従業員が業務で車両を運転する際に安全運転と任意保険加入を誓約させる書式。道路交通法のアルコール検知義務や民法第715条の使用者責任を踏まえ私有車の条件も定めます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
社有車・私有車の業務使用に関する誓約書
第1部: 書式本文
【会社名】(以下「会社」という)は、車両を業務に使用する【誓約者所属・氏名】(以下「本人」という)に対し、下記事項を提示し、本人は下記事項を誓約する。
第1条(目的) 本誓約書は、本人が社有車又は私有車を業務のため運転するにあたり、安全運転及び車両管理に関する事項を確認することを目的とする。
第2条(運転免許の有効性) 本人は、業務運転に必要な運転免許を有効に保持していることを確認し、免許停止、取消し又は失効が生じたときは直ちに会社に届け出る。
第3条(法令遵守) 本人は、業務運転にあたり、道路交通法その他の道路交通に関する法令を遵守する。
第4条(酒気帯び運転の禁止・確認への協力) 本人は、酒気を帯びた状態で運転を行わない。また、会社の指定する方法によるアルコール検知器を用いた酒気帯びの有無の確認に協力する。
第5条(私有車使用の条件) 本人が私有車を業務に使用する場合、次の条件を満たすことを確認する。 一 対人・対物ともに無制限の任意保険に加入していること 二 車検及び定期点検が適法に行われていること 三 事前に会社の許可を得ていること
第6条(社有車の管理) 本人は、社有車を運転する場合、始業前点検を実施し、私的利用を行わない。
第7条(事故発生時の対応) 本人は、業務運転中に事故を起こし又は事故に遭遇した場合、負傷者の救護及び警察への届出等の法令上の措置を講じた上で、直ちに会社に報告する。
第8条(交通違反の報告) 本人は、業務運転中に交通違反により行政処分又は刑事処分を受けた場合、速やかに会社に報告する。
第9条(費用負担) 業務運転に伴い生じた駐車違反等の反則金及び罰金は、本人の帰責事由による場合、本人が負担する。ガソリン代及び高速道路料金等の実費は会社が定める方法により精算する。
第10条(違反時の対応) 本人が本誓約に違反した場合、会社は就業規則に基づく懲戒処分その他必要な措置を講じることができる。
以上、本誓約書の内容を確認し、下記に署名する。
【署名日】 【誓約者所属・氏名】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 総務担当の立場から
総務担当としては、車両管理台帳と連動させ、免許証の有効期限や保険の更新状況を定期的に確認する運用を誓約書上でも位置づけることが望ましい。
修正例:「本人は、運転免許証及び任意保険証券の写しを会社に提出し、更新の都度、最新のものを速やかに提出する。」
一言解説:誓約書を取得するだけでなく、免許や保険の有効性を客観的資料で継続的に確認する運用にすることで、無免許運転や無保険運転のリスクを実効的に防止できる。
B. 安全運転管理者の立場から
安全運転管理者としては、道路交通法施行規則が求めるアルコール検知器を用いた確認の実施方法と記録の保存を具体的に定めることが必要である。
修正例:「本人は、業務運転の前後において、安全運転管理者又はその補助者が行うアルコール検知器を用いた確認を受け、確認記録への署名に応じる。」
一言解説:2023年以降、安全運転管理者選任事業所には目視及びアルコール検知器による酒気帯び確認と記録保存が求められており、誓約書と確認記録の運用を一体化させる必要がある。
C. 人事労務担当の立場から
人事労務担当としては、私有車を通勤及び業務の両方で使用する従業員について、業務使用時と通勤時の保険適用範囲の違いを本人に理解させる規定を追加することが望ましい。
修正例:「本人は、私有車を業務に使用する場合の保険適用範囲が、通勤のみに使用する場合と異なり得ることを理解し、業務使用に対応した保険内容であることを確認する。」
一言解説:通勤専用の保険条件では業務使用中の事故が補償対象外となる場合があるため、契約内容の確認を促す規定が実務上有用である。
人事労務担当としてはさらに、複数車両を運転する従業員について、車両ごとの運転記録を一元的に集約し、事故傾向を分析できる仕組みを整えることが望ましい。
修正例:「本人は、業務運転の都度、運転日、走行距離及び運転車両を運転日報に記録し、会社の指定する方法により提出する。」
一言解説:運転記録を蓄積することで、事故が多発する従業員や時間帯を把握でき、安全運転指導の対象を的確に絞り込むことができる。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、営業活動や配送業務等で従業員に車両の運転を行わせる企業が、安全運転の徹底と事故発生時の対応、私有車使用時の条件を確認する場面で使用する。運転業務が一切発生しない事業所では使用の必要性は低い。
根拠法令としては、道路交通法が酒気帯び運転等を禁止しており、同法施行規則第9条の10は安全運転管理者の業務としてアルコール検知器を用いた運転者の状態確認及び記録の保存を求めている。また、民法第715条は使用者責任を定めており、従業員が業務中に第三者に損害を与えた場合、会社が損害賠償責任を負う可能性がある。自動車損害賠償保障法第3条は運行供用者責任を定めており、私有車を業務使用させている場合には会社が運行供用者と評価されるリスクもある。
実務でよくある失敗として、第一に、私有車の業務使用を黙認しているが任意保険の加入状況を確認しておらず、事故発生時に十分な補償が得られないケースがある。任意保険証券の写しの提出を義務付け、対人・対物無制限であることを確認することが対策となる。第二に、アルコール検知器による確認を形式的に導入したが、実際の確認記録を保存しておらず、行政による点検時に運用の実効性を説明できないケースがあり、確認記録の保存方法を明確にする必要がある。第三に、業務運転中の交通違反について本人が会社に報告せず、後日免許停止処分が発覚し業務に支障が生じるケースがあり、違反発生時の即時報告義務を明記することが望ましい。
第四に、運転日報等の記録を取っておらず、事故が多発する従業員や時間帯を把握できないまま漫然と業務運転を継続させ、同種の事故が繰り返されるケースがあり、運転記録の集約と分析の仕組みを整えることが対策となる。
事故発生時の責任分担や保険の適用範囲は個別の契約内容により異なるため、実際の運用にあたっては弁護士又は保険の専門家に個別に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 運転免許の有効性確認及び失効時の届出義務を明記したか
- [ ] 酒気帯び運転の禁止及びアルコール検知器による確認への協力を明記したか
- [ ] 私有車使用時の任意保険加入条件(対人・対物無制限)を明記したか
- [ ] 私有車の車検・定期点検の実施状況確認を明記したか
- [ ] 社有車の始業前点検及び私的利用禁止を明記したか
- [ ] 事故発生時の救護・届出・報告手順を定めたか
- [ ] 交通違反発生時の報告義務を定めたか
- [ ] 反則金・罰金等の費用負担ルールを明記したか
- [ ] アルコール検知の確認記録の保存方法を定めたか
- [ ] 通勤使用時と業務使用時の保険適用範囲の違いを説明したか
- [ ] 運転日報等による運転記録の集約方法を定めたか
- [ ] 車検・法定点検の実施状況を確認する頻度を定めたか