士業事務所が事務職員や補助者から取得する秘密保持誓約書。税理士法・社会保険労務士法の守秘義務と個人情報保護法を踏まえ、退職後の義務も規定。

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補助者の秘密保持誓約書

第1部: 書式本文

【士業事務所名】(以下「事務所」という。)は、下記に署名する【補助者・事務職員の氏名】(以下「本人」という。)から、事務所における業務遂行に関し、次のとおり秘密保持に関する誓約書(以下「本誓約書」という。)の提出を受ける。

第1条(誓約の趣旨) 本人は、事務所の補助者又は事務職員として、事務所が受任する税務、労務、法務その他の業務に関連して顧客の秘密情報及び個人情報を取り扱う立場にあることを理解し、本誓約書に定める秘密保持義務を遵守することを誓約する。

第2条(秘密情報の定義) 本誓約書において「秘密情報」とは、事務所が顧客から取得し、又は業務上作成した顧客の氏名、財産状況、税務情報、労務情報その他の非公開情報、及び事務所の営業上・組織上の情報であって、本人が業務を通じて知り得たすべての情報をいう。

第3条(在職中の秘密保持義務) 1. 本人は、在職中、秘密情報を業務遂行の目的以外に利用してはならない。 2. 本人は、秘密情報を事務所の許可なく第三者(事務所内の無関係な部署の者を含む。)に開示してはならない。 3. 本人は、事務所が定める資格者(税理士、社会保険労務士等)の指示に従い、秘密情報を記録した書類及び電子データを定められた保管方法及び保管場所以外で取り扱ってはならない。

第4条(個人情報の安全管理) 本人は、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第23条に定める安全管理措置の一環として事務所が講じる規程及び指示(アクセス制限、持出しの禁止、私物端末での保存の禁止等)を遵守し、個人情報の漏えい、滅失又は毀損の防止に努める。

第5条(退職後の秘密保持義務) 本人は、事務所を退職した後も、在職中に知り得た秘密情報を第三者に開示し、又は自己若しくは第三者の利益のために利用してはならない。本条の義務は退職後【5】年間存続する。

第6条(競業避止義務との区別) 本誓約書は秘密情報の開示及び利用の制限を定めるものであり、本人が退職後に同種の業務を行う事務所へ転職し、又は自ら開業することを妨げるものではない。ただし、当該転職又は開業に伴い秘密情報を利用してはならない。

第7条(データ及び書類の返還) 本人は、退職その他の事由により事務所を離れる際、秘密情報を記録した書類、電子データ及び記録媒体を速やかに事務所に返還又は破棄し、自己の手元に複製を残さない。

第8条(違反時の措置) 本人が本誓約書に違反した場合、事務所は就業規則に基づく懲戒処分を行うほか、当該違反により生じた損害の賠償を本人に請求することができる。

第9条(有資格者の法定守秘義務との関係) 事務所に所属する税理士については税理士法(昭和26年法律第237号)第38条及び第54条、社会保険労務士については社会保険労務士法(昭和43年法律第89号)第21条に定める秘密を守る義務が別途適用される。本人は、これらの有資格者の指示及び事務所の内部規程が、これらの法定義務を履行するために定められていることを理解する。

第10条(有効期間) 本誓約書に基づく義務は、本人の入職時から発生し、第5条に定める場合を除き、本人が事務所に在職する期間中存続する。

以上のとおり誓約する。

【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】

本人 住所:【     】   氏名:【     】  印

事務所 名称:【     】   代表者:【     】

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 士業事務所(使用者)向け

A-1. 税理士事務所で複数の顧問先を担当させる場面

第3条3項追加例:「本人は、担当する顧問先以外の顧問先の秘密情報について、業務上必要のない限りアクセスしてはならず、事務所が定めるアクセス権限の範囲を超えて閲覧してはならない。」 解説: 複数顧問先の情報を一括管理するシステムでは、担当外情報への不要なアクセスが漏えいリスクを高めるため、権限範囲を明記する。

A-2. 在宅勤務・リモートアクセスを認める場面

第4条追加例:「本人は、事務所が許可した端末及び通信回線以外を用いて秘密情報にアクセスしてはならず、私物端末への秘密情報のダウンロードを禁止する。」 解説: リモートワーク環境では端末の私的利用による漏えいが典型的な事故原因となるため、利用端末を限定する。

B. 補助者・事務職員向け

B-1. 退職後に同業他事務所へ転職する場面

第5条・第6条確認例:「本人が退職後に転職する場合であっても、在職中に知り得た顧客の氏名・連絡先を含む秘密情報を新たな勤務先の営業活動に利用してはならない。」 解説: 転職自体は制限されないが、顧客名簿等の利用は秘密情報の目的外利用に該当するため、転職の自由と秘密保持義務の境界を明確にする。

B-2. 退職時にデータ持出しを求められた場面

第7条修正例:「本人は、自らが作成に関与した業務資料であっても、顧客の秘密情報を含む場合は、事務所の書面による承諾なく複製又は持出しをしてはならない。」 解説: 自ら作成した資料であるという理由で持出しが正当化されると誤解されやすいため、秘密情報を含む限り承諾を要する旨を明記する。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面・使ってはいけない場面 本書式は、税理士、社会保険労務士等の有資格者が所属する事務所が、有資格者ではない補助者や事務職員から秘密保持に関する誓約を取得する場合に用いる。有資格者本人の守秘義務は業法上当然に生じるため本書式の対象ではなく、また競業避止(同業への転職や開業自体の禁止)を目的とする場合は、職業選択の自由との関係で別途の合理性審査を要する競業避止義務誓約書を用いるべきであり、本書式で代用すべきではない。

根拠法令 税理士の守秘義務を定める税理士法第38条及び罰則を定める第54条、社会保険労務士の秘密保持義務を定める社会保険労務士法第21条を、有資格者自身の法定義務の根拠とする。補助者は法定の守秘義務の直接の名宛人ではないことが多いため、個人情報の保護に関する法律第23条の安全管理措置の一環として、事務所が補助者に対し契約上の秘密保持義務を課す構成をとる。

実務でよくある失敗と対策 第一に、補助者には法定守秘義務がないという理解のまま誓約書を取得せず、情報管理体制に穴が生じる失敗がある。第4条のように安全管理措置の一環として契約上の義務を明記する。第二に、秘密保持義務と競業避止義務を混同し、転職自体を禁止するかのような表現を用いて無効と判断されるおそれのある失敗がある。第6条のように両者を明確に区別する。第三に、退職後の義務期間を定めず、期限のない義務として合理性を欠く失敗もある。事務所の業種や情報の性質により適切な期間は異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 秘密情報の定義に顧客情報と事務所の営業情報の双方を含めたか
  • [ ] 在職中の利用制限・開示制限・アクセス制限を具体的に定めたか
  • [ ] 個人情報保護法上の安全管理措置との関係を明記したか
  • [ ] 退職後の秘密保持義務の存続期間を明記したか
  • [ ] 秘密保持義務と競業避止義務を区別し、転職・開業自体は妨げない旨を明記したか
  • [ ] 有資格者(税理士・社会保険労務士等)の法定守秘義務との関係を説明したか
  • [ ] 退職時のデータ・書類の返還又は破棄の手続を定めたか
  • [ ] 違反時の懲戒処分及び損害賠償請求の可能性を明記したか
  • [ ] リモートワークや私物端末利用がある場合の追加制限を検討したか