アニメやゲームへの音声出演の条件を定める契約書です。収録日程、出演料、追加収録、二次利用料と使用範囲を明確にします。自社の実情に合わせて条項を取捨選択できる構成です。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
声優出演契約書
第1部: 書式本文
【制作者名】(以下「甲」という)と【声優氏名又は事務所名】(以下「乙」という)は、乙が甲の制作するアニメーション・ゲーム等の音声コンテンツ「【作品名】」(以下「本作品」という)に声の出演をすることに関し、次のとおり契約(以下「本契約」という)を締結する。
第1条(目的) 甲は乙に対し本作品における【役名・キャラクター名】としての音声収録業務(以下「本業務」という)を委託し、乙はこれを受託する。
第2条(収録日程及び場所) 1. 収録日は【収録予定日】、収録場所は【収録スタジオ名・住所】とする。 2. 甲は収録日の変更が必要な場合、原則として【7日】前までに乙に通知し、乙の都合を確認のうえ調整する。 3. 乙の都合による収録日変更は、甲乙協議のうえ決定する。
第3条(拘束時間) 1. 1回あたりの収録拘束時間は【時間数】以内とする。 2. 拘束時間を超過した場合、甲は乙に対し超過1時間ごとに金【超過料金】(消費税別)を追加で支払う。
第4条(出演料) 1. 甲は乙に対し、本業務の対価として金【出演料】(消費税別)を、収録完了後【支払期日】以内に乙の指定する銀行口座に振り込んで支払う。振込手数料は甲の負担とする。 2. 前項の出演料には、初回放送・初回配信及び【許諾済み利用範囲】の範囲内での利用対価を含むものとし、これを超える二次利用については第7条の定めによる。
第5条(追加収録) 1. 甲が本業務の完了後に台本修正、演出変更等により追加の収録を求める場合、甲は乙に事前にその内容と所要時間を通知し、乙の承諾を得るものとする。 2. 追加収録に対する対価は、第4条の出演料とは別に、収録時間及び内容に応じて甲乙協議のうえ定める。
第6条(実演家人格権の取扱い) 1. 乙は、著作権法第90条の2に定める氏名表示権及び同一性保持権を有することを甲は確認する。 2. 甲が本業務に係る音声について、演技の性質上やむを得ない改変(音量調整、編集による尺調整等)を行うことについて、乙はあらかじめ同意する。ただし、乙の演技の趣旨を損なう改変は事前に乙の承諾を得るものとする。
第7条(二次利用及び使用範囲) 1. 甲は、本契約に定める範囲を超えて音声を利用(パッケージ化、配信プラットフォームの追加、海外配給、キャラクターグッズへの音声使用等)する場合、乙に対し事前に通知し、別途定める二次利用料を支払う。 2. 二次利用料の算定基準は【二次利用料算定方法(例:出演料の◯%、利用形態ごとの定額表)】による。 3. 甲は、著作権法第92条の2に定める送信可能化を含むインターネット配信を行う場合、その配信形態を乙に通知するものとする。
第8条(録音物の権利) 本業務により生じた録音物についての著作隣接権(著作権法第91条に定める録音権を含む)の帰属及び行使に関する取決めは【権利帰属・許諾範囲】のとおりとする。
第9条(守秘義務) 乙は、本作品の内容、台本、収録に関して知り得た未公開情報を、甲の事前の書面による承諾なく第三者に開示又は漏洩してはならない。本条の義務は本契約終了後【2年】間存続する。
第10条(取引条件の明示・書面交付) 甲は、乙がフリーランス・事業者間取引適正化等法律に定める特定受託事業者に該当する場合、業務委託に係る給付内容、報酬額、支払期日等の必要事項を書面又は電磁的方法により明示するものとする。
第11条(解除) 1. 甲又は乙は、相手方に本契約上の重大な違反があり、催告後【14日】以内に是正されない場合、本契約を解除することができる。 2. 甲は、乙が反社会的勢力に該当することが判明した場合、催告なく本契約を解除することができる。
第12条(損害賠償) 甲又は乙は、本契約に違反し相手方に損害を与えた場合、当該損害を賠償する責任を負う。ただし、天災その他不可抗力による場合はこの限りでない。
第13条(協議事項) 本契約に定めのない事項及び本契約の解釈に疑義が生じた事項については、甲乙誠実に協議のうえ解決する。
第14条(合意管轄) 本契約に関する紛争については、【管轄裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
本契約締結の証として本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ各1通を保有する。
契約締結日: 【契約締結日】
甲(制作者) 住所: 名称: 代表者: 印
乙(声優) 住所: 氏名(事務所名): 代表者: 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 制作者(甲)側から見た有利な書き換え
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出演料の一括対価化条項 「甲は乙に対し金【出演料】を支払うものとし、当該対価は初回放送から【放送後3年間】に限らず、本作品に係るあらゆる媒体での恒久的な利用の対価を含むものとする。」 一言解説: 出演料に将来の全利用形態を包含させることで、二次利用のたびに追加交渉・追加支払が生じるリスクを制作者側で抑える書き方である。ただし乙側の交渉力次第では受け入れられにくい。
