相続人のあることが明らかでない場合に清算人の選任を求める申立書です。申立ての利害関係、予納金、公告手続を整理します。記載例と注記を添えており、初めての担当者でも作成できます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
相続財産清算人選任申立書
第1部: 書式本文
相続財産清算人選任申立書
【令和〇年〇月〇日】
【〇〇家庭裁判所】 御中
申立人 【住所】 【氏名】 印 (連絡先電話番号:【 】)
被相続人の表示 本籍 【 】 最後の住所 【 】 氏名 【 】(令和〇年〇月〇日死亡)
申立ての趣旨 被相続人【氏名】の相続財産の清算人として、適任者の選任を求める。
申立ての理由 1. 被相続人は令和〇年〇月〇日に死亡したが、戸籍等の調査によっても相続人の存在が明らかでない。 2. 申立人は被相続人に対し【金〇〇万円の貸付金債権/その他の権利関係】を有する利害関係人であり、民法951条により法人とみなされた相続財産について、同法952条1項に基づき清算人の選任を求める必要がある。 3. 被相続人の相続財産の概要は別紙財産目録記載のとおりであり、清算人による管理・換価・弁済の手続を要する状態にある。 4. 申立人は、家事事件手続法203条及び別表第一の90項に基づき本申立てに及ぶ。
添付書類 一 被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本一式 二 被相続人の父母・兄弟姉妹等の代襲者を含めた相続人不存在を示す戸籍謄本一式 三 被相続人の住民票除票又は戸籍附票 四 財産目録及びその裏付資料(不動産登記事項証明書、預貯金残高証明書等) 五 申立人の利害関係を証する資料(金銭消費貸借契約書写し等) 六 利害関係人の場合は資格を証する書面
予納金に関する上申 本申立てに際し、清算人の報酬及び相続財産管理費用に充てるため、家庭裁判所の定める予納金【金〇〇万円】を予納する予定である。予納金額は事案の規模及び管理すべき財産の内容により裁判所が個別に指定するため、申立人は事前に管轄裁判所へ照会の上、指示された金額を予納する。
公告手続に関する説明 選任後、家庭裁判所は民法952条2項に基づき相続財産清算人選任の公告を行い、あわせて同法957条1項に基づき6か月を下らない期間を定めて相続債権者及び受遺者に対する請求申出の公告を行う。これらの公告期間が満了した後もなお相続人が判明しないときは、民法958条の2に基づく特別縁故者に対する財産分与の手続へと移行し得る。
清算人の権限に関する説明 選任された相続財産清算人は、民法953条により不在者財産管理人に関する規定(民法27条から29条まで)が準用され、保存行為及び財産の性質を変えない範囲の利用・改良行為を超える処分(不動産の売却等)を行う場合には、家庭裁判所の権限外行為許可を別途得る必要がある。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 利害関係人(相続債権者)として申し立てる場合 被相続人に対する貸付金や未払い代金等の債権を有する申立人は、「申立ての理由」第2項を次のように具体化する。 「申立人は被相続人との間で令和〇年〇月〇日締結の金銭消費貸借契約に基づき、元金【金〇〇万円】及び約定利息の返還請求権を有する債権者であり、被相続人の相続財産から回収を図るため清算人の選任を求める。」 一言解説:債権の発生原因・金額・弁済期を具体的に記載し、契約書等の裏付資料を必ず添付することで利害関係の疎明を確実にする。
B. 検察官が職権発動を促す場合(申立人ではなく報告書形式となる場合の留意) 検察官は職権による申立てが可能な立場にあるが、実務上は市区町村長等からの情報提供を受けて対応することが多い。申立書ではなく上申書・報告書形式となることが一般的であるため、本書式を利用する場合は「申立ての趣旨」を「相続財産清算人選任の職権発動を上申する」に置き換え、財産の放置による公益上の弊害(管理不全の空き家化、固定資産税の滞納等)を具体的に記載する。 一言解説:検察官関与の事案では公益性の説明が中心となるため、私的な債権回収目的とは記載の重心が異なる点に注意する。
