システム開発を継続的に受発注する際の基本条件を定める契約書。民法第632条の請負・第656条の準委任と経済産業省「情報システム・モデル取引・契約書」に準拠。

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ソフトウェア開発基本契約書

第1部: 書式本文

【ユーザー商号】(以下「甲」という。)と【ベンダー商号】(以下「乙」という。)とは、乙が甲の委託を受けてソフトウェアの開発、保守及びこれらに付随する業務を継続的に行うにあたり、個別の受発注に共通して適用される基本的取引条件を定めるため、次のとおりソフトウェア開発基本契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(目的) 本契約は、甲が乙に委託するソフトウェアの開発、保守及びこれらに付随する業務(以下「本件業務」と総称する。)に関し、個別契約に共通して適用される基本的事項を定めることを目的とする。

第2条(適用範囲及び個別契約との関係) 1. 本契約は、本契約締結後に甲乙間で締結される個別の注文書及び注文請書その他これに準ずる書面(以下「個別契約」という。)のすべてに共通して適用される。 2. 個別契約に本契約と異なる定めがある場合、当該個別契約に関する限り、個別契約の定めが本契約に優先して適用される。 3. 本契約は、経済産業省の情報システム・モデル取引・契約書(第一版・第二版)の基本契約・個別契約の二段階構成を参考に構成し、各フェーズの契約類型の選択は個別契約において行う。

第3条(個別契約の締結) 1. 個別契約においては、業務の内容、契約類型(請負又は準委任の別)、納期又は履行期間、対価、納入物の有無及びその内容その他必要な事項を定める。 2. 個別契約は、乙が提出する見積書又は提案書に基づき甲が発注書を交付し、乙が請書を交付した時、又は甲乙記名押印した個別契約書を取り交わした時に成立する。

第4条(契約類型の選択) 1. 個別契約が請負契約(民法第632条)である場合、乙は仕事の完成を約し、甲は仕事の結果に対して報酬を支払う。 2. 個別契約が準委任契約(民法第656条)である場合、乙は善良な管理者の注意をもって本件業務を遂行することを約するものとし、特定の成果の完成を約するものではない。 3. 契約類型が明記されていない場合、業務の性質、成果物の有無及び対価の算定方法等の事情に照らし合理的に判断する。

第5条(業務の遂行体制) 甲及び乙は、本件業務の遂行にあたりそれぞれ管理責任者及び連絡窓口となる担当者を選任し、相手方に通知する。

第6条(検収) 1. 乙は、個別契約に定める納入物を作成したときは、これを甲に納入し、甲は個別契約に定める検査基準に従い検査を行う。 2. 甲は、納入物の受領後【10】営業日以内に検査を完了し、合格又は不合格を乙に通知する。前記期間内に甲から通知がないときは、検査に合格したものとみなす。 3. 検査の結果、納入物が個別契約に定める仕様に適合しないと認められる場合、甲は乙に対し是正を求めることができる。

第7条(対価及び支払方法) 1. 甲は乙に対し、個別契約に定める対価を、個別契約に定める支払期日までに、乙が指定する口座に振り込む方法により支払う。振込手数料は甲の負担とする。 2. 対価には消費税及び地方消費税を含まないものとし、甲は法令に基づき算定される額を別途支払う。

第8条(知的財産権の帰属) 1. 本件業務の遂行過程で新たに作成されたプログラムその他の成果物に関する著作権(著作権法第27条及び第28条に定める権利を含む。)は、対価の完済を条件として乙から甲に譲渡される。ただし、個別契約に別段の定めがある場合はこの限りでない。 2. 乙は甲に対し、前項の成果物について著作者人格権を行使しない。 3. 乙が本契約締結前から保有していたプログラム、汎用性のあるモジュール又はノウハウ(以下「乙の既存知的財産」という。)の知的財産権は乙に留保されるものとし、乙は甲に対し、成果物に組み込まれた乙の既存知的財産を本件業務の目的の範囲内で利用することを許諾する。

第9条(契約不適合責任) 1. 個別契約が請負契約である場合において、納入物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき(以下「契約不適合」という。)、甲は民法第562条から第564条までの規定に従い、乙に対し追完の請求、代金減額の請求、損害賠償の請求又は契約の解除をすることができる。 2. 前項の請求は、甲が契約不適合を知った時から【1】年以内にその旨を乙に通知しない場合、することができない。 3. 契約不適合が乙の故意又は重過失に基づく場合、前項の期間制限は適用しない。

第10条(再委託) 1. 乙は、本件業務の全部又は一部を第三者に再委託する場合、あらかじめ甲の書面による承諾を得るものとする。ただし、軽微な作業についてはこの限りでない。 2. 乙は、再委託先に本契約上の乙の義務と同等の義務を負わせ、再委託先の行為について自己の行為と同様の責任を負う。

