取引先の倉庫や店舗で自社商品を保管・管理してもらう覚書。民法第400条の善管注意義務と第665条の準用規定を踏まえ、滅失毀損時の責任を定めます。

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商品の保管・在庫管理に関する覚書

第1部: 書式本文

商品の保管・在庫管理に関する覚書

【甲】(以下「甲」という。商品を預ける者)と【乙】(以下「乙」という。保管・管理を行う者)は、甲が所有する商品を乙の倉庫又は店舗において保管し、あわせて在庫管理業務を委託することに関し、次のとおり合意する。

第1条(目的及び対象物品) 甲は、別紙「預託商品目録」記載の商品(以下「預託商品」という。)の保管及び在庫管理業務を乙に委託し、乙はこれを受託する。預託商品の所有権は、保管期間中も甲に帰属するものとし、乙に移転しない。

第2条(保管場所) 乙は、預託商品を【保管場所住所】所在の倉庫(以下「本件倉庫」という。)において保管する。乙は、甲の事前の書面による承諾を得ない限り、預託商品を本件倉庫以外の場所に移動してはならない。

第3条(善良な管理者の注意義務) 乙は、預託商品の保管及び在庫管理にあたり、善良な管理者の注意をもってこれを行わなければならない。乙は、預託商品を自己の物と同一の注意をもって保管すれば足りるものではなく、当該業種における通常人に要求される水準の注意義務を負うものとする。

第4条(在庫管理業務の内容) 乙が行う在庫管理業務は次の各号のとおりとする。 一 預託商品の入庫・出庫の記録及び在庫数量の管理 二 温度、湿度その他預託商品の性質に応じた保管環境の維持 三 甲が指定する頻度(月【1】回以上)での実地棚卸の実施及び結果報告 四 破損、汚損、賞味期限・使用期限切れその他異常が生じた預託商品の速やかな報告 五 前各号に付随する事務

第5条(報告義務) 乙は、甲の請求があるときはいつでも、預託商品の保管及び在庫管理の状況を甲に報告しなければならない。また、預託商品について甲のために受け取った金銭その他の物があるときは、これを甲に引き渡さなければならない。

第6条(善管注意義務違反による滅失・毀損の責任) 乙が第3条の善管注意義務に違反したことにより預託商品が滅失し、又は毀損したときは、乙はこれによって甲に生じた損害を賠償する責任を負う。ただし、乙が善管注意義務を尽くしたにもかかわらず生じた滅失・毀損(地震・水害等の不可抗力によるものを含む。)については、乙は責任を負わない。

第7条(保管費用及び在庫管理費用) 甲は、乙に対し、預託商品の保管及び在庫管理業務の対価として月額【金額】円(消費税別)を、毎月末日締め翌月末日払いで支払う。乙が預託商品の保管に関して支出した必要費(害虫駆除費用等)は、甲の負担とし、乙は当該費用及びその支出日以後の利息を甲に請求できる。

第8条(保険の付保) 乙は、預託商品の総額に相当する動産保険を自己の費用負担で付保するものとし、保険証券の写しを甲に提出する。ただし、甲乙間で別段の合意をした場合はこの限りでない。

第9条(第三者への再委託) 乙は、甲の事前の書面による承諾を得た場合に限り、預託商品の保管業務の全部又は一部を第三者に再委託することができる。乙が再委託を行った場合、乙は再委託先の行為について自ら行ったものと同等の責任を負う。

第10条(立入検査) 甲は、事前に乙と日時を調整のうえ、本件倉庫に立ち入り、預託商品の保管状況を検査することができる。乙は正当な理由なくこれを拒んではならない。

第11条(契約終了及び返還) 本覚書が終了したときは、乙は速やかに預託商品を甲の指定する場所に返還する。返還に要する費用は甲の負担とする。ただし、乙の善管注意義務違反を理由とする解除の場合は、返還費用は乙の負担とする。

第12条(有効期間) 本覚書の有効期間は締結日から【1】年間とする。期間満了の【1】か月前までに甲乙いずれからも異議がない場合、本覚書は同一条件でさらに【1】年間更新されるものとする。

第13条(協議事項) 本覚書に定めのない事項については、甲乙誠実に協議のうえ定める。

以上、本覚書締結の証として本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ各1通を保有する。

【締結日】 甲:【住所・商号・代表者名】(印) 乙:【住所・商号・代表者名】(印)

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 商品を預ける側(甲)向け

A-1. 保管環境の逸脱時の即時通知義務を強化する修正 修正後: 「第4条第2号の保管環境について、乙は温度・湿度の管理基準から【2】時間以上逸脱した場合、逸脱を検知してから【3】時間以内に甲に通知しなければならない。通知を怠ったことにより甲に拡大損害が生じた場合、乙は当該拡大損害についても賠償責任を負う。」 一言解説: 温度管理が必要な食品・化粧品等の預託商品では、環境逸脱の発見の遅れがそのまま商品価値の喪失に直結するため、通知遅延自体を独立した損害原因として扱い、乙の初動対応を促す趣旨である。

