生活介護や就労継続支援などの事業所が利用者と結ぶサービス利用契約書。障害者総合支援法の指定基準に沿い、支給決定の内容、利用者負担上限額、支援計画を定める。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
障害福祉サービス利用契約書
第1部: 書式本文
【事業者名】(以下「甲」という。)と【利用者氏名】(以下「乙」という。)は、甲が乙に対して障害福祉サービスを提供するに当たり、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(契約の目的) 甲は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(以下「総合支援法」という。)及び指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(以下「運営基準」という。)に基づき、乙に対し【生活介護/就労継続支援A型/就労継続支援B型等】(以下「本サービス」という。)を提供し、乙はその対価を支払う。
第2条(支給決定との整合) 1. 甲は、乙の居住する市町村が交付した障害福祉サービス受給者証に記載された支給決定の内容(支給量、支給決定の有効期間及びサービス種類)の範囲内で本サービスを提供する。 2. 本サービスの提供内容及び提供日数は、受給者証記載の支給量【月〇日】と整合するものとし、支給量に変更が生じた場合、甲及び乙は速やかに本契約の内容を見直す。
第3条(サービス提供期間) 本契約に基づくサービス提供期間は、【西暦年】年【 】月【 】日から支給決定の有効期間満了日までとする。
第4条(利用者負担) 1. 乙が甲に支払う利用者負担額は、総合支援法第29条第3項に基づき算定される費用の1割に相当する額とし、乙の世帯の所得の状況に応じて設定される利用者負担上限月額(【 】円)を超えないものとする。 2. 甲は、乙が利用者負担上限額管理事業者に該当する場合、他の事業者における利用実績と合算した管理を行う。
第5条(意思決定支援への配慮) 1. 甲は、乙が本サービスの内容及び本契約の条項を理解できるよう、乙の障害の特性に応じてわかりやすい説明を行い、乙の意向を確認する。 2. 乙が意思決定に困難を抱える場合、甲は、乙の家族、成年後見人等又は相談支援専門員の同席を求めるとともに、説明及び意向確認の経過を記録に残す。
第6条(個別支援計画の作成) 1. 甲は、サービス管理責任者を中心に、乙の心身の状況、生活環境及び本人の希望を踏まえた個別支援計画を作成する。 2. 甲は、個別支援計画について乙の同意を得た上で交付し、少なくとも【6】か月ごとにモニタリングを行い、必要に応じて見直す。
第7条(サービス等利用計画との整合) 1. 甲は、相談支援専門員が作成するサービス等利用計画の内容を確認し、個別支援計画の内容がサービス等利用計画の内容と整合するよう調整する。 2. 両計画の内容に齟齬が生じた場合、甲は速やかに相談支援専門員と協議し、必要に応じて個別支援計画を修正する。
第8条(虐待防止・身体拘束の禁止) 1. 甲は、乙に対し障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律に定める虐待を行わない。 2. 甲は、乙の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、乙の身体拘束その他の行動制限を行わない。緊急やむを得ず身体拘束を行う場合、甲はその理由、態様及び時間を記録する。
第9条(秘密保持) 甲は、本契約の履行に際して知り得た乙の個人情報及び秘密を、乙の同意がある場合又は法令に基づく場合を除き、第三者に開示しない。
第10条(事故発生時の対応) 甲は、本サービスの提供中に乙に事故が発生した場合、速やかに応急措置を講じるとともに、乙の家族及び市町村に連絡し、運営基準の定めるところに従い必要な措置を講じる。
第11条(契約の変更) 本契約の内容を変更する場合、甲及び乙は協議の上、書面によりこれを行う。
第12条(契約の解除) 1. 乙は、甲に対し【7】日前までに書面で通知することにより、いつでも本契約を解除することができる。 2. 甲は、乙が本契約に基づく利用者負担の支払を【 】か月以上怠った場合、他の利用者の処遇に重大な支障を生じさせる行為があった場合その他正当な理由がある場合に限り、事前に十分な説明を行った上で本契約を解除することができる。
第13条(協議事項) 本契約に定めのない事項及び本契約の解釈について疑義が生じた事項は、甲乙誠実に協議して定める。
本契約締結の証として本書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各自1通を保有する。
【西暦年】年【 】月【 】日
甲(事業者) 所在地: 名称: 代表者: 印
乙(利用者) 住所: 氏名: 印
(乙が意思決定に困難を抱える場合の同席者) 氏名(続柄・資格): 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 障害福祉サービス事業者向けの書き換えパターン
