賞与の査定基準を透明化したい企業向け。評価期間・支給係数・在籍要件を定め、労働基準法第89条の相対的必要記載事項として就業規則に位置づけます。

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賞与査定規程

第1部: 書式本文

第1条(目的) 本規程は、【株式会社〇〇】(以下「会社」という。)の就業規則第【 】条に基づき、労働者に支給する賞与の評価期間、査定基準、支給係数及び支給要件を定め、賞与制度の透明性及び公平性を確保することを目的とする。

第2条(適用範囲) 本規程は、会社に雇用される正社員のうち、賞与支給対象として雇用契約書に定められた者に適用する。契約社員、パートタイム労働者等への賞与支給については、別途定める場合を除き本規程を適用しない。

第3条(評価期間) 1 賞与の評価期間は、次のとおりとする。 夏季賞与:前年【10月1日】から当年【3月31日】まで 冬季賞与:当年【4月1日】から当年【9月30日】まで 2 評価期間の途中で入社した労働者については、在籍日数に応じて評価対象期間を按分する。

第4条(支給日) 1 賞与は、夏季賞与を毎年【7月10日】、冬季賞与を毎年【12月10日】に支給する。 2 支給日が金融機関休業日にあたるときは、その前営業日に支給する。 3 会社の業績状況その他やむを得ない事由がある場合、会社は支給日を変更し、又は賞与の全部若しくは一部を支給しないことができる。この場合、会社は速やかにその理由を労働者に説明する。

第5条(支給対象者及び在籍要件) 1 賞与は、評価期間の全部又は一部に在籍し、かつ、支給日現在会社に在籍する労働者に対して支給する。 2 前項の支給日在籍要件は、評価期間中の貢献に対する対価としての性質に加え、賞与が将来の労働継続への動機付けを兼ねる性質を有することに基づくものである。 3 支給日前に自己都合退職した者、支給日前に解雇された者(会社の責に帰すべき事由による解雇を除く。)については、原則として賞与を支給しない。ただし、定年退職、会社都合退職、死亡退職その他会社が特に認める場合はこの限りでない。

第6条(査定基準) 1 賞与の算定は、次の各号に掲げる要素を総合的に勘案して行う。 (1) 会社の業績(営業利益、売上高その他会社が定める経営指標の達成状況) (2) 所属部門の業績 (3) 個人の業績評価(目標達成度、業務遂行能力、勤務態度等) (4) 評価期間中の出勤状況 2 個人の業績評価は、上長による一次評価及び人事部門による二次評価を経て確定する。

第7条(支給額の算定方法) 1 賞与の支給額は、次の算式により算定する。 賞与支給額 = 【基準賞与額(基本給の〇か月分)】× 個人評価係数 × 部門業績係数 × 全社業績係数 2 個人評価係数は、人事評価制度に基づく評価結果に応じて【0.6】から【1.4】の範囲で定める。 3 部門業績係数及び全社業績係数は、評価期間終了後、経営会議の議を経て確定し、労働者に通知する。 4 前3項の算定方法は、業績連動型の賞与制度を採用する場合の例であり、一律支給型を採用する場合は第2部B節の例による。

第8条(休職者・休業者の取扱い) 1 評価期間中に私傷病休職、育児休業、介護休業その他の休業をした労働者については、休業期間を除いた実勤務期間を基礎として按分計算により賞与額を算定する。 2 産前産後休業及び育児・介護休業を理由として、休業をしなかった労働者と比較して不利益な取扱いを行わない。

第9条(懲戒処分者の取扱い) 評価期間中又は支給日までに懲戒処分を受けた労働者については、査定において当該事由を考慮し、賞与額を減額し、又は不支給とすることができる。

第10条(不服申立て) 労働者は、自己の賞与査定結果について疑義がある場合、支給日から【2週間】以内に人事部門に対し説明を求めることができる。会社は合理的な範囲で説明を行う。

第11条(周知) 会社は、本規程を労働者がいつでも確認できる方法(社内イントラネット掲示、書面備置等)により周知する。

第12条(改廃) 本規程の改廃は、就業規則の変更手続に準じ、労働者の過半数を代表する者の意見を聴いたうえで行う。

附則 本規程は【20〇〇年〇月〇日】から施行する。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節: 業績連動型向け

業績連動型を徹底する企業では、個人評価と会社業績の連動割合をより明確にし、係数のレンジを条文上に固定することが望ましい。

修正条文例(第7条第2項の書き換え): 「個人評価係数は、S評価1.6、A評価1.3、B評価1.0、C評価0.7、D評価0.4の5段階とし、人事考課規程に定める評価ランクに対応させる。」

