不実告知や不退去、退去妨害などの勧誘で締結した契約について、消費者契約法第4条の取消権を行使し既払金の返還を求める通知書です。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
消費者契約法に基づく取消通知書
第1部: 書式本文
契約取消通知書
【発送日: 20〇〇年〇月〇日】 【文書番号: 第〇号】
宛先: 【事業者の名称・代表者名】様 差出人: 【消費者側の氏名・住所・連絡先】
拝啓
私は、20〇〇年〇月〇日、貴社との間で【契約名称・商品またはサービス名】に関する契約(以下「本契約」といいます)を締結し、代金として金【〇〇〇〇円】を支払いました。
本書面をもちまして、本契約について、消費者契約法第4条に基づく取消しの意思表示をいたします。
1. 勧誘の経緯
貴社の【担当者名・営業員名】は、本契約締結の勧誘に際し、【いつ・どこで・どのように】、下記のとおりの説明・行為を行いました。
【事実経過を具体的に記載。例: 「〇〇という効果が確実に得られる」との説明があった/自宅を訪問した担当者が再三の退去要求にもかかわらず長時間居座った/契約締結の意思がないと伝えたにもかかわらず、事務所からの退去を認められなかった 等】
2. 取消しの法的根拠
上記1記載の行為は、消費者契約法第4条第1項第1号にいう重要事項について事実と異なることを告げる行為(不実告知)、または同項第2号にいう将来における変動が不確実な事項について断定的判断を提供する行為に該当するものと考えます。
【または該当する場合】上記行為は、貴社が消費者にとって不利益となる事実を故意または重大な過失によって告げなかったものであり、同条第2項にいう不利益事実の不告知に該当するものと考えます。
【または該当する場合】上記行為は、私が退去する旨の意思を示したにもかかわらずこれを妨げた、または貴社の求めに応じて退去する旨を示したにもかかわらず退去させなかったものであり、同条第3項第1号(不退去)または第2号(退去妨害)に該当するものと考えます。
これらの事実により、私は本契約の内容につき誤認し、または困惑した状態で本契約締結の意思表示をするに至ったものであり、消費者契約法第4条第1項ないし第3項の要件を満たすものと考えます。
3. 取消権行使期間についての確認
私が上記誤認・困惑の状態にあったことに気付いたのは【20〇〇年〇月〇日】であり、本書面の発送日は追認をすることができる時から1年以内、かつ本契約締結時から5年以内であることを申し添えます(消費者契約法第7条第1項)。
4. 取消しの効果と請求事項
本契約は、本書面による取消しの意思表示により、消費者契約法第4条に基づき、初めから無効であったものとみなされます。これに伴い、貴社が受領した代金【〇〇〇〇円】について、原状回復義務(民法第121条の2)に基づき返還を求めます。
つきましては、本書面到達後【2週間】以内に、下記口座に既払金【〇〇〇〇円】をご返還くださいますようお願いいたします。
【返還先口座情報】
5. 商品等の取扱い
本契約に基づき私が受領した商品等がある場合は、貴社のご指示に従い返送いたします。返送費用の負担についても併せてご協議させていただきたく存じます。
6. 回答期限・連絡先
本書面到達後【2週間】以内に、書面にて取消しについてのご回答をいただきますようお願いいたします。期限までにご回答がない場合、消費生活センターへの相談または法的手続を検討させていただきます。
敬具
【差出人氏名・住所・連絡先】
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 消費者側が発送する場合
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修正条文例: 「貴社担当者は、『この投資商品は元本割れすることは絶対にない』と説明しましたが、これは消費者契約法第4条第1項第2号にいう断定的判断の提供に該当し、私はこれを事実であると誤認して本契約を締結しました。」 一言解説: 断定的判断の提供は「将来における変動が不確実な事項」について確実であるかのように告げた発言内容を具体的に引用することが重要です。
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修正条文例: 「貴社担当者が退去を求めた私の要求に応じず、約3時間にわたり自宅に居座ったことは、消費者契約法第4条第3項第1号にいう不退去に該当し、私は困惑して本契約締結の意思表示をするに至りました。」 一言解説: 不退去・退去妨害の類型は「誤認」ではなく「困惑」を要件とするため、時間の経過や心理的圧迫の状況を具体的に記載することが説得力を高めます。
