選任された役員が就任を承諾する旨の書面。商業登記法第54条第1項により役員変更登記の添付書面とされる点を踏まえ、住所氏名の記載や押印要否を整理しています。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
就任承諾書(取締役・監査役)
第1部: 書式本文
以下は、株主総会等で取締役又は監査役に選任された者本人が、その就任を承諾する旨を表明する書面の記載項目である。役員変更登記の申請にあたっては、就任を承諾したことを証する書面の添付が商業登記法第54条第1項の定めるところにより求められる場合があるため、登記添付書面として通用する体裁を整える。就任承諾は選任決議とは別個の意思表示であり、株主総会で選任されただけでは役員としての地位は確定せず、被選任者本人による承諾があって初めて就任の効果が生ずるという私法上の位置づけを踏まえて作成する。
- 表題「就任承諾書」
- 宛先【株式会社〇〇 御中】
- 本文冒頭の文言「私は、〇年〇月〇日開催の貴社株主総会において取締役(又は監査役)に選任されたので、その就任を承諾いたします。」
- 選任機関及び選任年月日の特定(株主総会決議・種類株主総会決議等の別)
- 就任する役職の特定(取締役、代表取締役、監査役、監査等委員である取締役等の別)
- 承諾者(就任者本人)の氏名
- 承諾者の住所(登記記録に記載される住所と一致させる)
- 承諾の年月日(選任日以降の日付とする)
- 承諾者本人の記名及び押印欄(自署の場合は押印を省略できる場合があるが、登記所提出書面としての取扱いは別途確認する)
- 代表権を有する役員に選任された場合の追記(代表取締役への就任承諾を含む旨、又は取締役への就任承諾と代表取締役への就任承諾を別書面とする旨)
- 添付書類として提出する場合の表題の統一(登記申請書の添付書面一覧との名称一致)
- 監査役の場合、監査役としての職務(監査役設置会社である旨)を承諾の対象に含める旨の記載
- 就任者が外国籍である場合や住所が国外にある場合の氏名表記・住所表記に関する注記
- 就任者が未成年者又は成年被後見人等でないことを前提とした記載(欠格事由に該当しない旨は別途確認する)
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 登記申請用
修正条文例: 「本書面は、〇年〇月〇日開催の当会社定時株主総会における取締役選任決議に基づき就任した取締役〇〇の就任承諾を証する書面として、役員変更登記の申請書に添付する。」
一言解説: 登記申請の添付書面として用いる場合、選任決議の年月日・選任機関・選任された役職を登記すべき事項の内容と一言一句齟齬なく一致させることが重要である。決議事項の記載と就任承諾書の記載にずれがあると、補正の対象となることがある。設立時の取締役・監査役については、設立登記の添付書面として設立時就任承諾書を用いる場合があり、既存会社の役員変更登記とは提出のタイミング(会社成立前か成立後か)が異なる点も区別して記載する。
B節: 役員本人作成
修正条文例: 「私、〇〇は、〇年〇月〇日付選任決議により取締役に選任されたことを確認し、自らの意思により就任を承諾する旨をここに表明し、住所〇〇、氏名を自署のうえ提出する。」
一言解説: 就任承諾書は役員に就任する本人が作成主体となる書面であり、会社側が代筆したものを本人の同意なく提出することは避けるべきである。本人の意思確認を確実にするため、自署又は本人の押印を得る運用を徹底する。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、株主総会等の決議によって取締役又は監査役に選任された者が、その地位への就任を承諾する意思を書面化し、役員変更登記の添付書面とする場面で使用する。他方、再任(重任)であって選任のみを証すれば足り、就任承諾の事実が既に明らかな場合や、定款上の任期満了前に辞任する場面(辞任届が別途必要となる)では、本書式をそのまま用いることはできない。
根拠法令は、役員の就任を承諾したことを証する書面の添付を求める商業登記法第54条第1項である。就任承諾の効力自体は、選任決議に対する被選任者の承諾という私法上の意思表示によって生じるものであり、承諾の時期や方式の細目については商業登記法及び同法に基づく登記実務の取扱いに委ねられている部分が大きい。特に、押印の要否や印鑑証明書の添付を要するかどうかは、就任する役職(代表権の有無)や登記所の運用によって異なり得るため、断定的な記載は避け、申請予定の登記所の取扱いを個別に確認する必要がある。監査等委員会設置会社における監査等委員である取締役や、指名委員会等設置会社の各委員会の委員についても、それぞれ選任又は選定の根拠と職務内容が異なるため、就任承諾書上の役職表記を機関設計に合わせて正確に区別することが求められる。
実務でよくある失敗の一つ目は、就任承諾書の日付が選任決議の日より前になっている、又は同日であるにもかかわらず時系列の整合性が確認されていないケースである。承諾は選任があって初めて可能となる行為であるため、承諾日が選任決議日以前になっていると書面としての体をなさない。対策として、選任決議の議事録が確定した後に就任承諾書を作成し、日付の前後関係を必ず確認する。
二つ目は、住所の記載が登記記録上の表記や住民票の記載と異なっているケースである。特に、代表取締役に就任する者については住所が登記事項となるため、就任承諾書の住所欄に略記や旧住所を記載してしまうと、登記申請時に補正を求められることがある。対策として、就任承諾書作成前に住民票等で現住所の正確な表記を確認し、番地・建物名まで登記記録の表記方針に合わせる。
三つ目は、取締役への就任承諾と代表取締役への就任承諾を一通の書面で済ませてしまい、代表取締役選定手続(取締役会決議又は定款の定め)との対応関係が不明確になるケースである。対策として、取締役への就任承諾と代表取締役への就任承諾は原則として別の書面又は別項目として整理し、それぞれの選任・選定の根拠決議を明記する。
四つ目は、就任者の氏名の表記が戸籍・住民票上の表記と異なる通称・旧姓を用いてしまうケースである。登記記録上の氏名は原則として戸籍上の氏名によることが想定されているため、通称使用を希望する役員がいる場合には、就任承諾書の氏名欄をどのように記載するか、あらかじめ会社の登記実務担当者と相談しておく必要がある。押印方式や添付書類の要否は個別の登記所の運用にも左右されるため、個別事案は専門家に確認したうえで最終書面を確定することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 選任決議の年月日・選任機関を就任承諾書の記載と一致させたか
- [ ] 承諾の年月日が選任決議日以降になっているか
- [ ] 承諾者の氏名・住所が登記記録上の表記(住民票等)と一致しているか
- [ ] 就任する役職(取締役・代表取締役・監査役等)を正確に特定したか
- [ ] 代表取締役に就任する場合、取締役への就任承諾と代表取締役への就任承諾の関係を整理したか
- [ ] 監査役の場合、監査役としての職務を承諾対象に含める記載としたか
- [ ] 押印・自署の方式を提出予定の登記所の取扱いに合わせて確認したか
- [ ] 就任承諾書の表題を登記申請書の添付書面一覧の記載と一致させたか
- [ ] 就任者本人の意思に基づき作成されたものであることを確認したか
- [ ] 再任(重任)か新任かを区別し、必要な添付書面の種類を確認したか
- [ ] 就任者の氏名表記が戸籍・住民票上の表記と一致しているか(通称使用がある場合は取扱いを確認したか)
- [ ] 設立時役員か既存会社の役員変更かに応じて、提出時期・添付先(設立登記/変更登記)を区別したか