権利を侵害する投稿の削除をサイト管理者へ求める書面で、プロバイダ責任制限法を引き継ぐ情報流通プラットフォーム対処法に基づきます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
送信防止措置依頼書
第1部: 書式本文
送信防止措置依頼書は、情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)が定める発信者への意見照会手続を経て、サイト管理者・コンテンツプロバイダに投稿の削除(送信防止措置)を求める書面である。実務では通称「テレサ書式」「ガイドライン等検討協議会モデル書式」と呼ばれる定型フォーマットが広く用いられており、以下の項目で構成される。プロバイダはこの依頼書を受理すると、原則として発信者に対し意見照会を行い、発信者が削除に同意するか、一定期間内に応答しない場合等に送信防止措置を検討する運用となっているため、依頼書の記載の正確性が手続の速さと結果を大きく左右する。
- 宛先: 【対象サイト運営者/コンテンツプロバイダの名称】御中
- 差出人: 権利を侵害されたと主張する者の氏名又は名称、住所、連絡先(法人の場合は代表者名)
- 作成日: 【依頼書作成年月日】
- 対象コンテンツの特定: 掲載URL、投稿日時、投稿ID・スレッド番号、該当箇所の引用(該当部分に下線又は囲み)
- 権利侵害の類型: 名誉毀損、プライバシー侵害、著作権侵害等いずれに該当するかを明示
- 権利が侵害されたとする理由: 摘示事実の存在、社会的評価の低下、公然性、違法性阻却事由の不存在等を具体的事実に即して記載
- 法的根拠: 民法第709条、第710条(不法行為・名誉毀損による損害賠償)、情報流通プラットフォーム対処法第3条の2に基づく発信者に対する意見照会の実施を求める旨
- 送信防止措置を必要とする理由: 放置により被害が拡大するおそれがある旨の具体的説明
- 発信者への意見照会に関する承諾事項: 依頼者の氏名等を発信者に示すことへの同意又は不同意の別
- 添付資料: 該当ページのスクリーンショット、本人確認資料の写し
- 回答期限: 発信到達後【7】日以内(発信者からの意見照会に対する回答期間を踏まえた設定)
- 末尾文言: 「期限内に送信防止措置が講じられない場合、法的措置を検討する」旨の留保文言
- 連絡先: 郵送先、メールアドレス、電話番号
- 本人確認方法への同意: 依頼者が個人の場合、運転免許証等の写しの提示に応じる旨
- プライバシー侵害の場合の補足事項: 私生活上の事実が公表され一般人の感受性を基準として公開を欲しないと認められる事情の説明
- 著作権侵害の場合の補足事項: 著作物性、権利者であることの疎明資料(登録証、公表物の写し等)の添付
依頼書は書留郵便、内容証明郵便、又はサイトが指定するオンライン専用フォームのいずれかで送付するのが一般的であり、後日の紛争に備えて送付記録を保存しておくことが望ましい。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 削除を求める側の書き換え
「本件投稿は、私に関する社会的評価を低下させる具体的事実を摘示するものであり、その内容は真実でなく、かつ公共の利害に関する事実に係るものとも認められません。」
一言解説: 名誉毀損の要件(事実摘示性・公然性・社会的評価の低下)と違法性阻却事由の不存在を同時に主張し、貴社側の削除判断を後押しする書き方にする。
「本依頼書の送付をもって、私の氏名及び連絡先を発信者に開示することについて【同意する/同意しない】ものとします。」
一言解説: 意見照会時の情報開示への諾否を明記しないと手続が停滞するため、必須記載事項として明示する。
B. サイト管理者・プロバイダ側の書き換え
「貴殿からのご依頼に基づき、情報流通プラットフォーム対処法第3条の2の規定に従い発信者に対する意見照会を実施いたします。回答期限は発信後7日を目安とし、期限内に発信者から削除への同意が得られない場合は、権利侵害の明白性を当社にて改めて判断いたします。」
一言解説: プロバイダは意見照会を経ずに独自の裁量のみで削除すると発信者から損害賠償請求を受けるリスクがあるため、手続の履践を明示する。
「本件については、権利侵害が明白であるとは認められないため、送信防止措置を見合わせます。追加の疎明資料がある場合はご提出ください。」
一言解説: 明白性の要件を満たさない場合の留保回答文例。安易な削除応諾は表現の自由との関係で別の紛争を招くため、判断の根拠を示す。
「発信者より、貴殿への削除同意の回答期限である7日を経過しても意見の到達が確認できませんでした。この場合、当社所定の基準に照らし送信防止措置を実施いたします。」
一言解説: 発信者不応答の場合の取扱いを事前に明示しておくことで、削除の可否をめぐる二次紛争を防止する趣旨の条項。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、匿名掲示板・SNS・レビューサイト等における権利侵害投稿について、プロバイダに対し裁判外で削除を求める場面で使用する。他方、投稿者(発信者)本人が判明しておらず発信者情報開示請求を先行させたい場合や、既に訴訟が係属している場合には、本書式単独ではなく発信者情報開示命令の申立てや仮処分の申立てと併用を検討する必要がある。
根拠法令は、情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法、令和6年改正で名称・条文番号が整理された)第3条の2(発信者に対する意見照会)、民法第709条(不法行為による損害賠償)及び第710条(名誉毀損に対する慰謝料請求)である。プロバイダが送信防止措置を講じるためには、権利侵害の明白性が求められる点が実務上の最大のハードルとなる。
実務でよくある失敗として、第一に、対象投稿のURLや投稿日時を特定せずに送付し、プロバイダから「対象特定不能」として処理保留とされる例がある。対策として、本書式第1部4項のとおりURL・投稿ID・スクリーンショットを必ず添付する。第二に、権利侵害の理由を「不快である」といった主観的表現にとどめ、名誉毀損の要件(事実摘示・社会的評価の低下・違法性阻却事由の不存在)を法的に整理せずに送付し、明白性なしとして削除が見送られる例がある。対策として第1部6項の記載を具体的事実に即して構成する。第三に、発信者への意見照会に対する情報開示の諾否を明記せず、プロバイダ側での照会実務が停滞する例があるため、第2部Aの同意条項を必ず記載する。第四に、意見照会の結果発信者が「正当な論評である」等と反論した場合の再反論の準備を怠り、削除見送りの通知を受けて手続が頓挫する例がある。この場合は発信者情報開示請求や損害賠償請求訴訟など、次の法的手段への移行を早期に検討する必要がある。個別の投稿の権利侵害該当性や証拠の十分性については、事案ごとに弁護士等の専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 対象投稿のURL、投稿日時、投稿IDを正確に特定したか
- [ ] 該当箇所のスクリーンショットを取得し、URLと取得日時が写り込んでいるか
- [ ] 権利侵害の類型(名誉毀損・プライバシー侵害・著作権侵害等)を明確にしたか
- [ ] 摘示事実の真実性・相当性の有無を確認したか
- [ ] 発信者への氏名等開示についての同意・不同意を明記したか
- [ ] 回答期限を具体的な日数で設定したか
- [ ] 差出人の本人確認資料を準備したか
- [ ] 送付先(郵送・メール・専用フォーム)がサイト運営者の定める窓口と一致しているか
- [ ] 発信者情報開示請求を別途検討する必要がないか確認したか
- [ ] 記載内容が事実に基づき、誇張や断定的な違法性判断を含んでいないか