会社が借上げまたは所有する住宅を従業員へ貸与する社宅使用契約書。民法第601条の賃貸借を基礎に、退職時の明渡しや使用料の給与控除、現物給与課税に配慮。

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社宅使用契約書

第1部: 書式本文

社宅使用契約書

【株式会社〇〇】(以下「会社」という。)と、従業員【従業員氏名】(以下「使用者」という。)は、次のとおり社宅使用契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(目的) 会社は、福利厚生の一環として、会社が所有し又は借り上げる下記住宅(以下「本社宅」という。)を使用者に使用させ、使用者はこれを使用する。 - 所在地: 【所在地】 - 住宅名称・号室: 【住宅名称・号室】

第2条(使用資格) 1. 本社宅の使用資格は、会社に在籍する正社員であって、会社が別途定める社宅管理規程の入居基準を満たす者に限る。 2. 使用者は、休職、退職、転勤その他会社が定める事由が生じたときは、当該事由発生日から【 】日以内に本社宅を明け渡すものとする。

第3条(使用期間) 本契約の使用期間は、会社と使用者との雇用関係の存続を前提とし、雇用関係終了時に当然に終了する。

第4条(使用料) 1. 使用者は会社に対し、本社宅の使用料として月額金【 】円を負担する。 2. 使用料は、会社が使用者に支払う給与から控除する方法により徴収する。ただし、労働基準法第24条第1項但書に基づき、労使協定を締結した場合に限る。

第5条(用法遵守) 1. 使用者は、本社宅を専ら自己及び同居家族の居住の用にのみ使用し、事務所その他居住以外の用途に使用してはならない。 2. 使用者は、会社の書面による事前の承諾なく、本社宅の全部又は一部を第三者に転貸し、又は同居家族以外の者を居住させてはならない。

第6条(退職・異動時の明渡し) 1. 使用者が退職し、又は転勤その他の事由により本社宅を使用する資格を失ったときは、会社が指定する期限までに本社宅を明け渡すものとする。 2. 会社は、明渡しが遅延した場合、社宅管理規程に基づき、通常の賃料相当額を明渡しまでの損害金として請求することができる。

第7条(修繕・維持管理) 1. 本社宅の通常の維持管理費用は会社が負担し、使用者の故意・過失による損傷の修繕費用は使用者が負担する。 2. 使用者は、本社宅に修繕を要する箇所を発見したときは、速やかに会社に通知する。

第8条(原状回復) 使用者は、本社宅の明渡し時、通常損耗及び経年劣化を除き、自己の責めに帰すべき事由による損傷を原状に回復する。

第9条(禁止事項) 使用者は、会社の承諾なく、本社宅の増改築、模様替え、ペット飼育その他会社が社宅管理規程で禁止する行為を行ってはならない。

第10条(協議事項) 本契約に定めのない事項は、会社と使用者が誠実に協議して定める。

以上、本契約締結の証として本書2通を作成し、会社・使用者記名押印の上、各1通を保有する。

【締結日】

会社: 【住所】 【会社名】 印 使用者: 【住所】 【氏名】 印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節: 会社(貸主)向け(借上げ社宅の場合)

A-1 第1条の修正例 「本社宅は、会社が第三者所有者【所有者名】との間で賃貸借契約を締結して借り上げたものであり、会社は当該賃貸借契約に基づく転貸の形式で使用者に使用させる。使用者は、会社と所有者間の賃貸借契約が終了したときは、会社の指示に従い速やかに退去するものとする。」 一言解説: 借上げ社宅の場合、会社と所有者間の原契約の終了リスクが使用者にも波及するため、原契約終了時の連動明渡し条項を明記しておく必要がある。

B節: 入居従業員向け(使用料控除に関する確認事項)

B-1 第4条への追加確認 「使用者は、社宅使用料の給与控除について、労働基準法第24条第1項に基づく労使協定の締結を前提として同意するものとし、当該協定の内容(控除項目・控除額の算定方法)について会社から説明を受けたことを確認する。」 一言解説: 使用者側としては、賃金全額払いの原則(労働基準法第24条)の例外として控除が行われる根拠(労使協定)を確認しておくことで、給与明細上の控除額に疑義が生じた際の対応がしやすくなる。

C節: 人事担当者向け(現物給与課税への配慮)

C-1 第4条への追加例 「会社は、本社宅の使用料が所得税基本通達に定める賃貸料相当額の50パーセント未満とならないよう使用料を設定するものとし、使用料が賃貸料相当額の50パーセントを下回る場合は、その差額を給与として課税処理する。」 一言解説: 人事・経理担当者は、社宅使用料が低額すぎると経済的利益として現物給与課税の対象となる税務リスクがあるため、賃貸料相当額との比較を契約設計段階から意識する必要がある。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

本書式は、会社が所有又は借り上げる住宅を福利厚生として従業員に使用させる場面で使用する。従業員が独立の意思で市場から物件を探し会社が単に家賃補助を支給するだけの制度(住宅手当型)には適さず、その場合は住宅手当支給規程等の別の書式で対応すべきである。

根拠法令として、社宅使用関係の基礎は民法第601条の賃貸借であるが、通常の賃貸借とは異なり、雇用関係の存続を前提とする使用貸借的な性格(民法第593条以下も参考になる)を併せ持つ点に特徴がある。使用料の給与控除については労働基準法第24条第1項の賃金全額払いの原則が適用され、控除するには法令に別段の定めがある場合を除き、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合又は過半数代表者との書面による労使協定が必要である。また、使用料の設定水準は所得税法上の現物給与課税(経済的利益の供与)の問題と直結し、国税庁の通達に基づく賃貸料相当額の算定と使用料との比較が必要になる。

実務でよくある失敗の一つ目は、労使協定を締結せずに社宅使用料を給与から控除してしまい、労働基準法第24条違反となることである。本書式第4条のように控除の前提として労使協定の締結を明記し、実際に協定を締結した上で運用する必要がある。

二つ目の失敗は、社宅使用料を著しく低廉に設定し、税務上の現物給与として課税漏れが生じることである。C節のように賃貸料相当額との比較基準を人事規程・契約の双方に反映させ、定期的に近隣相場や固定資産税評価額の見直しに応じて使用料を改定する運用が望ましい。

三つ目の失敗は、退職時の明渡し期限や損害金の定めが曖昧で、退職後も社宅に居座られるトラブルが生じることである。第6条のように、資格喪失事由発生から明渡しまでの期限と遅延時の損害金算定方法を明記しておくことが重要である。

社宅使用料の適正水準の算定方法や、借上げ社宅における原契約終了時の使用者保護の範囲については、税務上・労務上の論点が絡むため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 使用資格(在籍要件・入居基準)を社宅管理規程と整合させたか
  • [ ] 雇用関係終了時に契約が当然終了する旨を明記したか
  • [ ] 使用料の給与控除について労使協定(労働基準法第24条)を締結しているか
  • [ ] 使用料が所得税法上の賃貸料相当額の基準を満たしているか確認したか
  • [ ] 借上げ社宅の場合、原契約終了時の連動明渡し条項を設けたか
  • [ ] 退職・異動時の明渡し期限と遅延損害金を定めたか
  • [ ] 通常損耗と使用者負担の原状回復範囲を区別したか
  • [ ] 転貸・同居家族以外の入居禁止を明記したか
  • [ ] ペット飼育等の禁止事項が社宅管理規程と整合しているか
  • [ ] 使用者への説明・同意取得のプロセスを整備したか