契約書等における署名、記名押印、電子署名の使い分けを定める社内規程です。押印権限、押印申請、原本管理の手順を規定します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
署名・記名押印に関する取扱規程
第1部: 書式本文
本規程は、契約書その他の重要書類における署名、記名押印および電子署名の使い分け、押印権限、原本管理の手順を定める社内規程の様式である。
署名・記名押印に関する取扱規程
第1条(目的)
本規程は、当社が作成・取り交わす契約書その他の重要書類における署名、記名押印
および電子署名の取扱いに関する基準を定め、書類の証拠力の確保と押印権限の
明確化を図ることを目的とする。
第2条(適用範囲)
本規程は、当社の全部門が作成・締結する契約書、覚書、注文書その他対外的に
権利義務を生じさせる書類(以下「対象書類」という)に適用する。
第3条(押印の種類と使い分け基準)
対象書類には、その重要度・金額規模に応じ、下記の区分により押印等を行う。
1. 実印(代表者印):契約金額【 】円以上の契約、不動産関連契約、
金融機関との契約等、重要性の高い書類
2. 認印(角印等):日常的な発注書、軽微な覚書等
3. 電子署名:電子契約システムを利用する書類。原則として当事者の意思表示の
真正性を担保できる電子署名サービスを利用する。
4. 署名(自署):押印に代えて、または押印とあわせて自署を求める場合
第4条(押印権限者)
実印の押印は、代表取締役または代表取締役から書面で権限を委譲された
【役職名】に限り行うことができる。認印の押印は、各部門長の承認を得た
担当者が行うことができる。
第5条(押印申請の手順)
押印を必要とする部門は、下記の手順により申請を行う。
1. 押印申請書に書類名、相手方、金額、押印区分を記載し、法務・総務部門に提出する
2. 法務・総務部門は書類内容を確認のうえ、押印権限者の承認を得る
3. 押印後、押印台帳に押印日・書類名・押印者を記録する
第6条(電子署名の利用基準)
電子署名を用いる場合、当該電子署名サービスがタイムスタンプおよび本人確認
機能を備えていることを確認したうえで利用する。重要度の高い書類については、
電子署名の利用可否を法務・総務部門が事前に確認する。
第7条(原本管理)
押印済みの対象書類の原本は、法務・総務部門が一元的に保管する。保管期間は
書類の種類ごとに別途定める文書管理規程に従う。写しを部門で保管する場合、
「写し」である旨を表示する。
第8条(印章管理)
実印・角印等の印章は、印章管理責任者を定め、施錠可能な場所に保管する。
印章の使用に際しては印章使用簿への記録を義務付ける。
第9条(規程の改廃)
本規程の改廃は、【取締役会・経営会議等】の決議による。
附則
本規程は【20XX年XX月XX日】から施行する。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 会社(法務・総務)の立場からの修正パターン
法務・総務部門は、統制と証拠力の確保を重視した修正を行う。
- 第5条の押印申請手順に、「押印申請書には契約書案文の最終版を添付し、法務・総務部門による内容確認を経なければ押印しない」との審査プロセスを追加し、内容未確認のまま押印される事態を防ぐ。
- 第7条の原本管理について、「原本は契約類型ごとに台帳番号を付し、電子データによる索引を作成する」との具体的管理方法を加え、原本と写しの混同を防止する。
- 第8条の印章管理について、「印章の貸出は都度申請・返却記録を要し、部門への常置は認めない」とし、権限外使用のリスクを最小化する。
B節: 各部門の立場からの修正パターン
各部門は、業務の迅速性を確保しつつ現場の実情に即した修正を行う。
- 第5条の押印申請手順について、「緊急を要する場合は、電子メールによる仮承認をもって先行対応し、事後速やかに正式な申請書を提出することができる」との例外規定を加え、業務の停滞を防ぐ。
- 第3条の押印区分について、部門で日常的に使用する定型書類(発注書等)をあらかじめ「認印可」の類型として一覧化し、都度の判断負担を軽減する。
- 第6条の電子署名の利用について、「部門が新たに電子契約システムを導入する場合は、事前に法務・総務部門の承認を得る」との調整規定を設け、部門ごとにシステムが乱立することを防ぐ。
