対象施設は【施設名称・所在地】とし、対象区域は次のとおりとする。 (1) 共用部:【エントランス、廊下、階段、エレベーターホール等】 (2) 執務室・専有部:【対象範囲を具体的に記載】 (3) 水回り:【トイレ、給湯室等】 (4) 屋外:【駐車場、植栽、外構等】
第2条(作業内容) 1. 日常清掃の内容は、床の清掃(掃き拭き又は洗浄)、ゴミ収集及び運搬、トイレの清掃及び消耗品補充、共用部什器の清拭とする。 2. 定期清掃の内容は、床のワックス洗浄、窓ガラス清掃、空調機フィルター清掃、カーペットの洗浄とし、実施頻度は第3条に定める。 3. 前2項に定めのない特別清掃(退去時清掃、災害後の清掃等)を行う場合は、甲乙別途協議のうえ、その内容及び対価を定める。
第3条(作業頻度) 1. 日常清掃は、【週5日、平日8時から10時】の時間帯に実施する。 2. 定期清掃は、床のワックス洗浄を【月1回】、窓ガラス清掃を【四半期に1回】、空調フィルター清掃を【半期に1回】の頻度で実施する。 3. 甲は、施設の利用状況に応じ、乙と協議のうえ作業頻度を変更することができる。
第4条(使用資機材及び薬剤) 1. 乙は、清掃業務の実施に必要な清掃用具、洗剤その他の資機材を自己の負担で調達する。 2. 乙は、使用する洗剤等の薬剤について、対象箇所の材質に適合するものを選定し、甲から要請があったときは安全データシート(SDS)を提示する。 3. 乙は、劇物又は毒物に該当する薬剤を使用する場合、毒物及び劇物取締法その他の関係法令を遵守する。
第5条(仕上がり水準) 1. 床面は、目視で塵埃、汚れ及び水滴の付着がない状態とする。 2. トイレは、便器、洗面台及び床面に汚れ、水垢及び臭気がない状態とし、消耗品(トイレットペーパー、ハンドソープ等)を常時補充された状態に保つ。 3. ガラス面は、清掃直後において拭き跡及び曇りがない状態とする。
第6条(検査方法) 1. 乙は、作業完了後、別紙点検表に基づき自主点検を行い、記録を作成する。 2. 甲は、必要と認めるときは、施設内を巡回して仕上がりを確認し、第5条の水準を満たしていないと認める箇所があるときは、乙に対し是正を求めることができる。 3. 乙は、前項の是正要求を受けたときは、原則として【当日中】に手直しを行う。
第7条(業務報告) 乙は、月次で作業実施記録を甲に提出する。実施記録には、実施日、作業内容、実施者、特記事項(設備の不具合発見等)を記載する。
第8条(鍵及び入退室管理) 1. 乙は、清掃業務の実施に必要な範囲で甲から鍵又は入館証の貸与を受けることができる。 2. 乙は、貸与された鍵又は入館証を善良な管理者の注意をもって管理し、業務終了後は速やかに甲の指定する場所に保管し、又は返却する。
第9条(廃棄物の処理) 乙は、清掃業務に伴い生じた廃棄物を、廃棄物の処理及び清掃に関する法律その他関係法令に従い適正に分別及び処理する。産業廃棄物に該当するものについては、同法に定めるマニフェスト等の手続に従う。
第10条(労働安全衛生) 乙は、高所作業その他危険を伴う作業を行うときは、労働安全衛生法その他関係法令に定める安全対策を講じ、必要な保護具を作業員に使用させる。
第11条(契約不適合時の対応) 1. 乙が提供した業務の内容が本仕様書に定める水準を満たさない場合、甲は乙に対し、相当の期間を定めて是正(追完)を求めることができる。 2. 乙が正当な理由なく前項の是正に応じないときは、甲は委託料の減額を求めることができる。
第12条(仕様書の変更) 本仕様書の内容を変更する場合、甲乙協議のうえ、書面によりこれを行う。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 発注者向け書き換え
A-1. テナントビルで共用部と専有部を区別して管理する場合
第1条の追加例:「専有部の清掃を行うに当たり、乙は各テナントの許可を得た上で立ち入るものとし、テナントの許可が得られない区域については、甲が別途調整する。」 解説: テナントごとに専有部の管理権限が異なるため、清掃業者が第三者であるテナントの区画に立ち入る根拠を明確にしておく必要がある。
A-2. 仕上がり水準の未達が繰り返される場合
