ストックフォトや撮影映像を広報物に使う場面の許諾書。著作権法第21条の複製権に加え、被写体の肖像権処理の表明保証も規定します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
写真・映像素材利用許諾契約書
第1部: 書式本文
【素材提供者名】(以下「甲」という。)と【広告主・制作会社名】(以下「乙」という。)とは、下記写真・映像素材(以下「本素材」という。)の利用に関し、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。
記 素材の名称・識別番号: 【 】 素材の種別: 【静止画/動画】 撮影日・撮影場所: 【 】
第1条(目的) 本契約は、甲が権利を有する本素材について、著作権法第21条に定める複製権その他必要な権利に基づき、乙による利用を許諾することを目的とする。
第2条(許諾の類型) 本契約における許諾は、次のいずれかの類型による。 (1) ロイヤリティフリー型: 甲が定める利用範囲内であれば、乙は追加の対価なく反復して本素材を利用できる。 (2) 期間限定型: 乙は、第4条に定める利用期間内に限り本素材を利用できるものとし、期間経過後の利用には別途甲の許諾を要する。 本契約においては【ロイヤリティフリー型/期間限定型】を適用するものとする。
第3条(利用範囲) 1. 乙は、本素材を【広告物、ウェブサイト、印刷物等】(以下「利用媒体」という。)に複製・掲載する方法により利用できる。 2. 乙は、本素材をトリミング、色調補正その他軽微な加工を施したうえで利用できるものとし、本素材の本質的な特徴を損なう改変を行う場合は甲の事前の書面による承諾を要する。 3. 乙は、甲の事前の書面による承諾なく、本素材を第三者に再許諾し、又は本素材のみを単体で販売してはならない。
第4条(利用期間) 本契約が期間限定型による場合、利用期間は【 年 月 日】から【 年 月 日】までとする。ロイヤリティフリー型による場合、本条は適用しない。
第5条(対価) 乙は甲に対し、本素材の利用許諾の対価として、金【 】円(消費税別)を、本契約締結日から【 】日以内に甲の指定する口座へ振り込む方法により支払う。
第6条(被写体の肖像権処理に関する表明保証) 1. 甲は、本素材に人物が写り込んでいる場合、当該被写体本人又はその法定代理人から、本素材が乙の定める利用媒体・利用態様で利用されることについて、肖像の使用に関する同意を取得済みであることを表明し、保証する。 2. 甲は、被写体の肖像権が、判例上確立した人格的利益として法律上保護される権利であり、これを侵害する行為が民法第709条の不法行為に該当し得ることを理解したうえで、前項の同意取得を行ったことを表明する。 3. 前二項の表明保証に反し、被写体又はその関係者から乙に対して肖像権侵害を理由とする損害賠償請求、利用差止め請求その他の請求がなされた場合、甲は自己の責任と費用負担においてこれを解決し、乙に生じた損害を賠償する。
第7条(第三者権利の非侵害) 甲は、本素材が第三者の著作権、意匠権、商標権その他の権利を侵害するものでないことを表明し、保証する。ただし、本素材に写り込む建築物、商品、標章等について、乙が利用媒体における表示方法を決定する場合、当該表示方法に起因する権利侵害については乙が責任を負う。
第8条(クレジット表示) 乙は、甲又は甲が指定する権利者の氏名若しくは名称を、利用媒体の性質上表示が可能な場合に限り、甲乙協議のうえ定める方法で表示する。
第9条(利用結果物の提出) 乙は、甲の求めがあるときは、本素材を利用した完成物の見本又は写しを甲に提出する。
第10条(契約解除及び損害賠償) 1. 甲又は乙は、相手方が本契約に違反し、相当期間を定めた催告後も是正されない場合、本契約を解除できる。 2. 前項の解除により相手方に損害が生じた場合、違反当事者はこれを賠償する。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 素材提供者向け
A-1 第3条第3項の修正例 「乙は、本素材を利用したデータファイルを第三者(広告代理店、印刷会社等、乙の履行補助者を除く。)に譲渡し、又は本素材そのものをストックフォトサービス等に再登録してはならない。」 一言解説: 提供者側としては、履行補助者への提供までは実務上避けられないため一定範囲で許容しつつ、素材そのものの流出・再配布ルートを明確に禁止しておくと権利の希薄化を防げる。
A-2 第6条第1項の修正例 「甲は、被写体との間で取得した肖像使用同意書の写しを、本契約締結時に乙に提出するものとする。乙は当該同意書の内容が本契約の利用媒体・利用態様と整合しているかを確認できる。」 一言解説: 表明保証を口頭・抽象的な条項のみに委ねると立証が困難になるため、提供者側は同意取得の裏付け資料を実際に提示する運用にしておくと信頼性が高まる。
