パートや契約社員から正社員との待遇の違いの理由を求められた場面で交付する書式。パートタイム・有期雇用労働法第14条第2項の説明義務に対応した記載例を収録。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
パート・有期雇用労働者の待遇差説明書
第1部: 書式本文
待遇差説明書
【説明年月日: 西暦〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】
【対象労働者氏名: 〇〇〇〇】殿
【会社名: 株式会社〇〇】 【説明担当者: 部署・役職・氏名】 印
パートタイム・有期雇用労働法第14条第2項の規定に基づき、貴殿から求められた通常の労働者との待遇の相違の内容及び理由について、次のとおり説明いたします。
記
- 説明を求めた労働者の雇用区分: 【パートタイム労働者・有期雇用労働者】
- 比較対象とする通常の労働者の選定: 【職務内容、職務内容及び配置の変更の範囲が貴殿に最も近いと認められる〇〇職の正社員】を比較対象とする。選定理由: 【 】
- 待遇ごとの相違の有無及び内容 (1) 基本給: 【相違の有無・金額差・決定基準の違い】 (2) 賞与: 【相違の有無・支給基準の違い】 (3) 諸手当(役職手当・通勤手当・家族手当等): 【手当ごとの相違の有無】 (4) 福利厚生施設(食堂・休憩室・更衣室等): 【利用の可否の違い】 (5) 教育訓練: 【実施の有無・内容の違い】 (6) 安全管理に関する措置: 【相違の有無】
- 相違の理由 (1) 職務内容の相違: 【業務の内容及び責任の程度の違いを具体的に記載】 (2) 職務内容及び配置の変更範囲の相違: 【転勤・配置転換・昇進の有無等の違いを具体的に記載】 (3) その他の事情: 【労使交渉の経緯、職務給・職能給等の賃金制度の違い等】
- 説明方法: 【資料を交付しての口頭説明・書面のみの交付】
- 本説明を求めたことを理由として、貴殿に不利益な取扱いを行うことはありません(パートタイム・有期雇用労働法第14条第3項)。
- 本説明の内容についてご不明な点がある場合のお問い合わせ窓口: 【部署名・担当者名・連絡先】
以上
【添付資料: 賃金規程抜粋、職務等級表、比較対象労働者の待遇一覧等】
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 会社側(回答作成用)
A-1 第4項(1)の修正例 「比較対象とする正社員は、定期的な配置転換及び時間外労働の要請に応じる義務を負い、店舗運営に関する最終的な意思決定権限を有する店長職である。貴殿は特定の売場の販売業務に従事し、配置転換及び時間外労働の範囲が正社員と異なる。この職務内容及び責任の程度の相違が、基本給及び役職手当の相違の理由である。」 一言解説: 抽象的に「正社員だから」と説明するのではなく、職務内容・責任の程度・異動範囲という具体的な要素に落とし込んで説明することが、パートタイム・有期雇用労働法第14条第2項の説明義務を尽くしたことになる要点である。
A-2 第3項(3)の修正例 「通勤手当については、正社員・パートタイム労働者を問わず、実費相当額を同一の基準で支給しており、待遇の相違はない。」 一言解説: 職務関連性の薄い手当(通勤手当等)については、雇用区分にかかわらず均等に支給していることを明示すると、均衡待遇の観点から説明の説得力が増す。
B節: 従業員側(説明求め用)
B-1 説明を求める書面の文例 「私は、貴社の正社員と比較して、基本給及び賞与に相違があると認識しております。パートタイム・有期雇用労働法第14条第2項に基づき、当該相違の内容及び理由について、書面による説明を求めます。」 一言解説: 説明を求める際は、対象となる待遇項目(基本給、賞与、手当等)を具体的に特定して請求することで、会社側からより具体的な回答を引き出しやすくなる。
