少人数私募債を発行して資金を調達する場面の引受契約書。会社法第676条の募集事項の決定と金融商品取引法上の私募の要件を満たす条件を記載。

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私募債の引受契約書

第1部: 書式本文

【発行会社商号】(以下「発行会社」という。)と【引受人氏名又は名称】(以下「引受人」という。)とは、発行会社が少人数私募の方法により発行する社債の引受けに関し、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(社債の発行及び引受け) 発行会社は、会社法第676条各号に定める募集事項を第2条のとおり決定し、引受人はこれに応じて当該社債の総口数の全部を引き受ける。

第2条(募集事項) 1. 社債の名称:【〇〇株式会社第〇回無担保社債】 2. 社債の総額:金【〇〇】円 3. 各社債の金額:金【〇〇】円 4. 発行価額:額面100円につき金【〇〇】円 5. 利率:年【〇〇】% 6. 償還方法及び償還期限:【〇〇年〇〇月〇〇日】に一括償還する 7. 利息支払の方法及び期限:【毎年〇〇月〇〇日及び〇〇月〇〇日】に後払いする 8. 社債券の発行の有無:発行しない(社債原簿による管理とする)

第3条(私募の要件遵守) 1. 発行会社は、本社債の勧誘に際し、金融商品取引法第2条第3項第2号ロに定める少人数私募の要件(勧誘対象者が【50】名未満であること及び他の同種の社債と合算して分割された発行とならないこと)を充足するよう勧誘先を選定し、その記録を保存する。 2. 引受人は、本社債につき譲渡制限が付されていること及び金融商品取引法上の開示規制の適用対象とならないことを前提として本契約を締結することを確認する。 3. 発行会社は、社債要項において本社債の譲渡につき発行会社の取締役会(取締役会非設置会社の場合は取締役)の承認を要する旨を定め、譲渡による多数人保有への転化を防止する措置を講じる。

第4条(払込み) 引受人は、【〇〇年〇〇月〇〇日】限り、発行価額の総額を発行会社の指定する口座に払い込むものとし、発行会社は払込みを受けた日の翌日をもって社債の発行日とする。

第5条(社債権者名簿の記載) 発行会社は、払込みが完了した後遅滞なく社債原簿を作成し、引受人の氏名又は名称、住所及び保有口数を記載する。

第6条(期限の利益の喪失) 発行会社について次の各号のいずれかの事由が生じた場合、発行会社は当然に期限の利益を喪失し、引受人からの請求により社債の未償還残額及び未払利息を直ちに一括して支払う。 (1) 支払停止又は支払不能に陥ったとき (2) 破産、民事再生、会社更生その他の倒産手続の申立てがあったとき (3) 本契約又は社債要項に定める義務の履行を怠り、引受人の催告後【14】日以内に是正しないとき

第7条(財務制限条項) 発行会社は、本社債の未償還残高が存する期間中、各事業年度末日における純資産の額を前事業年度末日における純資産の額の【70】%以上に維持する。これに抵触した場合、発行会社は遅滞なく引受人に通知し、対応方針を協議する。

第8条(表明保証) 発行会社は、本契約締結日において、募集事項の決定に必要な機関決定を適法に経ていること、及び本社債の発行が法令又は定款に違反しないことを表明し保証する。

第9条(秘密保持) 発行会社及び引受人は、本契約の締結及び履行に関して知り得た相手方の財務情報その他の非公開情報を第三者に開示してはならない。

第10条(反社会的勢力の排除) 発行会社及び引受人は、自己が暴力団その他の反社会的勢力に該当せず、これらと関係を有しないことを表明し保証する。

第11条(合意管轄) 本契約に関する紛争については、【〇〇地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

以上の合意を証するため本書2通を作成し、両当事者記名押印の上、各自1通を保有する。

【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】

(発行会社) 住所:【     】     商号:【     】     代表者:【     】  印

(引受人) 住所:【     】     氏名又は名称:【     】  印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 発行会社向け書き換え

