資材価格の高騰等により請負代金の変更を求める協議書です。単品スライドや全体スライドの適用要件と算定資料を整理します。ひな型をもとに数分で自社仕様に調整できます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
スライド条項適用協議書
第1部: 書式本文
以下は、資材価格や労務費の急激な変動を理由として、受注者が発注者に対し請負代金額の変更(いわゆるスライド条項の適用)を求める協議を行う際に用いる条項例である。公共工事標準請負契約約款第25条を前提として構成する。
スライド条項適用協議書
【発注者名】 殿
【申入年月日】
申入者(受注者) 住所【 】 商号又は名称【 】 代表者役職氏名【 】 印
第1条(申入れの趣旨) 受注者は、発注者に対し、下記工事について、公共工事標準請負契約約款第25条に基づき、賃金又は物価の変動による請負代金額の変更協議を申し入れる。 工事名称:【工事名称】 工事場所:【所在地】 請負契約締結年月日:【年月日】
第2条(適用区分) 本協議で申し入れるスライドの区分は次のいずれかとする。 (1)全体スライド:工期を通じた賃金水準又は物価水準の変動が請負代金額の【1000分の15】を超える場合 (2)単品スライド:特定の資材(【資材名】)の価格が著しく変動し、当該資材が請負代金額に占める割合及び変動幅が別紙算定書の要件を満たす場合 (3)インフレスライド:全体スライド後、更なる急激な物価変動が生じた場合
第3条(基準日) 変動率算定の基準日は、請負契約締結日又は直前のスライド協議合意日である【年月日】とし、比較日は本申入日である【年月日】とする。
第4条(対象資材及び算定根拠) 対象資材は【資材名(例:鉄筋、生コンクリート、燃料油等)】とし、基準日及び比較日における単価は、【物価資料(建設物価、積算資料等)の名称・号数】に基づき算定する。算定書は別紙のとおり添付する。
第5条(変動率の算定方法) 変動率は、(比較日単価-基準日単価)÷基準日単価により算定し、対象資材が請負代金額に占める比率を乗じて請負代金額に対する影響額を算出する。
第6条(請求額) 本協議に基づく請負代金額の変更請求額は、金【 】円也とし、算定過程は別紙算定書のとおりとする。
第7条(残工期の取扱い) 変動額の算定対象は、原則として本申入日以降の残工事に係る部分とし、既に施工済みの部分は対象としない。
第8条(協議期限) 発注者は、本申入れを受理した日から【21】日以内に査定結果を回答し、両者は【30】日以内に請負代金額の変更につき合意するよう努める。
第9条(合意後の措置) 両者が変更額について合意した場合、契約変更手続(変更契約書の締結)を速やかに行う。
第10条(協議不調の場合) 協議が調わない場合の取扱いは、請負契約書に定める協議不調時の手続(発注者の定める額による決定等)による。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節:受注者の立場での修正例
A-1. 単品スライド適用を申請する場合 「本申請の対象資材は【鉄筋】であり、基準日単価【 】円/トンに対し比較日単価は【 】円/トンとなり、変動率は【 】パーセントに達している。当該資材の使用数量は【 】トンであり、請負代金額に占める影響額は金【 】円と算定される。」 一言解説:単品スライドは特定資材の価格急騰に着目する制度であるため、対象資材を一つに絞り、数量と単価変動を具体的な計算式とともに示すことが説得力を高める。
A-2. 全体スライドの適用要件を満たすことを示す場合 「本工事の残工期に係る主要資材及び労務費を総合的に勘案した変動率は、請負代金額の【1000分の18】に相当し、公共工事標準請負契約約款第25条第1項に定める1000分の15を超えるため、全体スライドの適用要件を満たす。」 一言解説:全体スライドは約款上の閾値(一般に1000分の15)を超えることが要件となるため、閾値を上回ることを数値で明示する必要がある。
B節:発注者の立場での修正例
B-1. 変動率の算定を確認・査定する場合 「発注者は、受注者提出の算定書について、対象資材の選定、基準日・比較日の単価根拠及び使用数量の妥当性を確認したうえで、査定額を金【 】円と決定し、その根拠を別紙のとおり受注者に通知する。」 一言解説:発注者側も独自に物価資料等を確認し、受注者提出額をそのまま認めるのではなく、査定プロセスを明文化しておくことで、後日の会計検査等への説明責任を果たしやすくする。
B-2. 協議不調時の取扱いを明記する場合 「本協議が第8条の期限内に調わない場合、発注者は請負契約書に定める方法により変更額を定めることができるものとし、受注者はこれに対し不服がある場合、別途の異議申立て手続によるものとする。」 一言解説:協議期限を徒過した場合の取扱いをあらかじめ定めておくことで、協議の長期化による工事進行への支障を防ぐ。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面:公共工事標準請負契約約款が適用される請負契約において、資材価格や労務単価の急激な高騰・下落により、当初の請負代金額のままでは工事の適正な施工が困難となった場合に、受注者(又は発注者)が請負代金額の変更を求めて協議を申し入れる場面で使用する。全体スライド、単品スライド、インフレスライドのいずれに該当するかを明確に区分して申し入れることが重要である。
使ってはいけない場面:資材価格の変動が軽微で約款上の閾値(全体スライドの場合の1000分の15等、発注者の定める基準)に達しない場合や、受注者の見積り誤りに起因する赤字を理由に安易に本協議書を用いることは適切ではない。スライド条項は物価・賃金水準の変動を対象とする制度であり、施工計画上の見積誤差の救済制度ではない。
根拠法令:公共工事標準請負契約約款第25条(賃金又は物価の変動に基づく請負代金額の変更)、建設業法第19条の3(不当に低い請負代金の禁止)。物価高騰下で発注者が優越的地位を利用して適正な変更協議に応じない場合には、独占禁止法上の優越的地位の濫用に関する考え方も参照されることがある。
よくある失敗と対策: 1. 基準日の設定を誤り、契約締結日ではなく別のスライド協議合意日を基準とすべき場面で契約締結日を基準日としてしまう例がある。対策として、第3条のとおり直前のスライド協議合意日がある場合はそれを基準日とする旨を明記する。 2. 対象資材の特定が曖昧で、算定書に使用数量や単価根拠資料の出典が示されていない例がある。対策として、第4条のように物価資料の名称・号数を明記し、算定書を必須添付書類とする。 3. 既施工部分まで変動額の対象に含めてしまい、発注者から査定段階で減額修正を受ける例がある。対策として、第7条のように残工事分のみを対象とすることを明記する。 なお、閾値該当性の判断や算定額の適正性については、個別事案は専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- 申し入れるスライドの区分(全体・単品・インフレ)が明確に特定されているか確認したか
- 基準日及び比較日が契約書又は直前の協議合意日と整合しているか確認したか
- 対象資材の単価根拠となる物価資料の名称・号数を明記したか確認したか
- 変動率の算定式及び影響額の計算過程が別紙算定書に明示されているか確認したか
- 全体スライドの場合、約款上の閾値(1000分の15等)を超えていることを数値で示したか確認したか
- 変動額の対象を残工事分に限定しているか確認したか
- 協議期限(発注者の回答期限、合意目標期限)を明記したか確認したか
- 協議不調時の取扱いについて契約書の定めと矛盾していないか確認したか
- 合意後の契約変更手続(変更契約書締結)の流れを明記したか確認したか
- 添付する算定書・物価資料が最新かつ公的機関又は信頼できる調査機関のものであるか確認したか