審査係属中の商標出願を別法人へ引き継ぐ場面の合意書。商標法第13条が準用する特許法第34条の出願人名義変更届の提出を定めます。

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商標出願の名義変更届に関する合意書

第1部: 書式本文

商標出願の名義変更届に関する合意書

【現出願人名】(以下「甲」という)と【承継人(新出願人)名】(以下「乙」という)は、甲が特許庁に係属中の商標登録出願に係る出願人名義の変更に関し、次のとおり合意(以下「本合意」という)する。

第1条(対象出願) 本合意の対象となる出願(以下「本出願」という)は次のとおりとする。 ・出願番号:【出願2024-◯◯◯◯◯◯号】 ・商標(標章):【商標見本を末尾別紙に添付】 ・指定商品/指定役務及び区分:【区分・商品役務名】 ・出願日:【西暦】年【月】月【日】日 ・現在の審査状況:【審査係属中/拒絶理由通知への応答中等】

第2条(承継の性質) 1. 本出願に係る「商標登録出願により生じた権利」(以下「本出願権」という)の承継は、【売買/事業譲渡に伴う譲渡】による特定承継とする。 2. 甲乙は、本出願権が商標登録前の段階にある権利であり、商標登録簿への移転登録の対象ではなく、特許庁長官に対する出願人名義変更届の提出によって手続を行うべきものであることを確認する。

第3条(承継の対価) 乙は甲に対し、本出願権の承継の対価として金【◯◯◯◯】円を、【支払時期・方法】により支払う。

第4条(名義変更届の提出) 1. 甲及び乙は、本合意締結後速やかに、共同して特許庁長官に対し出願人名義変更届(特定承継の場合の届出)を提出する。 2. 商標法第13条第2項が準用する特許法第34条第4項により、特定承継による本出願権の承継は、相続その他の一般承継の場合を除き、特許庁長官への届出をしなければその効力を生じない。したがって、本合意の締結のみによっては本出願権は乙に移転せず、名義変更届の提出及び受理をもって初めて承継の効力が生ずる。 3. 甲は、名義変更届の提出に必要な書類(譲渡証書、印鑑証明書等)を、乙の求めに応じ遅滞なく交付・押印しなければならない。 4. 名義変更届の提出に要する費用は【甲乙折半/乙負担】とする。

第5条(一般承継の場合の特則) 甲乙間の取引がグループ内再編に伴う合併、会社分割等の一般承継による場合、甲乙は次のとおり確認する。 1. 一般承継による本出願権の承継は、特許庁長官への届出を効力発生要件とせず、承継の事実(合併の効力発生日、分割の効力発生日等)により当然に効力を生ずる。 2. ただし、商標法第13条第2項が準用する特許法第34条第5項により、乙は一般承継により本出願権を承継した場合、遅滞なくその旨を特許庁長官に届け出なければならない。 3. 甲乙は、前項の届出に必要な書類(合併契約書の写し、登記事項証明書等)を速やかに準備し、乙が届出を行う。

第6条(審査手続の承継) 1. 本出願が拒絶理由通知を受けている場合、乙は名義変更届の提出後、意見書・補正書等の応答手続を自己の名義で行う。 2. 甲は、名義変更届提出前に既に着手した応答準備資料があるときは、乙に開示し引継ぎに協力する。 3. 出願日から【4か月】以内等、審査請求期限や中間処理期限が迫っている場合、甲乙は当該期限管理について事前に協議し、期限徒過による出願放棄とみなされる事態を回避する。

第7条(表明保証) 甲は乙に対し、本出願が第三者との間で権利の帰属に関する紛争を抱えておらず、また甲が本出願権につき第三者に譲渡その他の処分をしていないことを表明し保証する。

第8条(登録後の効果) 本出願が名義変更届提出後に登録査定を受け商標登録された場合、当該商標権は乙を商標権者として原始的に発生する。したがって、登録後にあらためて商標権の移転登録手続を行う必要はない。

第9条(名義変更届が受理されない場合の措置) 特許庁の審査により名義変更届が却下され、又は補正を求められた場合、甲乙は協議の上、速やかに必要な補正対応を行う。

第10条(秘密保持) 甲乙は、本合意の締結・履行を通じて知り得た相手方の営業秘密を第三者に開示又は漏えいしてはならない。

第11条(準拠法及び管轄) 本合意は日本法に準拠し、本合意に関する紛争は【地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

以上を証するため本書2通を作成し、甲乙記名押印の上各1通を保有する。

【西暦】年【月】月【日】日

甲:【住所】【会社名】【代表者名】 印 乙:【住所】【会社名】【代表者名】 印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節:現出願人向け

