遺言作成や遺産分割の前提として被相続人の資産負債を一覧化する書式。民法第968条第2項の別紙目録や第1011条の作成義務にも対応します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
財産目録
第1部: 書式本文
被相続人(遺言者)〇〇〇〇の財産目録は、下記のとおりである。
第1条(本目録の位置付け) 本目録は、【遺言者が自筆証書遺言に添付する目録として作成する場合/相続開始後に相続人又は遺言執行者が遺産の内容を確定するために作成する場合】に用いるものであり、下記の記載項目に従って作成する。
第2条(不動産) 1. 土地: 所在、地番、地目、地積を記載する。 2. 建物: 所在、家屋番号、種類、構造、床面積を記載する。 3. 各不動産について、固定資産評価額及び登記上の権利関係(抵当権等の担保権の有無)を付記する。
第3条(預貯金) 金融機関名、支店名、口座種別、口座番号及び【基準日(死亡日等)】時点の残高を記載する。
第4条(有価証券) 銘柄、証券会社名・口座番号、数量及び【基準日】時点の評価額を記載する。上場株式は終値、非上場株式は算定方法(純資産価額方式等)を付記する。
第5条(動産) 自動車、貴金属、美術品その他の主要な動産について、品目、数量及び推定評価額を記載する。
第6条(生命保険金・死亡退職金) 保険会社名、証券番号、受取人及び保険金額を記載する。生命保険金は原則として受取人固有の財産であり遺産に含まれない点に留意し、その旨を注記する。
第7条(負債) 借入先、借入残高、担保の有無、保証債務の有無を記載する。連帯保証債務がある場合は主債務者及び保証極度額を付記する。
第8条(その他の財産) 賃借権、ゴルフ会員権、知的財産権その他前各条に含まれない財産があれば記載する。
第9条(評価基準日及び評価方法) 各財産の評価基準日は【基準日】とし、評価方法(固定資産税評価額、路線価、時価鑑定等)を財産の種類ごとに明記する。
第10条(作成者及び作成の経緯) 本目録は【作成者(本人・相続人・遺言執行者)】が【資料の根拠(通帳、登記事項証明書、残高証明書等)】に基づき作成したものである。
【作成日】
作成者: 【住所・氏名】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 遺言者・被相続人側向けの修正
A-1. 自筆証書遺言の別紙目録としての様式調整
修正後:「本目録は民法第968条第2項に基づき自筆証書遺言に添付する別紙目録として作成するものであり、遺言者は各頁に署名押印する。本目録自体は自書によらず、パソコンでの作成又は通帳の写しの添付によることができる。」 一言解説: 平成30年民法改正により自筆証書遺言の目録部分は自書が不要となったため、遺言者側は各頁への署名押印の要否を明記し方式違反を防ぐ修正を行う。
B. 相続人向けの修正
B-1. 遺産分割協議のための評価額確定条項
追加条文例:「本目録記載の評価額は、共同相続人〇名全員の確認を経て、遺産分割協議における各財産の評価額として採用する。異議のある相続人は【異議申出期限】までに書面で申し出るものとする。」 一言解説: 相続人が複数いる場合、目録の評価額が分割協議の前提となるため、評価額の確定手続と異議申出の機会を明記する修正である。
C. 遺言執行者向けの修正
C-1. 財産目録作成義務の履行としての整理
追加条文例:「遺言執行者は、民法第1011条第1項に基づき、就任後遅滞なく本目録を作成し、相続人全員に交付する。」 一言解説: 遺言執行者には就任後の財産目録作成・交付義務が法定されているため、その履行として本目録を位置付け、交付先と時期を明確にする修正である。
C-2. 相続人立会いによる目録作成の申出対応
追加条文例:「相続人から民法第1011条第2項に基づく目録作成への立会いの請求があった場合、遺言執行者は【立会い日時】を指定して立会いの機会を設け、又は公証人による目録作成に切り替える。」 一言解説: 相続人には遺言執行者による目録作成に立ち会う権利、又は公証人に作成させることを求める権利があるため、その行使方法を遺言執行者側であらかじめ手続化しておく修正である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、自筆証書遺言に添付する財産目録を作成する場面、遺産分割協議の前提として相続人が遺産の全体像を把握する場面、及び遺言執行者が就任後に相続人へ財産状況を報告する場面のいずれにも用いることができる。ただし、遺言そのものの効力を生じさせる本文(誰にどの財産を相続させるかの記載)は財産目録には含まれず、別途遺言書本文で定める必要がある点に注意する。また、相続税申告のための財産評価には、本目録とは別に相続税法上の評価基準(路線価方式等)に従った専門的な評価が必要となる場合が多い。
根拠法令 自筆証書遺言における目録については、民法第968条第2項が、目録を添付する場合には自書を要しないが、目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合は両面)に署名押印しなければならない旨を定めている。遺言執行者による財産目録の作成・交付義務については、民法第1011条第1項が就任後遅滞なく相続財産の目録を作成し相続人に交付すべき旨を定め、同条第2項では相続人の請求があるときは目録作成に立ち会わせ、又は公証人に目録を作成させることを求めることができる旨を定めている。相続人が複数いる場合の遺産の範囲・評価額の確定は、民法第906条以下の遺産分割の規定に関連する。
実務でよくある失敗と対策 第一に、自筆証書遺言に添付する目録において、自書によらない記載であるにもかかわらず各頁への署名押印を怠り、方式違反として当該目録部分が無効と判断されるおそれがある失敗がある。A-1のように署名押印の要否を明記することが対策となる。第二に、財産目録の評価額を作成者が独断で決め、他の相続人から評価が恣意的であるとの異議が出て協議が停滞する失敗がある。B-1のように評価額確定の手続と異議申出の機会を設けることが対策となる。第三に、生命保険金や死亡退職金を遺産に含めて記載してしまい、遺産分割の対象財産の範囲を誤認する失敗がある。第6条のように受取人固有の財産である旨を注記することが対策となる。
財産評価の方法や遺産の範囲の判断は財産の種類によって専門知識を要するため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。特に非上場株式や賃貸不動産のように評価方法が複数存在する財産については、目録作成の段階でどの評価方法を採用したかを明記しておかないと、後の遺産分割協議や相続税申告の場面で評価額の妥当性が争われやすい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 本目録の作成目的(遺言添付用・遺産分割協議用・遺言執行報告用)を明確にしたか
- [ ] 不動産の登記事項証明書・固定資産評価証明書を確認したか
- [ ] 預貯金の残高証明書を金融機関から取得したか
- [ ] 有価証券の評価基準日と評価方法を統一したか
- [ ] 生命保険金・死亡退職金が遺産に含まれない旨を注記したか
- [ ] 負債・保証債務の有無と金額を確認したか
- [ ] 自筆証書遺言添付用の場合、各頁の署名押印(民法第968条第2項)を行ったか
- [ ] 遺言執行者作成の場合、相続人への交付方法及び時期を確認したか
- [ ] 評価額に対する相続人からの異議申出手続を定めたか
- [ ] 相続税申告に必要な追加評価資料の要否を確認したか