B. 事業者側が回答する場合
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修正条文例: 「弊社担当者の説明は、契約締結時点における一般的な市場動向を説明したものであり、確実性を保証する断定的判断の提供には該当しないと考えます。もっとも、貴殿のご懸念を踏まえ、任意による契約解除についてご相談させていただきたく存じます。」 一言解説: 取消要件該当性を争う場合でも、紛争の長期化を避けるため任意解除・返金の協議を並行して提示する対応が実務上とられることがあります。
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修正条文例: 「消費者契約法第7条第1項に基づき、追認をすることができる時から1年を経過しているため、取消権は時効により消滅しているものと考えます。」 一言解説: 期間制限(除斥期間)の主張は事業者側の有力な防御方法となるため、消費者側は誤認・困惑に気付いた時期を書面上で明確にしておく必要があります。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
使う場面・使ってはいけない場面
本書式は、事業者による不実告知・断定的判断の提供・不利益事実の不告知・不退去・退去妨害等の不当な勧誘行為によって消費者が誤認または困惑し契約を締結した場合に、消費者契約法第4条の取消権を行使する場面で使用します。他方、契約内容自体には問題がなく、単に契約後に気が変わった、値段が高いと感じたにすぎない場合には取消事由に該当せず、本書式は使用できません。また、事業者側に不実告知等の勧誘行為がなく、消費者側の一方的な思い込みのみによって契約内容を誤解していた場合は、消費者契約法第4条ではなく民法第95条の錯誤取消しの検討対象となる点に注意が必要です。
根拠法令
消費者契約法第4条第1項第1号(不実告知)・第2号(断定的判断の提供)、同条第2項(不利益事実の不告知)、同条第3項各号(不退去・退去妨害等の困惑類型)、同法第7条第1項(取消権の行使期間、追認可能時から1年・契約締結時から5年)、民法第121条の2(原状回復の義務)を根拠とします。
実務でよくある失敗と対策
第一に、勧誘時の発言内容を具体的に特定せず、「不当な勧誘があった」とだけ記載してしまう失敗があります。いつ・誰が・どのような言葉で説明したかを可能な限り具体的に記載することが対策となります。
第二に、誤認に気付いた時期を曖昧にしたまま通知し、消費者契約法第7条第1項の1年の行使期間(追認できる時からの起算)について事業者側から時効消滅の主張を受けるリスクを高めてしまう失敗があります。誤認・困惑に気付いた具体的な日付を書面上に明記することが対策です。
第三に、取消しの効果として原状回復を求める際、既に商品を消費・使用した場合の返還範囲(現存利益にとどまるか全部の返還を要するかという民法上の議論)を考慮せずに全額請求のみを記載してしまう失敗があります。商品等の使用状況を踏まえた記載を検討することが望まれます。
取消事由の該当性や行使期間の計算については個別の事実関係により判断が異なるため、専門家に確認することを推奨します。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 勧誘時の発言内容(不実告知・断定的判断の提供等)を日時・場所とともに具体的に特定したか
- [ ] 該当する取消類型(消費者契約法第4条第1項・第2項・第3項のいずれか)を検討したか
- [ ] 事業者が「消費者契約」における「事業者」に該当することを確認したか(事業者間取引ではないか)
- [ ] 誤認または困惑に気付いた具体的な日付を記載したか
- [ ] 消費者契約法第7条第1項の行使期間(追認可能時から1年、契約締結時から5年)内であることを確認したか
- [ ] 既払金の金額・返還先口座を明記したか
- [ ] 受領済みの商品等がある場合の返送方法・費用負担を記載したか
- [ ] 回答期限を明確に設定したか
- [ ] 民法第95条の錯誤取消しなど、他の取消事由との重複適用の可能性を検討したか
- [ ] 発送方法(内容証明郵便等、証拠化の要否)を検討したか
- [ ] 個別事案について専門家に確認したか