障害発生時や計画停止を利用者へ知らせる文例集。約款上の免責と民法第415条の債務不履行責任を意識し、原因・影響範囲・再発防止策を簡潔に伝える。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
システム利用者向け障害・メンテナンス告知文例
第1部: 書式本文
本書式は契約書ではなく、システム障害の発生時及び計画メンテナンス実施時に利用者へ配信する告知文の文例集である。各文例の【 】部分に具体的な状況を記入して使用する。
文例1: 計画メンテナンスの事前告知(2週間前) 件名: 【サービス名】メンテナンスのお知らせ(【実施日】) 本文: 平素より【サービス名】をご利用いただきありがとうございます。下記日程にてシステムメンテナンスを実施いたします。メンテナンス中は本サービスをご利用いただけませんので、あらかじめご了承ください。 実施日時: 【 年 月 日 時 分】から【 年 月 日 時 分】まで(所要時間目安【 】時間) 対象範囲: 【全機能/特定機能名】 ご不便をおかけいたしますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
文例2: 計画メンテナンスの前日リマインド 件名: 【明日実施】【サービス名】メンテナンスのお知らせ 本文: 明日【実施日】、下記のとおりメンテナンスを実施いたします。実施中はログイン及びデータの保存ができなくなりますので、作業中のデータは事前に保存をお願いいたします。 実施時間: 【 時 分】~【 時 分】(状況により前後する場合がございます)
文例3: 緊急障害の第一報(原因未特定) 件名: 【障害発生】【サービス名】の一部機能に不具合が発生しています 本文: 現在、【 年 月 日 時 分】頃より【サービス名】において【現象(例: ログインできない、画面が表示されない等)】の事象を確認しております。現在原因を調査中です。復旧の見込みが判明次第、あらためてご案内いたします。ご迷惑をおかけし誠に申し訳ございません。
文例4: 障害の続報(影響範囲・原因判明時) 件名: 【続報】【サービス名】の障害について 本文: 【 年 月 日 時 分】頃より発生しております障害について、現時点で判明している状況をご案内いたします。 影響範囲: 【対象機能・対象ユーザー範囲】 発生原因: 【判明している範囲での原因(調査中の場合はその旨)】 現在の対応状況: 【 】 引き続き復旧作業を進めております。今後の見通しが判明次第、改めてご連絡いたします。
文例5: 復旧完了の報告 件名: 【復旧】【サービス名】の障害復旧のお知らせ 本文: 【 年 月 日 時 分】頃より発生しておりました【現象】について、【 年 月 日 時 分】に復旧いたしましたことをご報告いたします。ご利用の皆様には大変ご不便・ご迷惑をおかけいたしましたことを深くお詫び申し上げます。 発生期間: 【 年 月 日 時 分】~【 年 月 日 時 分】 影響範囲: 【対象機能・対象ユーザー範囲】 原因の概要: 【判明している範囲での原因】 再発防止策: 【実施予定又は実施済みの対策】
文例6: データ影響が疑われる場合の告知 件名: 【重要】【サービス名】の障害に伴うデータへの影響について 本文: 【 年 月 日】に発生した障害に関連し、【対象期間】にご登録・ご入力いただいたデータの一部について【欠落/重複/不整合】が生じている可能性があることが判明いたしました。対象となる可能性のあるお客様には個別にご連絡のうえ、データの確認方法をご案内いたします。ご自身のデータに影響がないかご確認いただきたい場合は、【問い合わせ窓口】までご連絡ください。
文例7: 緊急メンテナンス(事前告知が困難な場合)の告知 件名: 【緊急】【サービス名】緊急メンテナンス実施のお知らせ 本文: システムの安定稼働のため、下記のとおり緊急メンテナンスを実施いたします。実施のご案内が直前となりましたことをお詫び申し上げます。 実施時間: 【 年 月 日 時 分】から【 】時間程度(延長の可能性がございます) 実施理由: 【セキュリティ対応/障害対応等】
文例8: 個別問い合わせへの定型回答文例(カスタマーサポート用) 本文: お問い合わせいただきありがとうございます。ご案内のとおり【 年 月 日】に発生した障害により、ご不便をおかけいたしましたことをお詫び申し上げます。本件による損害の補償につきましては、当社所定の利用規約第【 】条の定めに従い個別に対応させていただきますので、影響を受けた具体的な内容(発生日時、対象データ、想定される損害の内容)を【問い合わせフォーム/メールアドレス】までご連絡ください。担当より確認のうえご連絡いたします。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. サービス提供者向けの修正
A-1. 免責範囲を明記した復旧報告への追記
