家庭裁判所へ相続放棄を申述した事実を他の相続人や債権者へ知らせる書式。民法第915条の熟慮期間と家事事件手続法の申述手続を前提とします。

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相続放棄の申述に関する通知書

第1部: 書式本文

〇〇〇〇(以下「通知人」という。)は、被相続人〇〇〇〇(以下「被相続人」という。)の相続について、家庭裁判所に対し相続放棄の申述を行った事実を、下記のとおり通知する。

第1条(通知の目的) 本書は、通知人が被相続人の相続に関し、民法第938条に定める相続放棄の申述を〇〇家庭裁判所に対して行い、同裁判所から受理された事実を、他の相続人及び被相続人に対する債権者に周知することを目的とする。

第2条(被相続人の表示) 被相続人の氏名、最後の住所、本籍及び死亡日は、別紙のとおりとする。

第3条(相続放棄の申述及び受理) 1. 通知人は、被相続人の死亡の事実及び自己が相続人となったことを知った日から民法第915条第1項に定める3か月の熟慮期間内である【申述日】に、〇〇家庭裁判所に相続放棄の申述をした。 2. 同裁判所は【受理日】付で当該申述を受理し、受理通知書及び受理証明書を発行した。受理証明書の写しを本書に添付する。

第4条(相続放棄の効果) 民法第939条により、通知人は被相続人の相続に関し、初めから相続人とならなかったものとみなされる。したがって、通知人は被相続人の積極財産を取得する権利を有さず、消極財産(債務)についても弁済の責任を負わない。

第5条(他の相続人への通知) 通知人の相続放棄により、民法第887条及び第889条の規定に基づき後順位相続人が新たに相続人となる場合がある。当該後順位相続人は、自己が相続人となったことを知った時から改めて熟慮期間が起算されるため、通知人は速やかにその旨を通知する。

第6条(債権者への通知) 被相続人に対する債権者は、通知人に対して被相続人の債務の履行を請求することができない。債権者は、他の相続人又は限定承認若しくは相続財産の清算手続に従い権利を行使するものとする。

第7条(相続財産の管理に関する留意) 民法第940条により、通知人は相続放棄をした後も、次順位の相続人又は相続財産清算人が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を保存しなければならない。通知人が現に占有する財産がある場合はその旨を付記する。

第8条(添付書類) 本書には、相続放棄申述受理通知書の写し及び受理証明書の写しを添付する。

第9条(問い合わせ先) 本書の内容に関する問い合わせは、【通知人の連絡先】まで受け付ける。

【通知日】

通知人: 【住所・氏名】 印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 放棄した相続人向けの修正

A-1. 占有財産の引継ぎに関する条項追加

追加条文例:「通知人は、被相続人の遺品のうち通知人が現に保管する【財産の内容】について、次順位相続人又は相続財産清算人の指定する方法により、【引渡期限】までに引き渡す。」 一言解説: 放棄した相続人には民法第940条の保存義務が残るため、遺品の引継ぎ方法と期限を明記し、管理責任の所在を早期に切り離す修正である。

B. 他の相続人向けの修正

B-1. 後順位相続人としての熟慮期間起算の確認

追加条文例:「本通知を受領した相続人は、自己が相続人となったことを知った日を【通知受領日】と扱い、当該日から民法第915条第1項の熟慮期間が起算されることを確認する。」 一言解説: 後順位相続人が相続放棄や限定承認を検討する期間の起算点を明確にし、後日の紛争を防ぐための確認条項である。

C. 債権者向けの修正

C-1. 請求先変更の明示

修正後:「債権者は、本通知の到達をもって通知人に対する請求権を行使できないことを認識するものとし、以後の履行請求は他の相続人又は相続財産清算人に対して行う。」 一言解説: 債権者が誤って放棄済みの相続人に督促を続けることを防ぐため、請求先の変更を明確に伝える修正である。

C-2. 相続財産清算人選任手続への言及

追加条文例:「相続人の全員が相続放棄をした場合、被相続人に対する債権者は、民法第952条に基づき家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てることができる。通知人は、その申立てに必要な限度で本通知及び受理証明書の写しの提出に協力する。」 一言解説: 全相続人が放棄したケースでは債権者の回収手段が相続財産清算人の選任申立てに限定されるため、その手続への協力を明記し債権者の予見可能性を高める修正である。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、家庭裁判所に相続放棄の申述をし受理された後、他の相続人や被相続人の債権者に対してその事実を任意に知らせる場面で用いる。相続放棄そのものの効力は家庭裁判所の受理により生じるものであり、本書式の送付自体が放棄の効力要件ではない点に注意が必要である。逆に、まだ申述を行っていない段階や、熟慮期間の伸長を申し立てたい場合には、本書式を用いるべきではなく、家庭裁判所への申立書式を先に整える必要がある。

根拠法令 相続放棄については、民法第915条第1項が自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に放棄をすべき旨を定め、同法第938条が家庭裁判所への申述という方式を要求している。申述が受理されると、同法第939条により初めから相続人とならなかったものとみなされ、遡及的に相続資格を失う。また、放棄後も相続財産の管理に関する義務が同法第940条に定められており、次順位相続人等が管理を始められるまで保存義務を負う点は見落とされやすい。手続面では家事事件手続法第201条以下が相続放棄の申述受理の審判手続を規律している。

実務でよくある失敗と対策 第一に、相続放棄をした事実を他の相続人や債権者に伝えないまま放置し、後順位相続人が知らないうちに熟慮期間を徒過してしまう失敗がある。第5条及びB-1のように、後順位相続人への通知と熟慮期間起算点の明示を行うことが対策となる。第二に、放棄後も被相続人名義の不動産や動産を事実上管理し続けているにもかかわらず、その管理責任の範囲や引継ぎ方法を明確にせず、後日の毀損・滅失について責任を問われる失敗がある。A-1のように占有財産の引継ぎ条項を設けることが対策となる。第三に、債権者からの督促が放棄後も継続し、通知人が誤って弁済してしまう失敗がある。C-1のように請求先の変更を明示することが対策となる。

相続放棄の有効性は熟慮期間の起算点や単純承認とみなされる行為(民法第921条)の有無によって左右されるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。また、相続人の全員が相続放棄をした場合には相続財産が法人となる場合があり(民法第951条)、債権者は家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てて回収を図ることになるため、通知人としてもその後の手続の見通しについて理解しておくことが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 家庭裁判所への相続放棄申述が受理されたことを受理通知書等で確認したか
  • [ ] 熟慮期間(民法第915条第1項)の起算日と申述日の関係を確認したか
  • [ ] 受理証明書の写しを添付したか
  • [ ] 通知先となる他の相続人及び後順位相続人を漏れなくリストアップしたか
  • [ ] 後順位相続人の熟慮期間起算点について記載したか
  • [ ] 被相続人に対する債権者の連絡先を把握しているか
  • [ ] 放棄後も現に保管している相続財産の有無と引継ぎ方法を確認したか
  • [ ] 単純承認とみなされる行為(民法第921条)をしていないか確認したか
  • [ ] 通知の送付方法(内容証明郵便等)を検討したか
  • [ ] 通知人の連絡先を明記したか