貸したお金の返還を求める訴訟の訴状様式です。請求の趣旨、契約の成立、弁済期の到来、遅延損害金の記載方法を示します。実務で迷いやすい記載箇所には解説コメントを付しています。
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訴状(貸金返還請求)
第1部: 書式本文
訴状
【年】年【月】月【日】日
【提訴する裁判所名】 御中
原告(貸主) 住所:【 】 氏名(名称):【 】
被告(借主) 住所:【 】 氏名(名称):【 】
貸金返還請求事件 訴訟物の価額 金【 】円 貼用印紙額 金【 】円
第1 請求の趣旨 1 被告は原告に対し、金【 】円及びこれに対する【弁済期の翌日】年【月】月【日】日から支払済みまで年【 】パーセントの割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 との判決並びに仮執行宣言を求める。
第2 請求の原因 1 契約の成立 原告は、【年】年【月】月【日】日、被告に対し、弁済期を【年】年【月】月【日】日、利息を年【 】パーセントと定めて、金【 】円を貸し渡した(甲第1号証:金銭消費貸借契約書)。
2 金銭の交付 原告は、上記契約に基づき、【年】年【月】月【日】日、被告が指定する銀行口座に金【 】円を振り込む方法により交付した(甲第2号証:振込明細書)。
3 弁済期の到来と不履行 上記貸金の弁済期である【年】年【月】月【日】日は経過したが、被告は元本及び利息の支払をしない。
4 催告 原告は、【年】年【月】月【日】日到達の内容証明郵便により、被告に対し支払を催告した(甲第3号証:内容証明郵便及び配達証明)が、被告は応じない。
5 遅延損害金 契約書第【 】条には、弁済期後の遅延損害金を年【 】パーセントとする旨の定めがある。かかる定めがない場合、民法所定の法定利率による。
6 よって、原告は被告に対し、金銭消費貸借契約に基づく貸金返還請求として、元金【 】円及びこれに対する弁済期の翌日である【年】年【月】月【日】日から支払済みまで約定(又は法定)の年【 】パーセントの割合による遅延損害金の支払を求め、本訴に及ぶ。
第3 証拠方法 1 甲第1号証 金銭消費貸借契約書 2 甲第2号証 振込明細書 3 甲第3号証 内容証明郵便及び配達証明
第4 添付書類 1 甲号証写し 各1通 2 資格証明書(法人の場合) 1通 3 訴訟委任状(代理人による場合) 1通
以上
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節:原告(貸主)側で立証を強化する場合
契約書がない、又は口頭での貸付の場合、間接事実の積み重ねによる立証構成とします。
第2(修正例) 契約書は作成されていないが、原告から被告への送金記録(甲第【 】号証)、被告が返済を約束する趣旨のメッセージ(甲第【 】号証)、及び被告が一部弁済した事実(甲第【 】号証)により、金銭消費貸借契約の成立を立証する。
一言解説:契約書がない場合でも、送金記録や被告の言動を積み重ねることで貸借合意の存在を立証できる場合があります。
B節:被告(借主)側で弁済の抗弁を主張する場合
被告は、既に弁済済みであることを主張する答弁書・準備書面の形で書き換えます。
抗弁(骨子) 被告は、【年】年【月】月【日】日、原告に対し金【 】円を弁済しており(乙第1号証:領収書)、原告の請求額はこの限度で減縮されるべきである。
一言解説:弁済の抗弁は被告が立証責任を負うため、領収書や振込記録などの客観的証拠を提示することが重要です。
C節:消滅時効を主張する場合(被告側)
弁済期から相当期間が経過している場合、被告は消滅時効の抗弁を主張します。
抗弁(骨子) 本件貸金債権は、弁済期である【年】年【月】月【日】日から5年を経過しており、民法第166条第1項第1号に基づき時効が完成しているため、被告は本書面をもって時効を援用する。
一言解説:債権者としては時効の完成猶予・更新事由(催告、承認等)の有無を事前に確認しておくことが重要です。
D節:連帯保証人にも請求する場合
連帯保証人がいる場合、被告を複数として請求の趣旨・原因を修正します。
第1(修正例) 被告らは原告に対し、連帯して金【 】円及びこれに対する遅延損害金を支払え。
第2(追加) 被告【保証人名】は、【年】年【月】月【日】日、原告と被告【主債務者名】との間の金銭消費貸借契約に基づく債務について、連帯保証契約を締結した(甲第【 】号証:連帯保証契約書)。
一言解説:連帯保証人への請求を併合する場合、保証契約の成立(書面性を含む)についても別途主張立証が必要です。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面
貸し付けた金銭が約定の弁済期を過ぎても返還されず、催告を行っても任意の弁済がない場合に、訴訟により返還を求める場合に使用します。契約書の有無にかかわらず利用できますが、契約書がある場合は立証が容易になります。
使ってはいけない場面
金銭の交付が贈与や出資など貸借以外の性質を有する場合、貸金返還請求としての構成は適切ではありません。交付の性質(貸付か贈与か出資か)について当事者間に争いがある場合は、交付時の経緯や返還の合意の有無を慎重に検討する必要があります。また、消滅時効が既に完成している可能性がある場合には、時効の完成猶予・更新事由の有無を確認したうえで提訴の要否を判断する必要があります。
根拠法令
金銭消費貸借契約については民法第587条(消費貸借の意義)及び第587条の2(書面でする消費貸借)が規定しています。利息の定めがある場合の利率については、当事者間の約定利率が優先し、約定がない場合は民法第404条の法定利率(変動制、当初年3パーセント)によります。消滅時効については民法第166条第1項が、権利を行使することができることを知った時から5年、又は権利を行使することができる時から10年で時効消滅する旨を定めています。時効の完成猶予・更新事由については同法第147条以下に規定されています。
よくある失敗と条項上の対策
- 契約書がない口頭での貸付について、送金記録のみで安易に貸借の合意があったと構成し、被告から贈与や立替えであるとの反論を受け立証に窮する失敗があります。対策としてA節のように間接事実を積み重ねた立証構成をあらかじめ準備します。
- 消滅時効の完成が迫っていることに気づかず提訴が遅れ、時効の抗弁を受ける失敗があります。対策として弁済期から提訴までの期間を確認し、時効の完成猶予事由(催告等)を活用します。
- 遅延損害金の利率について契約書上の約定と法定利率のいずれが適用されるかを確認せず、誤った利率で請求してしまう失敗があります。対策として第2の5のように契約書の定めの有無を確認し、正確な利率を記載します。
貸金返還請求における立証の成否は契約書の有無や間接証拠の充実度に大きく左右されるため、個別事案は専門家に確認のうえ、証拠収集及び訴状の記載内容を確定してください。
第4部: 使用前チェックリスト
- 貸付けの合意及び金銭交付の事実を裏付ける証拠を確認したか
- 弁済期及び利息・遅延損害金の約定内容を確認したか
- 消滅時効が完成していないか確認したか
- 催告(内容証明郵便等)を行い証拠化したか
- 請求の趣旨(元金・遅延損害金の起算日と利率)を正確に記載したか
- 連帯保証人がいる場合、保証契約の成立要件(書面性)を確認したか
- 一部弁済がある場合、その金額を請求額から控除したか
- 証拠方法(契約書、振込明細、内容証明等)を整理したか
- 提訴する裁判所(被告住所地又は義務履行地)を確認したか
- 訴訟物の価額と貼用印紙額を正確に計算したか
- 被告の資力・所在を確認し、強制執行の実効性を検討したか
- 添付書類(資格証明書、訴訟委任状等)を準備したか