一言解説: 評価ランクと係数を一対一で対応させることで、評価結果が確定した時点で支給額の予測可能性が高まり、査定根拠に関する紛争リスクを抑えられる。評価ランクの決定基準は人事考課規程側で別途明確化しておく必要がある。

B節: 一律支給型向け

業績連動をとらず、全労働者に基本給の一定月数分を一律支給する制度を採る企業向けの書き換えである。

修正条文例(第7条第1項の書き換え): 「賞与の支給額は、算定対象期間における所定労働日数に対する出勤率が【90%】以上である労働者について、基本給の【1.5】か月分を一律に支給する。出勤率が90%未満の場合は、出勤率に応じて按分した額を支給する。」

一言解説: 一律支給型では個人評価による差をつけない代わりに、出勤率による按分要件を明確にしておくことで、著しい欠勤があった労働者との公平性を確保できる。業績連動要素を削除する場合は第6条の査定基準からも業績評価に関する記載を簡素化する必要がある。

第3部: 書き方と法的ポイントの解説

賞与査定規程は、査定基準や支給係数が曖昧なまま慣行的に賞与を支給してきた企業、あるいは業績連動の要素を導入したいが具体的なルールが未整備の企業に導入が適している。他方、賞与を全く支給しない企業や、賞与相当額をあらかじめ月例賃金に組み込んでいる企業(年俸制で賞与を観念しない設計等)では、本規程を導入するとかえって賞与支給義務を新たに創設したと誤解されかねないため、慎重な検討を要する。

賞与は労働基準法上、賃金の絶対的必要記載事項ではなく、同法第89条第4号の相対的必要記載事項(退職手当を除く臨時の賃金等)として、支給する場合にのみ就業規則に記載すれば足りるものとされている。もっとも、就業規則に賞与の定めを置く以上、支給の有無や算定方法が労働者にとって著しく不透明であってはならず、労働契約法第7条が定めるとおり、就業規則の内容が合理的であり、かつ労働者に周知されていることが労働契約の内容となるための前提となる。本規程第11条の周知条項及び第10条の不服申立て条項は、この周知性・合理性を担保するための条項である。

支給日在籍要件(第5条)は、多くの裁判例において、賃金の後払い的性質を有する賞与についても、将来の労働への動機付けという性質を併せ持つことから、就業規則等に明記されている限り一定の合理性が認められる傾向にあるとされてきた。もっとも、支給日在籍要件の有効性は、退職の経緯(会社都合か自己都合か)、退職時期と評価期間との関係、規程の周知状況等の個別事情によって判断が分かれ得る論点であり、一律に有効と扱えるものではない。特に会社都合退職や整理解雇に伴う退職者に対して在籍要件を機械的に適用すると、後日その有効性が争われるリスクが高まる。

実務上よくある失敗としては、第一に、支給日在籍要件を定めながら会社都合退職者にも一律不支給とし、後に紛争化する例が挙げられる。第9条・第5条但書のように、会社都合退職や定年退職等の例外を明記しておくことが望ましい。第二に、個人評価係数の算定根拠が人事考課制度と紐づいておらず、査定結果の説明ができない例である。第7条・第10条のように、評価制度との対応関係と不服申立ての手続を規定に組み込むことが有効である。第三に、休職・休業者の按分計算方法を定めずに一方的に不支給とし、育児休業等を理由とする不利益取扱いと評価されるリスクを生じさせる例である。第8条のように、按分計算の方法と不利益取扱い禁止の原則を明記しておく必要がある。

支給日在籍要件の有効性や個別の査定結果をめぐる紛争は事案ごとに評価が分かれるため、規程の設計及び具体的な運用にあたっては弁護士等の専門家に個別事案として確認することを推奨する。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 評価期間の開始日・終了日が実際の人事評価サイクルと一致しているか
  • [ ] 支給日在籍要件の例外(会社都合退職、定年退職、死亡退職等)を明記したか
  • [ ] 個人評価係数と人事考課制度の評価ランクとの対応関係が明確か
  • [ ] 業績連動型・一律支給型のいずれの制度設計かを条文上明確にしたか
  • [ ] 休職・休業期間中の按分計算方法を定め、不利益取扱い禁止の原則を明記したか
  • [ ] 懲戒処分者に対する減額・不支給の基準を定めたか
  • [ ] 労働基準法第89条第4号に基づき就業規則本体又は附属規程として適切に位置づけたか
  • [ ] 労働契約法第7条を踏まえ、労働者への周知方法を具体的に定めたか
  • [ ] 不服申立ての手続と期限を定めたか
  • [ ] 会社業績悪化時の減額・不支給条項が労働者に不意打ちとならない周知内容になっているか