C. 家庭裁判所への事前照会を前提とした場合 申立て前に管轄裁判所の家事係へ電話等で事前相談を行う運用が定着している庁が多い。本文中の「予納金に関する上申」の箇所に、次の一文を追加する。 「なお、申立人は令和〇年〇月〇日、〇〇家庭裁判所家事係に対し本件申立てに関する事前相談を行い、必要書類及び予納金の目安について指示を受けた。」 一言解説:事前相談の記録を残しておくことで、書類の不備による差戻しリスクを低減できる。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面:戸籍調査を尽くしても相続人の存在が判明しない、又は相続人全員が相続放棄をして相続人が不存在となった場合に、相続財産を清算し債権者への弁済や特別縁故者への分与、最終的な国庫帰属までの手続を進める必要があるときに用いる。単に相続人の所在が不明であるにすぎない場合(相続人自体は存在する)は、後述の不在者財産管理人選任申立てが対応する制度であり、本書式は適用場面が異なる点に注意する。
使ってはいけない場面:相続人の存在が戸籍上明らかであるにもかかわらず単に連絡が取れないだけの場合や、遺言執行者が既に選任されており清算人の関与が不要な場合には用いるべきではない。
根拠法令:民法951条(相続財産法人の成立)、952条(相続財産清算人の選任及び公告、令和3年民法改正により令和5年4月1日施行で「相続財産管理人」から名称変更)、953条(不在者財産管理人規定の準用)、957条(相続債権者・受遺者への請求申出の公告、6か月以上の期間指定)、958条の2(特別縁故者に対する財産分与)。手続法上は家事事件手続法203条及び別表第一90項に規定がある。
よくある失敗と条項上の対策: 第一に、予納金の見込みを誤って記載し、裁判所の指示額と齟齬が生じるケースがある。対策として、申立書には確定額を記載せず「裁判所の定める額を予納する」旨の記載に留め、実際の金額は事前照会で確認する運用とする。 第二に、清算人選任後に不動産売却等の権限外行為を清算人が独断で行ってしまう例がある。対策として、清算人への説明文書に民法28条の準用に基づく権限外行為許可の要否を明記し、処分行為前に必ず裁判所の許可を得るよう注意喚起の条項を設ける。 第三に、公告期間の起算日を誤認し、6か月の請求申出期間の満了前に弁済を実行してしまう失敗がある。対策として、書式内に公告の掲載日及び満了日を明記する欄を設け、期間管理を徹底する。
第四に、財産目録の記載が不十分で、清算人が就任後に想定外の負債(連帯保証債務や税金の滞納等)を発見し、清算手続が長期化する例も見られる。対策として、申立時点で判明している範囲でよいので、消極財産(借入金、未払税金、未払家賃等)についても可能な限り財産目録に記載し、清算人が早期に全体像を把握できるようにする。
また、相続財産清算人選任の申立てから清算手続の完了(国庫帰属又は特別縁故者への分与)までは、公告期間だけでも合計10か月前後を要するのが通常であり、短期間での解決を期待して申し立てると当事者間の認識にずれが生じやすい。申立人には、手続全体のスケジュール感(選任、公告、権限外行為許可、清算、残余財産の処理という各段階)をあらかじめ説明しておくことが望ましい。
なお、本書式はあくまで一般的な記載例であり、財産構成や相続人不存在に至る経緯は事案ごとに大きく異なる。個別事案については専門家(弁護士・司法書士等)に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式が揃っているか
- [ ] 相続人不存在を示す戸籍調査(父母・兄弟姉妹・代襲者を含む)が完了しているか
- [ ] 申立人の利害関係(債権の発生原因・金額)を裏付ける資料があるか
- [ ] 財産目録に不動産・預貯金・有価証券等の主要財産が網羅されているか
- [ ] 予納金の目安について管轄家庭裁判所へ事前照会を行ったか
- [ ] 「相続財産管理人」ではなく「相続財産清算人」という現行の名称を使用しているか
- [ ] 民法952条以下の公告手続の流れを申立人が理解しているか
- [ ] 清算人の権限外行為許可(民法28条準用)に関する説明を記載したか
- [ ] 添付書類の原本還付を希望する場合はその旨の申出をしているか
- [ ] 管轄家庭裁判所(被相続人の最後の住所地)を正しく確認しているか
- [ ] 押印・署名及び連絡先の記載に不備がないか
- [ ] 特別縁故者による財産分与申立ての可能性がある場合、その関係者への影響を検討したか