贈与者の死亡を条件に財産を承継させる場面の書式。民法第554条により遺贈の規定が準用され、執行者の指定や仮登記の可否も定めます。

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死因贈与契約書

第1部: 書式本文

【贈与者氏名】(以下「甲」という。)と【受贈者氏名】(以下「乙」という。)とは、甲の死亡を条件として甲の財産を乙に贈与することに関し、次のとおり死因贈与契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(死因贈与の合意) 甲は、甲の死亡を停止条件として、下記財産(以下「本贈与財産」という。)を乙に無償で贈与することを約し、乙はこれを受諾した。

記 【〇〇市〇〇区〇〇 所在 建物 家屋番号〇〇番、又は金〇〇〇円等】

第2条(契約としての性質) 本契約は、甲乙双方の意思表示の合致によって成立する契約であり、甲の単独の意思表示によって成立し方式が厳格に定められている遺言(民法第960条以下)とは法的性質を異にする。もっとも、本契約の効力については、民法第554条の規定により、その性質に反しない限り遺贈に関する規定(遺言の方式に関する規定を除く。)が準用される。

第3条(効力発生時期) 本契約は、甲の死亡時にその効力を生じ、甲の死亡と同時に本贈与財産の権利は乙に移転する。

第4条(執行者の指定) 1. 甲は、民法第554条により準用される遺言執行者に関する規定に従い、本契約の執行者(以下「執行者」という。)として【執行者氏名】を指定する。 2. 執行者は、甲の死亡後、本贈与財産に関する登記手続その他本契約の履行に必要な一切の行為を行う権限を有する。 3. 執行者が就任前に死亡し、又は執行者の任務を辞したときは、乙は家庭裁判所に対し執行者の選任を申し立てることができる。

第5条(始期付所有権移転仮登記) 甲は、乙が本契約に基づき、甲の生存中であっても本贈与財産につき始期付所有権移転の仮登記を申請することを承諾し、これに必要な書類の交付その他の協力を行う。

第6条(甲の生存中の処分) 甲は、本契約締結後も、本贈与財産を自由に使用、収益及び処分することができる。甲が本贈与財産の全部又は一部を生前に処分したときは、その処分した部分について本契約は効力を失う。

第7条(撤回) 1. 甲は、民法第554条により準用される遺言の撤回に関する規定に従い、乙の生前の負担の履行その他撤回を制限すべき特段の事情がない限り、いつでも本契約の全部又は一部を撤回することができる。 2. 甲が本契約を撤回するときは、乙に対しその旨を書面により通知する。

第8条(遺留分との関係) 乙は、本契約に基づき取得する本贈与財産が、甲の他の相続人の遺留分を侵害する場合には、民法第1046条の規定に基づき、当該相続人から遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求される可能性があることを理解した上で本契約を締結する。

第9条(税務上の取扱い) 甲及び乙は、本契約に基づき乙が取得する財産が、相続税法上は贈与税ではなく相続税の課税対象として取り扱われ得ることを確認する。

第10条(反社会的勢力の排除) 甲及び乙は、自己が暴力団その他の反社会的勢力に該当せず、これらと関係を有しないことを表明し保証する。

第11条(協議及び合意管轄) 1. 本契約に定めのない事項は、甲乙誠意をもって協議し解決する。 2. 本契約に関する紛争については、【〇〇地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

以上の合意を証するため本書を作成し、甲乙記名押印の上、各自1通を保有する。

【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】

(甲) 住所:【     】   氏名:【     】  印

(乙) 住所:【     】   氏名:【     】  印

(執行者) 住所:【     】   氏名:【     】  印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 贈与者(被相続人となる者)向け書き換え

A-1. 撤回の余地を残しておきたくない場合(負担を課す場合)

第7条1項但書追加例:「ただし、乙が第〇条の負担を履行した後は、甲はその履行の限度において本契約を撤回することができない。」 解説: 負担付死因贈与では、受贈者が既に負担を履行した部分について贈与者の撤回権が制限されると解される場合があるため、その旨を明記して受贈者の期待を保護する。

A-2. 財産目録が確定していない段階で締結する場合

第1条修正例:「本贈与財産は、甲の死亡時において甲が有する【預貯金】のうち金【〇〇〇】円を上限とする部分とする。」 解説: 死亡時までに財産構成が変動する見込みがある場合、対象財産を種類と上限額で特定し、他の相続財産との区別を明確にする。

