著者と出版社が単行本や雑誌の刊行条件を取り決める契約書。著作権法第79条の出版権設定と第81条の出版義務・印税条件を反映します。

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出版契約書

第1部: 書式本文

【甲:著者の氏名】(以下「甲」という。)と【乙:出版社の名称】(以下「乙」という。)は、甲の著作物の出版に関し、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(目的) 本契約は、著作権法第79条第1項の規定に基づき、甲が乙に対し下記著作物(以下「本著作物」という。)につき出版権を設定するにあたり、出版権の内容、出版の義務、印税その他必要な事項を定めることを目的とする。 記 書名(仮):【書名】/種別:【単行本・雑誌連載・文庫等】/分量:【原稿枚数・文字数目安】

第2条(出版権の設定) 1. 甲は乙に対し、本著作物につき、頒布の目的をもって原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書として複製する権利、及び記録媒体に記録し、又は公衆送信を行う権利を含む出版権(著作権法第79条第1項)を設定する。 2. 前項の出版権が電子書籍としての公衆送信を含むか否かは、次のとおりとする。 【紙媒体のみ・紙媒体及び電子書籍の双方を含む】

第3条(出版の対象) 本条の出版権は、日本語による【単行本・雑誌】としての発行に係るものとし、翻訳版その他の言語による出版及び映像化その他の二次利用は本契約の対象に含まない。

第4条(原稿の引渡し及び校正) 1. 甲は乙に対し、【 】年【 】月【 】日までに、本著作物の完全原稿を引き渡す。 2. 校正は【 】校まで甲乙協議のうえ行うものとし、校了後の内容の変更は、乙の承諾を得た場合に限り行うことができる。

第5条(出版の義務) 1. 乙は、著作権法第81条第1号の規定に基づき、甲から完全原稿の引渡しを受けた日から6か月以内に、本著作物を出版する義務を負う。 2. 乙は、著作権法第81条第2号の規定に基づき、本著作物を継続して出版するに当たっては、出版権の存続期間中、慣行に従い増刷を行う義務を負う。

第6条(印税) 1. 乙は甲に対し、本著作物の印税として、実売部数(又は発行部数)に定価及び印税率【 】パーセントを乗じた金額を、【毎年 月 日締め、翌月 日払い】の方法により支払う。 2. 見本部数、献本部数その他無償配布分については、前項の印税算定の対象から除く。

第7条(増刷の通知) 乙は、本著作物を増刷する場合、その都度、増刷部数及び増刷時期を事前に甲に通知する。

第8条(出版権の存続期間) 1. 本契約に基づく出版権の存続期間は、本契約締結の日から3年とする(著作権法第83条第1項)。 2. 期間満了の【 】か月前までに甲乙いずれからも書面による終了の申出がない場合、本契約は同一条件でさらに1年間更新されるものとし、以後も同様とする。

第9条(出版権の登録) 乙は、著作権法第88条の規定に基づき、出版権の設定登録を行うことができる。甲は、当該登録手続に必要な書類の提出その他の協力を、乙の求めに応じて行う。

第10条(著作者人格権の取扱い) 1. 乙は、校正段階における体裁の統一、誤字脱字の修正その他の軽微な変更を除き、本著作物の内容を改変するときは、事前に甲の承諾を得るものとする。 2. 甲は、本著作物における甲の氏名(又は甲の指定するペンネーム)の表示方法について、乙と協議のうえ定める。

第11条(絶版時の措置) 1. 乙が本著作物の出版を将来行わないと決定したとき(絶版)は、乙は甲に通知し、甲は本契約を解除することができる。 2. 前項の解除により本契約が終了した場合、乙は在庫の書籍について、【 】か月間に限り頒布を継続することができる。

第12条(表明保証) 甲は乙に対し、本著作物が甲の独自の創作に係るものであり、第三者の著作権その他の権利を侵害するものでないことを表明し、保証する。

第13条(秘密保持) 甲及び乙は、本契約の締結及び履行を通じて知り得た相手方の秘密を、相手方の事前の書面による承諾なく第三者に開示又は漏えいしてはならない。

第14条(解除) 甲又は乙は、相手方が本契約に違反し、相当の期間を定めた催告後も是正されないときは、本契約を解除することができる。

第15条(準拠法及び管轄) 1. 本契約は日本法に準拠し、これに従って解釈される。 2. 本契約に関する紛争については、【 】地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

本契約締結の証として本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ各1通を保有する。

【契約締結日】 甲:【住所・氏名】㊞ 乙:【所在地・名称・代表者名】㊞

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節: 出版社向け

A-1 第5条の修正例(出版義務の起算点を明確化)

「前項の6か月の期間は、甲から完全原稿の引渡しを受け、かつ乙が編集上必要と認める修正が完了した日から起算する。」 一言解説:出版社としては、著作権法第81条第1号の出版義務の起算点が「完全原稿」の引渡し時である以上、原稿の完全性についての判断基準を条文上明確にしておかないと、未完成原稿の引渡しをもって義務違反を主張されるリスクがある。

A-2 第8条の修正例(存続期間中の解除権を留保)

