病院・診療所が手術や麻酔を実施する前の説明同意取得に使う書式。医療法および医師法上の説明義務と患者の自己決定権を踏まえ、術式・合併症・代替治療を明示する。

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手術・麻酔に関する同意書

第1部: 書式本文

医療法人〇〇会〇〇病院(以下「甲」という。)は、患者〇〇〇〇(以下「乙」という。)に対し、下記手術及び麻酔の実施に先立ち、その内容、危険性その他必要な事項を説明し、乙は当該説明を理解した上で、下記のとおり手術及び麻酔の実施に同意する。

第1条(手術の内容及び目的) 甲は乙に対し、乙の傷病名【傷病名】に対する治療として、下記の手術(以下「本手術」という。)を実施する。 (1) 予定術式【術式名】 (2) 実施予定日【年月日】 (3) 執刀を担当する医師【氏名】及び手術に関与する医師団の構成 甲は、本手術の目的、期待される効果及び実施しない場合に予想される経過について、乙に対し口頭及び別紙説明書面により説明したことを確認する。

第2条(麻酔方法の説明) 甲は乙に対し、本手術に際して実施する麻酔の方法(全身麻酔・脊椎麻酔・硬膜外麻酔・局所麻酔その他【麻酔方法】)、麻酔担当医の氏名及び麻酔に伴う合併症(悪心嘔吐、気道確保困難、アレルギー反応、まれに生じ得る重篤な合併症を含む。)について説明し、乙はこれを理解した上で麻酔の実施に同意する。

第3条(手術に伴う危険性及び合併症・偶発症) 甲は乙に対し、本手術に伴い一般的に発生し得る合併症及び偶発症(出血、感染、神経損傷、周辺臓器の損傷その他【術式固有のリスク】)の内容及びその発生頻度について、現時点で得られている医学的知見に基づき説明する。乙は、いかなる手術及び麻酔にも一定の危険性が伴うことを理解した上で本手術に同意する。

第4条(輸血の可能性) 本手術の経過によっては輸血を要する場合があり、輸血の要否、輸血の方法及び輸血に伴う危険性については、別途「輸血に関する同意書」により乙の同意を取得するものとし、本条においてはその可能性がある旨のみを確認する。

第5条(代替的治療方法の説明) 甲は乙に対し、本手術以外に選択し得る治療方法(保存的治療、他の術式、無治療で経過観察する場合を含む。)の内容、利点及び欠点について説明した。乙は、これらの選択肢を理解した上で、自らの意思により本手術を選択する。

第6条(同意の任意性及び撤回) 乙の本同意は乙の自由な意思に基づくものであり、本手術の実施前であればいつでも、乙は理由の如何を問わず本同意を撤回することができる。甲は、乙が本同意を撤回したことを理由に乙を不利益に取り扱わない。

第7条(代諾) 乙が未成年者又は意思表示をする能力を欠く状態にある場合、乙に代わり、乙の【親権者・法定代理人・配偶者等】〇〇〇〇(以下「代諾者」という。)が本同意書に署名するものとする。代諾者は、乙の推定的意思及び最善の利益を考慮して本同意をするものとする。

第8条(緊急時の同意省略) 乙の生命に対する危険が切迫しており、かつ、乙が意識不明その他の事由により意思表示をすることができず、代諾者との連絡も速やかに行うことができない場合、甲は、乙の生命及び身体の保護のために必要最小限度の範囲で、本同意書によらずに手術及び麻酔を実施することができる。この場合、甲は事後速やかに乙又は代諾者に対しその経過を説明する。

第9条(術中の術式変更等) 甲は、本手術の実施中に予期しない事態が生じ、当初予定した術式を変更し、又は追加の処置を行う必要が生じた場合、乙の生命及び身体の安全を確保するために医学的に必要と判断される範囲で、当該変更又は追加処置を行うことができるものとする。

第10条(術後の説明義務) 甲は、本手術の実施後、乙又は代諾者に対し、手術の経過、実施した処置の内容及び術後の注意事項について説明する。合併症が発生した場合には、甲はその内容及び対応方針について速やかに説明する。

第11条(個人情報の取扱い) 甲は、本手術に関して取得した乙の診療情報を、法令に基づく場合を除き、乙の同意なく第三者に提供しない。

第12条(費用に関する説明) 甲は乙に対し、本手術及び麻酔に要する費用の概算並びに保険適用の有無について説明したことを確認する。

第13条(記録の保存) 甲は、本同意書及び関連する説明の記録を、法令に定める期間、適切に保存する。

第14条(協議事項) 本同意書に定めのない事項について疑義が生じたときは、甲乙誠実に協議して解決する。

【説明年月日】〇〇〇〇年〇〇月〇〇日

説明医師: 所属・氏名      印

(乙・同意者)住所    氏名      印 (代諾者)住所    氏名      印  続柄

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 医療機関(甲)側の修正パターン

A-1. 高難度新規医療技術を実施する場合の追加説明条項

追加条文例:「本手術は、甲において実施実績が【件数】件に満たない新規性の高い術式であることに鑑み、甲は乙に対し、当該実施実績、代替可能な既存術式との比較及び先進医療又は臨床研究としての実施であるか否かについて、追加の説明書面を交付して説明する。」 一言解説: 実施経験の乏しい術式を採用する場合、通常の合併症説明に加えて実績や代替術式との比較を明示しないと、説明義務違反が争われやすいため、医療機関側はこの追加条項を用いる。