B. 受贈者向け書き換え

B-1. 生前贈与への切り替えも視野に入れたい場合

第6条追加例:「甲及び乙は、甲の生存中に協議の上、本贈与財産の全部又は一部について生前贈与契約に切り替えることができる。」 解説: 死因贈与は甲の生存中いつでも撤回され得る不安定な地位にあるため、状況に応じて生前贈与への切替えの可能性を残しておくと乙の期待を保護しやすい。

B-2. 仮登記の実行を確実にしたい場合

第5条追加例:「甲は、本契約締結後【1か月】以内に、乙が指定する司法書士に対し仮登記申請に必要な書類一式を交付する。」 解説: 仮登記の申請書類が甲の生前に交付されないまま放置される例があるため、交付期限を明記して仮登記の実効性を確保する。

C. 執行者向け書き換え

C-1. 執行者が専門職(弁護士・司法書士)である場合

第4条2項追加例:「執行者は、本贈与財産に関する登記手続に加え、必要な範囲で金融機関への通知及び解約手続を行うことができ、これに要する報酬は本贈与財産の中から支弁する。」 解説: 専門職を執行者とする場合、報酬の支弁方法を明記しないと執行者の実費・報酬の精算方法をめぐり相続人との間で紛争になりやすい。

C-2. 相続人との調整が想定される場合

第4条3項追加例:「執行者は、本贈与財産に関する登記手続その他の行為を行うにあたり、甲の相続人による妨害があった場合には、単独でその排除を求める法的手続をとることができる。」 解説: 遺贈に関する規定が準用される結果、執行者は相続人の同意を要さず単独で職務を行えるが、実務上はその根拠を契約書上にも明記しておくと金融機関等での手続がスムーズになる。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面・使ってはいけない場面の解説 本書式は、贈与者が自らの死亡を条件として特定の財産を特定の相手に確実に承継させたい場面で、遺言よりも受贈者との合意を明確にした形で用いる。方式の厳格性や単独での撤回のしやすさを重視する場合は遺言(遺贈)を用いるべきであり、財産を無償で今すぐ移転したい場合は生前贈与の各書式を用いるべきであって、本書式は死亡時までの移転を前提とする場面に限られる。

根拠法令の解説 死因贈与は民法第554条により、その性質に反しない限り遺贈に関する規定(遺言の方式に関する規定を除く。)が準用される。もっとも、死因贈与は甲乙双方の意思表示の合致により成立する契約であり、甲の単独行為である遺言とは法的性質が異なる点に留意が必要である。この準用により、遺言執行者に関する規定(執行者の指定・権限)や遺言の撤回に関する規定が死因贈与にも及ぶと解されている。また、死因贈与により取得した財産が他の相続人の遺留分を侵害する場合、民法第1046条の遺留分侵害額請求の対象となり得る。

実務でよくある失敗と対策 第一に、死因贈与を遺言と同一視し、方式や撤回の可否について遺言と全く同じ規律が及ぶと誤解する失敗がある。第2条のように契約としての性質を明記する。第二に、執行者を指定せず、甲の死亡後、相続人全員の実印・印鑑証明書を集めなければ登記や解約手続が進まない事態に陥る失敗がある。第4条のように執行者を指定しその権限を明記する。第三に、他の相続人の遺留分を考慮せずに多額の財産を死因贈与とし、甲の死後に乙が遺留分侵害額請求を受けて紛争化する失敗がある。第8条のように遺留分との関係を注意喚起する。始期付所有権移転仮登記の可否や執行者の権限範囲は登記実務の運用にもよるため、司法書士・弁護士等の専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 本契約が甲乙合意による契約であり遺言(単独行為)ではないことを確認したか
  • [ ] 対象財産を特定し、甲の死亡時の財産構成の変動にも対応できる記載にしたか
  • [ ] 執行者を指定し、その権限(登記手続、解約手続等)を明記したか
  • [ ] 執行者が就任できない場合の代替手続(家庭裁判所への選任申立て等)を定めたか
  • [ ] 始期付所有権移転仮登記の要否と申請に必要な書類の交付方法を確認したか
  • [ ] 甲の生存中の処分の自由及びその場合の契約の効力を明記したか
  • [ ] 甲による撤回の可否及び撤回の方法(書面通知等)を定めたか
  • [ ] 他の相続人の遺留分を侵害しないか、遺留分侵害額請求のリスクを確認したか
  • [ ] 相続税法上の取扱い(贈与税ではなく相続税の対象となり得ること)を確認したか
  • [ ] 負担を伴う場合、負担の履行と撤回制限の関係を整理したか