優先株式や無議決権株式を導入する際の定款条項案。会社法第108条第1項各号の9類型と第2項の定款記載事項を条文形式で整理し、登記事項との対応も示します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
種類株式発行に関する定款規定案
第1部: 書式本文
第1条(発行可能株式総数) 当会社の発行可能株式総数は、【総数】株とする。
第2条(発行可能種類株式総数及び発行する種類) 当会社が発行することができる種類株式は、普通株式及びA種優先株式の2種類とし、各種類の発行可能種類株式総数は次のとおりとする。 (1) 普通株式 【数】株 (2) A種優先株式 【数】株
第3条(A種優先株式の剰余金の配当) 当会社は、剰余金の配当を行うときは、A種優先株主に対し、普通株主に先立ち、A種優先株式1株当たり【金額】円(以下「A種優先配当額」という)を金銭にて配当する。ある事業年度においてA種優先株主に対して支払われた剰余金の配当の額がA種優先配当額に達しないときは、その不足額は【累積する・累積しない】ものとする。
第4条(A種優先株式の残余財産の分配) 当会社は、残余財産を分配するときは、A種優先株主に対し、普通株主に先立ち、A種優先株式1株につき【金額】円を支払う。A種優先株主は、当該分配を受けた後、普通株主とともにさらに残余財産の分配を受ける権利を【有する・有しない】。
第5条(A種優先株式の議決権) A種優先株主は、株主総会において議決権を【有しない・有する】。ただし、会社法第322条第1項に定める種類株主総会の決議を要する事項については、この限りでない。
第6条(A種優先株式の取得請求権) A種優先株主は、当会社に対し、いつでも、当会社が別に定める算定方法により算出される数の普通株式を対価として、その保有するA種優先株式の全部又は一部を取得することを請求できる。
第7条(取得と対価の算定) 前条の取得と引換えに交付する普通株式の数は、A種優先株式1株につき、A種優先発行価額を転換価額(当初【金額】円とする)で除して得られる数とする。転換価額の下方修正条件については、別途株主間契約に定める。
第8条(A種優先株式の金銭を対価とする取得条項) 当会社は、当会社の取締役会が別に定める日が到来したときは、法令に定める手続に従い、A種優先株式の全部又は一部を取得することができる。当会社は、当該取得と引換えに、A種優先株主に対し、A種優先株式1株につき【金額】円を交付する。
第9条(組織再編における取扱い) 当会社が合併、株式交換又は株式移転をする場合において、A種優先株主に対し金銭等の割当てをするときは、当該金銭等の価額は、前条に定める取得価額を基準として定めるものとする。
第10条(株式の分割、併合及び無償割当て) 当会社は、普通株式又はA種優先株式について株式の分割、併合又は無償割当てを行う場合には、各種類株式ごとに、同時に同一の割合で行う。
第11条(登記事項との対応) 本規定に基づき定める発行可能株式総数、発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容は、会社法第911条第3項第6号及び第7号により登記事項となるため、内容の変更のたびに変更登記を要する。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 優先株式(新規発行時の設計)
修正条文例:
第3条(A種優先株式の剰余金の配当) 当会社は、剰余金の配当を行うときは、A種優先株主に対し、普通株主に先立ち、払込金額に年率【8】パーセントを乗じて算出した額を上限として取締役会が定める額を配当する。当該配当は非累積とし、未配当分は翌事業年度に繰り越さない。
一言解説: 日本のベンチャー投資実務では非累積・非参加型の優先配当が一般的である。累積型・参加型を採用すると普通株主(創業者)の取り分が想定以上に圧縮されるため、投資契約(みなし清算条項を含む)との整合性を必ず確認して設計する。
B節: 定款変更用(既存株主への影響がある場面)
修正条文例:
附則 本改正条項は、令和【 】年【 】月【 】日開催の臨時株主総会における特別決議、及び当該決議において不利益を受けるおそれのある種類の株主を構成員とする種類株主総会の決議の効力発生を停止条件として、その効力を生じる。
一言解説: 既に種類株式を発行している会社が定款変更により種類株式の内容を追加・変更する場合、当該変更が既存の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、会社法第322条第1項の種類株主総会決議が別途必要になる場合がある点に留意する。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、優先株式や無議決権株式など複数の種類の株式を発行しようとする非公開会社が、定款にどのような条項を置くべきかを検討する際の草案として使用することを想定している。既に発行済みの種類株式の内容を変更する場面や、公開会社が議決権制限株式を大量に発行しようとする場面(会社法第115条により、議決権制限株式の数が発行済株式総数の2分の1を超えた場合には一定の措置を要する)では、本書式の想定を超える追加の検討が必要になるため、そのまま流用してはならない。
根拠法令としては、種類株式の9類型を定める会社法第108条第1項、各類型ごとの定款記載事項を定める同条第2項、種類株主総会の決議事項を定める同法第322条第1項、定款変更の特別決議要件を定める同法第466条及び第309条第2項第11号、並びに登記事項を定める同法第911条第3項第6号・第7号を確認する必要がある。
実務でよくある失敗としては、第一に、発行可能種類株式総数の記載漏れや変更登記の懈怠が挙げられる。定款の定めと登記事項は連動するため、発行時には同時に変更登記の申請を行う社内チェック体制を整えることが対策となる。第二に、取得条項付株式について取得事由や取得日の決定方法をあいまいなまま定款に記載してしまい、後日の取得実行時に効力の有無が争われるリスクがある。対策としては、会社法第168条及び第169条の手続に対応できるよう、取得事由発生時の通知方法や取得日の決定権者をあらかじめ具体的に定めておくことが有効である。第三に、無議決権株式の発行数が積み上がった結果、公開会社において前述の115条の限度を超過してしまうケースがある。発行の都度、既発行の議決権制限株式との合計比率をモニタリングする運用が望ましい。
なお、種類株式の設計は会社の資本政策やガバナンス方針、将来の資金調達計画と密接に関わるため、条項のひな形をそのまま採用するのではなく、個別事案は専門家に確認の上で最終化することを強く推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 発行可能株式総数及び発行可能種類株式総数を会社法第37条・第113条の定めと整合させたか
- [ ] 会社法第108条第1項各号のうちどの類型(配当・残余財産・議決権制限・取得請求権・取得条項等)を採用するか特定したか
- [ ] 同条第2項各号の定款記載事項を条項ごとに漏れなく規定したか
- [ ] 議決権制限の有無及び範囲、種類株主総会(第322条)の要否を明記したか
- [ ] 取得請求権・取得条項の対価の算定方法を具体的な数式で規定したか
- [ ] 発行可能種類株式総数等の登記(第911条第3項第6号・第7号)への反映を予定しているか
- [ ] 種類株主総会決議を要する事項の範囲を確定したか
- [ ] 非公開会社か公開会社かにより、会社法第108条第1項ただし書の類型の適用可否を確認したか
- [ ] 議決権制限株式総数が発行済株式総数の2分の1を超えないか(第115条)
- [ ] 既存株主との利害調整条項を株主間契約でカバーしているか
- [ ] 株主総会特別決議(第309条第2項第11号)及び必要な種類株主総会決議の日程を確保したか