第11条(秘密保持) 1. 甲及び乙は、本契約及び個別契約の履行にあたり相手方から開示を受けた技術上又は営業上の情報を、相手方の書面による事前の承諾なく第三者に開示又は漏えいしてはならない。 2. 本条の義務は、本契約終了後も【3】年間存続する。

第12条(反社会的勢力の排除) 甲及び乙は、自己が暴力団、暴力団員その他の反社会的勢力に該当せず、これらと関係を有しないことを表明し保証する。相手方が本条に違反した場合、催告を要せず本契約及び個別契約を解除することができる。

第13条(解除) 甲又は乙は、相手方が本契約若しくは個別契約に違反し相当期間を定めた催告後もその違反が是正されないとき、又は支払停止、破産手続開始の申立てその他信用不安の事由が生じたときは、催告を要せず本契約及び個別契約の全部又は一部を解除することができる。

第14条(有効期間) 本契約の有効期間は契約締結日から【1】年間とする。ただし、期間満了の【1】か月前までに甲乙いずれからも書面による終了の申出がない場合、本契約は同一条件でさらに【1】年間更新されるものとし、以後も同様とする。

第15条(協議及び合意管轄) 1. 本契約に定めのない事項又は解釈に疑義が生じた事項は、甲乙誠意をもって協議し解決する。 2. 本契約に関する紛争については、【〇〇地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

以上の合意を証するため本書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各自1通を保有する。

【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】

(甲) 住所:【     】   商号又は名称:【     】   代表者:【     】  印

(乙) 住所:【     】   商号又は名称:【     】   代表者:【     】  印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. ベンダー向け書き換え

A-1. 大規模・長期継続案件

第9条2項修正例:「前項の請求は、甲が納入物の引渡しを受けた時から6か月以内に通知しない場合、することができない。」 解説: 除斥期間を引渡し起算に変更し責任範囲を早期に確定させる。賠償額の上限追加も有効。

A-2. 小規模・スポット案件

第7条追加例:「甲は契約締結時に対価の【50】%を着手金として支払い、残額は検収完了後【〇】日以内に支払う。」 解説: 途中解約リスクに備え着手金で資金回収リスクを軽減し、権利移転時期は対価完済時に維持する。

B. ユーザー(発注者)向け書き換え

B-1. 大規模・長期継続案件

第9条2項修正例:「前項の請求は、甲が契約不適合を知った時から2年以内に通知しない場合、することができない。」 解説: 稼働後に不具合が顕在化するまで時間を要するため通知期間を延長し権利行使機会を確保する。

B-2. 小規模・単発案件

第6条追加例:「検査の結果不合格の場合、乙は甲の指定期限までに無償で修補し、期限内に完了しないときは甲は個別契約を解除できる。」 解説: 代替ベンダー確保が難しい小規模案件では、無償修補義務と履行遅滞時の解除権を明確化しておくことが有用である。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面・使ってはいけない場面 本書式は、同一のベンダーとユーザーが継続的に複数のシステム開発案件を発注・受注する場合の基本的取引条件を定めるために用いる。単発の小規模開発で継続関係が見込まれない場合は個別契約書のみで足りる。また、技術者常駐型の役務提供(労働者派遣に該当し得るもの)には適さず、その場合は指揮命令権の所在を明確にした別書式を用いるべきである。

根拠法令 契約類型の選択に関する民法第632条(請負)及び第656条(準委任)、契約不適合責任に関する民法第562条から第564条まで、著作権の帰属・譲渡に関する著作権法第27条及び第28条を主な根拠とし、経済産業省の情報システム・モデル取引・契約書の二段階構成の考え方を参照している。

実務でよくある失敗と対策 第一に、基本契約と個別契約の優先関係を定めず矛盾する条件が併存してしまう失敗がある。第2条2項のように個別契約優先を明記して防止する。第二に、知的財産権の帰属条項がベンダーの汎用モジュールまで一括して発注者に移転させてしまう失敗がある。第8条3項のように既存知的財産の留保と利用許諾を分けて規定することが望ましい。第三に、契約不適合責任の通知期間を定めず民法第166条の原則的な消滅時効に委ねてしまい、起算点をめぐる争いが生じる失敗がある。第9条2項のように通知期間を明記することが望ましい。これらは一般的な整理であり、個別事案は別途専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 甲乙の商号、住所、代表者名を正確に記入したか
  • [ ] 個別契約の様式(発注書・請書等)を別途用意しているか
  • [ ] 各個別契約の契約類型(請負か準委任か)を判断する基準を社内で共有しているか
  • [ ] 検収基準・検査期間【10営業日】が実態に合っているか
  • [ ] 対価の支払期日・支払方法が下請法等の規制に抵触しないか確認したか
  • [ ] 知的財産権の帰属時期(引渡し時か対価完済時か)を明確にしたか
  • [ ] ベンダーの既存知的財産(汎用モジュール等)の範囲を洗い出したか
  • [ ] 契約不適合責任の通知期間【1年】が妥当な長さか検討したか
  • [ ] 再委託の事前承諾手続を定めたか