私道を通行し上下水道管等の埋設工事を行うための承諾書。民法第210条の囲繞地通行権や第213条の2の設備設置権、建築基準法第42条の接道要件に対応する。

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私道の通行・掘削承諾書

第1部: 書式本文

第1条(当事者) 私道所有者甲は、別紙物件目録記載の私道(以下「本私道」という。)について、通行者乙(本私道に接する土地の所有者又は買主)が本私道を通行し、及び上下水道管・ガス管等の埋設工事のために掘削することを承諾する。

第2条(通行の承諾) 甲は、乙及び乙の招へいする第三者(建築業者、宅配業者、来訪者等)が、本私道を通行することを承諾する。

第3条(掘削の承諾) 甲は、乙が乙の土地に上下水道管、ガス管その他の引込管を設置するために本私道を掘削することを承諾する。

第4条(掘削工事の条件) 乙は、掘削工事の実施にあたり、事前に甲に工事内容及び工期を通知し、工事後は本私道を原状に回復する。

第5条(承諾料) 乙は、甲に対し、本承諾の対価として金〇〇円を支払う。〔又は: 本承諾は無償とする。〕

第6条(承諾の対象範囲) 本承諾は、別紙図面に表示された範囲(通行部分及び掘削予定箇所)に限るものとし、これを超える範囲での通行・掘削には別途甲の承諾を要する。

第7条(承諾の永続性) 本承諾は、乙及び乙の承継人(相続人、譲受人)のために将来にわたって効力を有するものとし、甲が本私道を第三者に譲渡する場合、甲は譲受人に本承諾の内容を承継させる。

第8条(維持管理費用の分担) 本私道の維持管理(舗装補修、清掃等)に要する費用は、本私道を利用する者が共同して分担するものとし、分担割合は別紙のとおりとする。

第9条(登記への協力) 甲及び乙は、必要に応じて、本承諾の内容を通行地役権設定登記として登記することに協力する。

第10条(建築基準法上の接道要件) 乙は、本承諾を建築基準法第42条に定める接道要件を満たすための資料として利用することができる。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 私道所有者向けの修正

A-1. 承諾の撤回・条件変更権の留保

追加条文例:「甲は、本私道の管理上やむを得ない事由が生じたときは、乙に事前に通知のうえ、通行の時間帯又は掘削の方法について合理的な範囲で条件を変更することができる。」 一言解説: 私道所有者が将来の管理上の必要(工事、災害対応等)に応じて通行条件を調整できるようにする修正であり、無制限の承諾によって私道の管理権が失われることを防ぐ趣旨である。

B. 通行者(買主)向けの修正

B-1. 承諾の撤回不能性の明記

追加条文例:「本承諾は、乙が本私道に接する土地を所有する限り、甲及びその承継人からこれを撤回されないものとする。」 一言解説: 買主が私道の通行・掘削の権利を将来にわたって安定的に確保できるよう、撤回不能である旨を明記する修正である。特に接道要件を満たすための唯一の道路が私道である場合、この安定性は極めて重要となる。

C. 建築業者向けの修正

C-1. 工事車両の通行・資材搬入に関する具体的な承諾範囲の追加

追加条文例:「甲は、建築工事期間中、工事車両(重量〇トン以下)の通行及び本私道上への一時的な資材の仮置き(〇日以内)を承諾する。」 一言解説: 建築工事に伴う重機・車両の通行や資材の仮置きは通常の通行・掘削とは別に承諾範囲を明確にしておくことが望ましいため、工事業者向けに具体化する修正である。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、第三者(近隣住民等)が所有する私道に接する土地を購入する者や、当該土地に建物を建築する事業者が、私道の通行及び上下水道管等の埋設工事のための掘削について私道所有者から承諾を得る場面で用いる。私道が既に道路位置指定(建築基準法第42条第1項第5号)を受けている場合や、複数の土地所有者の共有名義になっている場合は、承諾を得るべき相手方(単独所有者か共有者全員か)が異なるため、事前に私道の権利関係を登記記録で確認する必要がある。

根拠法令 民法第210条は、他の土地に囲まれて公道に通じない土地(袋地)の所有者が、公道に至るため囲繞地を通行できる旨を定める(囲繞地通行権、いわゆる法定通行権)。もっとも、私道が既に開設されており、単に通行の便宜のために承諾を求める場合は、法定通行権とは別に、私道所有者との合意(承諾)による通行権の設定が実務上一般的である。2021年の民法改正で新設された第213条の2は、他の土地に設備を設置しなければ電気、ガス、水道水の供給その他これらに類する継続的給付を受けることができない土地の所有者が、必要な範囲で他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる旨を定めており、掘削承諾の実質的な根拠となりうる。建築基準法第42条は「道路」の定義を定め、同法第43条は建築物の敷地が道路に2メートル以上接しなければならない旨(接道義務)を定めており、私道が同法第42条の道路に該当するか否かは建築確認の可否に直結する。

実務でよくある失敗と対策 第一に、私道が共有名義であるにもかかわらず一部の共有者からのみ承諾を得て、他の共有者から異議を述べられる失敗がある。私道の登記事項証明書を確認し、共有者全員から承諾を取得することが望ましい。第二に、通行の承諾のみを得て掘削の承諾を別途取得することを失念し、上下水道の引込工事の段階になって私道所有者との交渉が難航する失敗がある。第2条・第3条のように通行と掘削を区別してそれぞれ明記することが重要である。第三に、承諾が口頭の合意にとどまり、私道所有者が変わった場合(相続・売却)に新所有者から承諾の効力を争われる失敗がある。第7条のように承諾の永続性及び承継人への効力を明記し、可能であれば通行地役権の設定登記(第9条)まで行うことが望ましい。

第四に、私道所有者から承諾を得る際に、将来にわたる維持管理費用の分担ルールを定めないまま承諾書のみを取得し、私道の舗装補修等が必要になった段階で費用負担をめぐる紛争が生じる失敗もある。第8条のように利用者間の費用分担割合をあらかじめ定めておくことが望ましい。第五に、掘削承諾の範囲を「上下水道管の設置」とのみ抽象的に記載し、実際の掘削位置・深さ・復旧方法について具体的な取り決めがないまま工事を実施し、私道所有者から原状回復が不十分であるとの指摘を受ける失敗もある。掘削位置を示す図面を添付し、原状回復の基準(舗装の仕様等)を明記しておくことが有効である。

私道の権利関係や接道要件の該当性は個別の物件により大きく異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。特定行政庁への確認もあわせて行うことが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 私道の登記記録を確認し、所有者(単独か共有か)を特定したか
  • [ ] 私道が建築基準法第42条のいずれの類型の道路に該当するかを確認したか
  • [ ] 共有名義の場合、共有者全員から承諾を取得したか
  • [ ] 通行の承諾と掘削の承諾を区別して明記したか
  • [ ] 承諾料の有無及び金額を確認したか
  • [ ] 承諾の永続性(承継人への効力)を明記したか
  • [ ] 通行地役権設定登記の要否を検討したか
  • [ ] 工事車両の通行・資材仮置きについて別途承諾を得たか
  • [ ] 私道の維持管理費用の分担割合を確認したか
  • [ ] 掘削位置・深さを示す図面を添付したか
  • [ ] 工事後の原状回復の基準(舗装仕様等)を明記したか