復職判断や就業上の配慮のため会社が主治医へ医学的見解を求める場面の書式。本人の同意欄を設け、個人情報保護法上の要配慮個人情報の取扱いにも配慮する。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
主治医意見書依頼書
第1部: 書式本文
【令和 年 月 日】
【主治医氏名】 殿 (【医療機関名】 御中)
【会社所在地】 【会社名】 代表者【役職・氏名】 印
主治医意見書のご依頼について
拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、当社従業員【従業員氏名】(以下「本人」という。)につきまして、下記の事項に関し、貴職の医学的見解を書面にてご教示賜りたく、本人の同意を得たうえでお願い申し上げます。
記
- 現在の傷病名及び治療経過の概要
- 就労可能な状態にあるか否かについての医学的判断
- 就労可能な場合、就業上配慮すべき事項(勤務時間、業務内容、通院配慮等)
- 復職後の経過観察に必要と考えられる期間の目安
- 症状悪化時に想定される兆候及び再休職の要否に関する見通し
- その他、就業上の措置を検討するにあたり留意すべき事項
なお、本依頼は本人の同意に基づき、復職の可否及び就業上の配慮の要否を検討する目的に限定して利用するものであり、目的外には利用いたしません。取得した回答書は人事担当部署において施錠管理し、必要最小限の関係者以外には開示いたしません。ご多用のところ恐縮ですが、【回答期限:令和 年 月 日】までに、同封の様式または貴院所定の様式にてご回答賜りますようお願い申し上げます。
回答書のご送付にあたっては、本人限り開封の指定又は封筒に「親展」の表示をいただくなど、情報の混入・誤送付の防止にご配慮いただけますと幸いです。ご不明な点がございましたら、下記担当までお問い合わせください。
なお、本依頼に係る費用(文書料)は当社が負担いたします。請求書を【送付先】までご送付ください。また、本意見書の回答内容について電話等で口頭のご説明をいただく場合、その所要時間に応じた費用につきましても別途ご相談させていただきます。
以上
【会社担当部署・担当者名・連絡先】
本人同意欄
私は、上記の依頼内容及び会社が主治医から取得する情報の範囲・利用目的を理解し、主治医が会社に対して意見書を提供することに同意します。
【令和 年 月 日】 氏名【 】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 会社側(依頼用)
- 記載例:「本依頼は復職可否の判断及び就業上の配慮の検討に必要な限度で行うものであり、取得した情報は人事担当部署及び産業医以外には共有しません。」
- 一言解説:取得目的と共有範囲をあらかじめ限定して明示することで、後日「聞いていない目的で使われた」という紛争を予防できる。社内の稟議書や関係者向け連絡文にも同じ文言を反映させておくと、運用上の齟齬を避けやすい。
- 記載例:「本人が同意を撤回した場合、以後の依頼を中止し、既に取得した情報の取扱いについても本人と協議のうえ対応します。」
- 一言解説:同意はいつでも撤回され得るという前提を書式上明記しておくと、撤回時の対応方針が社内で共有しやすくなる。撤回後に既取得情報を破棄するか保管を継続するかは、就業規則上の記録保存義務との兼ね合いで検討する必要がある。
B. 本人(同意記入用)
- 記載例:「私は、本意見書が復職の可否及び就業上の配慮の検討以外の目的(懲戒処分の資料等)に利用されないことを確認したうえで同意します。」
- 一言解説:本人側から目的限定を明記させることで、会社の恣意的な利用を牽制し、同意の任意性を担保しやすくする。目的が変更される場合には改めて同意を取得する運用を前提とすることが望ましい。
- 記載例:「私は、本同意書とは別に、必要と判断した場合は同意を撤回できることを理解しています。」
- 一言解説:本人が同意の撤回可能性を認識していたことの記録は、後日の同意の有効性を巡る争いへの備えになる。同意時に精神的な負担を強く感じている場合は、家族や産業医への相談機会を確保したうえで記入させることも検討に値する。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、休職中の従業員の復職判断や、メンタルヘルス不調等を抱える従業員への就業上の配慮を検討するにあたり、会社が主治医の医学的知見を求める場面で使用する。他方、本人の同意を得ずに主治医へ直接接触し情報提供を求める場面や、退職勧奨・懲戒処分の口実作りを目的とする場合には使用すべきではない。休職期間満了が近づき復職の可否を急いで判断する必要がある場合でも、同意取得の手順を省略することは避けるべきである。
病歴に関する情報は個人情報の保護に関する法律第2条第3項にいう要配慮個人情報に該当し、同法第20条第2項により、本人の同意を得ないで取得することは原則として禁止されている。また、主治医から会社への情報提供は第三者提供に当たるため、同法第27条第1項に基づき本人の同意を要する。本書式が依頼状の末尾に本人同意欄を組み込んでいるのは、この取得局面と提供局面の双方について同意を明確化するためである。
実務でよくある失敗の一つは、産業医や人事担当者が口頭で本人の了承を得たとして、書面の同意を残さないまま主治医へ照会をかけてしまうことである。これでは後日、本人から「同意していない」と争われた際に取得の適法性を立証できない。本書式は同意欄への署名・日付記入を必須とすることでこれに対応している。
二つ目の失敗は、依頼事項を「本人の病状について何でも教えてほしい」といった曖昧な内容にしてしまい、必要以上に詳細な病歴情報まで取得してしまうことである。取得する情報は復職可否・就業上の配慮の判断に必要な限度にとどめるべきであり、本書式は依頼事項を号立てで具体的に限定している。
三つ目の失敗は、取得した意見書を人事評価や懲戒処分の資料に転用してしまうことである。本人が同意した目的の範囲を超える利用は、同意の前提を欠き、プライバシー侵害の主張を招く。本書式は目的外利用を行わない旨を依頼状本文に明記し、利用範囲を限定している。
四つ目の失敗は、意見書を受け取った担当者以外の従業員が回覧・共有できてしまう保管体制のまま放置してしまうことである。要配慮個人情報は漏えい時の影響が大きく、社内での閲覧権限を限定しないまま部門横断で共有すると、目的外提供や漏えいの温床になりかねない。本書式は回答書の保管について、施錠管理と関係者限定の閲覧を依頼状本文に明記している。
なお、傷病の内容や治療方針の評価、休職・復職の可否に関する最終判断は法的にも医学的にも専門性を要するため、個別の事案については弁護士等の専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 依頼先の医療機関名・主治医氏名が正確に記載されているか
- [ ] 依頼事項が復職可否・就業上配慮の検討に必要な範囲に限定されているか
- [ ] 本人の同意欄への署名・日付の記入が完了しているか
- [ ] 同意取得のタイミングが主治医への照会前になっているか
- [ ] 情報の利用目的・共有範囲が本文に明記されているか
- [ ] 回答期限が明記され、医療機関の負担に配慮した期間になっているか
- [ ] 文書料等の費用負担者・請求方法が明記されているか
- [ ] 取得した意見書の保管・アクセス制限(人事部門限定等)の運用が別途定められているか
- [ ] 本人が同意を撤回できる旨・撤回時の取扱いが社内規程と整合しているか
- [ ] 就業規則の休職・復職規定と本依頼の位置づけが整合しているか
- [ ] 回答書の送付方法(親展指定等)が誤送付・混入防止に配慮した内容になっているか
- [ ] 取得した意見書の閲覧権限者が人事担当部署等に限定される運用になっているか