製品のサポート期間やEOL方針を対外公表する文書。消費者契約法第8条の全部免責の制限に留意し、セキュリティ修正の提供範囲と延長条件を示す。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
ソフトウェア保守サポートポリシー
第1部: 書式本文
第1条(目的) 本ポリシーは、〇〇〇〇(以下「当社」という。)が提供するソフトウェア製品(以下「本製品」という。)について、保守サポートの提供期間、内容及び提供終了(以下「EOL」という。)に関する方針を対外的に明示することを目的とする。
第2条(サポート区分) 当社は、本製品のサポートを次の各号のとおり区分する。 一 標準サポート期間: 本製品の一般提供開始日から〇年間とし、機能追加、不具合修正及びセキュリティパッチの提供を行う。 二 延長サポート期間: 標準サポート期間の終了後、別途定める延長サポート契約の締結により最長〇年間、セキュリティパッチの提供に限定して継続する期間をいう。 三 サポート終了(EOL): 延長サポート期間の終了をもって、当社は本製品に関する一切の修正提供を終了する。
第3条(サポート提供内容) 標準サポート期間中、当社は次の対応を行う。 一 重大な不具合(本製品の基本機能に支障を来すもの)の修正 二 セキュリティ脆弱性の修正 三 問い合わせ窓口を通じた技術的な利用方法の案内
第4条(延長サポート期間の対応内容) 延長サポート期間中、当社は原則としてセキュリティ脆弱性の修正のみを行い、機能追加及び軽微な不具合の修正は行わない。
第5条(EOLの予告) 当社は、本製品のEOLを、EOL予定日の12か月前までに当社ウェブサイトへの掲示及び登録ユーザーへの通知により予告する。
第6条(EOL後の取扱い) EOL後、当社は本製品に関する修正提供、問い合わせ対応その他一切のサポートを行わない。ユーザーは、EOL後も自己の責任において本製品を利用することができるが、その利用に伴うセキュリティリスクは自ら負担するものとする。
第7条(免責の範囲及び限定) 1. 当社は、本製品が常に最新のセキュリティ脅威に対応していることを保証するものではない。 2. 前項の規定にかかわらず、当社の故意又は重過失に起因して生じた損害については、免責の対象としない。 3. 消費者との取引において、当社の債務不履行(当社の故意又は重過失によるものに限る。)により生じた損害の全部を免除する条項は、消費者契約法第8条第1項の規定により無効となる可能性があることに留意する。
第8条(バージョンごとのサポート状況の公開) 当社は、各バージョンのリリース日、標準サポート終了日及びEOL予定日を一覧化した表を当社ウェブサイトで常時公開し、更新する。
第9条(緊急時の対応) EOL後であっても、社会的影響が極めて大きいと当社が判断する脆弱性が発見された場合、当社は任意の判断により緊急パッチを提供することがある。ただし、これは当社の義務を構成するものではない。
第10条(延長サポート契約の内容) 延長サポートの利用を希望するユーザーは、別途延長サポート契約を締結し、別紙に定める料金を支払うものとする。
第11条(本ポリシーの変更) 当社は、本ポリシーの内容を変更することがあり、変更後の内容は当社ウェブサイトに掲示された時点から効力を生じる。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. ベンダー向けの修正
A-1. EOL予告期間の短縮
修正後:「当社は、本製品のEOLを、EOL予定日の6か月前までに予告する。」 一言解説: 製品のライフサイクルが短い分野(モバイルアプリ等)では、12か月の長期予告が製品戦略上の柔軟性を損なうため、予告期間を短縮する修正である。
A-2. 免責範囲の明確化と表明保証の限定
修正後:「当社は、本製品に関し、市場性、特定目的への適合性その他一切の保証を、法令上許容される範囲で行わない。」 一言解説: サポート終了後の利用に伴う責任をベンダー側が一切負わないことを、法令上許される範囲でより明確に定める修正である。
B. ユーザー向けの修正
B-1. 延長サポート期間の対応内容の拡充
修正後:「延長サポート期間中、当社はセキュリティ脆弱性の修正に加え、本製品の基本機能に重大な支障を来す不具合の修正も行う。」 一言解説: セキュリティ修正のみでは事業継続に不安が残るユーザー側が、延長サポートの対応範囲拡大を求める修正である。
B-2. EOL予告期間の延長要求
修正後:「当社は、本製品のEOLを、EOL予定日の24か月前までに予告する。」 一言解説: 基幹システムに組み込まれた製品の場合、代替製品への移行には長期間を要するため、ユーザー側はより長い予告期間を求める傾向がある。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、パッケージソフトウェアやSaaS製品を提供するベンダーが、サポート期間の方針及びEOL(提供終了)の取扱いを対外的に公表する文書として用いる。他方、特定の顧客との間で個別に保守内容や対応時間(SLA)を約束する場面には適さず、個別の保守契約書を締結すべきである。
根拠法令 本ポリシーで特に留意すべきは消費者契約法第8条である。同条第1項は、事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項、及び事業者の故意又は重過失による債務不履行の場合に責任の一部を免除する条項を無効とする。本製品のユーザーが事業者ではなく消費者である場合、EOL後の免責を定める条項であっても、ベンダーの故意又は重過失によって生じた損害についてまで一切の責任を免れる旨を定めることはできない点に注意が必要である。事業者間取引においては契約自由の原則がより広く妥当するが、それでも著しく一方的な免責条項は民法第90条の公序良俗違反により無効と判断される可能性がある。また、サポート終了後にセキュリティ脆弱性が放置されることで、製品の欠陥により第三者に損害が生じた場合には、製造物責任法上の議論(ソフトウェア単体が同法の「動産」に該当するかは議論があるものの、組み込まれた製品全体としての責任が問題となりうる)にも留意が必要である。
実務でよくある失敗と対策 第一に、EOLの予告が製品ページの片隅にのみ掲載され、既存ユーザーへの個別通知が行われず、ユーザーが気づかないままセキュリティリスクにさらされる失敗がある。第5条のように、ウェブサイト掲示に加えて登録ユーザーへの個別通知を義務付けることが対策となる。第二に、免責条項を画一的に定めた結果、消費者向け製品において消費者契約法第8条に抵触するおそれのある文言をそのまま使用してしまう失敗がある。第7条第3項のように、消費者との取引の場合の限定を明記し、BtoB向けとBtoC向けでポリシー文言を使い分けることが対策となる。第三に、延長サポートの対応内容(セキュリティ修正のみか、機能不具合の修正も含むか)が曖昧なまま契約を締結し、期待していた対応が受けられずクレームに発展する失敗がある。第4条のように対応範囲を明確に区分することが対策となる。
免責条項の有効性は取引の相手方(消費者か事業者か)や製品の性質によって左右されるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 標準サポート期間・延長サポート期間・EOLの区分を明確に定めたか
- [ ] 各期間における対応内容(機能追加・不具合修正・セキュリティ修正)の範囲を明記したか
- [ ] EOL予告期間が自社製品のライフサイクルに照らして十分か確認したか
- [ ] 消費者向け製品の場合、消費者契約法第8条に抵触する免責文言がないか確認したか
- [ ] 事業者向け製品と消費者向け製品でポリシーを使い分ける必要があるか検討したか
- [ ] バージョンごとのサポート状況を公開する仕組みを整備したか
- [ ] 延長サポート契約の料金体系及び申込方法を定めたか
- [ ] EOL後の緊急パッチ提供に関する当社の裁量を明記したか
- [ ] ポリシー変更時の周知方法を定めたか
- [ ] 製造物責任法上の論点(欠陥製品による第三者損害)について社内で検討したか