A-2. 棚卸差異が生じた場合の乙の説明責任の明確化 修正後: 「第4条第3号の実地棚卸の結果、帳簿在庫数量との間に【1】パーセントを超える差異が生じた場合、乙は原因を調査し、調査結果及び再発防止策を書面で甲に報告しなければならない。原因が乙の管理過失によると認められる場合、乙は当該差異相当分の商品評価額を甲に賠償する。」 一言解説: 在庫管理を外部委託すると差異発生時の原因究明が甲にとって見えにくくなるため、一定の許容差異を超えた場合の調査・報告・賠償のプロセスをあらかじめ明文化しておく。

B. 保管・管理する側(乙)向け

B-1. 善管注意義務の水準を業種標準に限定する修正 修正後: 「第3条の善良な管理者の注意義務は、乙と同種同規模の営業倉庫業者に一般的に要求される保管管理水準を基準とするものとし、甲が特別の保管方法を求める場合は、事前に書面で乙に指示し、当該指示に対応するために要する追加費用は甲の負担とする。」 一言解説: 善管注意義務の水準が無限定に高く解釈されると乙の責任範囲が予測不能となるため、業界標準を基準とすることを明記し、甲の特別要求には別途費用負担を求める形でリスクと対価の均衡を図る。

B-2. 不可抗力免責事由の具体化 追加条文例: 「第6条ただし書の不可抗力には、地震、水害、火災、感染症拡大に伴う行政命令による施設閉鎖、停電その他乙の合理的な支配及び管理の及ばない事由を含むものとし、乙は当該事由の発生及び損害発生との因果関係を証明する資料を甲に提示することで免責を主張できる。」 一言解説: 不可抗力の範囲を包括的に「天災等」とのみ定めると解釈をめぐる争いが生じやすいため、具体例を列挙しつつ、免責を主張する乙側に立証資料の提示を求めることで甲乙双方の予見可能性を高める。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面/使ってはいけない場面 本覚書は、メーカーや卸売業者が自社商品を取引先の倉庫や店舗のバックヤードで保管してもらい、あわせて入出庫記録や棚卸などの在庫管理業務を任せる場面で用いる。単に場所を貸し出すだけで管理行為を伴わない場合は倉庫賃貸借契約の性質が強く、また乙が商品を占有せず単なる情報管理(在庫データの集計のみ)を行うにすぎない場合は業務委託契約として整理すべきであり、いずれの場合も本覚書をそのまま流用することは避けるべきである。

根拠法令 民法上、物の保管を目的とする典型契約は寄託契約(民法第657条)であり、受寄者は同法第400条の定める善良な管理者の注意をもって保管する義務を負う。無償寄託の場合には受寄者の注意義務が軽減される規定(民法第659条、自己の財産に対するのと同一の注意)があるため、有償で在庫管理業務まで委託する本覚書のような場合には、無償寄託の水準ではなく善管注意義務が適用されることを条文上明確にしておく必要がある。また、民法第665条は、委任における受任者の報告義務(第645条)、受取物の引渡義務(第646条)、金銭消費についての責任(第647条)等の規定を寄託について準用する旨を定めており、本覚書第5条の報告義務・引渡義務はこの準用規定を踏まえて設けたものである。在庫管理業務の委託が主眼となる場合には、準委任契約(民法第656条)としての性質も併有することになるため、善管注意義務の適用根拠は民法第644条の受任者の注意義務からも重ねて基礎付けられる。

実務でよくある失敗と対策 第一に、保管費用のみを定め在庫管理業務の内容を具体的に記載しないまま契約し、後日「棚卸を月何回行うべきか」「異常発生時の報告期限」等をめぐって認識の齟齬が生じる例が多い。業務内容を号立てで具体的に列挙することが有効である。第二に、善管注意義務の水準について何も定めず、滅失・毀損時に「通常のレベルで注意していた」という乙の主張と、甲が期待する専門的な保管水準との間で争いになるケースがある。業種標準を基準とする旨や、特別な保管方法を求める場合の追加費用負担ルールを明記することで予防できる。第三に、再委託や第三者への保管移転について何ら定めがなく、乙が無断で別の倉庫業者に保管を委ねてしまい、甲が保管状況を把握できなくなる例がある。再委託には甲の事前承諾を要する旨を明記し、乙の責任が再委託によって軽減されないことも合わせて定めるべきである。

個別事案は専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 預託商品の品目・数量を目録等で具体的に特定したか
  • [ ] 保管場所を具体的住所で特定し、無断移動を禁止したか
  • [ ] 善管注意義務の水準(業種標準か特別水準か)を明記したか
  • [ ] 在庫管理業務の内容(棚卸頻度・報告方法等)を号立てで列挙したか
  • [ ] 滅失・毀損時の責任分担及び不可抗力免責の範囲を定めたか
  • [ ] 保管費用・在庫管理費用の金額及び支払条件を明記したか
  • [ ] 保険付保の要否及び負担者を確認したか
  • [ ] 第三者への再委託の可否及び承諾手続を定めたか
  • [ ] 甲による立入検査権を設けたか
  • [ ] 契約終了時の商品返還方法・費用負担を明記したか
  • [ ] 温度・湿度等特別な保管条件が必要な商品か確認し、必要な場合は個別に規定したか