定年後や専門職の嘱託を置く企業向け。勤務日数や賃金、社会保険の適用を定め、高年齢者雇用安定法と労働基準法第89条の作成義務に対応します。

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嘱託社員就業規則

第1部: 書式本文

第1条(適用の目的) 本規則は、【株式会社〇〇】(以下「会社」という。)が嘱託社員として雇用する従業員の労働条件を定める。

第2条(嘱託社員の区分) 本規則における「嘱託社員」とは、次の各号のいずれかに該当し、会社との間で個別に労働契約を締結した従業員をいう。 (1) 定年後嘱託: 会社の定年に達し退職した後、引き続き又は改めて雇用される従業員 (2) 専門職嘱託: 特定の資格、経験又は専門知識を有し、特定の業務に従事することを目的として雇用される従業員

第3条(適用範囲) 本規則は、前条各号に該当する嘱託社員に適用し、正社員就業規則及び契約社員就業規則は適用しない。

第4条(定年後再雇用の手続) 1. 会社は、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下「高年齢者雇用安定法」という。)第9条に基づき、定年に達し引き続き雇用されることを希望する従業員を、65歳に達するまで嘱託社員として再雇用する。 2. 再雇用を希望する従業員は、定年に達する日の【 】か月前までに、会社所定の様式により申出を行う。 3. 会社は、就業規則に定める解雇事由又は退職事由に該当する場合を除き、前項の申出をした従業員の再雇用を拒むことができない。

第5条(労働契約の締結及び期間) 1. 嘱託社員の労働契約は、期間を定めて締結する。 2. 定年後嘱託の契約期間は原則1年とし、65歳に達する日の属する契約期間の末日まで更新することができる。 3. 専門職嘱託の契約期間は、業務内容及び委嘱の目的に応じて個別に定める。

第6条(勤務日数及び勤務時間) 1. 定年後嘱託の勤務日数及び勤務時間は、フルタイム勤務又は短時間勤務のいずれかを、本人の希望及び会社の業務上の必要性を踏まえて個別に定める。 2. 専門職嘱託の勤務日数及び勤務時間は、担当する業務の性質に応じて個別の労働契約書に定める。

第7条(賃金の体系) 1. 定年後嘱託の賃金は、月給制とし、定年退職時の職務内容、責任の程度及び再雇用後に従事する業務内容を踏まえて個別に決定する。 2. 専門職嘱託の賃金は、月給制又は成果報酬型(担当業務の成果、実績に応じて金額を変動させる方式)のいずれかを、契約締結時に個別に合意する。 3. 成果報酬型を採用する場合、会社は、報酬算定の基礎となる成果指標及び算定方法を労働契約書に明記する。

第8条(処遇決定における考慮事項) 1. 会社は、嘱託社員の賃金その他の待遇を決定するに当たり、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下「パート有期法」という。)第8条に基づき、正社員との間の職務内容、職務内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮し、不合理な相違が生じないよう努める。 2. 定年後嘱託については、定年退職を経て労働条件が改定されること自体は、直ちに不合理とはいえないと解されるが、個々の手当の性質や支給目的に照らし、当該手当を不支給又は減額とすることの説明が可能な理由を整理する。

第9条(賞与及び退職金) 1. 定年後嘱託には、原則として賞与及び退職金を支給しない。ただし、会社が別に定める場合はこの限りでない。 2. 専門職嘱託の賞与の要否は、個別の労働契約書に定める。

第10条(社会保険の適用) 1. 嘱託社員のうち、1週間の所定労働時間及び1か月の所定労働日数が正社員のおおむね4分の3以上である者は、健康保険及び厚生年金保険の被保険者となる。 2. 特定適用事業所においては、週所定労働時間20時間以上かつ賃金月額8万8,000円以上等の要件を満たす嘱託社員も被保険者となり得る。 3. 65歳以上の嘱託社員についても、前2項の要件を満たす限り、健康保険及び厚生年金保険(70歳未満の者に限る。)の被保険者となる。

第11条(業務内容及び役割) 1. 定年後嘱託の業務内容は、定年退職前の業務と同一又は関連する業務とすることを原則とするが、会社の業務上の必要により異なる業務に従事させることができる。 2. 専門職嘱託は、労働契約書に定める特定の業務にのみ従事するものとし、会社は、当該業務以外への配置転換を命じない。

第12条(契約の更新) 1. 定年後嘱託の契約更新は、65歳に達するまでの間、本人の健康状態及び勤務成績を踏まえて行う。 2. 専門職嘱託の契約更新は、委嘱の目的である業務の継続の要否に応じて判断する。

第13条(服務規律) 嘱託社員は、正社員就業規則に定める服務規律を準用する。

第14条(安全衛生) 会社は、嘱託社員に対しても、労働安全衛生法に基づく健康診断その他の安全衛生上の措置を実施する。

第15条(退職) 嘱託社員が契約期間の途中で自己都合により退職しようとするときは、退職を希望する日の30日前までに会社に申し出るものとする。

第16条(改廃) 本規則の改廃は、正社員就業規則の変更手続に準じて行う。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節: 定年後嘱託向け(継続雇用制度により再雇用する企業)