- 海外取引先とのやり取りが多い部門では、「相手方が電子署名に応じない場合、当社所定の様式による記名押印またはPDFへの署名画像貼付を代替手段として認める」との柔軟な取扱いを加え、実務上の停滞を回避する条項を設ける。ただし、この代替手段は電子署名法3条の推定効を必ずしも受けられない点に留意し、重要度の高い契約では利用を避ける。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面と使ってはいけない場面 本規程は、契約書等の対外的書類について押印権限や電子署名の利用基準を社内的に統一する必要がある会社全般に適用できる。他方、法令上書面性・特定の様式・公的機関への届出印の使用が義務付けられている手続(不動産登記における登記所届出印の使用等)については、本規程の一般的な基準に加え、当該法令が定める個別要件を満たす必要があり、本規程のみで対応が完結するものではない。
根拠法令の解説 電子契約の証拠力に関しては、電子署名及び認証業務に関する法律3条により、本人による一定の電子署名(暗号化等の技術的要件を満たすもの)が行われた電磁的記録は、真正に成立したものと推定される。これは、民事訴訟法228条4項が定める私文書の成立の真正の推定(いわゆる二段の推定。本人の印章による押印がある場合に文書の成立の真正が推定される仕組み)の電子版に相当する仕組みであり、実印による押印と電子署名は、証拠法上類似の機能を担っている。ただし、電子署名法3条の推定を受けるには、固有性の要件(本人だけが行うことができる方法であること)を満たす電子署名サービスを選定する必要があり、単なる画像貼付や簡易な認証のみのサービスでは同条の推定が及ばない可能性がある。実印については、法令上の登録制度としては会社の代表者印の届出(商業登記法上の印鑑提出制度に基づく実務)があり、登記所に届け出た印影と照合できる印鑑登録証明書により本人性の推定を補強する運用が広く行われている。電子データで授受した契約書等については、電子帳簿保存法7条により、電子取引の取引情報に係る電磁的記録を、真実性・可視性を確保した方法で保存することが求められる。
よくある失敗と条項上の対策 第一に、押印権限が不明確なまま担当者個人の判断で押印が行われ、後日、無権代理(民法113条以下)の主張を受けるリスクがある。第4条・第5条のように権限者と承認手順を明記し、押印台帳で履歴を残すことが対策となる。第二に、「電子署名を使えば法的効力に問題がない」との理解に基づき、固有性の要件を満たさない簡易なサービスを重要書類に用いる例がある。第6条のように電子署名サービスの技術的要件を確認する審査プロセスを設けることが望ましい。第三に、押印済み原本と部門保管の写しが混同され、契約変更時に古い写しに基づいて業務が行われる事故がある。第7条のように原本を法務・総務部門で一元管理し、写しへの表示を徹底することが対策となる。押印方式や電子署名サービスの選定が個別の取引・書類の法的効力に与える影響については、事案に応じて専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- 対象書類の範囲(契約書・覚書・注文書等)が明確に定義されているか
- 実印・認印・電子署名の使い分け基準が金額・重要度に応じて具体的か
- 押印権限者が役職単位で明確に定められているか
- 押印申請から承認までの手順・記録方法が定められているか
- 電子署名サービスの選定基準(固有性・タイムスタンプ・本人確認機能)が明記されているか
- 緊急時の例外対応(仮承認等)とその事後手続が定められているか
- 原本管理の所管部門と保管期間が明記されているか
- 原本と写しの区別(写し表示)が運用上徹底されているか
- 印章管理責任者と印章の保管・貸出手続が定められているか
- 印章使用簿等、押印の履歴を追跡できる記録が整備されているか
- 規程の改廃手続(決議機関)が明記されているか
- 法令上特定の様式・届出印が求められる手続について、本規程との関係が整理されているか
- 電子署名に応じない相手方向けの代替手段が定められ、証拠力の違いが認識されているか
- 押印権限者・印章管理責任者の異動時に速やかに規程・台帳を更新する運用になっているか