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収録日変更の通知期間短縮 「甲は収録日の変更が必要な場合、原則として【3日】前までに乙に通知するものとし、緊急のスケジュール事情がある場合はこの限りでない。」 一言解説: 現場の急な演出変更や共演者都合に対応しやすくするための短縮だが、乙のスケジュール確保の負担を高める点に留意する。
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改変許諾範囲の拡張 「乙は、演出上必要な範囲において、音声のピッチ変換、AIによる音声加工その他の技術的改変を甲が行うことについてあらかじめ包括的に同意する。」 一言解説: AI技術活用を見据えた包括同意条項。実演家人格権への配慮から範囲を明確に限定しないと後日の紛争の火種になり得る。
B節: 声優(乙)側から見た有利な書き換え
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二次利用料の明確な定額化 「二次利用が発生した場合、甲は乙に対し利用形態ごとに別紙【二次利用料金表】に定める金額を、利用開始前に支払う。甲乙間で金額の合意ができない場合、乙は当該利用を許諾しないことができる。」 一言解説: 「協議のうえ定める」という曖昧な表現を排し、あらかじめ金額表を添付することで後日の未払いや値切り交渉を防ぐ。
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拘束時間超過料の即時発生 「拘束時間を超過した場合、甲は超過が生じた時点で乙にその旨を通知し、超過1時間未満は1時間に切り上げて超過料金を支払う。」 一言解説: 端数切り上げにより実質的な報酬確保を図る、声優側に有利な計算方法の明記。
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AI利用への個別同意化 「乙の音声データを機械学習・音声合成モデルの学習用データとして使用する場合は、本契約とは別に乙の書面による個別の同意を要するものとし、当該同意には別途対価を伴う。」 一言解説: 包括的な改変許諾条項に押し切られないよう、AI学習利用だけは別建ての同意事項として切り出す書き方である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
解説: 使用場面と適用範囲
本書式は、アニメーション・ゲーム・吹替等の音声コンテンツに声優が出演する際の基本契約として使用することを想定している。単発の収録案件だけでなく、シリーズ作品における継続出演契約のひな型としても利用できる。他方、声優が実質的に制作者の指揮命令下で常態的・専属的に稼働し、労働者性が強く認められる場合には、業務委託契約ではなく雇用契約としての整理が必要になる場合があり、本書式をそのまま用いるべきではない。
解説: 根拠法令の説明
著作権法第91条は実演家の録音権を、同法第92条の2は実演家の送信可能化権を定めており、声優の音声を録音・インターネット配信する行為はこれらの権利の対象となるため、契約上どの範囲まで許諾されたものかを明確化する必要がある。また同法第90条の2は実演家人格権(氏名表示権・同一性保持権)を定めており、音声の改変を行う際は本人の意向を害しないよう配慮した契約設計が求められる。加えて、フリーランス・事業者間取引適正化等法律は、特定受託事業者に対する業務委託において報酬額・支払期日等の明示や、報酬支払期日の設定(給付受領後60日以内など)に関する規律を設けており、声優個人事務所や個人事業主形態の声優との契約では本法の適用可能性を確認する必要がある。
解説: よくある失敗と対策
第一に、「利用範囲」を曖昧にしたまま契約し、後日配信プラットフォームの追加や海外展開が生じた際に対価交渉で揉めるケースが多い。対策として第7条のように二次利用の定義と算定基準をあらかじめ条文化しておくことが有効である。第二に、追加収録が口頭合意のみで進み、対価の未払いや認識齟齬が生じる失敗がある。第5条のように追加収録は必ず事前通知と承諾を要件とし、対価協議を明文化することで防止できる。第三に、実演家人格権への配慮を欠いた一方的な改変許諾条項を設け、後にトラブルとなる例がある。改変の範囲を具体的に限定し、趣旨を損なう改変には個別同意を要する形にすることが望ましい。なお、契約条項の設計や適用の妥当性については、個別の事案の実情に応じて弁護士等の専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 収録対象の役名・キャラクター名が具体的に特定されているか
- [ ] 収録日程・場所・拘束時間が明記されているか
- [ ] 出演料の金額、支払期日、振込手数料の負担者が明記されているか
- [ ] 出演料に含まれる利用範囲(放送・配信の初回範囲等)が具体的に定義されているか
- [ ] 二次利用の定義と対価算定方法が別紙等で明確化されているか
- [ ] 追加収録が発生した場合の通知・承諾手続と対価の取決めがあるか
- [ ] 実演家人格権(氏名表示権・同一性保持権)への配慮条項があるか
- [ ] 音声改変・AI学習利用等の同意範囲が明確に限定されているか
- [ ] 守秘義務の対象と存続期間が定められているか
- [ ] フリーランス・事業者間取引適正化等法律に基づく取引条件明示義務への対応が確認されているか
- [ ] 解除事由・損害賠償・管轄裁判所が定められているか