第3条の対価支払を「名義変更届の受理確認後」に紐付け、第7条の表明保証を「甲の知る限り」に限定する例が多い。一言解説:出願段階の権利は登録商標のような確定的な権利ではないため、譲渡人としては拒絶査定リスクを織り込み、対価の一部を登録査定後払いとする例もある。

B節:承継人(新出願人)向け

第4条第3項に「甲が書類交付を怠った場合、乙は甲を代理して名義変更届を提出できるよう委任状を事前に取得する」旨を追加し、第6条の審査対応引継ぎ資料の開示範囲を具体的にリスト化する例がある。一言解説:名義変更届が受理されるまで乙は出願人としての地位を主張できないため、審査期限が迫っている案件では手続の遅延リスクを最小化する条項設計が重要である。

C節:グループ内再編対応

第5条を拡充し、「合併の効力発生日をもって本出願権は乙に承継されたものとみなし、届出はその確認手続にすぎない」旨を明記した上で、複数の出願を一括して処理するための出願番号一覧を別紙添付する例がある。一言解説:一般承継の場合は届出が効力発生要件ではない点で特定承継と法的性質が異なるため、条項を混同しないよう分けて規定する必要がある。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

本書式は、審査に係属中でまだ商標登録に至っていない商標登録出願について、出願人の地位(出願により生じた権利)を別法人に引き継ぐ場面で用いる。既に登録が完了した商標権の移転には適用できず、その場合は商標権移転登録の手続(商標法第24条の2)によるべきであり、本書式を流用すべきではない。

本書式の中心的な法的ポイントは、商標法第13条第2項が準用する特許法第34条の規律である。第一に、特定承継(売買、事業譲渡等の個別の意思表示による承継)の場合、同条第4項により、特許庁長官への届出(出願人名義変更届)をしなければその効力を生じない。つまり、当事者間で承継契約を締結しただけでは出願人の地位は移転せず、名義変更届が受理されて初めて効力が発生する。これは登録済み商標権の移転が移転登録により効力を生ずる構造(商標法第24条の2)と類似するが、対象が「登録前の権利」であるため手続の名称・根拠条文が異なる点に注意を要する。第二に、一般承継(相続、合併、会社分割による包括承継)の場合は、同条第5項により、承継の事実によって当然に効力が生じ、届出は事後の報告的な位置付けにとどまる。承継人は遅滞なく届け出る義務を負うが、届出は効力発生要件ではない。この特定承継と一般承継の法的性質の違いを正確に理解しないまま契約書を作成すると、対価支払と権利移転の連動関係を誤って設計してしまう。

実務でよくある失敗として、第一に、登録済み商標権の譲渡契約書をそのまま流用し「移転登録により効力を生ずる」と記載してしまうケースがある。出願中の権利には移転登録の制度は存在せず、名義変更届による旨を正確に記載すべきである(第4条第2項)。第二に、拒絶理由通知への応答期限や審査請求期限が迫っている案件で、名義変更届の提出と応答手続の引継ぎに時間を要し、期限徒過により出願が却下・放棄とみなされるリスクを見落とすケースがある。第6条のように期限管理を明記すべきである。第三に、グループ内再編で複数の出願を一括して移転する際、一般承継か特定承継かの区分を誤り、不要な届出手続を行う、又は必要な届出を失念するケースがある。第5条のように承継類型ごとに条項を分けて整理することが望ましい。

名義変更届の様式や添付書類は特定承継・一般承継で異なり、また審査状況によって取扱いが変わるため、個別事案は専門家に確認してください。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 対象出願の出願番号・商標・指定商品役務・出願日・審査状況を確認したか
  • [ ] 承継が特定承継か一般承継かを正確に区分したか
  • [ ] 特定承継の場合、名義変更届の提出・受理が効力発生要件であることを条文上明記したか
  • [ ] 一般承継の場合、届出が効力発生要件ではなく事後の報告義務であることを条文上明記したか
  • [ ] 対価の支払時期を名義変更届の受理時期等と連動させたか
  • [ ] 名義変更届に必要な書類(譲渡証書、印鑑証明書、合併契約書写し等)の準備・提出責任を定めたか
  • [ ] 拒絶理由通知への応答期限、審査請求期限等の期限管理を確認したか
  • [ ] 審査対応資料の引継ぎ方法を定めたか
  • [ ] 名義変更届が却下・補正指示された場合の対応を定めたか
  • [ ] 表明保証(第三者との紛争不存在、二重処分の不存在)を定めたか
  • [ ] 登録後に別途移転登録手続が不要であることを確認したか