就業規則を作成・変更して労働基準監督署へ届け出る場面で添付が必要となる様式。労働基準法第90条に基づき過半数代表者から意見を聴取した事実と内容を記録する。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
就業規則(変更)に関する意見書
第1部: 書式本文
【就業規則(変更)に関する意見書】
【西暦年】年【 】月【 】日
【会社名】 御中
過半数代表者(氏名) 【 】 ㊞
第1条(意見聴取の対象) 私は、貴社が【西暦年】年【 】月【 】日付で作成(変更)した下記の就業規則(以下「本規則」という。)について、労働基準法第90条第1項の規定に基づく意見聴取を受けました。
一 就業規則の名称: 【 】 二 変更箇所: 【新設・改定条項を条番号とともに具体的に記載】 三 変更の概要: 【 】 四 施行予定日: 【西暦年】年【 】月【 】日
第2条(意見聴取の経緯) 1. 貴社は、【西暦年】年【 】月【 】日、本規則案を私に交付し、内容についての説明を行いました。 2. 私は、本規則案について、事業場の労働者に対する周知(掲示・配付・意見募集等)を【行った・行わなかった】上で、下記のとおり意見を述べます。
第3条(意見の内容) 【いずれか一方を選択して記載する。】 (選択1: 異議なし) 本規則の内容について、意見はありません。
(選択2: 意見・要望を付す場合) 本規則の内容について、下記のとおり意見を述べます。 記 一 【意見の対象となる条項】について、【具体的な意見の内容】 二 【意見の対象となる条項】について、【具体的な意見の内容】
第4条(私の資格) 私は、貴社の労働者の過半数を代表する者として、【西暦年】年【 】月【 】日実施の【投票・信任確認】により選出された者であり、労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者には該当しません。
第5条(添付書類との関係) 本意見書は、貴社が本規則を所轄労働基準監督署長に届け出るに際し、労働基準法第90条第2項及び労働基準法施行規則第49条第2項に基づき届出書に添付するものです。
第6条(意見書の性質) 本意見書は、本規則の内容についての意見を明らかにするものであり、本規則の効力の発生を承認し、又は同意する趣旨のものではありません。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 異議なしの場合
A-1 第3条(選択1)の補足記載例 「本規則案について事前に説明を受け、内容を理解した上で、特段の異議はない。」 一言解説: 単に「異議なし」とだけ記載すると、意見聴取の実質性(内容を理解した上での意見表明か)が争われることがあるため、説明を受けた事実を併記しておくと後日の紛争予防に資する。
A-2 第2条の記載例 「本規則案の交付を受けた後、事業場内で従業員への周知を行い、特段の反対意見が寄せられなかったことを確認した上で、異議なしとする。」 一言解説: 過半数代表者個人の意見にとどまらず、事業場の意見集約の経緯を残しておくことで、意見聴取の実質性を担保しやすくなる。
B節: 意見・要望を付す場合
B-1 第3条(選択2)の記載例 「第〇条(休職期間の上限)について、既存の休職者に対する経過措置を設けるべきである。」 一言解説: 意見書に反対や要望が記載されていても、就業規則の届出自体は受理される。会社は意見内容を精査し、必要に応じて規則案を修正するかどうかを検討する材料として活用すべきである。
B-3 第3条(選択2)の別記載例 「第〇条(不利益変更部分)について反対する。周知期間が短く、対象労働者への説明が不十分である。」 一言解説: 就業規則の不利益変更については、労働契約法第10条により、周知の状況や変更の必要性等が合理性判断の考慮要素となる。反対意見が付された事実自体が、後日の合理性判断において会社に不利な事情として斟酌される可能性があるため、会社側は意見の内容を軽視せず記録として保管すべきである。
B-2 第6条の補足記載例 「意見書の提出をもって、変更後の規則の内容に同意したものとは解釈されないことを、会社と過半数代表者双方で確認する。」 一言解説: 意見聴取はあくまで手続要件であり、内容の当否についての実体的な合意を意味しない点を明確にしておくことで、後日「同意したはずだ」という誤解を防ぐ。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、常時10人以上の労働者を使用する使用者が就業規則を作成し、又は変更して所轄労働基準監督署長に届け出る場面で、届出書に添付する必要書類として用いる。逆に、常時使用する労働者が10人未満の事業場では就業規則の作成・届出義務自体がなく、意見書の添付も不要である(ただし任意に作成する場合は同様の手続を踏むことが望ましい)。
根拠法令は労働基準法第90条及び労働基準法施行規則第49条である。同法第90条第1項は、使用者が就業規則の作成又は変更について、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならないと定める。同条第2項及び施行規則第49条第2項は、就業規則の届出の際に、当該意見を記した書面を添付しなければならないと定める。意見聴取は同意を得ることまでを要求するものではなく、反対意見が付されていても届出自体は受理される点が、労働協約の締結等とは異なる特徴である。
実務でよくある失敗の一つ目は、意見聴取の日付が就業規則の作成日又は変更日より後になってしまうことである。意見聴取は規則の内容が確定した案について事前に行うべき手続であり、施行後に事後的に意見書を作成するような運用は、手続の趣旨に反すると評価されるおそれがある。
二つ目の失敗は、就業規則の届出書に意見書の添付を失念し、監督署から補正を求められることである。第90条第2項が添付を明文で要求しているため、意見書のない届出は受理されないか、受理後に補正指導の対象となる。
三つ目の失敗は、意見書に過半数代表者の記名押印又は署名を欠いたまま提出してしまうことや、意見聴取を受けた者が実際には管理監督者であった、あるいは適法な選出手続を経ていなかったことが後日判明することである。この場合、意見聴取自体が無効と評価され、就業規則の効力発生要件を欠くと判断されるリスクがある。
四つ目の失敗として、複数の事業場を有する会社が、本社所在地の過半数代表者からのみ意見を聴取し、就業規則を適用する各事業場ごとの意見聴取を省略してしまう例が見られる。就業規則の効力は事業場を単位として生じるため、複数事業場に共通の規則を適用する場合であっても、原則として事業場ごとに意見を聴取し、意見書を添付する必要がある。全社一律の規則であることを理由に本社のみで手続を完結させると、他の事業場における届出の適法性が問われることになりかねない。
意見聴取の手続的な適法性や、意見の内容を踏まえて規則案を修正すべきかどうかの判断は事案ごとに異なるため、具体的な対応にあたっては社会保険労務士又は弁護士等の専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 意見聴取の対象となる就業規則(規程名・条番号)を具体的に特定したか
- [ ] 意見聴取の日付が規則の作成(変更)日より後になっていないか確認したか
- [ ] 意見を述べる者が適法に選出された過半数代表者であることを確認したか
- [ ] 意見を述べる者が管理監督者に該当しないことを確認したか
- [ ] 「異議なし」の場合と「意見あり」の場合のいずれかを明確に選択したか
- [ ] 意見の内容を具体的な条項番号と対応させて記載したか
- [ ] 過半数代表者の記名押印又は署名を得たか
- [ ] 意見書を届出書の添付書類として準備したか
- [ ] 意見書の提出が規則内容への同意を意味しない旨を明確にしたか
- [ ] 複数事業場がある場合、事業場ごとに意見聴取と意見書の作成を行ったか