招集通知を発せずに株主総会を開催するための同意書。会社法第300条の株主全員の同意による招集手続の省略と、書面投票を定めた場合は省略できない点を解説します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
株主総会の招集手続省略に関する株主全員の同意書
第1部: 書式本文
下記は、株主全員の同意を得て招集通知の発送を省略し、株主総会を開催する場合の同意書の条文構成である。会社法第300条本文は、株主全員の同意があるときは招集の手続を経ることなく株主総会を開催できると定めており、同意書はその同意の存在を証する書面として作成する。招集通知そのものを省略できるにとどまり、株主総会の開催自体や決議の成立要件(定足数・決議要件)を省略するものではない点を、同意書の前文で明確にしておくと、株主の誤解を防ぐことができる。
第1条(前文) 当会社の株主全員は、下記総会について、会社法第299条に定める招集通知の発送その他招集の手続を経ることなく開催することに同意する。
第2条(開催する株主総会の特定) 開催日時【〇年〇月〇日午前〇時】、開催場所【本店所在地又は会場名】を特定して記載する。
第3条(招集手続省略の対象) 当該総会について、招集通知の発送、招集通知に記載すべき議案の事前通知その他会社法及び定款が定める招集手続の一切を省略することに同意する旨を明記する。
第4条(付議議案の確認) 総会に付議する議案の項目を列挙し、株主全員が事前に議案の内容を了知していることを確認する。
第5条(株主全員であることの確認) 本同意書の署名(記名押印)者が、本同意時点における株主名簿上の株主全員と一致することを確認する旨、及び株主総会当日の議決権行使を妨げるものではない旨。
第6条(書面投票制度・電磁的方法の不採用の確認) 当会社が書面による議決権行使又は電磁的方法による議決権行使を定めていないことを確認する。(会社法300条ただし書の適用除外事由に該当しないことの確認)
第7条(同意書の効力発生時) 株主全員の記名押印が揃った時点をもって同意が成立したものとする旨。
第8条(同意書の保存) 本同意書は株主総会に関する書類として、会社法第318条に準じ本店に備え置き保存する旨。
第9条(取締役会設置会社における留意事項) 当会社が取締役会設置会社である場合、招集手続の省略により議案の事前検討期間が短縮される可能性があることから、取締役会において付議議案を確定させたうえで本同意書を作成する旨。
末尾に株主全員(氏名又は名称・住所・保有株式数)の記名押印欄を設ける。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 全株主同意
修正条文例: 「株主〇〇、株主〇〇及び株主〇〇(株主名簿記載の株主の全員)は、いずれも下記総会の招集手続を経ないことについて異議がないことを確認し、各自記名押印する。」
一言解説: 全株主同意の効力発生には、株主名簿上の株主全員の同意が漏れなく揃うことが前提となる。同意書は一通の書面に全員が連署する形式のほか、株主ごとに個別の同意書を作成し後で一体として保管する形式もあり得るが、いずれの場合も「株主全員」の範囲を株主名簿の記載時点で確定させておく必要がある。
B節: 非公開会社
修正条文例: 「当会社は株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨を定款に定める非公開会社であり、株主数が少数かつ全員が経営に関与していることから、招集通知の発送に代えて本同意書により招集手続を省略する。」
一言解説: 招集手続の省略は公開会社でも理論上可能だが、株主数が多いほど全員の同意取得は現実的でなくなる。実務上、本制度は株主数が限られる非公開会社での利用が中心となるため、株主構成と定款の譲渡制限規定を確認したうえで適用の要否を判断する。株主が経営陣の親族のみで構成される同族会社であっても、株主名簿上の株主全員(遺産分割未了の相続人がいる場合はその全員)を漏れなく把握することが前提となる。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、株主全員が総会の議題をあらかじめ把握しており、正式な招集通知を発送するまでもなく総会を開催できる状況、典型的には株主数が少数の非公開会社で株主と経営陣がほぼ一致している場面で使用する。反対に、書面投票制度又は電磁的方法による議決権行使を定めている会社では、株主に投票の機会を保障する必要があるため、会社法第300条ただし書によりこの省略は認められず、本書式は使用できない。
根拠法令は会社法第300条であり、本文で株主全員の同意による招集手続の省略を認める一方、ただし書で書面投票・電磁的方法による議決権行使を定めた場合を適用除外としている。あわせて、招集通知そのものを定める会社法第299条、招集手続の瑕疵が総会決議の取消事由となり得る会社法第831条第1項第1号の存在も念頭に置く必要がある。招集通知の省略は招集手続の一部を省略するものであって、株主総会自体を招集する行為(取締役会設置会社であれば取締役会決議による招集の決定)まで省略するものではないため、招集の決定手続と招集通知発送の省略とを混同しないよう整理して記載する。
実務でよくある失敗の一つ目は、株主の一部から同意を得ないまま総会を開催してしまうケースである。名義株主や相続により株式を取得した者を株主名簿の書き換え漏れにより見落とし、同意書に署名を得られていない株主が存在すると、招集手続の省略が無効となり決議取消事由を生じさせるおそれがある。対策として、同意書作成に先立ち株主名簿を最新の状態に更新し、名簿記載の株主全員をリストアップしたうえで同意の取得状況をチェックする。
二つ目は、書面投票制度を定めている会社で誤って本制度を適用してしまう失敗である。書面投票制度は株主数が千人以上の会社では義務化されるほか、任意採用している会社も少なくないため、招集手続省略を検討する前に自社が書面投票又は電磁的方法による議決権行使を定款又は取締役会決議で定めていないかを必ず確認する。
三つ目は、同意書に議案の内容を具体的に記載しないまま作成し、後日「同意した議案の範囲が不明確」との指摘を受ける失敗である。対策として、同意書に付議議案の項目を列挙し、株主全員が議案の内容を認識したうえで同意している旨を明記する。
四つ目は、種類株式を発行している会社で、種類株主総会の招集手続についても同様に省略できると誤解してしまう失敗である。種類株主総会の招集手続の省略についても会社法第300条本文の準用又は同様の考え方が及ぶと解される場合があるが、対象となる種類株主の範囲を普通株主の場合と混同しないよう、種類株式原簿に基づいて別途確認する必要がある。招集手続の省略が有効となる株主の範囲や適用除外事由への該当性については会社の株主構成や制度採用状況により判断が分かれるため、個別事案は専門家に確認したうえで実施することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 株主名簿を同意書作成時点の最新の状態に更新したか
- [ ] 株主名簿記載の株主全員から同意(記名押印)を取得したか
- [ ] 書面投票制度又は電磁的方法による議決権行使を定めていないことを確認したか(会社法300条ただし書の該当性)
- [ ] 開催する総会の日時・場所を同意書に特定して記載したか
- [ ] 付議議案の項目を同意書に列挙したか
- [ ] 相続・譲渡等により株主が異動している場合、最新の株主を正しく把握しているか
- [ ] 同意書の記名押印が株主名簿上の株主(法人株主の場合は代表者)によるものか確認したか
- [ ] 同意成立の日時(全員の記名押印が揃った時点)を記録したか
- [ ] 同意書を株主総会関係書類として本店に保存する体制を整えたか
- [ ] 招集手続を省略しても議決権行使自体は総会当日に適法に行われることを株主に周知したか
- [ ] 種類株式を発行している場合、種類株主総会の招集手続の要否・省略の可否を別途確認したか
- [ ] 招集の決定手続(取締役会決議等)と招集通知発送の省略とを混同せず整理したか