付与された新株予約権を放棄する意思を会社へ届け出る書式です。放棄の対象個数、効力発生日、放棄後の再付与の取扱いを示します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
新株予約権放棄申出書
第1部: 書式本文
新株予約権放棄申出書
【〇〇株式会社】 代表取締役【〇〇〇〇】殿
私は、貴社より割当てを受けた下記新株予約権について、その全部又は一部を放棄いたしたく、下記のとおり申し出ます。
1. 放棄対象新株予約権の表示 ・新株予約権の名称又は発行回次:【第〇回新株予約権】 ・割当日:【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】 ・保有個数:【〇〇個】 ・放棄する個数:【〇〇個】(全部/一部の別:【全部・一部】)
2. 放棄の理由 【退職に伴う失権対象外部分の自主放棄・税務上の理由・その他(具体的に記載)】
3. 効力発生日 本申出書に基づく放棄の効力は、貴社が本申出書を受領した日をもって発生するものとします。ただし、貴社が別途承諾を要する取扱いを定めている場合には、当該承諾がなされた日をもって効力を生じるものとします。
4. 放棄後の取扱いに関する確認事項 (1) 私は、本放棄により、上記対象新株予約権に係る権利の一切を失うことを確認します。 (2) 私は、本放棄によって貴社に対し金銭その他の対価を請求する権利を有しないことを確認します。 (3) 私は、本放棄後、貴社が上記個数を新たに他の役員又は従業員に再付与することがあり得ることを了知しており、これについて異議を述べません。
5. 税務上の取扱いに関する確認 私は、本放棄が税務上のみなし譲渡課税その他の課税関係に影響を及ぼす可能性があることを理解しており、必要に応じて自ら税理士等の専門家に確認したうえで本申出を行うものです。
6. 会社の承諾 本申出書の提出をもって新株予約権は消滅するものとし、原則として貴社の個別の承諾を要しないものとします。ただし、貴社が本申出の内容(放棄対象個数の特定等)に疑義があると認めた場合には、貴社は私に対して説明を求めることができるものとします。
以上のとおり申し出ます。
【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】
申出人 住所: 氏名: 印
(会社使用欄) 受領日:【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】 受領者: 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 新株予約権者の立場で有利にする修正
A-1. 効力発生日を申出書提出時とする条項 「本放棄の効力は、私が本申出書に記名押印し貴社に提出した時点をもって直ちに生じるものとし、貴社の受領又は承諾の有無によってその効力を左右されないものとします。」 一言解説: 新株予約権の放棄は新株予約権者の単独行為であり、会社の承諾を要件とせずに効力を生じさせたい場合に、申出人の一方的意思表示のみで効力が確定することを明記する修正である。
A-2. 撤回可能期間を設ける条項 「私は、本申出書の提出後【7日】以内に限り、書面による通知により本放棄の意思表示を撤回することができるものとします。」 一言解説: 税務上の影響を十分に検討する時間を確保するため、一定期間内であれば放棄の意思表示を撤回できる余地を残す修正であり、申出人側の慎重な判断を可能にする。
B節: 発行会社の立場で有利にする修正
B-1. 会社の承諾を効力発生要件とする条項 「本放棄は、貴社が本申出書の内容を確認し、承諾の意思表示をした日をもってその効力を生じるものとし、承諾がなされるまでの間、対象新株予約権は消滅しないものとします。」 一言解説: 放棄対象の特定や本人確認に疑義がある事態を避けるため、会社側の承諾を効力発生要件として明記し、消滅時期を会社が管理できるようにする修正である。
B-2. 再付与を会社の自由裁量とする条項 「私は、放棄により消滅した新株予約権の個数について、貴社が将来これを再付与するか否か、再付与する場合の対象者・条件を、貴社の完全な裁量により決定できることを確認します。」 一言解説: 放棄後の再付与について申出人側から条件や優先権を主張されることを防ぎ、会社のインセンティブ設計上の裁量を明確に確保する修正である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、既に発行会社から新株予約権の割当てを受けた者が、退職その他の事情により当該新株予約権の全部又は一部について権利を放棄する場合に用いる。新株予約権の譲渡(第三者への移転)を行う場合や、会社側が強制的に失権させる場合(付与規程上の失権事由該当)には、本書式ではなく譲渡契約書又は失権通知書を用いるべきである。
根拠法令の解説 会社法第287条は「新株予約権者は、その有する新株予約権を放棄することができる。」と定めており、新株予約権の放棄は同条を直接の根拠として認められる新株予約権者の単独行為である。放棄の意思表示によって新株予約権は消滅し、原則として会社の承諾を要しないと解されているが、実務上は放棄の対象・時期を明確にするため会社への通知書面を用いることが一般的である。放棄という単独行為の性質については、民法における意思表示に関する一般規定(意思表示の到達時に効力を生じるとする民法第97条の考え方等)も参考になる。税務上は、新株予約権を放棄した場合、放棄時点における当該新株予約権の含み益相当額について、所得税法上のみなし譲渡課税等の取扱いが問題となる可能性があり、放棄と税制適格ストックオプションの要件(租税特別措置法第29条の2)との関係についても留意が必要である。
よくある失敗の解説 第一に、放棄の効力発生時期を明記しないまま申出書を作成し、会社側と申出人側とで消滅時期の認識が食い違うケースが見られる。第3条のように、申出書受領時・会社承諾時のいずれを基準とするかを明確に定めるべきである。第二に、放棄と税務上のみなし譲渡課税との関係を整理しないまま放棄手続を進め、後日想定外の課税が生じるケースがある。第5条のように、税務上の影響について申出人自身が専門家に確認した旨を記載し、会社側も画一的な取扱いを保証しない姿勢を明確にしておくことが望ましい。第三に、放棄後の再付与条件を何ら定めないまま運用し、放棄した本人や他の従業員との間で再付与の期待権をめぐる紛争が生じる事例がある。第4条(3)及びB-2のように、再付与の可否・条件が会社の裁量に属することを明記しておくことが対策となる。放棄の効力及び課税関係の詳細については、個別事案ごとに弁護士及び税理士等の専門家に確認することが必要である。
第4部: 使用前チェックリスト
- 放棄対象の新株予約権(発行回次・割当日・個数)が正確に特定されているか
- 放棄が全部か一部かが明確に記載されているか
- 効力発生日の基準(提出時・受領時・承諾時のいずれか)が明記されているか
- 会社の承諾を要件とするか否かの方針が事前に社内規程と整合しているか
- 放棄理由(退職・税務上の理由等)が記録として残る形になっているか
- 放棄後、対価請求権を有しない旨の確認文言が入っているか
- 放棄と税務上のみなし譲渡課税との関係について本人が認識しているか
- 再付与の可否・条件が会社の裁量に属する旨が明記されているか
- 撤回可能期間を設ける場合、その期間及び撤回方法が明記されているか
- 申出人の記名押印及び会社側の受領記録欄が設けられているか
- 会社法第287条に基づく放棄であることが社内的に整理されているか
- 監修担当の弁護士・税理士による最終確認を経ているか