B節: 広告主・制作会社向け
B-1 第6条第3項の修正例 「甲の表明保証違反により乙又は乙の顧客が第三者から請求を受けた場合、甲は当該請求への対応費用(弁護士費用を含む。)及び和解金・賠償金の全額を乙に補償するものとし、乙は当該請求について甲に速やかに通知し、防御に必要な協力を求めることができる。」 一言解説: 制作会社は自社の顧客(広告主本人)からも責任を追及されうる立場にあるため、素材提供者からの補償の範囲を防御費用まで含めて明確化しておくことがリスク管理上重要である。
B-2 第9条の修正例 「乙は、本素材を利用した完成物の公開前に、被写体の写り方(構図、周辺情報の写り込み等)について甲に確認を求めることができるものとし、甲は合理的な期間内に回答する。」 一言解説: 広告主側は公開後のトラブルを未然に防ぎたいため、公開前レビューの機会を条項化しておくことで、肖像権処理の実効性を事前に検証できる。
C節: ロイヤリティフリー/期間限定
C-1 第2条の修正例(ロイヤリティフリー型の限定) 「ロイヤリティフリー型による場合であっても、乙による本素材の利用は非独占的なものであり、甲は同一の本素材を乙以外の第三者にも利用許諾できるものとする。」 一言解説: ロイヤリティフリーは対価の追加負担なく反復利用できることを意味するに過ぎず、独占利用を意味しないため、誤解を避けるため非独占である旨を明記しておく必要がある。
C-2 第4条の修正例(期間限定型の終了処理) 「期間限定型による場合、乙は利用期間の満了後【14】日以内に、本素材を用いて制作した広告物のうち公衆の閲覧に供されているものを撤去又は非公開化しなければならない。」 一言解説: 期間限定型では単に新規利用を停止するだけでなく、既存の掲載物の撤去期限まで定めておかないと、期間経過後もウェブサイト等に掲載され続ける事態が生じやすい。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、ストックフォトや撮影済みの写真・映像素材を、広告物やウェブサイト等の広報物に複製して利用する場面、すなわち著作権法第21条の複製権を中心とした既存素材のライセンス取引に用いる。制作を発注してゼロから素材を作らせる委託契約とは異なり、既に完成している素材の利用条件を定める点に特徴があるため、制作委託の要素(修正回数、納期管理等)が中心となる取引には適さない。
写真・映像素材に特有の論点として、被写体の肖像権処理がある。肖像権は著作権法上に明文規定のある権利ではなく、判例上、人が自己の容ぼう等をみだりに撮影・公表されない人格的利益として認められてきたものであり、これを侵害する行為は民法第709条の不法行為として損害賠償責任を生じさせうる。素材提供者が被写体本人から肖像の使用について同意を得ていない場合、複製権の処理が完了していても、被写体側から利用差止めや損害賠償を請求されるリスクが別途残る。実務上よくある失敗の一つ目は、複製権の許諾条項のみを整備し、肖像権処理の有無を確認せずに人物写真を広告に使用してしまい、被写体から後日クレームを受けるケースである。第6条のように肖像権処理の表明保証を独立した条項として設け、違反時の補償範囲を明確にしておく必要がある。二つ目は、期間限定型で契約したにもかかわらず、期間満了後もウェブサイト等への掲載を放置してしまい、無許諾利用状態が継続するケースであり、C節のような撤去期限の明記が対策となる。三つ目は、ロイヤリティフリーという言葉から独占利用を許諾されたと誤解し、同一素材が競合他社の広告にも使用されて紛争になるケースであり、非独占である旨を条項上明示しておくことが有効である。
肖像権侵害の成否は撮影状況や公表の態様によって個別具体的に判断されるため、契約締結前に個別事案について専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 本素材の識別番号・撮影日・撮影場所を特定したか
- [ ] ロイヤリティフリー型か期間限定型かを明確に選択したか
- [ ] 利用媒体(広告物、ウェブサイト、印刷物等)の範囲を具体的に定めたか
- [ ] トリミング・加工の許容範囲と改変の限度を定めたか
- [ ] 被写体が写り込んでいる場合、肖像使用同意の取得状況を確認したか
- [ ] 肖像権処理に関する表明保証及び違反時の補償範囲を定めたか
- [ ] 第三者の著作権・意匠権・商標権等の非侵害保証を定めたか
- [ ] クレジット表示の要否及び方法を定めたか
- [ ] 期間限定型の場合、期間満了後の掲載物撤去義務を定めたか
- [ ] 再許諾・単体再販売の禁止を明記したか