B-2 追加質問の文例 「ご説明いただいた比較対象労働者の選定基準について、他に候補となる正社員区分がなかったか、その検討過程を併せてご教示ください。」 一言解説: 比較対象の選定が恣意的でないかを確認するため、選定過程についても説明を求めることができる。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式を使用すべき場面は、パートタイム労働者又は有期雇用労働者から、通常の労働者(いわゆる正社員)との間の待遇の相違の内容及び理由について説明を求められた場面、又は労働者側からそのような説明を求める場面である。本書式を使用してはならない場面、あるいは使用しても説明義務を尽くしたことにならない場面は、比較対象労働者を明示せず「正社員とパートタイム労働者だから違いがある」といった抽象的な理由のみを述べる場面である。このような抽象的な説明は、パートタイム・有期雇用労働法第14条第2項が求める説明の水準を満たさないと考えられる。
根拠法令は、パートタイム・有期雇用労働法第14条第2項(事業主の説明義務)、同条第3項(説明を求めたことを理由とする不利益取扱いの禁止)、同法第8条(不合理な待遇の禁止、いわゆる均衡待遇)、同法第9条(通常の労働者と職務内容及び職務内容・配置の変更範囲が同一である場合の差別的取扱いの禁止、いわゆる均等待遇)である。説明に当たっては、これらの規律を踏まえ、比較対象労働者との間の職務内容の相違、職務内容及び配置の変更範囲の相違、その他の事情のいずれによって待遇差が生じているのかを、待遇の項目ごとに具体的に整理する必要がある。なお、同法第14条第1項は、雇入れ時に待遇の内容及び決定に当たって考慮した事項を説明する義務を、同条第2項とは別に事業主に課しており、雇入れ時の説明と待遇差を求められた際の説明とは義務の発生時期及び内容が異なる点にも留意する必要がある。
実務でよくある失敗の一つ目は、比較対象労働者を特定せず、又は待遇が最も低い正社員区分を恣意的に選んで比較することで、実質的な比較になっていない説明にとどまることである。二つ目は、「正社員だから」「長期雇用を前提としているから」といった抽象的な理由のみを述べ、職務内容や配置転換の範囲といった具体的な相違点を示さず、説明義務を尽くしたと言えない内容になることである。三つ目は、説明を行った後、当該労働者に対して配置転換や契約更新の見送り等の不利益な取扱いを行い、パートタイム・有期雇用労働法第14条第3項の不利益取扱い禁止規定に抵触してしまうことである。四つ目は、基本給や賞与のように制度設計が複雑な待遇について、賃金項目全体を一括りにして説明し、各項目がどのような趣旨・性質を持つ手当又は給与なのかを分解しないまま回答してしまうことである。待遇の趣旨・性質を項目ごとに分解して説明しないと、同法第8条が求める不合理性判断の考慮要素(職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲、その他の事情)に対応した説明にならないおそれがある。待遇差の理由づけが客観的に合理的といえるかどうかは、個別の職務実態や制度設計によって判断が分かれるため、専門家に確認しながら説明内容を整理することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 比較対象とする通常の労働者を、職務内容等が最も近い者として具体的に選定したか
- [ ] 選定理由を客観的に説明できる資料(職務等級表等)を準備したか
- [ ] 待遇項目(基本給、賞与、手当、福利厚生、教育訓練等)ごとに相違の有無を整理したか
- [ ] 相違の理由を「職務内容の相違」「配置変更範囲の相違」「その他の事情」に分けて具体的に記載したか
- [ ] 「正社員だから」といった抽象的な説明のみになっていないか確認したか
- [ ] 説明を求めたことを理由に不利益な取扱いを行わない旨を明記したか
- [ ] 説明方法(書面交付・口頭説明の併用等)を記録したか
- [ ] 添付資料(賃金規程、職務等級表等)を準備したか
- [ ] 説明後の追加質問に対応できる担当者・窓口を明記したか
- [ ] 説明内容が実際の職務実態と整合しているか事前に確認したか