第6条3項の修正例:「是正要求が【1か月間に3回】以上に及んだときは、甲は乙との間で改善計画の策定を求めることができ、改善計画の提出がないとき又は改善が認められないときは、甲は本契約を解除することができる。」 解説: 個別の是正要求だけでは根本的な改善につながらないことがあるため、一定回数を超えた場合の是正計画や解除の道筋を設けておくと実効性が高まる。
B. 清掃業者向け書き換え
B-1. 薬剤の使用に関する制約が厳しい医療・食品関連施設の場合
第4条2項の追加例:「対象施設が食品を取り扱う区域を含む場合、乙は甲が指定する成分基準に適合した洗剤等を使用し、使用薬剤の一覧を事前に甲に提出して承認を得る。」 解説: 施設の用途によって使用可能な薬剤の制約が異なるため、業種特有の基準がある場合は事前承認のプロセスを組み込むことが望ましい。
B-2. 天候等により屋外清掃の実施が困難な場合
第3条3項の追加例:「降雨、強風その他の気象事由により屋外清掃の実施が困難なときは、乙は甲に事前に通知した上で、実施日を翌所定作業日に振り替えることができる。」 解説: 屋外作業は天候の影響を受けやすく、頻度規定を機械的に適用すると乙に無理な履行を強いる結果となるため、振替の仕組みをあらかじめ定めておく。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面・使ってはいけない場面 本書式は、清掃業務委託契約の対象範囲や品質基準を具体化するための別紙(仕様書)として用いる。委託料の支払条件や契約期間、解除事由といった契約の基本条項は別途清掃業務委託契約書本体で定める必要があり、本仕様書のみで契約全体を構成することはできない。
根拠法令及び留意点 清掃業務委託契約は、仕事の完成を目的とする場合には民法上の請負契約(同法第632条)としての性質を、業務の遂行自体を目的とする場合には準委任契約としての性質を有すると整理されることが多く、いずれの性質を持つ契約かにより適用される規律が異なり得る。請負契約として整理される場合、乙が提供した清掃業務の質が契約内容に適合しないときは、同法第636条に定める契約不適合責任の考え方に沿って、甲は追完請求や報酬減額請求を行うことが考えられる。第11条はこの考え方を踏まえた条項である。もっとも、清掃業務は性質上、仕上がりの評価に一定の主観が伴うため、第5条のように仕上がり水準を可能な限り客観的な基準で明文化しておくことが、契約不適合の有無を判断する前提として重要となる。
実務でよくある失敗と対策 第一に、作業内容を「清掃業務一式」とのみ記載し、対象区域や頻度が曖昧なまま契約してしまう失敗がある。第1条から第3条のように対象区域・作業内容・頻度を具体的に列挙することで対策となる。第二に、仕上がり水準を定めず、発注者と清掃業者の間で「きれいかどうか」の認識が食い違い、是正要求のたびに紛争となる失敗がある。第5条及び第6条のように点検表を用いた客観的な検査方法を定めることが有効である。第三に、廃棄物処理や薬剤使用に関する法令遵守を明記せず、産業廃棄物の不適正処理等の法令違反が生じるリスクを見落とす失敗がある。第9条のように関係法令の遵守を明記しておくことが望ましいが、具体的な法令適用は施設の業種や廃棄物の種類により異なるため、専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 対象区域を共用部・専有部・屋外等に区分して具体的に記載しているか
- [ ] 日常清掃と定期清掃の作業内容及び頻度を分けて定めているか
- [ ] 使用資機材・薬剤の調達主体及び安全性確認の方法を定めているか
- [ ] 仕上がり水準を客観的な基準で記載しているか
- [ ] 検査方法及び是正要求の手続を定めているか
- [ ] 月次報告等、業務実施状況の報告義務を定めているか
- [ ] 鍵・入館証の貸与及び返却に関する取扱いを定めているか
- [ ] 廃棄物処理に関する法令遵守を明記しているか
- [ ] 高所作業等における労働安全衛生上の措置を定めているか
- [ ] 契約不適合(仕様未達)時の追完・減額の手続を定めているか