借地上の建物を借地権とともに譲渡する売買契約書。借地借家法第19条の地主承諾または裁判所の許可、承諾料の負担、民法第612条の譲渡制限に対応した条項を収録。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
借地権付建物売買契約書
第1部: 書式本文
第1条(目的物件) 売主は、別紙物件目録記載の建物及びこれに付随する借地権(以下「本借地権」という。)を買主に売り渡し、買主はこれを買い受ける。
第2条(借地権の内容) 本借地権は、〇〇県〇〇市〇〇所在の土地(地主〇〇〇〇所有、以下「本件土地」という。)を目的とする〔普通借地権/定期借地権〕であり、賃貸借契約締結日は〇年〇月〇日、存続期間は〇年、地代は月額金〇〇円とする。
第3条(売買代金) 売買代金は建物及び借地権を一体として金〇〇円とし、内訳を建物金〇〇円、借地権金〇〇円とする。
第4条(地主の承諾) 本契約は、地主が本借地権の譲渡を承諾すること(借地借家法第19条の裁判所の許可を得た場合を含む。)を停止条件として効力を生じる。
第5条(承諾料) 買主は、地主の承諾を得るために必要な承諾料(名義変更料)を負担する。承諾料の金額は別途地主との協議により確定する。
第6条(承諾が得られない場合の措置) 地主が正当な事由なく承諾しない場合、売主又は買主は借地借家法第19条第1項に基づき裁判所に対し地主の承諾に代わる許可の申立てをすることができる。当該申立てに要する費用の負担は別紙合意による。
第7条(地代の承継及び滞納の確認) 買主は、引渡日以降の地代支払義務を承継する。売主は、引渡日までの地代の滞納がないことを表明し、保証する。
第8条(建物の状況) 売主は、買主に対し、本建物の増改築の履歴、地主との間の増改築禁止特約の有無を開示する。
第9条(契約不適合責任) 引き渡された建物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は民法の定めるところにより履行の追完、代金減額、損害賠償又は解除を請求することができる。
第10条(危険負担) 引渡し前の建物の滅失・毀損の危険は売主が、引渡し後は買主が負担する。
第11条(解除) 地主の承諾が得られる見込みがなく、かつ裁判所の許可も得られない場合、買主は本契約を無条件で解除することができ、売主は受領済みの手付金及び代金を無利息で返還する。
第12条(合意管轄) 本契約に関する紛争は、本件土地所在地を管轄する地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 売主向けの修正
A-1. 承諾料負担の売主・買主折半化
修正後(第5条の代替):「承諾料は、売主及び買主が折半して負担する。」 一言解説: 借地権売買における承諾料は買主が負担する例が多いが、売主が地主との関係維持や早期売却を優先する場合は折半とする交渉が行われることがある。
B. 買主向けの修正
B-1. 停止条件不成就時の違約金免除の明確化
追加条文例:「地主の承諾が得られないことにより本契約が解除された場合、買主は違約金支払義務を負わないものとし、既払金は無利息で速やかに返還される。」 一言解説: 買主にとって地主の承諾は自らコントロールできない事情であるため、承諾不成立のリスクを売主に帰属させ、買主を違約金負担から保護する修正である。
B-2. 増改築承諾の取得についての協力義務追加
追加条文例:「売主は、買主が本建物を建て替える予定がある場合、地主から建替え承諾を取得するため合理的な範囲で協力する。」 一言解説: 老朽化した建物を購入し将来建替えを予定する買主にとって、地主の建替え承諾の見込みは重要な検討事項であるため、協力義務を明記する。
C. 地主(底地権者)向けの修正
C-1. 承諾書における用法遵守の確認
追加条文例(地主が交付する承諾書に付す条項):「地主は本借地権の譲渡を承諾するが、当該承諾は、譲受人が従前の賃貸借契約の用法(居住用に限る等)を遵守することを条件とする。」 一言解説: 地主が譲渡承諾にあたり、譲受人による用途変更(住居から店舗への変更等)を制限する意向を持つ場合の記載例である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、借地上に存する建物を借地権とともに第三者へ譲渡する場面で用いる。借地権が定期借地権である場合は存続期間満了時の建物取扱い(原則として更地返還)が異なるため、普通借地権と定期借地権のいずれであるかを条文上明確に区別する必要がある。また、土地の所有権自体(底地)を併せて取得する場合は、通常の土地建物売買契約書を用いるべきであり、本書式は借地権のみを譲渡対象とする場面に限定される。
根拠法令 借地借家法第19条第1項は、借地権者が賃借権の目的である土地上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、賃借権の譲渡又は転貸が地主に不利となるおそれがないにもかかわらず地主が承諾しないときは、裁判所が地主の承諾に代わる許可を与えることができる旨を定める。民法第612条第1項は、賃借人が賃貸人の承諾を得なければ賃借権を譲渡できない旨を定めており、無断譲渡は同条第2項により賃貸借契約の解除事由となりうる。したがって、地主の承諾(又は裁判所の許可)を停止条件とする本書式の構成は、無断譲渡による契約解除リスクを回避するために不可欠である。
実務でよくある失敗と対策 第一に、地主の承諾を得ずに売買契約を先行させ、後日地主から借地契約を解除されるリスクを負う失敗がある。第4条のとおり地主の承諾を停止条件とすることで防止する。第二に、承諾料の相場や算定基準(更地価格の一定割合等の地域慣行)を確認しないまま金額を決め、地主との交渉が難航する失敗がある。事前に近隣の取引事例や借地非訟事件における承諾料の算定実務を参考にすることが望ましい。第三に、定期借地権であるにもかかわらず普通借地権と同様に扱い、存続期間満了時の建物買取請求権の有無を誤って説明してしまう失敗がある。定期借地権(借地借家法第22条以下)には原則として建物買取請求権が認められない点に留意する必要がある。
第四に、地代の改定条項(公租公課の増減や近隣地代相場の変動に応じた改定)の有無を確認せず、将来の地代上昇リスクを買主が十分に認識しないまま契約してしまう失敗もある。賃貸借契約書上の地代改定条項の有無及び直近の改定履歴を確認し、必要に応じて重要事項として買主に説明しておくことが望ましい。
借地権の承諾実務や承諾料の相場は地域や地主との関係性により大きく異なるため、契約締結前に専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 借地権が普通借地権か定期借地権かを確認したか
- [ ] 賃貸借契約書の原本又は写しを取得し、残存期間・地代・特約を確認したか
- [ ] 地主の承諾取得の見込み及び承諾料の相場を事前に確認したか
- [ ] 承諾が得られない場合の借地借家法第19条の裁判所許可申立ての要否を検討したか
- [ ] 承諾料の負担者(売主・買主・折半)を確定したか
- [ ] 地代の滞納の有無を確認したか
- [ ] 増改築禁止特約の有無及び建替え予定がある場合の地主対応方針を確認したか
- [ ] 契約が停止条件不成就となった場合の既払金返還条項を明記したか
- [ ] 借地権の存続期間満了時期及び更新の見込みを確認したか
- [ ] 地代改定条項の有無及び直近の改定履歴を確認したか
- [ ] 定期借地権の場合、期間満了時の建物取扱い(買取請求権の有無)を買主に説明したか