葬儀の施行内容と費用を定める契約書です。見積書との対応、追加費用の同意手続、クーリング・オフの適用関係を整理します。提出先や保存期間の目安もあわせて整理しています。

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葬儀施行契約書

第1部: 書式本文

葬儀施行契約書

【葬祭事業者名】(以下「甲」という。)と【喪主・依頼者氏名】(以下「乙」という。)は、下記葬儀の施行に関し、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(施行内容) 1. 甲は、乙の依頼に基づき、別紙見積書記載の内容により、次の葬儀(以下「本件葬儀」という。)を施行する。 - 故人氏名: 【 】 - 葬儀形式: 【一般葬・家族葬・一日葬・直葬等の別】 - 通夜日時・場所: 【 】 - 告別式日時・場所: 【 】 - 火葬場: 【 】 2. 本件葬儀の内容及び費用は、【作成日】付見積書(以下「本件見積書」という。)のとおりとし、本件見積書は本契約の一部を構成する。

第2条(費用及び支払方法) 1. 本件葬儀の費用総額は、本件見積書記載の金額(消費税込み)を基本とする。 2. 乙は、甲に対し、葬儀終了後【 】日以内に、前項の費用を【一括・分割】で支払う。

第3条(追加費用の同意手続) 1. 甲は、本件見積書に記載のない役務又は物品(以下「追加役務等」という。)を提供しようとするときは、事前に乙に対し、内容及び金額を書面又は乙が確認できる方法(電子メール、メッセージアプリ等)により提示し、乙の同意を得るものとする。 2. 乙の事前の同意を得ずに提供された追加役務等の費用については、乙は支払義務を負わない。ただし、乙が明示的に追加を依頼した場合、又は緊急やむを得ない事情があり事後に乙が承認した場合はこの限りでない。

第4条(参列者数の変動に伴う費用調整) 参列者の人数、会食(通夜振る舞い・精進落とし等)の人数の増減により費用が変動する場合、甲は、実際の人数に基づき精算し、その根拠を明細により乙に示す。

第5条(契約の性質) 甲が提供する役務は、祭壇設営、式進行等の請負的な性質を有する部分と、僧侶手配等の取次ぎのように委任的な性質を有する部分とを含みうる。個々の役務の法的性質は、本件見積書の項目ごとの内容に応じて判断される。

第6条(解除) 1. 乙は、本件葬儀の準備が進行する前であれば、甲に対する通知により本契約を解除することができる。 2. 前項の解除がなされた場合、甲は、既に着手した業務及び手配済みの費用に相当する部分を除き、受領済みの費用を返還する。控除の基準は本件見積書別紙のとおりとする。

第7条(クーリング・オフ等の適用) 1. 本契約の締結が、甲の営業所以外の場所における勧誘その他特定商取引法上の訪問販売又は電話勧誘販売に該当する形態で行われた場合、乙は、法定の書面を受領した日から起算して法定の期間内であれば、書面又は電磁的記録によりクーリング・オフを行うことができる。 2. 前項の適用の有無は、契約締結に至る経緯(来店による契約か、訪問・電話による勧誘を受けての契約かなど)によって異なり、本契約の締結形態がクーリング・オフの対象となるかは個別に確認を要する。

第8条(不実告知等) 甲は、本件葬儀の内容、費用又は必要性について、事実と異なる説明を行い、又は乙の判断に影響を与える重要な事項について故意に告げない行為を行わない。

第9条(個人情報の取扱い) 甲は、本契約の履行に際して知り得た乙及び故人に関する個人情報を、本件葬儀の施行及びこれに付随する目的以外に使用しない。

第10条(協議事項) 本契約に定めのない事項は、甲乙誠実に協議して定める。

【作成日】 甲 【住所】【事業者名】【代表者名】 印 乙 【住所】【氏名】 印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 葬祭事業者の立場から

A-1. 深夜・早朝の緊急搬送を伴う契約の場合

第1条に先立ち「乙は、【搬送日時】に甲に対し遺体搬送を依頼し、甲はこれに応じて搬送を実施した。搬送費用は本件見積書に含む」との一文を追加する。

一言解説: 死亡直後の搬送は葬儀内容確定前に発生することが多く、搬送依頼と施行契約の関係を明確にしておくとトラブル防止になる。

A-2. 分割払い・信販利用時の条項追加

第2条第2項に「乙が信販会社の立替払制度を利用する場合、乙は当該信販会社との間で別途契約を締結するものとし、甲は当該契約の内容について責任を負わない」との一文を追加する。