A-2. 複数診療科による合同手術の場合の執刀医複数明示条項

追加条文例:「本手術は【診療科名】及び【診療科名】の合同手術として実施するものとし、各科における執刀責任者をそれぞれ第1条第3号に付記する。乙に対する説明は、原則として各科の執刀責任者がそれぞれ担当する範囲について行う。」 一言解説: 合同手術では説明担当医と実施医の対応関係が曖昧になりやすいため、医療機関側は各科の責任範囲を条文上区分しておく必要がある。

B. 患者・家族(乙・代諾者)側の修正パターン

B-1. 救急搬送等により意思確認ができない患者の家族が事後に確認を求める場合の修正

追加条文例:「代諾者は、第8条により同意省略の措置がとられた場合、甲に対し、当該措置の判断根拠となった具体的な事情(乙の意識状態、家族への連絡状況を含む。)について、事後の説明を求めることができる。」 一言解説: 緊急時同意省略が発動された事案では、家族が後から経緯を確認したいと考えることが多く、患者・家族側としては事後説明を求める権利を明示しておくことが望ましい。

B-2. 判断のための時間的猶予を求める場合の修正

追加条文例:「乙及び代諾者は、本手術に関する説明を受けた日から【日数】日間、他の医療機関の医師の意見を聴取する等のために本同意書への署名を留保することができる。ただし、緊急を要する場合はこの限りでない。」 一言解説: 説明を受けたその場での即時同意を迫られることへの不安に対応するため、患者・家族側は熟慮期間を確保する修正を加えることが考えられる。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面と使ってはいけない場面の解説 本書式は、入院又は外来で実施される手術及び全身麻酔・局所麻酔等を伴う医療行為について、実施前に患者本人又はその代諾者から医療法上の説明を尽くした上で同意を取得する場面で使用する。単なる採血や外来処置など、身体への侵襲の程度が軽微な行為については、別途簡易な同意確認で足りる場合が多く、本書式をそのまま用いる必要はない。他方、緊急手術のうち第8条の要件を満たさない場合(意識があり本人の意思確認が可能な場合等)には、同意省略条項を安易に適用してはならず、通常どおり本人からの同意取得を試みるべきである。

根拠法令の解説 医療法第1条の4第2項は、医師等の医療の担い手が、医療を提供するに当たり適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない旨を定め、本書式の各条項はこの説明努力義務を書面上具体化するものである。また、手術という身体への侵襲行為は、同意を欠けば刑法上の傷害罪等の構成要件に該当し得るが、医学的適応性及び医術的正当性を備え、患者の有効な同意がある場合には、刑法第35条の正当行為として違法性が阻却されると解される。さらに、患者が自らの治療方法を決定する利益(自己決定権)は人格的利益として尊重されるべきであり、本人意思に反する医療行為は原則許容されないとの民法上の法理が、代諾及び緊急時同意省略の各条項の背景にある。

実務でよくある失敗と対策の解説 第一に、外来で説明を行った医師と実際に執刀する医師が異なり、乙が同意した内容と実際の実施者との間に齟齬が生じる失敗がある。第1条第3号のように執刀医及び関与する医師団の構成を書面上明示し、変更時は改めて説明する運用が対策となる。第二に、包括的な同意書への署名のみを得て、個別の合併症の説明内容が診療記録に残されず、後日「聞いていない」との紛争に発展する失敗がある。第3条のように危険性及び合併症の内容を具体的に記載し、説明書面を別紙として交付・保存することが対策となる。第三に、緊急時の同意省略要件(生命の危険の切迫、意識不明等による意思確認不能、代諾者との連絡不能)が不明確で、緊急性の判断基準をめぐり事後的に争われる失敗がある。第8条のように要件を具体的に列挙し、事後説明義務(同条後段)を併せ定めることが対策となる。もっとも、術式の複雑性や基礎疾患により説明すべき内容は異なり得るため、個別の事案については弁護士等の専門家に確認しながら運用することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 術式名、実施予定日及び執刀医を具体的に記載したか
  • [ ] 麻酔方法及び麻酔担当医を明示したか
  • [ ] 想定される合併症・偶発症の内容を具体的に説明したか
  • [ ] 輸血の可能性について言及し、別途輸血同意書の取得を予定しているか
  • [ ] 代替的治療方法(保存的治療等)の説明を行ったか
  • [ ] 同意の撤回が可能であることを説明したか
  • [ ] 未成年者・意思無能力者の場合の代諾者を適切に特定したか
  • [ ] 緊急時の同意省略の要件(生命の危険の切迫性、意識状態、連絡の可否)を確認したか
  • [ ] 術中の術式変更等に関する説明を行ったか
  • [ ] 説明書面及び同意書を診療記録として保存する体制があるか
  • [ ] 費用及び保険適用の有無について説明したか