A-1 第2条の修正例 「甲は、契約締結時及び支給決定の更新時に受給者証の原本を確認し、支給量・サービス種類・有効期間を契約管理台帳に記録する。受給者証の内容に変更が生じたことを乙から申告されたときは、速やかに台帳を更新し、本契約の提供内容を照合する。」 一言解説: 支給決定の内容と契約上のサービス提供内容が事後的に食い違う事態を避けるため、受給者証の確認と台帳管理の手順を契約条項として明文化しておくことが望ましい。
A-2 第7条の修正例 「甲のサービス管理責任者は、個別支援計画の作成及び見直しに先立ち、相談支援専門員が作成した直近のサービス等利用計画を取り寄せ、計画作成会議に相談支援専門員の出席を求めるよう努める。」 一言解説: 個別支援計画とサービス等利用計画が別々の専門職により作成されるため、計画作成の段階から双方の専門職が情報を共有する運用を組み込むことで、事後的な齟齬の発生を防ぎやすくなる。
B節: 利用者・家族向けの書き換えパターン
B-1 第5条の修正例 「甲は、乙への説明に当たり、書面のほか、乙の希望に応じてルビ付き資料、絵記号又は録音物等の代替手段を用いる。説明の理解状況及び乙自身の言葉による意向は、支援記録に具体的に記載し、家族の意向のみで代替しない。」 一言解説: 意思決定に困難を抱える利用者への説明が形式的な書面交付にとどまると本人の意向確認が記録に残らないため、代替手段の活用と本人の言葉による意向の記録化を条項上具体化することが重要である。
B-2 第12条の修正例 「乙又はその家族は、本サービスの提供内容が個別支援計画又はサービス等利用計画の内容と異なると考える場合、契約解除の意思表示に先立ち、甲のサービス管理責任者及び相談支援専門員を交えた説明の機会を求めることができる。」 一言解説: 契約解除に至る前に計画内容の齟齬を確認・調整する機会を設けることで、利用者・家族が抱く不安や不信感を、契約関係の終了ではなく計画の見直しによって解消できる可能性が高まる。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面・使ってはいけない場面の解説
本契約書は、生活介護、就労継続支援A型・B型その他の障害福祉サービス事業所が、市町村の支給決定を受けた利用者との間でサービス利用契約を締結する場面で用いる。他方、支給決定を受けていない自費サービスのみを提供する場合や、相談支援事業者が単独でサービス等利用計画の作成のみを行う場合には、本契約書とは別の契約書式を用いる必要がある。
根拠法令の解説
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律は、市町村の支給決定に基づき利用者が障害福祉サービスを利用する仕組みを定め、同法第29条第3項は利用者負担の算定方法を規定している。指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準は、事業者に対し、個別支援計画の作成、モニタリングの実施、秘密保持、事故発生時の対応その他の運営上の義務を課している。また、障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律は、障害者福祉施設従事者等による虐待の防止措置を事業者に求めている。
実務でよくある失敗と対策の解説
第一に、市町村の支給決定内容(支給量等)と契約書上のサービス提供内容が整合しておらず、支給量を超える提供を行い費用の請求ができない事態が生じる例がある。第2条のように、支給決定の内容との整合を契約条項として明記し、台帳による管理を行うことが対策となる。 第二に、意思決定に困難を抱える利用者への説明が形式的な書面交付にとどまり、本人の意向確認が記録に残らず、後に本人の意向が反映されていなかったと問題になる例がある。第5条のように代替手段の活用と意向の記録化を明記することが対策となる。 第三に、相談支援専門員が作成するサービス等利用計画と事業所の個別支援計画の内容に齟齬が生じ、利用者が受けるサービスの方向性が一貫しなくなる例がある。第7条のように計画作成段階からの情報共有の仕組みを設けることが対策となる。 契約解除の要件の該当性や利用者負担の算定方法など個別の判断を要する事項については、個別の事案について専門家(弁護士等)に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 提供するサービスの種類を正確に記載したか
- [ ] 受給者証記載の支給量・有効期間との整合を確認したか
- [ ] 利用者負担上限月額を正確に記載したか
- [ ] 意思決定に困難を抱える利用者への説明方法・同席者を定めたか
- [ ] 個別支援計画の作成・モニタリング頻度を定めたか
- [ ] サービス等利用計画との整合を確認する手続を定めたか
- [ ] 虐待防止及び身体拘束の原則禁止を明記したか
- [ ] 秘密保持義務を明記したか
- [ ] 事故発生時の対応(応急措置・家族及び市町村への連絡)を定めたか
- [ ] 契約解除事由(乙からの解除・甲からの解除)を明確に区別して定めたか
- [ ] 署名欄に甲(事業者)・乙(利用者)双方の記名押印欄を設けたか