A-1. 取引先や役員等の関係者複数名に分散して引き受けさせる場合

第3条1項追加例:「発行会社は、勧誘対象者ごとの応諾状況及び勧誘日を一覧化した勧誘記録簿を作成し、本社債の償還完了まで保存する。」 解説: 少人数私募の要件は勧誘時点の人数で判定されるため、事後に人数要件の充足を証明できるよう記録化しておくことが発行会社の防御策となる。

A-2. 期限前の任意償還を認めたい場合

第6条柱書後段追加例:「発行会社は、償還期限前であっても引受人の事前同意を得て社債の全部又は一部を繰上償還することができる。」 解説: 資金繰りに余裕が生じた際に早期償還できる余地を残すことで、発行会社の利払負担を軽減できる。

B. 社債引受人向け書き換え

B-1. 引受人が金融機関で担保徴求を求める場合

第2条8項後段追加例:「発行会社は、本社債の担保として【〇〇】に根抵当権を設定し、引受人を根抵当権者とする。」 解説: 無担保社債では発行会社の信用力のみが引受人の回収原資となるため、担保付とすることで引受人のリスクを軽減できる。

B-2. 財務制限条項の違反時に金利を引き上げたい場合

第7条追加例:「前項の純資産維持義務に違反した場合、違反が是正されるまでの期間、利率を年【〇〇】%とする。」 解説: 期限の利益喪失という重い効果に至らない軽微な違反については、金利引上げという段階的な牽制策を設けることで柔軟な対応が可能になる。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面と使ってはいけない場面の解説 本書式は、非公開の中小企業やベンチャー企業が、取引先、役員、既存株主等の限られた関係者から少人数私募の方法により社債資金を調達する場面で用いる。50名以上への勧誘や公募を予定する場合、あるいは適格機関投資家私募として証券会社を通じた発行を行う場合には、金融商品取引法上の開示規制や第一種金融商品取引業者の関与が必要となるため、本書式のみでは対応できず、証券会社を交えた別途の引受契約及び目論見書の準備が必要になる。

根拠法令の解説 募集事項の決定については会社法第676条各号(社債の総額、各社債の金額、利率、償還方法及び期限等)を法定事項として定める必要があり、取締役会設置会社では原則として取締役会決議による(会社法第362条第4項第5号)。私募の要件については金融商品取引法第2条第3項第2号ロが、勧誘対象者が50名未満であること等を要件とする少人数私募を有価証券の募集に該当しないものとして扱っており、これにより有価証券届出書の提出義務(金融商品取引法第4条)を免れる。もっとも、同一種類の社債について一定期間内に複数回にわたり分割して勧誘し、合算して50名以上となる場合には、実質的な募集とみなされる転売制限や分割発行のみなし規定(いわゆる「一体性の要件」)に留意する必要がある。

実務でよくある失敗と対策 第一に、勧誘先の人数を発行時点でのみ確認し、過去の同種発行と合算した人数管理を怠る失敗がある。第3条1項のように勧誘記録を継続的に保存する運用を組み込む。第二に、譲渡制限を社債要項に定めず、少人数私募で発行した社債が転々流通し多数人保有に至る失敗がある。第3条3項のように取締役会承認を要する譲渡制限を明記する。第三に、財務制限条項を設けずに発行会社の信用悪化を早期に把握できない失敗がある。第7条のように純資産維持義務等の指標を設定する。私募規制の適用範囲の判定は個別の勧誘態様により結論が異なり得るため、具体的な発行スキームについては専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 会社法第676条各号の募集事項を漏れなく決定し取締役会等の機関決定を経たか
  • [ ] 勧誘対象者数が50名未満であることを確認し勧誘記録を保存する体制を整えたか
  • [ ] 過去の同種発行と合算して人数要件に抵触しないか確認したか
  • [ ] 社債要項に譲渡制限(取締役会承認等)を定めたか
  • [ ] 償還方法、償還期限及び利息支払方法を具体的に定めたか
  • [ ] 期限の利益喪失事由を発行会社の信用リスクに応じて設計したか
  • [ ] 財務制限条項の要否及び水準を検討したか
  • [ ] 担保設定の要否を確認したか
  • [ ] 表明保証事項が発行会社の実態に即しているか確認したか
  • [ ] 反社会的勢力排除条項及び合意管轄を定めたか