「乙は、本著作物の実売部数が発行後1年を経過して累計【 】部に満たない場合、甲への通知をもって本契約を期間満了前に解除することができる。」 一言解説:出版権の存続期間はデフォルトで3年(著作権法第83条第1項)と長期にわたるため、出版社としては販売不振の書目について中途解除できる条項を確保しておく必要がある。

B節: 著者向け

B-1 第6条の修正例(最低保証印税の設定)

「乙は甲に対し、実売部数にかかわらず、初版発行部数【 】部分について、印税として最低金【 】円を発行時に支払う。」 一言解説:著者としては、実売部数のみに連動する印税では初動が読めない新人著者等の生活基盤が不安定になるため、初版分について最低保証を設けることが交渉上の論点となる。

B-2 第2条の修正例(電子出版権を明確に除外)

「本契約に基づき乙に設定する出版権は、紙媒体としての複製及び頒布に限るものとし、著作権法第79条第1項に規定する公衆送信を行う権利は本契約の対象に含まない。電子書籍化を行う場合は、甲乙間で別途契約を締結する。」 一言解説:著者としては、電子書籍化の可否・条件を紙媒体と切り離して交渉したい場合、包括的に出版権を設定する条項をそのまま用いず、対象を紙媒体に限定する修正が必要になる。

C節: 書籍・雑誌対応

C-1 単行本の場合の第3条・第8条の修正例

「本条の出版権は単行本としての発行に係るものとし、存続期間は本契約締結の日から3年とする。増補改訂版を発行する場合は、甲乙間で別途協議する。」 一言解説:単行本は一冊単位で権利関係が完結しやすいため、存続期間や増刷義務を著作権法第83条・第81条の原則どおりに定めれば足りることが多い。

C-2 雑誌連載の場合の第3条・第7条の修正例

「本条の出版権は、乙が発行する雑誌【誌名】への連載掲載に係るものとし、連載回数は全【 】回を予定する。連載終了後の単行本化については、本契約とは別に甲乙間で協議のうえ契約を締結する。」 一言解説:雑誌連載では、連載時点の掲載権と、連載終了後の単行本化(二次的な出版)とで権利設定を分離しておかないと、単行本化の際の条件交渉が連載契約に埋没してしまう。

第3部: 書き方と法的ポイントの解説

本書式は、著者が創作した書籍原稿又は雑誌連載原稿について、出版社が独占的に出版する権利を取得する場面で用いるものである。単に利用を認めるにとどめ対抗力のある独占的地位までは求めない場合、著作権法第63条に基づく利用許諾契約による方法もあり得るが、出版社が第三者の無断出版に対し自ら差止請求権等を行使できる地位を確保したい場合には、本書式のように第79条に基づく出版権設定契約を用いる必要がある。

根拠法令は、著作権法第79条(出版権の設定)、第81条(出版権者の義務、原稿引渡しから6か月以内の出版義務及び慣行に従った増刷継続義務)、第83条(存続期間、別段の定めなき場合は3年)、第88条(登録、第三者対抗要件)である。

実務でよくある失敗として、第一に、電子書籍配信を出版権に含めるか否かを条文上明記しないまま契約を締結し、平成26年改正で明確化された公衆送信を目的とする複製に関する出版権(第79条第1項)の対象に電子出版が含まれるかで解釈が分かれ、電子化の可否をめぐって紛争になるケースがある。第2条のように紙媒体・電子書籍の別を明記することが対策となる。第二に、第88条に基づく出版権設定登録を行わなかったために、著者が同一著作物について別の出版社にも重ねて出版権を設定してしまい、先に登録を備えた出版社に対抗できないケースがある。第9条のような登録協力義務を明記し、実際に登録を行うことが望ましい。第三に、出版権の存続期間が第83条第1項により設定後3年で終了する原則を認識しないまま契約管理を怠り、更新手続を失念して出版権が消滅し、著者から契約終了を主張され増刷ができなくなるケースがある。第8条のように更新条件を明記し、期限管理を徹底する必要がある。

印税率の水準、最低保証の要否、電子出版権の範囲は書目の性質や商慣行により差が大きいため、個別事案は専門家に確認することを推奨する。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 対象となる本著作物(書名・種別・分量)を具体的に特定したか
  • [ ] 出版権の対象に電子書籍(公衆送信を行う権利)を含めるか否かを明記したか
  • [ ] 出版の対象が単行本か雑誌かを明確にし、翻訳・映像化等の二次利用を対象外とする旨を定めたか
  • [ ] 完全原稿の引渡し期限及び校正回数を定めたか
  • [ ] 著作権法第81条第1号に基づく出版義務(原稿引渡しから6か月以内)の起算点を明確にしたか
  • [ ] 増刷継続義務(第81条第2号)及び増刷時の通知義務を定めたか
  • [ ] 印税率、算定基礎(実売部数・発行部数)、支払時期を定めたか
  • [ ] 最低保証印税の要否を検討したか
  • [ ] 出版権の存続期間(第83条、原則3年)及び更新条件を定めたか
  • [ ] 出版権設定登録(第88条)の実施及び甲の協力義務を定めたか
  • [ ] 絶版時の措置(通知・解除・在庫処分)を定めたか
  • [ ] 著者の氏名表示方法及び校正後の改変時の承諾手続を定めたか