一定の事項を遵守することを約束する汎用書式です。誓約事項の列挙、違反時の措置、有効期間の定め方を整理しています。記載例と注記を添えており、初めての担当者でも作成できます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
誓約書(一般用)
第1部: 書式本文
誓約書は、誓約者が特定の事項を遵守することを一方的に約束し、提出先に差し入れる書面である。入社時の遵守事項、規律違反後の再発防止、取引上の一定条件の遵守等、幅広い場面で用いられる汎用様式は以下のとおりである。
誓 約 書
作成日:【20XX年XX月XX日】
提出先:【会社名・団体名・部署名】 御中
誓約者
住所:【 】
氏名:【 】㊞
私は、下記事項を誓約いたします。
第1条(誓約の趣旨)
本誓約書は、【誓約の背景・経緯(例:入社に際して、〇年〇月〇日の事案に関連して等)】
に関し、誓約者が下記事項を遵守することを約するものである。
第2条(誓約事項)
誓約者は、下記の事項を遵守する。
1. 【具体的な遵守事項1(例:就業規則の遵守)】
2. 【具体的な遵守事項2(例:提出先の指示に従うこと)】
3. 【具体的な遵守事項3(例:期限までに是正措置を完了すること)】
第3条(有効期間)
本誓約の有効期間は、本書作成日から【 】とする。ただし、性質上存続すべき
事項(秘密保持等)については、期間経過後もなお効力を有するものとする。
第4条(違反時の措置)
誓約者が第2条の誓約事項に違反した場合、提出先は下記の措置を講じることができる。
1. 【注意・指導、懲戒処分等の社内的措置】
2. 【契約解除、取引停止等の措置】
3. 誓約者は、違反により提出先に生じた損害を賠償する。
第5条(遵守状況の確認)
提出先は、必要に応じて誓約者に対し遵守状況の報告を求めることができる。
以上、誓約いたします。
誓約者 署名:【 】
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 誓約者の立場からの修正パターン
誓約者は、義務の範囲を明確に限定し、過度な負担を回避する方向で修正する。
- 第2条の誓約事項について、抽象的な努力目標ではなく「【期限】までに【具体的行為】を行う」という形式に落とし込み、達成基準を明確にすることで、遵守の有無をめぐる恣意的な判断を防ぐ。
- 第4条の損害賠償について、「賠償額は誓約者の故意または重過失による違反に限り、かつ現実に生じた通常損害の範囲に限る」との限定を加え、過大な責任追及を回避する。
- 第3条の有効期間について、「秘密保持等、性質上存続すべき事項」を具体的に限定列挙し、無期限の包括的拘束を避ける。
B節: 提出先の立場からの修正パターン
提出先は、誓約の実効性を確保し、違反時の対応を円滑にする方向で修正する。
- 第4条の違反時の措置に、「違反が確認された場合、提出先は誓約者に対し是正を求めることができ、是正されない場合は【契約解除・取引停止・懲戒解雇】等の措置を講じることができる」と段階的な対応を明記し、比例原則に配慮した運用とする。
- 第5条の遵守状況確認について、「提出先は【四半期ごと】に遵守状況の報告を求めることができ、誓約者は正当な理由なくこれを拒否できない」と定め、事後検証の実効性を高める。
- 誓約事項が秘密保持に関わる場合、「本誓約に違反し、提出先に営業秘密の漏えい等の損害が生じた場合、不正競争防止法その他関係法令に基づく請求を妨げない」との確認条項を加え、誓約書が他の法的救済手段を排除しないことを明示する。
- 複数回にわたり同種の問題行動があった従業員に対して誓約書を求める場合、「本誓約書は過去の経緯を踏まえたものであり、今後同種の違反が確認された場合には、就業規則に基づく懲戒手続を経て処分を検討する」旨を明記し、懲戒処分の相当性判断における事前手続としての位置づけを明確にする。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面と使ってはいけない場面 誓約書は、入社時の規律遵守、懲戒事案後の再発防止、取引先との一定条件の遵守確認等、当事者間で既に一定の信頼関係・契約関係が存在する場面で補完的に用いるのに適している。他方、誓約書のみで職業選択の自由や営業の自由を過度に制約する内容(広範な競業避止義務等)を課すことは、後述のとおり無効と判断されるリスクがあるため、誓約書を独立の拘束力ある義務創設手段として濫用してはならない。
根拠法令の解説 誓約事項の内容が公の秩序または善良の風俗に反する場合、当該法律行為は無効となる(民法90条)。特に競業避止義務や広範な行動制限を課す誓約条項は、職業選択の自由(憲法22条1項)との関係で、その必要性・代償措置の有無・制限の期間や範囲の合理性等を総合的に考慮して公序良俗違反の有無が判断される裁判例の蓄積があり、労働契約の場面では労働契約法3条が定める労働条件の均衡等の原則も踏まえた合理性が求められる。第4条のような違約金・損害賠償額の予定を定める場合、民法420条により当事者間でその額をあらかじめ約定すること自体は認められるが、労働者との関係では労働基準法16条により、労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約をしてはならないとされている点に注意を要する。秘密保持を内容とする誓約については、不正競争防止法上の営業秘密の保護(同法2条6項の定義、同法3条・4条の差止請求・損害賠償請求)が誓約書とは別に機能する。
よくある失敗と条項上の対策 第一に、誓約事項を「今後一切問題を起こしません」のように抽象的に記載し、違反の有無を客観的に立証できないケースが多い。第2条のように具体的な行為・期限を特定することで立証可能性を高める。第二に、労働者に対して過大な違約金額を定め、労働基準法16条違反として当該条項が無効とされるリスクがある。損害賠償条項は実損害の賠償に限定する等、法令適合性を確認する必要がある。第三に、競業避止・広範な行動制限を内容とする誓約条項について、代償措置や期間・地域の限定なく設定し、公序良俗違反(民法90条)を理由に無効とされる例がある。制限の必要最小限化と代償措置の検討が対策となる。第四に、誓約書の提出を事実上強制し、誓約者が内容を十分に検討する時間を与えないまま署名させる運用があり、後日「意思に反して署名させられた」との主張を受けるリスクがある。誓約書交付前に一定の検討期間を設け、質問の機会を確保することが望ましい。誓約事項の適法性・有効性は業種・事案ごとに判断が分かれるため、個別事案については専門家への確認を推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- 誓約の趣旨・背景事情が具体的に記載されているか
- 誓約事項が抽象的でなく、具体的な行為・期限で特定されているか
- 誓約事項の内容が職業選択の自由等を不当に制約していないか
- 労働者に対する誓約書の場合、違約金・損害賠償額の予定条項が労働基準法16条に抵触していないか
- 有効期間が明記され、性質上存続すべき事項の扱いが区別されているか
- 違反時の措置が段階的かつ比例的に定められているか
- 損害賠償の範囲が現実に生じた損害に見合った合理的な内容か
- 秘密保持に関する誓約の場合、不正競争防止法上の保護との関係が整理されているか
- 遵守状況の確認方法(報告義務等)が定められているか
- 誓約者の署名・押印が本人によるものであることを確認したか
- 誓約書の保管期間・保管方法が決まっているか
- 誓約事項の内容が公序良俗に反しないか、事案に応じて専門家の確認を得たか
- 誓約者に対し内容検討のための十分な時間と質問の機会が確保されているか
- 誓約書提出後の懲戒処分等との関係(位置づけ)が就業規則等と整合しているか