追加文例:「なお、本障害による損害の取扱いにつきましては、当社利用規約第【 】条(免責事項)の定めに従うものとし、当社の故意又は重過失に基づく場合を除き、当社は間接損害、逸失利益等について責任を負いません。」 一言解説: 復旧報告の中で規約上の免責範囲に触れておくことで、告知文が黙示の損害賠償約束と受け取られることを防ぐ、提供者側の防御的な追記である。
A-2. 原因未確定段階での断定表現の回避
修正後:「現時点の調査では【 】が原因である可能性が高いと考えておりますが、詳細な原因は調査継続中であり、今後の調査により変更となる場合がございます。」 一言解説: 障害の原因を断定的に発表した後に訂正すると信頼を損なうため、続報段階では留保付きの表現にとどめる修正である。
B. カスタマーサポート向けの修正
B-1. 個別損害相談への一次対応の型を明確化
修正後:「恐れ入りますが、個別の損害の有無や金額の算定につきましては、この場でお約束することができかねます。お客様の状況を確認のうえ、担当部署より改めてご連絡させていただきます。」 一言解説: 電話やチャットでの一次対応時に、その場で補償の可否を断言してしまうことを防ぐための定型フレーズである。
B-2. 影響範囲が不明な問い合わせへの案内
追加文例:「お客様の環境で発生している事象が、現在ご案内している障害と同一のものかを確認するため、発生時刻、操作していた機能、表示されたエラーメッセージ(あれば)を教えていただけますでしょうか。」 一言解説: 告知済みの障害と無関係な個別トラブルを混同しないよう、切り分けのための質問項目を定型化したものである。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本文例集は、SaaS等のシステム提供者が計画メンテナンス又は突発的な障害の発生時に、利用者向けに配信する告知文・お知らせの作成に用いる。個別の利用者から損害賠償請求を受けた場合の交渉方針や回答書面の作成には本文例集はそのまま使えず、利用規約の免責条項及び個別の事実関係を踏まえた個別対応が必要である。
根拠法令 システムの提供が有償の役務提供契約又は準委任契約(民法第656条)としての性質を有する場合、提供者が善管注意義務(同法第644条)を怠ってシステムを運用し、これにより利用者に損害が生じたときは、民法第415条の債務不履行に基づく損害賠償責任が問題となり得る。もっとも、多くの利用規約では、通常の運用における不具合について、提供者の故意又は重過失がある場合を除き責任を負わない旨の免責条項が定められており、告知文の記載がこの免責条項の効力に影響を与えないよう、告知文と規約上の文言に矛盾が生じないようにする必要がある。また、告知文中で障害の原因や影響範囲について事実と異なる説明を行うと、後日、景品表示法上の問題や利用者からの信頼失墜につながるおそれがあるため、判明している事実と推測部分を明確に区別して記載することが求められる。
実務でよくある失敗と対策 第一に、障害発生直後に原因を断定的に発表してしまい、後の調査で異なる原因が判明した際に訂正が必要となり、利用者の不信を招く失敗がある。A-2のように、続報段階では留保付きの表現を用いることが対策となる。第二に、復旧報告の文面が丁重なお詫びに終始し、利用規約上の免責範囲との関係が整理されないまま「補償します」と誤解されるような書きぶりになってしまう失敗がある。A-1のように、免責条項への言及を適切に織り込むことが対策となる。第三に、カスタマーサポート担当者が個別の問い合わせに対しその場で損害賠償の可否や金額を約束してしまい、後で会社としての対応方針と食い違う失敗がある。B-1のような一次対応の定型フレーズを用意し、個別判断を担当部署に委ねる運用にすることが対策となる。
告知文の記載内容が利用規約上の責任制限条項の解釈に影響する場合があるため、重大な障害が発生した際の告知文の最終的な文言については、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] メンテナンス告知は実施日の十分前(目安2週間前)に配信する運用になっているか
- [ ] 緊急障害の第一報は原因未特定であっても速やかに配信する運用になっているか
- [ ] 告知文中で原因を断定する表現を避け、調査中である旨を明記しているか
- [ ] 影響範囲(対象機能・対象ユーザー)を具体的に記載しているか
- [ ] 復旧報告に発生期間・原因概要・再発防止策の3点を含めているか
- [ ] データへの影響が疑われる場合の個別案内フローを用意しているか
- [ ] 告知文の記載が利用規約上の免責条項と矛盾しないか確認したか
- [ ] カスタマーサポートが個別の補償可否をその場で約束しない運用になっているか
- [ ] 問い合わせ窓口・連絡先を告知文に明記しているか
- [ ] 緊急メンテナンス実施時に事前告知が困難であった理由を記載しているか