一言解説: 葬儀費用を信販会社の立替払いで支払う場合、乙と信販会社との契約は本契約とは別個の契約であることを明確化しておく。

B. 喪主・依頼者の立場から

B-1. 追加費用の説明を書面化させたい場合

第3条第1項の「乙が確認できる方法」を「書面又は電子メールに限る」と修正し、「口頭のみによる説明では追加役務等の依頼として扱わない」との一文を追加する。

一言解説: 葬儀は短期間で意思決定を迫られる場面が多いため、追加費用に関する説明を記録に残る方法に限定しておくと、後日の費用精算トラブルを防ぎやすい。

B-2. 見積書と実際の請求内容の突合を求める場合

第2条の前に「甲は、葬儀終了後の請求に際し、本件見積書の各項目と実際に提供した役務等を対比した明細書を交付する」との一文を追加する。

一言解説: 請求段階で見積書との対応関係が不明確だと精算トラブルの原因となるため、明細による突合を契約上の義務としておくことが依頼者側の利益になる。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

本書式は、葬祭事業者が喪主・遺族から葬儀の施行を受託する場面での使用を想定している。生前予約(本人が生前に自らの葬儀内容を契約する場合)や、互助会の積立契約については、契約構造や解約に関する規律(割賦販売法上の前払式特定取引に関する規定を含みうる)が異なるため、本書式をそのまま使用することはできない。

本契約には、乙が個人(消費者)であることが通常であるため、消費者契約法が適用される。同法第4条は、事業者が重要事項について事実と異なることを告げた場合(不実告知)等、一定の事情があるときに消費者が契約の申込み又は承諾の意思表示を取り消すことができると定めており、葬儀内容や費用の説明において誤解を招く説明を行わないことが求められる。また、消費者の利益を一方的に害する条項は無効となりうる(消費者契約法第8条から第10条まで)。

特定商取引法との関係では、訪問販売又は電話勧誘販売に該当する形態で契約が締結された場合には、法定書面の交付を前提にクーリング・オフの対象となり得る。もっとも、遺族が自ら葬祭事業者の店舗・会館に来店して契約した場合や、病院・紹介者からの紹介を受けて店舗等で契約した通常の葬儀契約については、特定商取引法上の訪問販売等に該当せず、クーリング・オフの対象とならない場合が多いと考えられる。もっとも、この該当性は勧誘の経緯や契約締結場所等の具体的事実関係によって判断が異なるため断定はできず、個別の事案については専門家(弁護士等)に確認することを推奨する。

本契約が請負(民法第632条)としての性質を持つか、準委任(民法第656条)としての性質を持つかは、提供される役務の内容によって異なる。祭壇設営や式場設営など仕事の完成を目的とする部分は請負的性質が強く、僧侶の手配や役所手続の代行のような事務処理を目的とする部分は準委任的性質が強いと整理されることが多いが、いずれの性質を持つかは契約の個別条項及び実際の履行状況によって判断される。

よくある失敗として、第一に、見積書に含まれない項目が当日に追加され、遺族が想定外の高額請求を受ける例がある。第3条のように、追加費用について事前同意を要件とすることが対策となる。第二に、参列者数の見込み違いにより料理・返礼品の数量が変動し、精算段階で紛争になる例がある。第4条のように、実費精算の根拠を明細で示す運用が対策となる。第三に、クーリング・オフの適用可否について事業者が断定的な説明をしてしまい、後日の紛争を招く例がある。第7条のように、契約締結の経緯によって適用が異なる旨を明記しておくことが対策となる。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 見積書の各項目と契約書の記載内容が一致しているか確認したか
  • [ ] 追加役務等の提供に事前同意を要する旨を明記したか
  • [ ] 参列者数・会食人数の変動に伴う精算方法を明記したか
  • [ ] 契約締結の経緯(来店・紹介・訪問勧誘・電話勧誘の別)を記録に残したか
  • [ ] クーリング・オフの適用可能性について断定的な説明をしていないか確認したか
  • [ ] 解除時の返還・控除基準を明記したか
  • [ ] 不実告知に該当しうる説明(必要性を過度に強調する説明等)がないか確認したか
  • [ ] 個人情報(故人・遺族に関する情報)の利用目的を明記したか
  • [ ] 分割払い・信販利用時の契約関係の切り分けを明記したか
  • [ ] 消費者契約法上の不当条項に該当しうる違約金条項がないか確認したか