報道や広報で個人・店舗を取材し撮影する際に掲載の承諾を得る書式。肖像権侵害による民法第709条の損害賠償リスクを踏まえ、媒体・期間・二次利用の可否を明示します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
取材・撮影に関する承諾書
第1部: 書式本文
【取材・撮影主体名(媒体名等)】(以下「甲」という)は、【被取材者・撮影対象氏名又は店舗名】(以下「乙」という)に対する取材及び撮影を行うにあたり、次のとおり承諾を得る。
第1条(目的) 本書は、甲が乙を取材又は撮影し、その内容を媒体に掲載又は放送するにあたり、乙の承諾内容を明確にすることを目的とする。
第2条(取材・撮影の内容) 取材・撮影の対象は【取材対象(人物・店舗・商品等)】とし、取材・撮影日は【取材日】、場所は【取材場所】とする。
第3条(掲載媒体) 取材・撮影した内容の掲載媒体は【媒体名(誌名・番組名・ウェブサイト名等)】とし、初回掲載予定時期は【 】とする。
第4条(掲載期間) ウェブ媒体等における掲載期間は【期間】とし、期間経過後は甲の判断により削除できるものとする。
第5条(二次利用の可否) 甲は、初回掲載後、当該取材・撮影内容を【二次利用の範囲(自媒体の広告・SNS・書籍化等)】の範囲で二次利用することができる。二次利用の範囲を超える利用については、乙の別途の承諾を得るものとする。
第6条(内容確認) 甲は、掲載前に、乙の発言部分の趣旨を損なわない範囲で編集することができるものとし、乙が事実誤認の修正を求めた場合は掲載前に協議する。
第7条(氏名・肖像の表示) 乙の氏名、肖像又は店舗名の表示方法は、【表示方法(実名・匿名・イニシャル等)】による。
第8条(承諾の撤回) 乙は、掲載前であれば取材・撮影内容の掲載中止を求めることができる。ただし、既に印刷、配信準備等が完了している場合、甲乙協議の上で対応を決定する。
第9条(対価) 本取材・撮影に対する謝礼は【謝礼の有無・金額】とする。
第10条(トラブル対応) 本取材・撮影の内容に起因して第三者との間で紛争が生じた場合、甲乙は誠実に協議して解決を図る。
第11条(著作権) 本取材・撮影により作成された写真、映像及び原稿の著作権は、原則として甲に帰属するものとする。
以上、上記の内容に同意し、下記に署名する。
【承諾日】 乙: 【氏名・名称】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 広報担当の立場から
広報担当としては、自社の取材対応窓口として、取材内容の事前確認及び原稿チェックの機会を確保する条項を追加することが望ましい。
修正例:「甲は、掲載前に原稿又は編集後の映像を乙の広報担当窓口に提示し、事実関係の確認を受ける機会を設けるものとする。」
一言解説:企業として取材を受ける場合、表現の自由と企業の事実確認ニーズのバランスをとるため、内容確認の機会を明確に条項化しておくことが望ましい。
B. 編集・制作担当の立場から
編集・制作担当としては、掲載後の内容変更や削除請求への対応期限を明確にし、際限のない修正要求を防ぐ規定を設けることが有効である。
修正例:「乙が掲載後に内容の訂正又は削除を求める場合、掲載日から【 】日以内に書面で申し出るものとし、甲は当該申出について合理的な範囲で対応を検討する。」
一言解説:掲載後の修正対応に期限を設けないと、長期間にわたり訂正要求への対応義務が継続するおそれがあるため、一定の期限を区切ることが実務的である。
C. 店舗運営責任者の立場から
店舗を取材対象とする場合、店舗運営責任者としては、店内の顧客が映り込む場合の配慮義務を甲に求める条項を追加することが望ましい。
修正例:「甲は、撮影にあたり、乙の店舗を利用する顧客が特定できる形で映り込まないよう配慮し、映り込んだ場合は当該顧客の承諾又はモザイク処理等の措置を講じる。」
一言解説:店舗取材では乙自身の承諾だけでなく、その場に居合わせた第三者の肖像権にも配慮が必要であり、映り込み対応をあらかじめ取り決めておくことがトラブル防止になる。
店舗運営責任者としては、従業員が取材対象となる場合、当該従業員本人の個別の承諾も別途取得する必要がある旨を明記しておくことが望ましい。
修正例:「甲は、乙の店舗に勤務する従業員を撮影の対象に含める場合、当該従業員本人から個別に撮影・掲載の承諾を取得する。」
一言解説:店舗の代表者による承諾だけでは、そこで働く個々の従業員の肖像権を処分する権限までは含まれないため、従業員本人の承諾を別途取得する必要がある。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、報道機関、広報担当者又は制作会社が、個人又は店舗等を取材・撮影し、その内容を媒体に掲載する際に、対象者から掲載の承諾を得る場面で使用する。既に公開が予定されているイベントの一般的な会場風景の撮影など、個人の特定性が低い場合には簡略化した告知による対応で足りることもある。
根拠法令としては、無断で他人の容ぼう等を撮影し又は公表する行為は、人格的利益としての肖像権を侵害するものとして民法第709条の不法行為に基づく損害賠償責任が生じ得るとされている。著名人の氏名や肖像が有する顧客吸引力を無断で利用する場合には、パブリシティ権侵害が問題となることもあり、専ら著名性を利用する目的での利用は許容される範囲を超えると判断されやすい。また、撮影した写真・映像自体の著作権は原則として撮影者(甲)に帰属するため、乙による無断使用等を想定する場合は著作権法上の利用許諾の範囲もあわせて整理する必要がある。
実務でよくある失敗として、第一に、初回掲載時の承諾のみを得て、その後の書籍化やSNSでの再掲載等の二次利用について改めて承諾を得ておらず、乙から抗議を受けるケースがある。二次利用の範囲をあらかじめ具体的に定めることが対策となる。第二に、取材時の発言をニュアンスの異なる見出しや文脈で編集し、乙が事実と異なる印象を与えられたと感じるケースがあり、掲載前の内容確認の機会を条項上明記することが有効である。第三に、店舗取材において居合わせた顧客が映り込み、当該顧客から肖像権侵害を主張されるケースがあり、映り込み対応をあらかじめ取り決めておく必要がある。
第四に、店舗の代表者から取材の承諾を得たのみで、実際に撮影対象となった従業員個人からの承諾を取得していなかったため、当該従業員から肖像権侵害を主張されるケースがあり、従業員本人の個別承諾を取得する運用が対策となる。
肖像権及びパブリシティ権の侵害の有無は個別の事情により判断が分かれるため、実際の運用にあたっては弁護士等の専門家に個別に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 取材・撮影の対象、日時、場所を明記したか
- [ ] 掲載媒体及び初回掲載予定時期を明記したか
- [ ] ウェブ媒体等における掲載期間を定めたか
- [ ] 二次利用の範囲を具体的に定めたか
- [ ] 掲載前の内容確認・原稿チェックの機会を定めたか
- [ ] 氏名・肖像の表示方法(実名・匿名等)を明記したか
- [ ] 掲載前の承諾撤回の可否と手続を定めたか
- [ ] 謝礼の有無及び金額を明記したか
- [ ] 掲載後の訂正・削除請求の期限を定めたか
- [ ] 第三者(顧客等)の映り込みへの配慮事項を定めたか
- [ ] 従業員が撮影対象となる場合の個別承諾取得を定めたか
- [ ] 掲載後の当該記事・映像の保存期間を確認したか