A-1 第7条第1項の修正例 「定年後嘱託の月額賃金は、定年退職時の基本給の【60】パーセントを基準とし、老齢厚生年金及び高年齢雇用継続給付の受給見込額を踏まえて個別に調整する。」 一言解説: 定年後再雇用時の賃金減額の水準は、公的給付との調整も踏まえて説明できるようにしておくと、処遇差の合理性を巡る紛争時の資料となる。

A-2 第8条第2項の修正例 「精皆勤手当及び役職手当については、定年後嘱託への支給を行わない。ただし、通勤手当及び食事手当は、正社員と同一の基準により支給する。」 一言解説: 最高裁判所の長澤運輸事件判決(平成30年判決)の考え方を踏まえ、手当ごとにその趣旨・目的を検討し、通勤手当のように支給趣旨が定年後も変わらない手当は正社員と同水準とする一方、職務や責任の変化に応じた手当は減額の説明を用意する設計が実務上参考にされている。

B節: 専門職嘱託向け(特定分野の高度専門人材を委嘱する企業)

B-1 第7条第2項の修正例 「専門職嘱託の報酬は、基本報酬月額【 】円に加え、担当プロジェクトの完了実績に応じた成果報酬(1件あたり【 】円)を支給する成果報酬型とする。」 一言解説: 成果報酬型を採用する場合、稼働時間ではなく成果物・成果指標を基準とすることで、労働時間管理の要否や固定残業代との関係が正社員型とは異なる整理になる点を契約書上明確にする必要がある。

B-2 第11条第2項の修正例 「専門職嘱託が従事する業務は、労働契約書別紙に定める【監修業務、技術指導業務等】に限定し、当該業務の終了をもって契約は終了するものとする。」 一言解説: 業務内容を具体的に限定すると、委嘱目的が終了した際の契約終了の判断がしやすくなる一方、業務範囲を狭く定めすぎると柔軟な依頼ができなくなる点とのバランスを検討する必要がある。

第3部: 書き方と法的ポイントの解説

本規則を使う場面は、定年に達した従業員を継続雇用する企業、又は特定分野の専門人材を有期の嘱託契約により委嘱する企業である。逆に、定年制度自体を設けていない企業や、専門人材についても正社員と同様の職務内容・処遇で雇用する企業では、あえて嘱託社員という区分を設ける必要性が乏しく、正社員就業規則又は契約社員就業規則で足りる場合がある。

根拠法令として、定年後嘱託については高年齢者雇用安定法第9条が、65歳までの雇用確保措置として継続雇用制度の導入等を事業主に義務付けており、本規則第4条はこれに対応する。処遇面では、パート有期法第8条が、有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇について、職務内容等を考慮して不合理な相違を設けることを禁止しており、定年後再雇用者も同条の適用対象となる。この点に関する裁判例として、最高裁判所平成30年6月1日判決(長澤運輸事件)は、定年後再雇用に伴う賃金の相違について、労働者の職務内容及び変更範囲が同一であっても、定年退職後の再雇用であることは他の事情として考慮され得るとしつつ、手当の趣旨・目的によっては不合理と判断され得るとの考え方を示したとされ、個々の手当ごとの検討が求められる。

実務でよくある失敗の一つ目は、定年後嘱託の賃金を一律に大幅減額し、手当ごとの趣旨を検討せずに全ての手当を不支給とした結果、精勤手当や通勤手当のように定年後も支給趣旨が変わらないものについて不合理性を指摘されることである。第8条第2項及び第2部A-2のように、手当ごとに支給趣旨を整理し、性質に応じた判断を行う必要がある。

二つ目の失敗は、専門職嘱託について労働時間を基準とした管理を行いながら成果報酬型の賃金体系を採用し、実質的な稼働時間に対して著しく低い報酬となり、最低賃金や労働時間規制との関係が問題となることである。第7条第3項のように、成果指標と算定方法を契約書に明記し、稼働実態との乖離がないか定期的に確認することが望ましい。

三つ目の失敗は、65歳以上の嘱託社員について社会保険の適用要件の確認を怠り、本来加入すべき者を未加入のまま放置することである。第10条のように、年齢にかかわらず所定労働時間・日数の要件で判断する旨を明記し、契約更新時に適用区分を再確認する運用が求められる。同一労働同一賃金に関する個々の手当の適法性や成果報酬型賃金の設計の妥当性は事案ごとに異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 定年後嘱託と専門職嘱託の区分及び定義を明確にしたか
  • [ ] 高年齢者雇用安定法第9条に基づく再雇用手続(申出時期・拒否事由の限定)を定めたか
  • [ ] 定年後嘱託の賃金水準の決定根拠(公的給付との調整を含む)を整理したか
  • [ ] 手当ごとに支給趣旨を検討し、不支給・減額の理由を説明できるようにしたか
  • [ ] 専門職嘱託の報酬体系(月給制・成果報酬型)を業務内容に応じて選択したか
  • [ ] 成果報酬型の場合、成果指標・算定方法を契約書に明記したか
  • [ ] 65歳以上の嘱託社員の社会保険適用要件を契約更新時に再確認する運用としたか
  • [ ] 専門職嘱託の業務範囲を契約書上具体的に限定したか
  • [ ] 契約更新の判断基準(健康状態・勤務成績・委嘱目的の継続性)を定めたか
  • [ ] 安全衛生上の措置(健康診断等)を嘱託社員にも適用する体制があるか