競技会への出場を申し込み、参加条件に同意する書式です。健康状態の申告、事故時の対応、撮影映像の利用許諾を含みます。実務で迷いやすい記載箇所には解説コメントを付しています。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
大会出場申込書兼参加同意書
第1部: 書式本文
【大会名称】出場申込書兼参加同意書
大会主催者:【主催者名】(以下「甲」という。) 参加者:【氏名】(以下「乙」という。)
第1条(申込み) 乙は、甲が主催する【大会名称】(以下「本大会」という。)への出場を申し込む。
第2条(参加資格) 乙は、本大会の参加資格(【年齢、所属、競技レベル等の要件】)を満たしていることを確認する。
第3条(参加費) 乙は、参加費として金【 】円を、申込みと同時に甲の指定する方法により支払う。
第4条(健康状態の申告) 1. 乙は、本大会への参加にあたり支障となる既往症、アレルギー、身体上の制約がないこと(ある場合はその内容)を申告する。 2. 乙は、大会当日の体調が著しく不良な場合、参加を見合わせるものとする。
第5条(競技中の事故に関する同意) 1. 乙は、本大会が身体的な負荷を伴う競技であり、競技中に負傷その他の事故が発生する可能性があることを理解し、自己の責任において参加する。 2. 甲は、乙の参加にあたり合理的な安全対策(医療班の配置、コース管理等)を講じるものとし、甲又は運営スタッフの故意又は重大な過失による事故については、甲がその責任を負う。
第6条(保険) 1. 乙は、本大会参加にあたり、【傷害保険/スポーツ保険】に加入するものとする。 2. 甲が主催者として団体保険を手配する場合、その保険の内容及び補償範囲は別紙のとおりとする。
第7条(緊急連絡先) 乙は、緊急連絡先(氏名、続柄、電話番号)を申込書に記載するものとする。
第8条(中止・順延) 1. 天候不良その他の事由により本大会の開催が中止又は順延となる場合がある。 2. 前項の場合における参加費の返還可否及び返還範囲は別紙のとおりとする。
第9条(撮影・映像の利用) 乙は、本大会中に撮影された乙の写真・映像を、甲が大会運営及び広報の目的で利用すること(ウェブサイト、SNS、報道機関への提供を含む)について同意する。
第10条(未成年者の参加) 乙が未成年者である場合、本申込書兼同意書への保護者の署名をもって、保護者の同意があったものとする。
第11条(失格・除外) 乙が本大会の競技規則、本申込書兼同意書の内容に違反した場合、甲は乙の出場を取り消し、又は競技結果を無効とすることができる。
第12条(個人情報の取扱い) 甲は、本申込書に記載された個人情報を、大会運営及び緊急時対応の目的の範囲内で利用し、目的外に利用しない。
第13条(準拠法及び管轄) 本申込書兼同意書は日本法に準拠し、これに関する紛争は【 】地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
申込日:【 】 乙 署名:【 】 (未成年の場合)保護者 署名:【 】
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 主催者(甲)側で事故リスクへの備えを強化したい場合
第5条・第6条を拡充し、「乙の保険加入を出場資格の要件とし、加入を証する書類の提出がない場合は出場を認めない」との保険加入必須条項に修正する。
B節: 市民マラソン等、大規模かつ幅広い年代が参加する大会の場合
第4条を強化し、「乙は、事前の健康診断の受診又は自己の健康状態のセルフチェックシートの提出を求められることがある」との事前確認条項を追加し、コース上の給水・医療体制の概要を別紙で説明する。
C節: 学校・部活動単位で団体エントリーする場合
前文に「本申込書は【学校名・団体名】を通じて一括申込みを行うものとし、引率責任者は【氏名】とする」との団体エントリーの位置づけを追加し、第10条の保護者同意について、引率責任者による一括確認の可否を明記する。
D節: eスポーツ・非接触型競技の大会の場合
第5条の身体的事故に関する条項を、「長時間の画面注視等による身体的負荷への配慮」及び「不正行為(チート行為等)の禁止」に置き換え、第9条の映像利用を配信プラットフォームでの利用に対応させる。あわせて、使用ソフトウェアの利用規約との抵触がないか確認し、賞金支払がある場合は景品表示法上の景品規制の該当性も検討することが望まれます。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、競技大会・イベントへの参加者から出場申込みを受け付けるとともに、参加条件への同意を取得する場面で使用します。スポーツ競技には一定の事故リスクが内在することから、参加者が当該リスクを理解したうえで自己の判断で参加することを確認する免責的な性格を持たせることが一般的ですが、主催者側の安全配慮義務を完全に免除する内容とすることはできない点に注意が必要です。
法的な位置づけとして、大会参加契約は民法上の契約であり、主催者は参加者に対して信義則上又は契約上の安全配慮義務を負います。免責条項(第5条第2項のような規定)についても、消費者契約法第8条により、事業者の故意又は重大な過失による損害賠償責任を全部免除する条項は無効とされており、本書式のように主催者側の故意・重過失の場合を除外する記載とすることが必要です。また、未成年者の参加については民法上の未成年者の行為能力の制限を踏まえ、保護者の同意取得が必須となります。撮影・映像利用の同意については、肖像権(人格権の一内容として判例上認められている権利)への配慮から、利用目的・利用媒体を具体的に示したうえで同意を取得することが望まれます。
よくある失敗として、第一に、免責条項が包括的すぎて、主催者側の重大な過失による事故についても免責されるかのような記載となっており、消費者契約法第8条により無効と判断されるリスクがあるケースがあります。第5条のようにその範囲を明確に限定することが対策です。第二に、健康状態の申告を求めているにもかかわらず、申告内容を踏まえた安全対策(医療班の配置基準の調整等)が実際には講じられていないケースです。運用面での対応を伴わせることが重要です。第三に、撮影・映像の利用同意が包括的で、利用媒体や利用期間が示されていないケースです。第9条のように利用目的・媒体を明記することが望まれます。免責条項の有効性は事故の態様や主催者の対応内容によって個別に判断されるため、個別事案は専門家に確認することが望ましいです。なお、参加者の年齢層が幅広い市民参加型のイベントでは、健康状態の申告のみに依拠せず、コース上の医療体制や熱中症対策等のハード面の整備状況も併せて説明できるようにしておくことが、実際の紛争予防の観点からも有効です。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 参加資格の要件を明確にしたか
- [ ] 参加費の金額及び中止・順延時の返還ルールを定めたか
- [ ] 健康状態の申告事項を具体的に設定したか
- [ ] 免責条項が主催者側の故意・重過失を除外しているか確認したか(消費者契約法第8条)
- [ ] 保険加入の要否及び主催者側の団体保険の内容を確認したか
- [ ] 緊急連絡先及び緊急時対応の手順を定めたか
- [ ] 撮影・映像利用の同意範囲(媒体・目的)を明記したか
- [ ] 未成年者参加時の保護者同意取得方法を定めたか
- [ ] 失格・出場取消しの事由を明確にしたか
- [ ] 個人情報の取扱いに関する条項を設けたか
- [ ] 医療班配置・熱中症対策等のハード面の安全対策を説明できる状態にあるか
- [ ] 団体エントリーの場合、引率責任者の役割と保護者同意の関係を整理したか