親子や兄弟間で不動産を売買する場面の書式。民法第555条の売買契約として代金・引渡し・契約不適合責任を定め、みなし贈与の指摘に備えます。

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親族間不動産売買契約書

第1部: 書式本文

売主〇〇〇〇(以下「甲」という。)と買主〇〇〇〇(以下「乙」という。)は、甲乙間の【続柄】関係を踏まえ、下記不動産の売買について、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(売買の合意) 甲は、その所有する別紙物件目録記載の不動産(以下「本物件」という。)を乙に売り渡し、乙はこれを買い受ける。

第2条(売買代金) 本物件の売買代金は金【売買代金】円とする。当該代金は、【不動産鑑定評価額・固定資産税評価額・相続税評価額等の算定根拠】を参考に、時価相当額として算定したものである。

第3条(手付金) 乙は、甲に対し、本契約締結と同時に手付金として金【手付金額】円を支払う。手付金は残代金支払時にその一部に充当する。

第4条(残代金の支払及び引渡し) 乙は、甲に対し、残代金を【支払期日】までに支払い、甲は同日、乙に対し本物件を引き渡すとともに、所有権移転登記手続に必要な書類を交付する。

第5条(所有権移転登記) 所有権移転登記手続は、残代金の支払と同時に行うものとし、登記費用は【負担者(通常は買主)】の負担とする。

第6条(公租公課の清算) 本物件に係る固定資産税及び都市計画税は、引渡日を基準として日割り計算により清算する。

第7条(契約不適合責任) 甲は、本物件が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、民法第562条以下の規定に従い、乙に対し責任を負う。ただし、親族間の合意により当該責任を【免除・軽減する場合はその内容】とすることができる。

第8条(抵当権等の抹消) 本物件に抵当権その他の担保権が設定されている場合、甲は残代金の支払を受けるまでに当該担保権を抹消する。

第9条(税務上の留意事項) 甲及び乙は、本契約の売買代金が時価に照らして著しく低い場合、相続税法第7条に基づき、乙が甲から対価と時価との差額に相当する利益の贈与を受けたものとみなされ、贈与税が課される可能性があることを確認する。

第10条(危険負担) 引渡し前に本物件が甲乙いずれの責めにも帰することができない事由により滅失又は損傷した場合の取扱いは、民法第567条の定めるところによる。

【契約日】

甲: 【住所・氏名】 印 乙: 【住所・氏名】 印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 売主(親・兄弟)向けの修正

A-1. 契約不適合責任の軽減

修正後:「甲は、本物件を現状有姿のまま引き渡すものとし、乙は本物件の状態を確認の上、契約不適合責任(民法第562条から第564条まで)の適用を、【軽微な不具合を除く重大な瑕疵】に限定することに同意する。」 一言解説: 親族間売買では第三者間取引よりも現状のまま引き渡す前提が多いため、売主側は契約不適合責任の範囲を合理的に限定する修正を行う。

A-2. 分割払いにおける所有権留保

追加条文例:「乙が残代金を分割して支払う場合、甲は残代金の全額の支払を受けるまで本物件の所有権を留保し、所有権移転登記は残代金完済時に行う。」 一言解説: 親族間では代金の分割払いが行われやすいため、売主側は完済までの所有権留保により未払リスクを回避する修正を行う。

B. 買主(子・親族)向けの修正

B-1. 時価算定根拠資料の保存

追加条文例:「甲及び乙は、本契約締結にあたり不動産鑑定士による鑑定評価書又は路線価に基づく評価計算書を取得し、本契約に添付して保存する。」 一言解説: みなし贈与課税を指摘されないためには売買代金が時価相当であることの客観的根拠が重要であるため、買主側は評価資料の保存を明記する修正を行う。

B-2. 住宅資金として活用する場合の贈与税特例確認

追加条文例:「乙は、本物件の取得資金の一部について、直系尊属からの住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税措置の適用を受けることを予定しており、甲は当該特例の適用に必要な範囲で資料の提供に協力する。」 一言解説: 親族間の不動産取引では住宅取得資金贈与の特例が併用されることがあるため、買主側は特例適用の前提条件との整合を確認する修正を行う。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、親子や兄弟姉妹などの親族間で不動産を有償で売買する場面で用いる。名目上は売買であっても実質的に対価の授受がない場合には贈与契約書を用いるべきであり、本書式を形式的に用いて贈与を仮装することは税務上のリスクを伴う。また、共有物件の分割を目的とする場合には、通常の売買契約ではなく共有物分割協議書を用いる方が実態に即することが多い。

根拠法令 不動産の売買契約は民法第555条に基づき成立し、契約不適合責任については同法第562条から第564条までが規定する。親族間売買で特に重要なのは税務上の取扱いであり、相続税法第7条は、著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合において、当該対価と譲渡があった時における当該財産の時価との差額に相当する金額を、当該財産を譲渡した者から贈与により取得したものとみなす旨を定めている(いわゆるみなし贈与)。「著しく低い価額」の判断基準は法令上明確に数値化されていないが、実務上は不動産鑑定評価額や相続税評価額(路線価等)を参考に合理的な価格を設定することが望ましいとされている。加えて、居住用財産の買換え特例や住宅ローン控除など各種の税制上の特例には、親族間売買を対象外とするものがあるため、税制上の要件の確認も必要である。

実務でよくある失敗と対策 第一に、親族間の情義から相場より大幅に低い価格で売買契約を締結し、後日の税務調査でみなし贈与課税(相続税法第7条)を指摘され、想定外の贈与税を負担する失敗がある。第2条及びB-1のように、鑑定評価額等の客観的根拠に基づき時価相当額を設定し、その根拠資料を保存することが対策となる。第二に、住宅ローン控除等の税制優遇について、親族間売買が対象外とされる特例があることを知らずに利用できると誤認する失敗がある。事前に税務上の要件を確認し、必要であれば税理士に相談することが対策となる。第三に、分割払いの途中で買主の支払が滞り、既に所有権移転登記を終えていたために売主が回収に窮する失敗がある。A-2のように残代金完済までの所有権留保を明記することが対策となる。

売買代金の相当性やみなし贈与課税の該当性は個別事情により判断が分かれるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 売買代金が時価相当であることの客観的根拠(鑑定評価等)を用意したか
  • [ ] みなし贈与課税(相続税法第7条)のリスクを確認したか
  • [ ] 住宅ローン控除等の税制優遇が親族間売買でも適用可能か確認したか
  • [ ] 契約不適合責任の範囲及び軽減の可否を検討したか
  • [ ] 本物件に設定された抵当権等の担保権の抹消時期を確認したか
  • [ ] 公租公課の清算方法(日割り計算)を定めたか
  • [ ] 分割払いの場合、所有権留保又は登記時期の取扱いを定めたか
  • [ ] 登記費用及び諸費用の負担者を明確にしたか
  • [ ] 住宅取得等資金の贈与税非課税措置等の特例適用の要否を確認したか
  • [ ] 危険負担(引渡し前の滅失・損傷)の取扱いを確認したか