物流倉庫や資材置場を賃貸する契約書。民法第601条の賃貸借として寄託と区別し、床荷重や危険物保管の制限、消防法上の届出義務の分担までを明記した書式。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
倉庫賃貸借契約書
第1部: 書式本文
倉庫賃貸借契約書
貸主【貸主氏名・名称】(以下「甲」という。)と、借主(荷主)【借主氏名・名称】(以下「乙」という。)は、次のとおり倉庫賃貸借契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(目的物件) 甲は乙に対し、下記倉庫(以下「本物件」という。)を、乙の物品保管及び物流業務の用に供する目的で賃貸し、乙はこれを賃借する。 - 所在地: 【所在地】 - 建物名称・区画: 【建物名称・区画番号】 - 延床面積・床荷重: 【 】平方メートル、床荷重【 】キロニュートン毎平方メートル
第2条(法的性質の確認) 1. 本契約は、乙が本物件を占有し自ら管理・保管する民法第601条の賃貸借契約であり、甲が保管責任を負う民法第657条の寄託契約とは異なることを甲乙相互に確認する。 2. 乙は、本物件内における物品の保管管理につき、自らの責任において行うものとし、甲は物品の保管に関する善管注意義務その他の寄託人的責任を負わない。
第3条(契約期間) 本契約の期間は、【始期】から【終期】までの【 】年間とする。
第4条(賃料) 乙は甲に対し、賃料として月額金【 】円を、【支払時期・方法】により支払う。
第5条(使用制限・床荷重) 1. 乙は、本物件の床荷重の上限(【 】キロニュートン毎平方メートル)を遵守し、これを超える重量物を保管してはならない。 2. 乙は、危険物、有毒物質、消防法上の指定数量を超える危険物その他法令により保管が制限される物品を、甲の事前の書面による承諾なく本物件内に保管してはならない。
第6条(消防法上の届出義務) 1. 乙が本物件内に消防法第9条の4に定める指定可燃物又は同法第10条に定める危険物を保管しようとするときは、乙の責任と負担において所轄消防署への届出・許可取得の手続を行う。 2. 甲は、本物件の防火対象物としての基本的な消防用設備の設置・維持管理を行う。
第7条(荷役設備・搬入出) 1. 乙は、フォークリフト等の荷役機械を本物件内で使用する場合、甲の承諾を得るとともに、労働安全衛生法その他関係法令上必要な資格・点検を遵守する。 2. 搬入出の時間帯は、原則として【搬入出可能時間】とし、それ以外の時間帯に搬入出を行う場合は事前に甲に届け出る。
第8条(火災保険・損害保険) 乙は、自己が保管する物品について、乙の費用負担で適切な損害保険(動産総合保険等)を付保するものとし、甲は本物件建物についてのみ火災保険を付保する。
第9条(原状回復) 乙は、本契約終了時、自己の費用で保管物品及び乙が設置した棚・什器等を撤去し、本物件を原状に回復して甲に明け渡す。
第10条(解除) 甲は、乙が第5条又は第6条に違反したとき、賃料の支払を【 】か月分以上怠ったときは、催告のうえ本契約を解除することができる。
第11条(協議事項) 本契約に定めのない事項は、甲乙誠実に協議して定める。
以上、本契約締結の証として本書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各1通を保有する。
【締結日】
甲: 【住所】 【氏名・名称】 印 乙: 【住所】 【氏名・名称】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 貸主向け(複数荷主が同一倉庫を区画利用する場合)
A-1 第1条・第5条への追加例 「本物件は、甲が管理する倉庫のうち乙に割り当てられた区画【区画番号】に限るものとし、乙は共用通路及び荷捌きスペースを他の入居事業者と共同で使用する。床荷重・危険物保管の制限は区画ごとに適用する。」 一言解説: 大型物流施設の一部区画を賃貸する場合、共用部分と専用区画を明確に区別し、区画単位での使用制限を明記することでトラブルを防止できる。
B節: 借主(荷主)向け(第三者物流会社に運営委託する場合)
B-1 第7条への追加例 「乙は、本物件における荷役・在庫管理業務を第三者物流会社【物流会社名】に委託することができる。この場合、乙は当該委託先が本契約の使用条件を遵守するよう監督する責任を負う。」 一言解説: 荷主企業が3PL(サードパーティロジスティクス)に運営を委託する場合、賃借人としての義務履行を委託先にも及ぼす監督責任条項を設けておくことが望ましい。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、物流倉庫や資材置場として建物又はその一部区画を賃貸する場面で使用する。荷主が物品の保管そのものを貸主(倉庫業者)に委ねる、いわゆる寄託契約(トランクルームの一部業態や倉庫業者による保管サービス)とは法的性質が異なるため、両者を混同しないよう注意が必要である。
根拠法令は、賃貸借としての民法第601条を基本としつつ、寄託契約に関する民法第657条以下との区別が実務上重要である。賃貸借は借主が目的物を占有し自ら使用・保管するのに対し、寄託は受寄者(貸主側)が物の保管を引き受け善管注意義務(民法第400条、寄託の場合は原則として無償寄託であれば自己の財産に対するのと同一の注意)を負う点で異なる。倉庫業者が「倉庫業法」に基づく倉庫証券を発行して物品を保管する場合は寄託・倉荷証券の規律が及ぶため、単純な賃貸借であることを契約書上明確にしておく必要がある(第2条)。また、危険物や指定可燃物の保管については消防法第9条の4・第10条に基づく届出・許可義務があり、床荷重超過は建築基準法上の構造安全性にも関わるため、賃貸借契約においても遵守事項として明記することが望ましい。
実務でよくある失敗の一つ目は、契約類型が賃貸借か寄託かを曖昧にしたまま契約書を作成し、物品の滅失・毀損時の責任の所在(借主の自己管理責任か、貸主の保管責任か)が不明確になることである。第2条のように法的性質を明記し、貸主が物品自体の保管責任を負わないことを明確にする必要がある。
二つ目の失敗は、床荷重の上限や危険物保管の制限を口頭確認のみで済ませ、契約書に具体的な数値や品目を明記しないことである。床荷重超過は建物の構造安全性に直結する重大なリスクであるため、第5条のように数値基準を明記し、超過した場合の責任(是正費用・損害賠償)も定めておく必要がある。
三つ目の失敗は、消防法上の届出義務の主体を明確にせず、貸主・借主のいずれが届出を行うべきか不明のまま保管を開始し、無届けの状態が発覚して行政指導を受けることである。第6条のように届出義務の主体を借主とし、貸主は建物側の消防設備維持管理を担う役割分担を明記することが有効である。
倉庫業法の適用の有無(倉庫業登録を要する保管サービスに該当するか)や、危険物・指定可燃物の数量基準については、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 契約の法的性質が賃貸借であり寄託ではないことを明記したか
- [ ] 床荷重の上限を数値で明記し、超過時の責任を定めたか
- [ ] 危険物・指定可燃物の保管制限と消防法上の届出義務の主体を明確にしたか
- [ ] 建築基準法上の用途・構造制限に適合する使用となっているか確認したか
- [ ] 荷役機械の使用に関する資格・点検要件を確認したか
- [ ] 搬入出時間帯とその例外手続を定めたか
- [ ] 保管物品の損害保険(動産総合保険等)の付保責任を明記したか
- [ ] 共用部分と専用区画の範囲を明確にしたか(区画賃貸の場合)
- [ ] 第三者物流会社への運営委託時の監督責任を定めたか
- [ ] 原状回復の範囲(棚・什器の撤去等)を明記したか